48.去年とは違う良一
(去年とは違う良一)
お昼になって、バーベキューをして、クラスの仲間と笑いあって、ふざけあって、
去年までの良一と何かが違っていると、良一なりに感じていた。
午後からは、さすがに長時間の勉強に飽きたのか、不平不満が噴出した。
「こんなの全然わかんない!」
小夜子が叫んで畳の上に仰向けになって寝転んだ。
「もう、しょうがないわね」
幸恵が隣で寝転んだ小夜子のお腹を叩いた。
「どれがわからないの?」
良一がやってきて小夜子の問題を見た。
「関係代名詞?」
「教えてくれるの?」
小夜子が突然起き上がった。
良一が他人の世話を焼くのも、去年まではなかったことだった。
「わたしも教えてよ!」
理恵子がうらやましそうな声を上げた。
「駄目よー! 良一君が勉強できないじゃない」
幸恵が良一をかばうように言った。
「いいよ。少しぐらいなら僕にわかる所なら……」
良一は優しく微笑んだ。
「じゃわたしも……」
聡子も教科書を持ってやってきた。
妙子はそんな良一を眺めながら、少し前までの変人扱いされていた良一と違って、
クラスの仲間と親しく溶け合っていることが嬉しかった。




