42.人の心が分かる人
(人の心が分かる人)
そして、良ちゃんも人の心がわかる人……
最初にそれを感じたのは、良ちゃんがまだ三っだった頃、私が誤って包丁で指を切ってしまったとき、私より先に大きな声を出して、わんわん泣いてくれたわね。
良ちゃんの指が切れたわけじゃないのよと言っても、なかなか泣き止まなかった。
私が転んですりむいた時も、私より先に泣いてくれた。
良ちゃんはいつも私の心を思っていて、私の悔しさや悲しさを感じて一緒に泣いてくれたのね。
そんなあなたは、私にとって一番大切な人……
いつも私の側にいて、私と一緒のことをしたがった。
お料理も、お掃除も、お花作りも。
いつも一緒でないと駄目だったわね。
でも、あなたはただ側にいただけじゃなかったわね。
ちゃんと私のやることを見ていて、ちゃんと覚えていたのね。
私が病気になって、あなたが始めてご飯を炊いてくれたときには、本当に驚いたわ。
子供って、本当に親の背中を見て育つんだって思った。
それからも、私が少し教えれば、良ちゃんはお料理も、お裁縫も何でもできてしまったわね。
私が病気になってからは、もちろん一秒たりとも離れずに、私の体のことばかり気遣ってくれた。
まるで私の分身がいるようだった。
良ちゃんが側にいてくれたから、私、頑張れたのよ。
良ちゃんのために頑張ったのよ。
最後の最後まで取り乱さずに頑張れたのは、やはり良ちゃんのおかげね。
私は幸せよ。
あなたと過ごせた一日は、百万年の時間と同じくらい充実していたわ。
良一という名前は、私が付けたのよ。
平凡で簡単だけど、良いことを進んで出来る人間になって欲しかったの。
良いことをするのに遠慮したり、恥ずかしがったり、しちゃあ駄目よ。
良いことを一番に、勇気を持ってみんなにしてあげてください。
私は、そのとき、あなたの中で生きています。




