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11.化石になった話

(化石になった話…)


 妙子の話というのは昨日の夜、突然父親から聞かされた、良一を下宿させると言うことだった。


「ちょっと待ってよっ! そんなこと出来るわけないじゃない。こんな可愛いい年頃の娘のいる家に、赤の他人の男を一つ屋根の下に住まわせるなんて、オオカミさん食べてっていっているようなものじゃない!」


 妙子は、頭から猛反対で父親に喰ってかかった。


「良一君も遠慮したいと言っているそうだ」

 父親は、浮かない顔で食卓の湯飲みを取った。


「それはおめでとうー! 良かったじゃない」

 妙子も椅子に座りなおして紅茶の入ったカップを手に取った。


「しかしだなー、良一君は、お父さんと二人暮らしなんだ。そのお父さんがボストンに行ってしまった今、ボストンでの仕事が一年になるか二年になるかわからないのに、このまま放って置くわけにはいかないと、お父さんは思っているんだが……、紗恵子はどうだ?」


 紗恵子とは、妙子の年の離れた姉であり、現在研修医として父親と同じ病院で働いていた。


「私はかまわないけど、妙子がいやなら仕方ないわね。望まれないところにいても良一君がかわいそうなだけだから……」


「そうだな……。ともかく、下宿の話を含めて一緒に食事でもしたいのだが急な話で申し訳ないが、明日の晩なら私も早く帰ってこられるから、良一君に話しておいてもらえないかな?」


「下宿は絶対反対だからねっ! ご飯くらいなら付合ってあげてもいいわ。その代わり御寿司よ。特上寿司よっ!」


「それで手を打とう。じゃあ、妙子から良一君に話しておいてくれ!」

 父親は話がついたところで、湯飲みを持って立ち上がった。


「いやよ! そんなのお姉ちゃんが電話すればいいじゃない」


 紗恵子は食事の後片付けをしながら、呆れ顔で、妙子の頭を小突いた。

「あなたねー、同じ学校でしょう!」


「話したことないもの!」


「昔は、お嫁さんになるって言ってたのにー」


「あのねー! そんな化石になったようなこと、持ち出さないでよねっ!」


「まあ、いいわ。とりあえず電話しておくから。でも、妙子からも気持ちよく誘ってあげるのよ。彼も遠慮して来にくいと思うから……」


「考えておくわ……」


 この時はまだ同じクラスになるとは夢にも思っていなかった。




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