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これ以上私にお時間を割かなくて結構ですわ

作者: けーす


はじめましてけーすと申します。

ずっと見る専門でしたが、自分でも小説を書いてみたいと思い投稿しました。

暖かく見ていただけると幸いです。

「遂に卒業式の日が来てしまったのですね」


グレイス・アナトリアはため息をつきながら馬車から降りる。

本日はグレイスが3年間通っていた学び舎の『ベルディーン王立学園』の卒業式。

新しい生活を楽しむ面持ちで学園へと軽やかに足を運ぶ生徒が多い中、荒れ模様の天気のように彼女の足取りは非常に重いものだった。


彼女はベルディーン王国建国以来の由緒正しいアナトリア公爵家の令嬢であり、ベルディーン王家の第一王子であるレオーネ王子の婚約者だ。

二人は同じ年の幼馴染で、自分に懐くレオーネをグレイスは可愛らしく弟のように感じていた。二人の婚約の話が出てきた時には恋愛感情はなかったが、二人でこの国を成長させていこうと誓い合った。


そんな二人が15歳になり王立学園に入学した時、平民出身の男爵令嬢フローラ・ファルールが入学。レオーネはフローラのお世話係を命じられた。ドジをしてしまうフローラを優しくフォローするレオーネの様子を見て学園の生徒は『灰かぶり姫』を想像させた。程なくして学園内ではレオーネとフローラが恋愛関係であり、グレイスが悪役令嬢として二人の仲を引き裂いているといううわさが流れてきた。


レオーネはそんな関係ではないとグレイスにも周囲にもフローラとの関係を否定しており、グレイスを安堵して学園生活を過ごしていたが、ある放課後にグレイスは二人の逢瀬を目撃してしまい、そしてレオーネの本音を聞いてしまう事とになる。


「僕たちは真実の愛に結ばれているんだ。早くこの関係が終われば良い」


グレイスはレオーネの言葉に自分の知るレオーネではない面を知り、恐ろしくなってその場を逃げてしまう。週に一度王城の王子の居室にてレオーネとの面会があり、その頻度が少なくなるか、最悪消えてしまう可能性もあるとグレイスは考えていたが、面会は相変わらず続いた。面会ではレオーネは変わらず笑顔でグレイスに接している。グレイスはレオーネのこの笑顔が偽物で、男爵令嬢と一緒にいる時は心の底からの笑顔をしているのだと想像すると、自身の心が歯がゆく感じた。何故自分の心が歯がゆく感じられたのかを考えたグレースはレオーネの心を満たすものが自分にはなく、フローラ令嬢にあるという事に悔しさを感じたのだと悟った。だがフレイスは自分がこれ以上惨めな気持ちになりたくなく、ある日レオーネにこう言い放った。


「殿下、私といるよりファルール様とご一緒にいたいのではなくて?これ以上私にお時間を割かなくて結構ですわ」


レオーネはグレイスの言葉に顔を青ざめていたが、それを気にせずグレイスは紅茶を飲んでレオーネに有無を言わせず退室した。


その後、グレイスは男爵令嬢と自分の何が違っていたのかを考え、平民と貴族の差であると感じた彼女は平民の生活を知ろうと市井での生活を開始した。

流石に家の者に打ち明けると反対されると分かっていたため、昼は令嬢として夜と休みの日に家族の目を盗んで平民として生活し始めた。


グレイスは初めて一人で向かう市居で強盗に襲われ、身ぐるみ剝がされるところを自分と同じぐらいの農民の青年、カイルに助けられる。


「貴族様の気まぐれなのかしらねぇが、こんな夜中に出歩くとさっきみたいな目に遭うぞ。早く護衛と呼んで帰りな」


カイルに忠告を受けたグレイスだったが、自分一人でこの市井に来たと知るとカイルの家に泊まる事になった。カイルは妹のリアと共に暮らしており、リアは「お姫様みたい!!」とグレイスに興味津々で、グレイスは天真爛漫で可愛らしいリアの事を天使だと感じた。


カイルはグレイスの事を厄介な存在だと感じていたが、グレイスはリアと共にカイルの手伝いを始める事となる。

グレイスはリアや彼女の友人と触れ合い心通わす中で、平民の生活の違いを肌で感じるようになり、王室や貴族の役目は彼らの生活を豊かにさせる事だと貴族の人間としての自分なりの矜持を持つ事となる。

温室で育った貴族令嬢から現実を知って一人の貴族として成長していくグレイスを見てカイルも態度を改めるようになる。


カイルやリアに囲まれて充実した日々を送っていたグレイスだったが、遂にレオーネが指揮する憲兵に捕らえられてしまう。


「私は貴方が浮気をしていようと側妃を迎え入れようと問題ございません。もう私を放っといてください」


とレオーネに言い放つが


「君は誤解している。卒業式ですべてを明らかにする」


とレオーネは回答し、グレイスを連行する。


グレイスはその後強制的に学園に戻り、冒頭の卒業式の日に戻るのだった。


卒業式は無事に終わったが、プロムがまだ残っており、王家の命により出席しなくてはいけなかった。

会場の控室では、過去に自分の取り巻いていた貴族令嬢で、自分の事を蔑んだ目で見る者や腫れ物に触るように無視する令嬢たちの姿を見てしまうが、どうせ自分は断罪されるのだからと歯牙にもかけない態度をとっていた。しかし、相も変わらず自分を応援する令嬢もおり彼女たちに励まされていた。


フロムの会場に一人で入場すると、レオーネはフローラと側近たちに囲まれており、この状況がさらにグレイスの立場を悪化させた。この状況を面白がってみていたクルース伯爵令息や複数の令息がグレイスを囲んでありもしない罪をでっちあげて断罪を始めた。


「グレイス・アナトリア公爵令嬢!」


「なんでしょうか」


「その態度が取れるのも今のうちだからな!ファルール男爵令嬢に精神的な苦痛を与えた事、貴族の風上にも置けないやつだ!!」


「私はそのようなことはしておりませ…「どうせ実家の権力を笠に着てあやふやにするつもりなのだろうがそうはいかねぇ!!」」


グレイスが反論しようと口を開けたが、バルトリム男爵令息がグレイスの言葉をかぶせ、反論の機会を与えようとしなかった。


「アナトリア公爵令嬢はファルール男爵がレオーネ殿下と親しいことに嫉妬し、大勢の取り巻きと共にファルール男爵令嬢にレオーネ殿下に近づくなと何度も迫ったのは分かっている!!」


「アナトリア公爵令嬢の悪行に良心の呵責苛まれたご令嬢もいるんだぞ!!」


クルース伯爵令息がそう叫ぶと、彼らの中からグレイスと共に行動していた2人の令嬢たちが現れた。


「彼女らが証人だ!!」


「私たち、非常に怖かったのですの。」


「確かにファルール男爵令嬢も貴族になりたてですので、礼儀作法が完璧ではないのは否定できませんが、そんな些末な事で揚げ足を取りファルール男爵令嬢に迫っていらっしゃって…」


「しかも私たちが動向を拒否した際には実家がどんな不利を被るかわからないといわれてしまい。アナトリア公爵令嬢と共にファルール男爵令嬢を侮辱するしかなかったのです」


次にアナトリア公爵令嬢がファルール男爵令嬢の教科書を破いた証拠を出してきて、礼儀不足を指摘しておきながら、マナーの教科書を破くなんて人間としての風上にも置けない人間だと叫ばれた。


ガリウス男爵令息がレオーネ殿下とその側近たちにも断罪に協力してほしいと頼む。


「殿下もアナトリア公爵令嬢が日ごろから目障りだったのではないですか?」


「あの傲慢な令嬢に裁きの鉄槌を!!」


「そうだな…」


「貴様らは俺の婚約者を侮辱する貴族の風上にも置けないやつらという事がよく分かった」


「…え?」


「レオーネ様?」


レオーネはまさかの言葉を放つと同時に近衛兵たちがプロムの会場に現れた。


「俺がいつ其方らの味方だと勘違いしている?」


「殿下、騙されております!!」


「気は確かですか!?」


断罪騒ぎを起こした令息・令嬢たちは予想外の結果を受け入れる事ができず、我儘な子供のように癇癪を起した。


「あぁ気は確かだぞ。クルース伯爵令息、其方や実家のクルース男爵家が重税を課しながらその金で贅沢三昧して民を苦しみていることに比べるとな」


「どういうことですか?私は何も知りません」


クルース伯爵令息は一瞬顔を歪めたが、しらを切った。しかし、周りの人物にはそれが図星であることが明白だと感じた。


「貴方もそれを知りながら金を使い込み、女遊びに使い尽くしている事は既に分かっている」


レオーネの側近で王国の宰相嫡男であるアイオロス公爵令息がレオーネの傍から身を乗り出した。


「そうそう。他にもガリウス伯爵令息」


「!?」


「アナトリア公爵令嬢の無実の罪の証拠を金使って作り上げた事は既に報告に上がっている」


「ガリウス伯爵家領内における“ツケ”とのたまって窃盗や器物損壊を伯爵家の力を借りて揉み消していることも知ってるぞ!!」


「何ィ!?」


他にもグレイスへの無実の罪を着せようとした令嬢たちもレオーネとその側近らによって自らの悪事が晒される事となった。


「言い忘れてたが、クルース伯爵令息以外にも領内や実家が王国への背信行為をしている貴族がいる事は把握しているぞ。その様な家は俺の時代には必要ない」


「レオーネ様…これは何かの間違いですよね?私は本当にアナトリア公爵令嬢にいじめられて…」


フローラは今までの様子から大きく変わってしまったレオーネの腕を絡めようとしたが、レオーネから拒絶されてしまった。


「ファルール男爵令嬢、ここではっきり申し上げておこう。今までずっと黙っていたが、男爵家にもかかわらず身分を弁えない行動が目に余った。そのような女は俺は嫌いだ。レオーネ様と馴れ馴れしく呼ぶな!!


「そんな…」


「更にファルール男爵令嬢家が他国のフォルテス帝国と手を組んでこのベルディーン王国を乗っ取ろうと私に言い寄ってきたことも知っているぞ。其方の行動は不敬罪そして国家転覆罪の疑いがかけられている。近衛兵、彼らを捕らえるのだ」


レオーネの命令により、近衛兵たちがクルース男爵令息らを拘束する。


「こんな事国王が許しませんぞ」


「否!!」


ガリウス伯爵令息の抗議に一人の男が多くの兵を従えて会場の入り口から登場した。

その男はレオーネの面影を見せていた。


「国王陛下!!」


レオーネを始め近衛兵に捕らわれていた令息令嬢やその場に居ただけの生徒たちも一斉に頭を下げた。


「今回のレオーネの一件はこのわしが直々に命令を出した。其方らの行動は儂の耳にもしっかりと届いておる!!こ奴らを連れていけ!!」


近衛兵は王の命令に従って、断罪騒ぎを起こした令息令嬢を会場から追い払った。更に学園の生徒たちの一部も近衛兵によって連れていかれた。


「今回は”王家の影”に他の貴族にも監視の目を向ける様に命令を出しておる。我々王族そして貴族は民があって初めて存在する。自分の好き勝手やる為に苦しめてはならぬぞ」


「良政を敷いている家の生徒諸君よ。この晴れの日を悪しき者たちの為に台無しにしてしまった事、誠に申し訳ない。卒業式のプロムは改めて後日開催予定じゃ」


国王は深く頭を下げた。


「そして卒業おめでとう。儂は君たちと民の繁栄を見守っておるぞ!!」


王の言葉で生徒たちは続々とプロムの会場を跡にした。

数分後会場に残ったのはグレイス、国王、レオーネの3人だった。


――――


「アナトリア公爵令嬢」


国王の呼びかけにグレイスは再び頭を垂れた。


「其方には大変申し訳ない事をしてしまった。先ほど儂が言った通り息子のレオーネは儂の命令によりファルール男爵令嬢に近づいておった。そのせいで其方は謂れもない噂で傷付けてしまった」


少しの間があったが、グレイスはこの場に限って特別に直接の会話をする事が許されると察して言葉を発した。


「陛下はファルール男爵家が他国との関わりを持っていた事を存じ上げていたのですか?」


「如何にも。しかし断罪できるほどの確固たる証拠がなかった。証拠が出る時はこの国の後継者が決まる時期だと考えた儂は、レオーネとその側近候補どもに命令を出したというわけじゃ」


「という事は今回の件はレオーネ殿下とご意志ではないという事で宜しいのでしょうか」


「左様。レオーネはファルール男爵令嬢など好いておらん。ただ、レオーネの統治する時代に腐敗した奴らはいらん。この国に害をなす奴らを一掃する事にあった」


「さて、儂は片付けることがあるからの。あとは若い者同士で話しておくれ」


国王は近衛兵を数人残し、プロムの会場から去っていった。

その代わりにレオーネが意を決してグレイスに近づいた。


「グレイス…」


「レオーネ殿下…」


「ちょっと話さないか?」


―――


プロム会場の控室


「なぜファルール男爵令嬢がいらっしゃるのですか?」


レオーネの後に続いて会場の控室にはとあろうことか先ほど近衛兵に連れていかれたファルール男爵令嬢がいた。


「ファルール男爵令嬢は我々の協力者だ。彼女の告発がなければ、我々は怪しい勢力の証拠を握れなかった」


「彼女から話を持ち掛けられた際に交換条件として君に会いたいと伝えてきた」


「え?」


グレイスはレオーネからの言葉に驚きを隠せなかった。今までずっとフローラの事は自分を陥れようとする存在だと認識していたため、面を食らってしまった。しかし、落ち着いてフローラの事を見ると、先ほどのプロムの様子とは打って変わってどこか挙動不審な様子を見せている。


「どういった経緯なのか全くわかりませんし、ファルール男爵令嬢の様子がおかしいのですが」


「それは私にもわからんが、ファルール男爵令嬢はどうやらグレイスの推しらしい」


「推し?」


「君のファンのようだ。彼女と直接話してもよいか?」


「ええ…」


レオーネからのまさかの事実に戸惑いを隠せなかったが、グレイスはフローラと話すことにした。


「アナトリア公爵令嬢、まずは今までの非礼と私のせいで起こってしまった貴方様への深い極まりない噂を出してしまった事をお許しください」


グレイスは学園内でのフローラの様子と打って変わってきちんとした貴族の礼儀を弁えており驚きを隠せなかった。


「色々とお聞きしたい事があります。なぜ貴方は私と会いたいとレオーネ殿下に頼まれたのでしょうか?」


「私はアナトリア公爵令嬢の神のような素晴らしい美しさと洗練された一挙手一投足に生まれる前から惚れ惚れしておりました。そして私は貴方様の悲劇をどうにかして回避し、殿下と結ばれる事を夢見ておりました。今回の事貴方様を傷つけてしまう事にはなりましたが、最悪の事態を回避できた事に安堵しております」


何故かファルール男爵令嬢が自分を生まれる前から好意を感じていたのか見当もつかず、困惑していた。そして物語の人物かの様にそしてその人物に会えて感激しているかのように話すのかが不思議でたまらなかった。そしてグレイスはフローラにこう質問した。


「二つ目です。貴方は心の底ではレオーネ殿下の事を愛しておられますか?」


「いえ。そもそも私は平民時代に将来を誓った幼馴染がおります。あの憎き男爵のせいで離れ離れになり、辛い毎日を送っていましたが、殿下に協力する条件として彼との結婚の支援も条件に含まれておりますので、レオーネ殿下と結ばれたいなどとは考えておりません。むしろレオーネ殿下とアナトリア公爵令嬢が結ばれる様子を見たいと思っておりました」


フローラの回答に嘘はない。グレイスはそう感じたと同時にフローラもカイルやリアと同じように自分が強く生きるのに必死だったのだという風に思えた。そう思うとフローラの事を自分が可愛がっていたリアのように愛しく思えたのだった。


「承知しました。私は貴方の謝罪を受け入れましょう」


「今まで貴方も辛い事が沢山おありだったのでしょう。私も今回の事で平民の生活を体験する事ができました。その経験は私たち貴族の生活が平民の皆様に支えられていると教科書や学園での授業以上に肌に感じる貴重な経験を致しました。必ずこの国を豊かにすると約束致します」


グレイスはフローラの手を取ってそう呟くと、フローラは驚いた顔をして


「アナトリア公爵令嬢がそんな…私の手を…しかも後光が差している…」


といって倒れてしまった。


グレイスはフローラの事を変な人間と感じつつも、自分が思っていたような嫌な人間ではないとむしろ好感を持つようになった。


―――


王国の庭園


「この場所は懐かしいですね。よくレオーネ殿下とかけっこして遊びましたね」


「あの頃はいつも其方に負けていたな」


「あの頃は何も知らずに遊んでばかりいましたね」


グレイスはレオーネと共にプロム会場の近くにある王城の庭園に足を運んだ。

この場所は幼少期に二人が遊んでいた思い出の場所だった。

かけっこで泥だらけになっていた二人は10年以上たった今日、その庭園の地をしっかりと一歩ずつ踏みしめていた。


「あの時と違って俺も君も変わってしまったな」


「ええ…」


レオーネはそう呟くとグレイスの前に立ち止まって頭を下げた。


「本当にすまなかった」


「何がですか?」


「君の事を貴族からの悪意から何もフォローする事もせずに放置していた。俺が何もしないでいたから君を学園や貴族社会で生きずらくしてしまった。」


「確かに悪意の噂に傷つきましたが、一番傷ついたのは別の事です」


「え?」


「以前私は殿下がファルール男爵令嬢に『僕たちは真実の愛に結ばれているんだ。早くこの関係が終われば良い』と仰っていたのを聞きました。その時に私は殿下の心は自分よりも関係の浅いファルール男爵令嬢にあるのだろうと感じて悔しかったのです。今まで私は自分なりにレオーネ殿と親しい関係を築いてきたと思っていましたが、自分だけがそのように感じていてやるせなかった事を覚えております。もっと言うと、私は殿下とファルール男爵令嬢の仲に嫉妬していたんだと思います」


「確かに俺はファルール男爵令嬢に対して『僕たちは真実の愛に結ばれているんだ。早くこの関係が終われば良い』と言った事は覚えている。だけど真意は全く別だ」


「え?」


自分が考えていた事と全く異なると聞いて驚くグレイスの手をレオーネは優しく握った。


「殿下?」


「また昔みたいにレオーネって呼んでほしい」


「そんな…」


「お願いだから」


学園に入学してからクールで大人しいレオーネしか見ていなかったグレイスだが、このレオーネの必死な姿に幼い頃に自分の後ろについていたレオーネを重ね合わせた。


「…レオーネ?」


「『真実の愛で結ばれている』っていうのは俺が辛い事に陥った時に『俺とグレイスが真実の愛に結ばれているからこの時期を乗り越えましょう』という意味でファルール男爵令嬢に話しながら自分自身を奮い立たせていた。」


「『早くこの関係を終わらせたい』というのはどういう意味だったのでしょう?」


「『早くこの関係を終わらせたい』というのは婚約者ではなく、早く父上に認められて君と結婚したいという事だ。父上にも常々言われていたが、幼い頃の俺はいつも君後ろを付いてばっかりだったし、頼りない人間だった。君に振り向かれたくて君の隣に立っても恥ずかしくない男になる為に、立派な君主になる為に成長しようと必死だった。その代わり俺が君に昔のようには接する事が少なくなったから疎遠に感じるようになったかもしれないが、君をずっと愛しているその思いだけはずっと変わらない」


必死になって今の自分への思いを伝えるレオーネを見て、たくましく成長した姿のレオーネから幼少期の頃の頼りないけど心優しいレオーネの面影を感じた事がたまらなく嬉しかった。


「レオーネ様…」


「グレイス、最愛の女性よ。もう遅いかもしれませんが、再び私にチャンスを頂けませんでしょうか。婚約者のままでいてくれませんでしょうか」


「...私は婚約者にはなりません」


「...」


「私は最愛の貴方の妻に、レオーネ・ベルディーン様の皇太子妃になりますわ」


「グレイス!!」


こうしてグレイスとレオーネは結ばれ、結婚する事となった。

グレイスはレオーネと共に国を発展に多大な貢献を果たし、歴史に名を遺す夫婦となった。



また短編でいくつか投稿してみたいです。

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