表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/583

第91話 新たな村人の紹介とお土産

「お、戻ったか。進捗(しんちょく)状況はどうだった?」

「私の予想を遥かに超えた進捗(しんちょく)状態でした! それじゃ、みんなに紹介するのでこちらへ」


 親方衆のところへドワーフ一行を連れて行く。


「お待たせ、えー、集まってもらったのは他でもありません。この工事の要となるドワーフさんたち一行を連れてきました!」


「「「おおおぉぉぉぉ!!」」」


「もう川が出来たも同然だ!」

「凄い歓迎だな……」

「ドワーフ族はモノづくりで有名ですからね」


 こんな何も情報の無い村にまで、種族の高名が轟いてるんだから凄い。

 まあ、この村どころか、この星が月と同じくらいの距離に位置するのなら推定三十万キロメートルも離れた地球にすら轟いているのだから。


「こちらの方が、ドワーフ商会を取り仕切るヘパイトスさんです」

「ヘパイトスだ、よろしく頼む」


 この後、以下、娘のヤポーニャさん、孫弟子のフィンツさん、フロセルさん、ルドルフさんの三人を紹介。

 次にアクアリヴィアの騎士トーマスとリッチの二人を順に紹介した。


「この二人はとある縁でこの村で生活することになりました。アクアリヴィア騎士であり人魚(マーマン)のトーマスと半魚人(サハギン)のリッチです!」

「トーマスです。お世話になります、よろしくお願いします」

「ふんっ」

「リッチ……挨拶は人間関係を円滑に進めるのに必要なことよ?」

「…………リッチです、よろしくお願いします……」


 元々貧困な最果ての村を見下してる典型的な『お貴族様』だからな……彼を村に馴染ませるには骨が折れそうだ……


「そして、この子が水の国の海で仲間に引き入れた、リディアです! じゃあ、リディア変身解除して」

「良いのカ?」


 変身解除してクラーケン形態にさせる。


「おおぉ!?」

「何だアレは!?」

「五日前のとは違う怪物だぞ!?」


 五日前ってのは、多分川掘削開始前に遭遇したフレアハルトら、レッドドラゴンのことだろう。屈強な男どもが凄い勢いで逃げてきたし。 (第61話参照)


「リディアは、クラーケンという海でも高位の存在でね、見た目は大きくて威圧感あるけど、優しい子だから仲良くしてあげてね」


 『海』という単語を聞いて少し騒めく。


「海って何だ?」

「聞いたことないな」

「アルトラ様~、『海』について説明をお願いします」


 そうか……近くに海無いし、テレビも雑誌も無いから海知らんのだな……


「海ってのは端的に言えば巨大な水たまりってところです」

「水たまり? そんな小さいところにリディア(その子)が入れるわけないじゃないですか~」

「巨大って言ったでしょ?」

「巨大って……川とどっちが大きいんですか?」

「川なんて比較にならないくらい大きい水たまりだよ。この川が行き着く先が海ってところ」


 全員が「へぇ~~」という様子で一応の納得をしたらしい。

 紹介が終わって、リディアが再び人型に変身する。


「みんなよろしくナ!」


 初めて怪物に当たる生物が村の一員になったということで、みんな騒めきが収まらない。

 まあ、みんなが気付いてないだけで、村入りしてる怪物は初めてではないんだけど……


「経緯は分かったけど、本当に大丈夫なんだろうか?」

「恐いな」

「あ、でもケルベロスはでかいけど無害だったぞ?」

「アルトラ様が連れて来たからには大丈夫なんだろう」

「と言うか、アルトラ様が既に化け物だしな」


 何か酷いこと言われてる気がするが……流しておこう。

 それぞれ声が聞こえて、リディアが不安そうにしているが……

 これはまあ、時間が解決してくれるより他はない。時間をかけてリディアが無害だということを知ってもらわなければ。


「大丈夫よ、リディアが悪いことしなければ、村の人たちも好きになってくれるから。色々とお手伝いしてあげて」

「わかっタ……」


 大勢の人を前に、若干萎縮気味だ。

 ただ、この村の人々の順応性はかなり高い。ケルベロスの時は恐がってた翌日に、すでに撫でに来てた子供がいたくらいだ。きっとリディアも問題無く馴染んでくれることだろう。


「さて、今から水の国(アクアリヴィア)のお土産を配ります!」

「お土産?」

「何ですかそれ?」


 全員色めき立つ。

 お土産の文化は多分無いだろうけど、「配る」って部分を聞いて、何かくれるのだと判断したんだろう。

 水族館で買った、チョコクッキー、人形焼き、骨鯨せんべいを配る。

 アクアリヴィアに行った最初の方こそ、「村に加工品持ち込んで大丈夫だろうか? フルーツくらいに留めておくか」なんて考えてたけど、結局お土産で加工品を買って来てしまったな……


「わぁー! 何か良い匂いですね!」

「ホントだ! 甘くて良い匂い」

「俺はこっちの香ばしい匂いの方が好きだな」

「じゃあ、一口……美味い!」

「甘い! さすが街の食べ物だな!」

「こっちは甘じょっぱくて美味いな」


 どれを取っても、まだトロル村(ここ)には無いから美味しいに違いない。

 男どもばかりでこの反応なのだから、一般的にスイーツが好きな女の子にも受けが良いはず。

 とは言え、残念ながら村中に配るほどは買ってきていないから、関係各所に配るくらいになってしまうが……

 せっかくだからこれらを参考に、ハンバームちゃんに名物でも作ってくれるように頼んでみよう。


「あと、男どもにはこれを」


 買って来た酒を出す。


「それは?」

「お酒って言ってね、飲むと気持ち良くなる飲み物よ」


 自分で言って気付いたが……この表現だと何かヤバイクスリみたいな気がする……


「ただ仕事中に飲むと酔っぱらって支障をきたすような代物だから夜だけ飲むようにして」

「支障をきたすって……それ身体に悪いものなんじゃないですか?」

「しょ、少量なら身体に良いって云われてるから……」


 まあ、私はザルだったから一度も二日酔いになったことなんてないけど。

 もっとも……好きではなかったから頻繁に飲むようなことはなかったが。


「アルトラ様、水の国楽しかったッスか?」

「え、まあ面白い国だったよ……って、ナナトス!?」

「一人だけ楽しんで来てズルいッス!」

「遊びに行ったんじゃなくて、仕事頼みに行ったんだし……あなた筋肉疲労で今日お休みなんじゃなかったの?」

「何か楽しそうな気配がしたから、動けない身体押して急いで来たッス!」


 第六感か? いや、もしかしたら楽しそうなところを見逃さないスキルとか?


「じゃあ、ちょうど良かったね、今お土産配ったところだから」

「遠慮なくいただくッス!」


 その時フレアハルトが小声で話しかけてきた。


「アルトラ、ちょっと話がある」

「なに?」

あの娘(リディア)が正体を明かしたということは、我もそろそろ明かして良いということなのか?」

「ごめん、あなたはもうちょっと待って」

「何で我は正体を明かしてはダメなのだ!」


 私の予想と一言一句同じこと言ったよ……


「しっ! 声が大きい……あなたはこの地域で知られ過ぎてるから、もう少し時期を見たい」


 手を合わせてお願いする。


「もうちょっとだけ辛抱して! それにリディアはまだ幼いからか、寝ている間に変身が解けちゃうことがあるの。突然村に巨大な怪物が出現したらパニックになるかもしれないと思って、前もって明かしておくことにしたの。もしリディアがあなたと同じくらいの年齢なら隠させたけど」

「ム……そういう理由があるのなら仕方ないか……」


 こういう風にちゃんと理由付けすると、フレアハルトは素直に引き下がってくれることが多いのよね。


「さて、新顔紹介も兼ねた休憩も終わったところで、川作りを再開しましょうか。ここからは分担作業をしてもらいます。フレハル組、イチトス組は今まで通り川の基礎部分の掘削をお願い。ダイクー組、カペンタ組はドワーフの下に付いてもらって、堀ったところを整地、固めの作業に入ってもらいます。ここからは私より、専門家のドワーフの方々の指示に従ってください」


 私じゃわからんとこ多いだろうし……


「じゃあ、俺っちはここで失礼しますッス」


 作業が始まる頃にナナトスが退散しようとする。


「食べるだけ食べておさらばするつもり?」

「筋肉痛で痛いんスもん」

「じゃあ明日からちゃんと頑張ってもらおうか」

「いや、自由参加ッスから」


 まあそうだが……

 仕方ないのでナナトスは帰す。

 あ、それなら休んだ作業員にお土産持って行ってもらおう。


「待って、じゃあ今日参加できなかった作業員にこれ持ってってあげて」


 買って来たお土産を包んで渡す。


「えっ? 自分がッスか? 身体痛いのに?」

「ここまで来る元気があるんだから、死にゃしないわよ。配るくらいできるでしょ? その後は休んで良いからお願い」

「人使いが荒いッスね……わかりましたッス……」


 面倒なこと頼まれたな、って顔をしているけど、作業に参加してくれてる人が、たまたま今日休んだからってご褒美を貰えないのはおかしいからね。

 ナナトスが来なければ、私が配りに行ってたところだけど、都合良く来てくれたから帰るついでにお願いする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ