第90話 四パーティーのリーダーに川の掘削を任せていたが……
アクアリヴィアより川掘削現場へと直接帰還。
三日前の作業スピードを考慮して、今日の作業現場を予想して【ゲート】を繋いだけど……
「何だ誰もいないじゃないか?」
ヘパイトスさんが第一声を放った。
「おかしいな……三日前の作業状況から考えると、この辺りが作業現場と予想したんですけど……」
三日前は掘削の進捗状況が百メートルくらいだったから、土魔法を併用して掘っているだろうことを考慮しても二、三キロくらいの範囲にいるかと思ったんだけど……
遥か前を見てもいない。
しかし、眼前に広がるのは、ちゃんと掘削されてる水路予定の穴。
「ホントにここなのか?」
「サボって酒でも飲んでるんじゃないか? がっはっは」
「だが、掘削はきちんとされてるな。サボってる様子は無さそうだ」
確かに……奥に向かって堀った跡がずっと続いてるってことは、私の予想より遥かに進んだところにいるのかな?
それに、私の村にはまだ酒なんか無い。酔っぱらってサボってるなんてあり得ない。
「ちょっと見てきますので、少々お待ちを!」
「リディアも一緒に行ク!」
「え、でも抱えて飛ぶの?」
「大丈夫! リディアも飛び方覚えタ!」
え!? イカが? まさかぁ?
そう思ったのも束の間、あっという間に服の一部を翼の形に変化させた。
「ほら、これなら飛べル!」
実際に飛んで見せた。しかも羽ばたいている!
嘘でしょ? 生態を考えると絶対に飛べない生物のはずなのに……服の変身能力でそれを可能にするとは……
恐ろしい子・・・!
私も羽を出し、飛んで様子を見に行く。
五キロ進んでも、十キロ進んでも誰もいない。
◇
その後、四、五十キロの地点でやっと掘削してる作業員を見つけた。
もう空から見れば、ここからトロル村が見えるほど村に近い場所まで来ていた。
嘘でしょ!? 三日でこんなに進めるものなの?
地上で気付いたカンナーが声をかけてくる。
「あ、アルトラ様~! おかえりなさ~い!」
声をかけてくれたカンナーのところへ降りる。
「ただいま……これ凄いね! たった三日でこんなに掘ってくれるなんて!」
「フレハルさんが土魔法を使ったコツをみんなに教えてくれましてね、あっと言う間でしたよ」
手を振り上げて見せてくれた。
土魔法を強化する魔法がかかっている。
水の国への出発前にフレハルにやってもらったアレを応用したのかな。あの時とは段違いの威力になってるが。
「それで……その子は? 飛んできたようですけど……アルトラ様の同種の方かなんかですか?」
「この子はリディアって言って――」
――この時アルトラの頭の中で凄い早さで思考が重ねられた――
この場合、正体を明かした方が良いのかしら?
明かした場合、フレアハルトはどうする? って話にもなってしまう気がする。きっと「何で我は正体を明かしてはダメなのだ!」って言われそうだ……
でも、この子の場合、まだ寝てる間に変身が解けてたりするから、深夜に突然「化け物が現れた!」って言われる前に、先にみんなに明かした方が良いかな。
みんなが集まってから話そう。
――この間、〇.一秒――
「――アクアリヴィアで仲間になった子なの」
「よろしくナ!」
「その子も飛べるからにはきっと凄い子なんでしょうね……アルトラ様が連れて来る方ですし。フレハルさんも普通じゃない感じがしますし……」
………………リディアが来た来ない関わらず、もう既にバレつつあるような気もするが……
「今日はナナトスは一緒じゃないの?」
「筋肉疲労でお休みです」
おチャラけてても疲れる時は疲れるのね。
「それはそうと、フレハルさんのお蔭でパワーアップした親方衆は凄いですよ! ひと掘りの範囲が半端じゃないです」
そんな話聞いたら早速見に行きたくなるじゃないか!
「じゃあ、一度みんなを集めたいから親方衆のいるところへ集まってもらえるよう、みんなに声をかけてもらえる?」
「わかりました」
◇
先頭集団に親方衆を見つけた。
フレアハルトほどとはいかないが、ひと掘りで二、三メートルを掘っている。凄い威力だ。
親方衆が固まって作業をしている。水の国出発前に、四パーティーに分けたけど、この掘削力だからあまり意味が無かったみたいね。多分この方が効率が良かったんだろう。
「おう! アルトラ様、帰ったか! ん? 空飛ぶ子供……?」
「ただいま、この子は――」
親方衆にも簡単に説明。
「また、変わったヤツを見つけてきたな!」
「よろしくナ!」
「それにしても、みんな凄い掘削力に進化しているね!」
「フレハルのお蔭よ!」
「それで、そのフレハルは?」
「この先にいるよ」
親方衆が先頭集団かと思ったら、まだ先にいるのか。
「ドワーフの協力を取り付けてきたから、みんなには一度集まってもらおうかと思う。この辺りに連れて来るから、みんなに集まってもらうよう声をかけてもらえる?」
「わかりましたぜ!」
「私はフレハルに声をかけに行ってくる」
そこから五キロほど先で土を掘ってるフレハル、アリサ、レイアを発見。村ももうすぐそこだ。
「あ、アルトラ様帰って来たよ! お~い!」
「おかえりなさいませ」
レイアとアリサが気付いて出迎えてくれた。
「ただいま」
「アルトラよ、どうだこの成果!」
凄い鼻高々だな……
いや、でも、
「ホント凄いよ! たった三日でほとんど基礎的な部分終わっちゃったんじゃない?」
「あと一日あれば七十キロも達成できるぞ!」
これに関しては、フレアハルトが有能過ぎた!
「さすが王子様ね!」
「もっと褒めてよいぞ?」
「よっ! 日本一!」
「なんだそれは?」
「私の故郷で一番凄い人にかける言葉よ」
「そうか! もっと褒めろ!」
フレアハルトは確実に、おだてに弱く図に乗るタイプだろうな……
「フレハル様は図に乗るので、その辺りでご勘弁を」
「アルトラが我を褒めることなど中々無いのだぞ? もっと褒めさせろ!」
「………………まあ、それは良いとして、ドワーフに協力を取り付けてきたから、一度みんなを集合させたいから来てもらえる?」
「あいわかった、それよりその者は? まだ強さはそれほどではないが、異様な魔力を秘めている、亜人ではないな?」
流石レッドドラゴン・プリンスだ。一目見て亜人じゃないと見抜くとは。
リディアの方もちょっと警戒しているみたいだ。目つきがいつもより鋭い。この二人の睨み合いに効果音を付けるなら「ゴゴゴゴゴゴ…………」って感じね。
フレアハルトにリディアの説明を、リディアにはフレアハルトの説明をして、高位種族であること、両者共に私の仲間であることをきちんと知ってもらう。
◇
「そういうことだからフレハルもリディアも仲良くしてね」
「そういうことなら仲良くすル! よろしくナ!」
「まあお主が連れて来たのだ、悪人ではあるまい」
そう思いたいところだけど……他人の心の内なんてわからないからなぁ……
【ゲート】を開き、親方衆のいるところへ繋げる。
レッドドラゴン三人、リディアと共に親方衆のところへ。
全員集まるのは少しかかりそうかな。
◇
三十分後、この場にいる作業員全員が集まった。
「じゃあ私はドワーフを迎えに行ってくるね」
【ゲート】を開き、今度はドワーフたちがいる場所へ繋げる。




