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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第3章 水の国アクアリヴィア探訪編
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第88話 リディアが海に行って帰って来なかった……?

 水族館近くにあった砂浜にやってきた。


「行ってくル! 変身も解いて良いよナ?」


 私が答える前に走って行ってしまった。

 普通の人間の親子なら、「危ないから遠くまで行っちゃダメよー」なんて言うんだろうけど、リディアは溺れて死ぬ心配が無いから特に止める理由も無い。

 ………………なぜ母親目線のセリフが頭に思い浮かんだのかは謎だけど……

 まあ、納得するまで泳がせておくか。海辺とか沖で遊ぶ程度だろう。

 なんて思っていたけど――


「どこ行くねーーーん!!!」


 視界から消えて海の彼方まで行ってしまった……


「あ、あんなに見えないところまで行ってしまってちゃんと帰ってこれるんでしょうか……?」

「わからない……」


 これ、ちゃんとここに戻ってくるのよね?

 仕方ない、戻ってくるまでしばらく座って待つか。

 リナさんと雑談でもして時間を潰すか。


「お土産なに買ったの?」

「各方面へ配る食べ物とかですね。これなんか良い感じだと思って」


 色んなナマコを模したグミ……色んな果物の味がするらしいけど……ちょっとグロいな。

 特にこの虹色ナマコグミは毒々しい……味は……ミックスフルーツ? 色んな果物入りってことか?

 これは各方面へ配る土産としてどうだろう? 私は……貰ってもあまり嬉しくないな。


   ◇


 二時間経過――


 戻ってくる気配が無い。

 私たちは談笑を続けていたが、そろそろ不安になってきた。

 日が傾き出した。浜辺近くの時計を見ると今は十七時頃。


「ちょっと眠くなってきましたね」

「寝てても良いよ? ベッドでも作ろうか?」

「いや、こんな海岸にベッドなんて出現したら目立ちまくって恥ずかしいですって!」

「あはは、冗談冗談」

「では、ちょっと失礼しますね」


   ◇


 更に三時間が経過――


 もうすでに辺りは真っ暗。

 海だから遠くに電気の明かりが見える。海側を見ると真っ暗闇だ。

 これ、ちゃんと帰ってくるのよね?


 目印になるかわからないけど、光魔法で魔界文字を書いて浮かべておくか。


  アルトラ

   ↓

   ここ


 これなら私がどこにいるか分かるでしょ。

 周りから見たら何のことかわからないだろうけど……

 あ……待てよ……リディアって文字読めるのかしら……陸生生物のトロル村の人々ですら読めなかったのに。海の生物だから読めない可能性は高い気がする……まあ、目印にはなるだろうしそのまま光らせておこう。


「う~ん……うわ!? ここどこ!?」

「あ、目が覚めた?」

「あ、そうか、海岸で寝てたんでした。普段こういったところで寝ることがないので少し取り乱してしまいました……リディアはまだ帰ってきませんか?」

「どこまで行っちゃったんだろう……?」


 海は果てしなく続いてるから、もしかしたら迷って帰って来れないのかも?


   ◇


 更に三時間が経過――


 現在二十三時頃。

 何か……少し人が集まってきている……

 多分、私がさっき浮かべた光の文字の所為(せい)だけど。


「もしかして海に帰っちゃったんですかね?」

「………………わからない……とりあえず日にちが変わるまでは待ってみようかと思う。『ここに帰ってきたけど誰もいませんでした』じゃあ可哀想だし。リナさんは帰ってて良いよ? 【ゲート】で送るよ」

「わかりました、私は先に帰ってご飯とかお風呂とかの支度をお願いしておきます」


 ずっと私に付き合わせるわけにもいかないし、先に帰ってもらった。


   ◇


 更に三時間が経過――


 もう日にちが変わって二時間くらい経つ。時間的には草木も眠る丑三つ時だ。

 さっき周りに集まってきていた人たちは、とっくに帰った。


「………………」


 流石にもうウォルタ邸に帰るか……

 リディアにとっては海の方が生活環境としては正しいのだから戻ってこないのも仕方が無い。

 こんな別れ方になってしまったのはちょっと寂しいけど……

 光魔法を消して腰を上げ、海岸から出ようと歩きだした瞬間――


 バシャッ!!


「アルトラ、ごめン! はしゃぎ過ぎて場所わからなくなっタ!」

「ああ、良かった、心配したよ! じゃあ帰ろうか」


 人型に変身してから、【ゲート】でウォルタ邸に帰る。


   ◇


「ああ、良かった! 戻って来たんですね! あんな別れ方したかと思うと、寂しかったよ~」


 リナさんがリディアに抱き着く。

 私と同じ気持ちだったか、ちょっと涙ぐんでいる。


「いろいろ支度終わってますよ、ご飯にします? お風呂にします?」

「ありがとう、リディアが眠そうだし、先にお風呂いただこうかな」


 磯臭いから寝る前に身体は洗っておいてもらわないと困る。

 とは言え、リディア何だかフラフラしている。海で泳ぎ疲れたのか、私を探し疲れたのか、眠くて仕方ないという感じ。


「ほら、リディア、ちゃんとお風呂入って」


 ご飯は食べなくて良いけど、お風呂は入って! ちゃんと海水洗い流して!! そのままだと部屋に連れて行くわけにはいかないから!

 肩を持って前後に揺するものの――


「はぁイ……」


 ダメだこりゃ……

 仕方ない……無理矢理にでも連れて行くか。


   ◇


 背中におぶってお風呂場にやってきた。

 椅子に座らせようと思ったが、もう座ってすらいられない。ふにゃふにゃの猫のようだ。猫は液体。イカも液体。


「リディア、洗いにくいから服の変身解いて」


 服が消えた。でもそこからはもう全く動かない。

 仕方ないので、お風呂の床に寝かして前面を洗ってから洗い流す。

 ひっくり返して後ろも洗う。髪の毛もちゃんと洗う。

 洗い流して、湯舟に放り込んだ。


 さっき水族館でリナさんに、人型時は肺呼吸って話を聞いたから、この状態のリディアが溺れるのか溺れないのかわからないから、私が身体を洗っている間沈まないように注意を払っておく。

 手早く身体を洗って湯舟に浸かろうとすると、リディアの顔が沈みかけている。

 仕方ない、後ろから抱きかかえるか。

 もう完全に寝てるな……ここまでされるがままされて起きないとは……子供の頃ってみんなこんな感じなのかしら? もう幼い頃なんて記憶の彼方だけど、私も疲れ過ぎた時にはこんな感じだったのかな?


 少し湯舟に浸かった後、両脇を掴んで引きずり上げ、脱衣所へ。

 身体を拭いて、創成魔法で浴衣を作って着せる。もうほぼ寝てるような状態だから自身の変身能力で服を再現することもできそうもない。

 【縮小魔法(ミニマム)】で身体を小さくして、部屋へ連れて行き、昨日と同じ小さいベッドに寝かせた。

 横にさっき水族館で買ったサメの抱き枕を【縮小魔法(ミニマム)】で小さくして置いておく。


「うわっ……噛みついた! ホントに捕食してしまいそうだ……明日ビリビリの残骸になってたりしないでしょうね?」


 リディア、ここまで一歩も歩かなかったな……野生の生物なんだから、もうちょっと警戒心あっても良さそうなものだけど……

 ご飯はもう良いか。あの状態だと食べられるとは思えないし。

 私だけお夜食をいただいた。


「リナさん、遅くまで付き合わせちゃってごめんね」

「いえ、リディアがちゃんと戻って来て良かったですよ、アルトラ様こそ遅い時間までお疲れ様でした」


 もう深夜になっているため、早いお開きとなった。


 明日はトロル村に帰る日か。

 アクアリヴィアに来て三日経つけど、随分濃い三日間だったな。

 逮捕されて拷問受けて、ホテルに入るのにドレスコードが必要で、フォーマルドレス買ってもらって、()ったないスライム倒して、クラーケンのリディアを迎え入れて、ドワーフの協力を取り付けてもらえて、水族館は見たことない生物ばかりで、最後にはリディアが迷子になって、随分濃い三日間だった。


 この三日間のことに思いを馳せてみるが、明日のことを考えて早々に目を閉じた。

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