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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第3章 水の国アクアリヴィア探訪編
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第86話 魔界の水族館は人間界とは全然違った!

 水族館へは九時半ごろ到着。


 入り口でチケットを購入して入園。チケット代は千百ウォル。生前に行った最後の水族館が二千円くらいだったから、日本に比べたら大分安い。

 この辺の仕組みは人間界とそう大して変わらない。

 まあお金出してくれるのはこの国の税金から(アクアリヴィア)なんだけど……


 この分だと中もそれほど変わり映えしないであろうとあまり期待していなかったが、中に入ってみると全くの別物だった。

 色とりどりの魚が泳いでるところは変わらない。とても綺麗だ。人間界にも居そうな魚が沢山泳いでいる。

 しかし、それ以外の展示生物に驚いた。


「馬がいる、水の中に馬が!」

「美味そうな馬だナ!」


 二人ではしゃぐはしゃぐ!

 リディアにとって、アレは捕食対象らしい。


「あれはケルピーっていう、上半身が馬で下半身が魚の生物ですよ」


 人魚ならぬ、馬魚(ばぎょ)ってところか。あれは呼吸器官どうなってるんだろう?


「人魚の呼吸器官ってどうなってるの?」

「二つありますよ。陸にいる時は他の陸生亜人と同じで肺呼吸、水の中にいる間は下半身の側面にあるエラ呼吸」

「へぇ~、そうなんだね」


 子供の頃から、人魚の呼吸事情がどうなってるのか謎だったけど、呼吸器官が二つあればそれも可能なのね。


「水の中にいる間って肺呼吸はどうなってるの?」

「溺れないように停止してますね。なので自分が気付かない状態で突然水の中に居たりすると、肺が機能してしまって人魚でも溺れることがあります」

「人魚でも溺れるの!?」

「例えば、陸で何かに弾き飛ばされて水に落ちて気絶してしまった場合などですね。水に入った瞬間に下半身が魚に変化して自動的にエラ呼吸に切り替わりますが、気絶している状態で水に入った場合、上半身はまだ陸に居るつもりでいるので気絶から覚めた時に肺で呼吸することになります。すると肺呼吸は水の中では機能しないので溺れてしまうわけです」

「へぇ~、上手く出来てるのねぇ」


 あの馬魚(ばぎょ)も同じような構造なのかな?

 「ばぎょ」より「うまざかな」って言った方が分かり易いかな?


「あの馬魚(うまざかな)も陸に上がったら脚が出来るの?」

「出来ますよ。陸で馬車引いてる馬を見ませんでしたか? アクアリヴィアの馬車は大体あのケルピーが担っています。後ろ足を見てみると変身が下手なケルピーはウロコが付いてたりして、人魚状態の片鱗があるものもいますよ。完全に馬に成れるのは少ないので、後ろ脚を見れば馬かケルピーか大体判断できます」


 アレって水陸両用なのか……便利な生物。


「アルトラ様の住んでいる地域では珍しいんですか?」

「いや、あんなの見たことすらないよ……」


 水の中を泳ぐ馬がいるとはね……

 地球にも『シーホース』って名前の生物がいるけど、タツノオトシゴのことだから、全然『(シー)(ホース)』じゃないし……


   ◇


「あ、あれは? タコの足に魚の尾びれ、犬の頭が三つ? ケルベロスみたいだ。それに女の人が上に乗っかってる! なにアレ? あんなのもいるの?」

「あれはスキュラですね」

「あレ、スキュラ違ウ。人の部分が擬態されてるからあれは『スキュラもどき』」


 あ、ホントだ、よく見ると顔に当たる場所に目や口が無い。

 水族館の案内板には、尾びれを使って泳ぎ、タコの触手で捕獲し、犬の頭で捕食する女の上半身のみの魔物と書いてある。

 あ、小さく『(もどき)』って書いてあるわ。


「それにスキュラ、しゃべるから会話できル。リディア、スキュラの友達いるけド、水族館に捕まるほど頭悪くないと思ウ」


 人の姿してるけどヒトに敵対しているのかどうか気になるわね……

 でも、【知性上昇(ミドル・インテ) (中)(リジェンス)】使う前のリディアのあの言語力と会話出来てるのか……かなり知能高いんじゃないかしら? そりゃ本物は捕まらんわ。

 まあ、もしくは同レベルだったから通じてるって可能性もあるけど……


   ◇


「あ、こっちにはサンゴ背負ってるでかいエイみたいなやつがいる」

「それはカリュブディスですね」


 カリュブディスって水の中の生物なのか……

 名前からじゃ判断できんから陸の生物かと思ってた……


「何でこの水槽カリュブディスしかいないんだろう?」


 水槽の中は、このエイ以外何も無い、何もいない。

 真っ青で水に満たされた空間。


「何か寂しい水槽だな……まだ整備してる最中?」


 その直後に飼育員が魚を大量に投入した。


「あれは今度新しく入った魚なのかな?」

「いえ、あれはですね――」


 その直後に、『コオオォォッ!』という音を立てながら水槽内の大量の魚含め、全ての水がカリュブディスに吸い込まれた。


「何これ何これ!?」

「一日に三回水槽の水ごと石やらサンゴやらを全部吸い込んでしまうので、ここを海と同じような環境にしておくと壊れたものばかりになってしまうんですよ。土があると水も土が舞い散って濁ってしまいます。だから餌となる魚くらいしかここには入れられないわけですね」


 今度は飲み込んだ水を全て吐き出した。

 自分の吐き出した水で大渦ができ、カリュブディスが水流でグルグル回る。


「吐き出す時の水圧で水槽にヒビが入ったから強化アクリルに変えられたって話も聞いたことがあります」

「何でこんなことするの?」

「さあ? そういう生態としか……捕食のために辺り一帯の水を一度飲み込むらしいですよ。カリュブディスの成体がいる海域はよく船や水棲の亜人が遭難するらしくて、駆除対象になってます」


 これ捕獲するの、物凄く大変だったんじゃないかしら?


「凄いヤツがいるんだナ……」


 イカの王であるリディアが認めるほど凄いヤツか……


   ◇


 次に見た水槽は…………幻想生物は何もいない? どこにいるのかしら?


 水槽内を見回す。

 水槽内にはうず高く山のように積まれた岩棚やサンゴとかがあるくらい。

 小さい魚たちが泳いでいるのは見える。ここは日本の水族館と大して変わらない展示なのかな?

 ここまで幻想生物が沢山いたから期待し過ぎかしら?

 と思っていたら――

 奥にいる山から巨大な黒い顔がヌッと出てきた。


「何か出てきたゾ!」

「あれは海坊主って言うんですよ」


 なるほど坊主だ。真っ黒くて目しか見えないが、顔があの大きさってことは、あの下はどんなでかい体があるのかしら?

 あ、ちょうど動く。

 山から出てきた顔から下は――


「何も無いやんけ……」


 どうやらでっかい顔だけで全身らしい。だから海坊主って身体部分の目撃情報が無かったのね。


   ◇


「あ、リディア、クラーケンいるよ」

「どこどコ? ………………これクラーケン違ウ。ただの大王イカ」


 これが? リディアより大きい気がするけど……脚まで含めて十五から十八メートルくらいかな。


「大きさならリディアよりちょっと大きいんじゃない?」

「大王イカこれが成体。リディアはまだ幼体」


 大きさだけで考えても桁違いの大きさってことなのね……

 リディアが水槽に張り付いて目つき鋭く大王イカを凝視し始めた。

 心なしか水槽内の大王イカが萎縮してるように見えるんだけど……

 人型に変身しててもやっぱりイカの最上位種に睨まれてるから恐いのかな?


   ◇


 かなり奥まで行ったところで巨大な水槽がある場所に出た。


「なんじゃありゃ! でっかい!」

「凄い凄イ! あんなでっかいノ、パピー以外初めてダ! でも美味しそうなところは無いナ」

「ホント凄いですね!」


 そこにいたのは、クジラ……の骨。

 多分五十メートルくらいはあると思う。こんな巨大な生物を飼育してるのが凄いが、それにも増してそれを入れる巨大水槽が作られていることに驚きだ。

 どうやって捕獲したかも気になるところだけど……

 水槽内には骨のクジラ以外にも沢山の生物が泳いでいる。他の魚はちゃんと肉が付いてるから、あのクジラだけ一種異様だ……


「この水槽一体周囲何キロメートルあるのかしら?」


 水族館の案内板によると『骨鯨』という名前らしい。そのままね。

 見た目はどう見てもアンデッド……どうやって生きてるのかしら?

 案内板の続きを読む。

 えーとなになに?


┌───────────────────────────────────┐


 消化器官は無く、骨に付着したプランクトンを直接取り込んで捕食する。

 排泄することはなく骨内部に堆積し、時日を経るほど骨太になっていく。死の間際は身体の隙間がほぼ骨で塞がれ、さながら白い鯨に見える。

 酸素を取り込む肺も無く、生存機能の全てを骨が担っている。頭蓋骨内部に脳が、骨内部に血流が存在する。

 他の小さい生物が隠れ家として、骨組みの中に逃げ込んだりすることがある。


└───────────────────────────────────┘


 か。

 生殖関係は……卵で産まれる? 鯨は哺乳類なのに? 子供を胎内で育てる機能が無いから、卵を選んだって感じかな?

 一応生きてるのねアレ……死ぬ間際に (見た目上は)完成される生態か。物凄い特殊な進化をした事例かしら?


 ここで幻想生物を沢山見てきて思ったことがある。

 魔界(ここ)に住むようになって半年くらい経つけど、ここって「魔界魔界」って言われるけど、「“魔” (邪悪)の住む世“界”」って言うより「“魔”法が成り立つ幻想世“界”」って感じよね。

 魔人にはあまり会ったことがないし、私の周りは比較的良い人が多いし。邪悪な人ばかりが住む世界に転生したわけじゃなくて幸いだったわ。

 そんなことを考えていると――


「そろそろお昼時ですが、レストランエリアへ行ってみましょうか?」

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