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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第3章 水の国アクアリヴィア探訪編
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第81話 魔界に来て初めて日本人の痕跡を見つけた!

「あ、アルトラ様おかえり」


 ゲート出現地点の近くにいた子供達が挨拶してくれる。


「ただいま」

「今日はみんなまだ帰って来てないよ」


 川掘削組は、まだ掘削作業してくれてるみたいね。


「その人はだーれ?」

「この村の大事なお客様よ」

「では潤いの木とやらに案内してもらおうか」

「ここがそうですよ」

「なに? どこに?」


 潤いの木を指し示す。


「これが潤いの木? 本当に水を吹き出している……こんなに大量に吹き出しているのに、なぜ枯れないんだ……? それになぜここから広がらない? この木はこの辺りで発見されたのか!? なんて珍しい木なんだ!」

「いえ、私が作ったんですけど……」

「…………は? すまん、百五十年生きてると耳が遠くなったのかもしれない、何と言ったのかもう一度頼む」

「私が作りました」

「どうやって!? お前さん何者なんだ!?」

「そういう物が作れる特殊な生態をしています」

「信じられん……」

「ちなみに最近アクアリヴィアに出現したと思いますけど、空に浮かぶ太陽を作ったのも私です」

「アレもお前さんが!? 凄いな!! あれのお蔭で明るくなって生活しやすくなったぞ! そんなことまで出来るんなら、川だってワシに頼まなくても良いんじゃないのか?」

「いえ、残念ですけど、構造がちゃんとわかってないものを作っても寿命が短いんです。そこの水を吹き出す潤いの木や疑似太陽は『魔法』という不思議な言葉で片付けられるので大丈夫なんですけど、家とか機械みたいな、そこに理由があって部品が組み込まれているようなもの……例えば歯車と歯車が合致して動く、というように動くために理由があるものは、細部までイメージしにくく、構造も理解できてないので、私では作れないんです。仮に作れたとしても動かないか、すぐ壊れるかのどちらかになると思います」

「なるほど、便利な能力なのにそんな弱点が」

「私が作った家を見てみるとわかると思います」


 ゼロ距離ドアで我が家へ移動。


「このドアは? これもお前さんのお手製か?」

「はい、空間魔法を応用した距離を縮めるドアです」

「凄いな、ドワーフのワシですら作れない物が多い……空間魔法が付与された魔道具なんて初めて見た……」


 我が家に着いて、家の外壁を見る。


「これは作ってどれくらい経つ?」

「半年くらいです」

「半年でここまでボロボロなのか……自重(じじゅう)で家が(ひず)んでヒビが入ってきているな。確かにさっき言ってたことに説得力がある。木で補強をしているが、あまり良い状態とは言えない、数年か……早ければ来年には崩れそうだ」


 隣の犬小屋をチラリと見る。


「あっちのでかい家もあんたが作ったのか? あっちもあまり良い状態ではないな」


 それはまずいな……私の方はともかく、犬小屋が潰れたらケルベロスが圧死するかもしれない。

 いや、あの巨体なら家が崩れたくらいなら大丈夫か。

 でも、あとで建て直しておこう。


「ドワーフの技術が必要という意味がわかっていただけましたか?」

「ああ、そうらしいな」

「では、アクアリヴィアに戻りましょう」


 ここでちょっとした疑問に思ったことを聞いてみる。


「………………ところで、ドワーフってどれくらい生きるんですか?」


 ヘパイトスさんが言う『百五十年生きてる』ってところがどうしても引っかかった。百五十年生きてなおこんなに筋骨隆々ってところが。


「何だ突然!? 平均二百五十歳ってところだろう。長いと三百歳くらいまで生きる者もいるが」


 単純計算で人間の三倍くらいってとこかな。

 昔から感じていた疑問をいとも簡単に答えてくれた。


   ◇


 アクアリヴィアのドワーフ商会の応接室へ戻った。


「あ、アルトラ様おかえりなさい」

「アルトラおかえリ~」


 帰って来たらリディアがにこにこ顔でお茶菓子を食べていた。

 きっと「飽きた」とせがまれた末の苦肉の策なんだろう。お茶菓子で大人しくさせたってとこかな?


 再び相談の席に座る。


「お前さんの言ってたことは本当だった。潤いの木なんてものが存在してるのは驚きだ。しかしなぁ……資材も必要だし、七十キロメートルというのは……」

「資材は全部こちらで用意しますから!」

「いくらかかると思ってるんだ! 七十キロなんて国家規模のプロジェクトだぞ!?」


 それもそうか……個人で七十キロ川を引っ張ろうなんて人、聞いたことないしな……私、そんな大きいことに手を出してたのね……

 でもここで引き下がるわけにはいかない! こっちもこれ如何(いかん)によっては集落の生き死にに関わる!


「それでも私なら可能です!」


 なるべくなら、資材の採掘までを村の人にお願いしたかったところだけど、別の国の人を巻き込むからには、今回は魔法を使わざるを得ないだろう。

 土でも金属でも何でもござれだ! どんな資材も道具も、私が作り出してやろうではないか! MP:十五万は伊達じゃないぞ!

 魔法で作った資材については、【亜空間収納ポケット】でどこかから運んできた(てい)を装おう!


「随分な自信だな、根拠のある自信なのか、無謀なだけなのか……」


 と、その時――


「ただいま! ヤポーニャ姉ちゃん!」

「おかえり、ヒノモトくん」


 ん? 何か聞き馴染みのある言葉が……

 この商会の子かな? ここに帰ってきたみたいだ。


「あ、お客様? こんにちは! あれ? お姉ちゃんたち!?」

「あ、キミは昨日の?」

「ドワーフ商会の子だったんですね」


 この子、昨日地下水路で助けた五人の子供達の一人だ。人間に近い見た目だと思ってた種族の子だ。ドワーフだったのか。 (第72話から第73話参照)


「お? 知り合いか?」

「おじいちゃん、このヒトたちだよ! 昨日俺たちを助けてくれたの! あの時はありがとう!」

「あんたが!? 孫を助けてくれた『お姉ちゃん』が目の前に居たとは……孫と大して変わらない年じゃないのか?」

「あ、いえ、これでも二十七歳です」


「「二十七!?」」


「その見た目で!?」

「二十七歳って私より年上ですか!? 年下だとばかり思ってました……」


 ヘパイトスさんに驚かれるのはまだしも、隣でリナさんが驚いている……

 まあ、どう精一杯上に見ても十五歳くらいだしな……


「ちょっと特殊な事情がありまして、こんな見た目をしてますが……」

「そうか、あんたの言うことならそんな突拍子もないことも信じずにはいられない。孫の命を救ってもらったんじゃ、こちらも何とか助けないわけにはいかない! あんたがいなけりゃ孫はもうここにいなかったかもしれないしな! 資材は用意できるんだよな?」

「じゃあ!」

「ああ! ワシはもう第一線を退いた身だから、ワシが行って川作りを指導してやるよ!」

「ありがとうございます! あ、でも工事に使う機械については、私では作れないから……」

「一瞬で運べるんだろ? ワシが持ってるものを使うから心配するな!」

「金額はどれくらいになるのでしょうか?」

「資材は用意してくれるんだろ? 格安で請け負ってやるよ! なんせ孫の命の恩人だからな! それにあんたたちの村はまだ極貧なんだろ? それも考慮して金は調達出来た時の後払いで良い」

「ありがとうございます!」


 やった! アドバイスどころか、わざわざ訪れて直々に指導してもらえることになるとは!


 何気なく事務所の壁に視線を移すと――

 一つの絵に目が留まった。

 よく見ると絵とは思えないほど精巧に描かれている。

 写真にしか見えないな……モデルも耳が尖ってないし人間に見える。

 もしかして、以前アリサさんが言ってた異世界への穴に巻き込まれた日本人? それにしては若い気がするけど……


「あの、あの方はどなたですか?」

「ああ、あれは二十年くらい前に亡くなった俺の妻だ。短命な種族でな、五十ちょっとまで生きたが、病気でな……」

「すみません」

「いや、もう二十年も経ってるしな、構わんよ」

「あの女性、もしかしてアキラさんという方ですか?」

「あんたまさかアキラの知り合いなのか!?」

「いえ、面識はありませんが、同郷の人物かも、ということで以前別の人から話を聞いていたので」

「まさか異世界人のアキラと同郷の人物がここを訪れることになるとはな、長く生きてると何があるかわからないものだな。それを聞いたら、ますますあんたたちのプロジェクトに参加したくなった!」


 ん? 二十年前ってことは今生きてれば七十歳そこそこ? ヘパイトスさんが百五十年生きてるって言ってたから……年齢差七、八十歳!? 凄い年齢差婚だな……

 さっき、ドワーフって三百年くらい生きるって聞いたから、当時の年齢を単純に三分の一にして人間の年齢相当で考えると四十三歳くらいかな?

 年齢的に釣り合ってると言えば釣り合ってる……のか? 逆に少し年下くらいになるのか。うわぁ複雑……


「じゃあ、あの受付してくれた女性は?」

「あれはワシの娘だ。妻の世界のどこかの言葉で『日本』って意味があるらしい」


 語感からするとロシア圏とかかな?

 二十年前に五十歳ちょっとで亡くなってるって言うから、三十歳くらいで産んだと仮定したら四十歳くらい?

 かなり若く見えるな。ドワーフって地球のイメージでは老けてるイメージだけど……ハーフだからなのか、女性だからなのか。

 色々物語を見てきたけど、女性のドワーフって中々お目にかかったことないし。

 昔プレイしたゲームの中に登場するドワーフから話を聞いた時に「彼女はいるの? お髭は立派?」ってセリフを言われた時は、「このゲームのドワーフの女性は立派な髭が生えるのか!?」と驚愕したことがあったけど……

 ドワーフの女性が居ることが示唆されたのは、私が見てきた物語の中ではそのゲームくらいだったな。

 寿命が人間の三倍くらいだから、ヤポーニャさんを人間換算すると大体十三から十四歳? そりゃ若く見えるわけだわ。


 さっき『ヒノモト』って聞こえた気がするけど……


「お孫さんの名前は?」

「『ヒノモト』と言う。それも以前妻から聞いていた日本の別称から名付けたんだ」


 ちょっと待てよ? ヒノモトくん、さっきヤポーニャ姉ちゃんって呼んでたから……


「ヤポーニャさんの上にお兄さんかお姉さんがいるんですか?」

「息子で『ニーホン』と言うよ」


 それはほぼそのままだな。長子だから故郷の『日本』って名を付けたかったのかな?


 アリサさんに聞いていた人間が、まさか本当に水の国にいるとは……

 出来れば生きている間にお会いしてみたかったけど。


   ◇


 契約書を取り交わし、契約完了。

 国家規模のプロジェクトとは思えないほど安い金額で請け負ってもらえた。

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