表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第2章 トロル集落の生活改善編
64/560

第62話 川の掘削開始! しかしその工事日数が……

「あ、戻って来た!」

「アルトラ様! ご無事ですか!」

「うん、話をつけて帰ってもらったよ」


 正直に言っても、ややこしくなるだけだろうからそういう(てい)にしておく。


「あんな巨大な生物をどうやって……」

「物理的に話をつけた」

「つまり力で追い払ったってことですか?」


 ザワザワし出す。


「また来たら私が追い返すから火山へ行きましょう」

「ほ、本当に大丈夫なんですか?」

「私がこうして五体満足で戻って来たのがその証拠でしょ?」

「た、たしかに……」

「また来たら追い払ってくださいよ?」

「大丈夫、ちゃんと追い払うから」


 多少強引にだが話を戻す。

 再び火山の(ふもと)へ移動。

 作業員の一人がフレアハルトたちに気付いた。


「あのヒトたちはここ数日うちの村に来ているお客人ですよね?」

「そう、彼らも手伝ってくれるって言うから労働力としてカウントしてくれて良いよ。あと怪物関連も彼らを頼ってくれて良い、私同様追い返すくらいの強さがあるから」


 まあ、その怪物本人なんだけど……


 みんなを一ヶ所に集合させる。


「えー、みんなにやってもらいたいのはここから集落までの掘削作業です! あの二つの杭の間隔で掘り進めてください」


 河川敷のことまで考えて、杭の間隔 (川幅)は大体五十メートルくらいに設定した。河川敷二十メートル、川本体が三十メートルくらいの割合。土手も十メートル間隔くらい欲しいかな。

 ちょっと大きい気もするけど、ここから支流とか作るとなると、こんな感じなんじゃないかなと思う。

 潤いの木バージョン2は枝打ちで水量調節できるようにする予定だし、集落まで五十キロある。これくらいあれば氾濫や水没などが起こっても、対処には十分な距離だろう。


「どっちの方向に進めば良いんだい?」

「ここから見えると思いますが、百メートルくらい先に次の杭を埋めてあります」

「おー! アレか!」

「俺には遠すぎて見えないな……」


 やっぱり百メートルだと見えない人もいるか。


「あそこまで掘ったら、次はまた百メートル先に杭があります」

「道具は何の道具を使うんですか?」

「こちらで用意しました」


 昨日せっせと作ったシャベルやスコップ、金属製のハンマー、セリ矢、つるはしも必要かと思って作った。あと掘削の際に出る土砂を運ぶ一輪車を複数台。

 この道具全部、恐らく全員が見たことないものだと思うけど、以前から度々「私が突然都合の良いアイテムを出してきても『そういうものだ』って解釈してもらえると助かる」と言っているため、どうやって取り揃えたかは、みんなあまり気にしていない様子だ。

 しかし、道具には興味あるようで、みんな集まって見始めた。


 出来ることならショベルカーとか大型の重機を取り揃えたいところだけど、私は機械類の構造が理解出来てないから作れない。作ったところで、動かないか、ちょっと動かしたら壊れるかのどちらかだろう。要はゴミが増えるだけってこと。 

 それに……作ったところでこの中に免許持ってる人がいないから、動かせる人いないしな……まあ、地球じゃないし免許は要らんか。


「はい! 何でそんな(かしこ)まった話し方してるんですか?」


 あれホントだ、人数多い所為かな? 日本人的な癖が抜けない。


「ゴホン、多分癖だと思います。他に質問は無い?」

「掘った土はどうするんですか?」

「川の両横に積んでいって。外から見て二メートルくらいの高さがある土手にしようと思う」

「深さはどれくらい掘れば良いんですか?」


 川ってどれくらい深いんだろう? う~ん……


「三メートルくらいかな? とりあえず三から四メートルでお願い」


 まあ川幅三十メートル、水深五メートルで、七十キロの長さがあればそうそう氾濫も無いだろう。潤いの木の枝打ち調整でダムのような機能もさせられると思うし。


「では、みなさん、そういう感じでよろしくお願いします」


 川を作る計画が本格的にスタートした。

 スコップやシャベルも使ったことないだろうし。本格的な穴掘りは、多分初めてなのだろう。みんな試行錯誤して掘り進めている。


 ガチンッ!


「ん? 硬いな、石が出てきた」


 一メートル以上はありそうな大きい石。普通は砕いて取り除くものだけど、さてどうする?


「周りを掘って取り出すか」


 どれくらい埋まってるかわからない石の周りを掘るのか。中には表から見えてないだけで五メートルとか十メートルとかある石もあるのに……


「砕いてパーツごとに分ければ取り出しやすいよ」


 私も土木に詳しいわけではないが、わからないなりにちょっとした助言。


「そうですね! じゃあ……ハンマーとこのセリ矢(トゲのようなもの)を使って砕きましょう」


 砕いてみれば二メートルくらいある石だった。屈強でも魔力強化の無い普通の亜人では到底持ち上げられない重さだ。


「こっちの土硬ってぇな……」

「それはつるはしを使って、土を柔らかくしてから掘るのよ」


   ◇


 開始から三時間ほどが経った。


 フレアハルトは岩のようなものが出てきた時に火のスキルを活かして、壊しながら掘り進めている。

 豪快組と馬が合うようだ。

 アリサとレイアは集まってもらった志願者の中で、たった二人の女性ということもあってか周りからチヤホヤされている。

 あれ? 私は? 私は女性じゃないのかしら? 誰かチヤホヤして。


 塩作り三兄弟は、黙々と掘り進めている。

 掘り進める役、石や岩が出てきたら壊す役、土や石や岩を運び出す役の三つを見事なコンビネーションで、()つローテーションで進めている。流石肉体派だ。


 その弟のナナトスとカンナーはもう既にぐったりしている。彼らは細身の見た目通りあまり体力が無さそうだ。

 しかし、私が見た彼ら種族の体質を考えると、塩作り三兄弟は最初はガリガリの体型だったのに四日後に会った時にはもうムッキムキのマッチョだった。

 この二人も明日か明後日辺りにはきっとムッキムキのマッチョになっていることだろう。


 さて、そろそろ正午になる。

 ご飯にでもするか。

 お昼ご飯はハンバームちゃんに頼んでおいた。いつもハンバームちゃん頼みでホントありがたい!

 とは言え毎日々々筆頭料理人の彼女にお願いするわけにはいかないから、今後は別のヒトにも頼まなければならない。


 フレハルが凄く上機嫌。

 アイツもしかしてこれを見越してた?

 以前アリサの前でおバカ呼ばわりした時に「実は頭が良い」みたいなことを濁しながら話されたけど、ホントに見通してたのかも?


 お昼ご飯も終わったところで午後の作業を開始。


   ◇


 午前に比べれば、かなりやり慣れてきているとは思うけど……やっぱり土木作業自体が初めての人が多いためか、ペースは午前の三分の二ほどの速度に失速。疲れも出てきている。

 私も経験者じゃないから勝手がわからないしなぁ……

 三時間ほど経った後、早めに切り上げることにした。


「みんな今日はありがとう! 今日のところはここで終了とします。体調が悪いヒトはゆっくり休んでください」


 みんなを集落まで送り届け、私は我が家へ帰った。


 みんなには内緒にしているけど、私なら土魔法でドーンとやれば、その後の整地は大変だと思うけど五回くらいで五十キロ掘れると思う。けどやらない。

 こうやってみんなで作ってもらう過程や実績が大事だと考えるからだ。


 しかし――

 今日出来たところは五十メートルほど。進みは遅いと言わざるを得ない。

 まあ初日だから仕方がない。さて、明日は何人来てくれるかな?

 ん? ちょっと待ってよ? 五十メートルしか進んでないってことはもしこのまま行くと……


    七十キロ (合流予定の川までの距離)

  ÷ 五十メートル (一日で掘り進んだ距離)

  = 千四百日 (工事にかかる日数)


 千四百日!?

 この工事、掘るだけで四年かかるの!?

 それはちょっと長すぎる……どうにか十分の一の工期に短縮したい。

 さっき「土魔法でドーンはやらない」って思ったばかりだけど、もう既にドーンってやりたい衝動に駆られている……が、何とか我慢して押し留める。

 となると、これはやっぱり彼女(レヴィアタン)に頼るしかないかな。何とかドワーフにコネを取り付けたい。

 思い立ったら早い方が良い、明日水の国へ出張しよう!


 この中には土木は別として、まだ日数は短いながら家を作ってた経験のある人がいる。彼らをリーダーに据えてこの現場を取り仕切ってもらい、私は水の国でドワーフに話を付ける。

 三人ほどリーダーを決めて、私の考えを伝えてその計画で掘り進めておいてもらおう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ