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第4話 光のドレスの失敗と闇のドレスの創成

 さっきまで着ていた死装束(しにしょうぞく)が無かった。

 そこに見えたのは全く見覚えの無い貧相な身体。

 自分の記憶の中にある身体とは違うため、気が付くのに数秒の時間を要した。


「キャッ!」


 気付いた瞬間に反射的にしゃがみ込む。


「裸!? 何で!? あっ! さっきケルベロスの火炎放射喰らった時に服は燃えちゃったのか。身体は頑丈だけど、服まで頑丈ってわけじゃなかったのね……」


 燃え残っている部分もあるけど煤けて脆くなっているから、このまま活動するとボロボロ崩れて朽ちていきそうだ。


「とは言え、ここには人居ないし、いるのはそこに寝っ転がってる犬だけだし、まあいっか」


 再び仁王立ちに戻る。

 それより私の胸どこいった?


「この身体に転生した時にどこかに置き忘れてきたのか……」


 などと冗談も言えるので、今は特段の緊急事態というわけではないだろう。

 しかし、このまま裸に近い格好でいるわけにはいかないし……困ったな……


 ……

 …………

 ………………


「そうだ! 魔法で服を作れないかな?」


 試しに自分の身体に沿って、服を作るイメージで魔力を集結してみた。

 魔力が身体に付着し、徐々に服の形を成していく。


「わぁ、綺麗~、キラキラの服だ!」


 一応出来た。

 スケスケの光のドレスが!

 しかも隠そうとする場所に魔力を多めに集めたから、胸と股間の三ヶ所だけより輝いて逆に卑猥に見える!

 何だこの面白衣装は!

 というか、まぶし過ぎて目を開けてられない!


「これはダメだ……」


 一度服を消す。

 今ので確信した。

 さっきの【つるかめ波】の時に光の魔力が放出された。そして今、服を作った時には光のドレスが出来た。

 これらを考慮すると、私は『光の魔法』が得意である可能性が高い。

 しかし、この身体には悪魔のような特徴が見える。ということは、闇も使える可能性が高いのではないか?


 今度は試しに闇で服を作るイメージをしてみた。

 身体の表面に沿って黒い服が構成されていき、最終的にドレスが出来上がった。


「やったぁ! 成功だ!」


 肩回りは自由に動かせるように肌を露出、足先とかかとは地面を踏みしめられるように裸足にした。

 ここまでのトロル、狼、ケルベロスとの戦いで、物理的な攻撃も炎も効かない身体だと分かった。

 どうせガラス踏んでも、溶岩踏んでも痛くも痒くも熱くもないだろう。

 気になるのはこの闇で作った服、魔力で作ったためか何だか常にゆらゆら揺れている。触ってみると布のような感触は無く、ドライアイスに手を突っ込むごとく貫通する。

 ここに服が実在しているわけではないし、これはもう仕方ないか。魔力で服を構成出来たってだけでも上々だ。

 ただ、しゃがんでみると、地面にぶつかったところが折り畳まれるため、気体のように見えても少しだけ物理的な影響は受けるようだ。


 黒一色だから味気ない。色を付けたいところだけど、他の属性を使ってもさっきの光と同じように燃えたり凍ったりしそうだしな……何とかイメージした属性から色だけ抽出するコントロールが出来るようになれば良いんだけど……

 それは後々試してみるとしよう。


「まっ、しばらくはこの服装で行こう!」


 服が出来たら、身体の臭いを嗅いでみる。


「悪臭はしなくなったかな。さっきの炎で唾液の滅菌消毒はされたっぽい」


 ただ……その代わりに死装束が燃えた所為(せい)か、ちょっと焦げ臭い。


「……何か気分的に嫌な感じだから、身体を洗い流したいよね……私、水魔法も使えるのかな?」


 試しに水魔法を使ってみよう。

 水をイメージして魔力を集める。とりあえず自分に影響がないように、前方に向けてさざ波をイメージしてみた。


 ザパーー


「おお! ほぼイメージ通り! じゃあ、水浴びしていこっと♪」


 ついでに水だまりを作ろう。土魔法を使い、岩をイメージして大理石の風呂釜をイメージした。

 これで流れる水が留まってくれるはず。

 丸っきり外だと、誰もいないとは言え、心許(こころもと)ないので、壁を建てて小屋くらいの大きさの風呂場のような空間も作った。

 一度闇で作った服を消して裸になる。

 水の玉を作って上空に飛ばす。水の玉から小さい滝を流すイメージを込めた。

 すると身体の汚れを落とすにはちょうど良い水量の滝が出来た。


 ザパー


「はぁ……気持ち良い……」


 思えば魔界に落ちて、トロルに棍棒でタコ殴りにされて(ほこり)まみれ、ケルベロスに口の中で転がされて唾液まみれ、炎を浴びせかけられて(すす)まみれ。汚れることばかりされている。

 自分で水作れる能力持ってて良かったわ。

 何だか勝手に湯が沸いてくれるし。でも湯気が凄く多い気がする……まあ、今は身体流せればどうでも良いか。


「お風呂も作ったし、ついでに湯舟にも浸かろうかな」


 ここまでに私が使った魔法は、光、闇、火、水、土、風。

 こんなに色々出来るなんて、凄いぞ私!

 この身体で魔界に来れたのは、罰じゃなくてむしろご褒美なんじゃないかしら?


「神様も何か目的があって、こうされたのかな……この状況……もうここで生活するより他は無さそう……」


 落ち着いて湯舟に浸かっていると、しばらくしたら風呂の底から泡が出てきた。


「ん? 何これジャグジー?」


 そんな高度な機能付けた覚えは無いけど、泡が物凄く出てくる。半端なく出てくる! おまけに湯気が凄い!

 まあ、気持ち良いし別に良いか。湯舟に浸かっている所為(せい)か物思いに(ふけ)る。

 今日はここに小屋でも作って寝るか……

 身体は大丈夫なんだけど、いろいろあり過ぎて心が疲れた……

 そういえば、RPGとかって魔法使うのにMPが必要だけど、この世界にMPという概念はあるのかしら? 私のMPってどうなってるの? 寝れば全快するのかな?

 もしそういう概念があるなら、戦闘中にMP切れなんて起こさないように、MPの量くらいは把握しておきたい。


 今日の最後の作業として、ベッドと布団とパジャマを作る。

 が、なぜか全部一瞬で燃えて灰になって飛んで行ってしまった。


「何これ!? 何で燃えちゃったの!?」


 ま、まさかここが地獄だから日用品とか作れないようにできてるのか?

 訳が分からない……

 『娯楽は許しませんよ』ってこと?


 もう一度だけ試してみよう。

 気を取り直して今度は燃えないようなイメージを込めてベッドと布団とパジャマを作ってみた。

 今度はきちんと燃えずに残る。


「ああ、燃えないイメージを組み込むのが必要なのか。………………何でだ?」


 寝床は無事手に入れられたものの、再び訳が分からないという思考に……

 そしてもう一つの疑問が。普通に魔法で寝具を作り出せたけど、これって何属性に属する魔法なのかな? これなら普通に布製の服を作り出せるかも。


「………………いや、燃えないイメージを組み込めば大丈夫なのか? でもいくら燃えないイメージを組み込んだとて限界はあるはず。ケルベロスの炎にも耐えられるのか? また燃やされてしまうことだってあり得るんじゃないのか? そもそも何で何もしてないのに布団やパジャマは燃えた?」


 分からないことが多過ぎる。

 現時点ではケルベロスの炎に耐えられるかどうか分からない布を(まと)うより、燃えることのない闇の魔力を(まと)うのが正解なのかもしれない。


 そして、今後ここで生活することを考えると、やっぱり快適に生活できるようにしたい。

 こんな何も無いところからは引っ越して、もっと快適に生活できるところを探そう! ここは草木一本生えてないようなところだけど、魔界にだってきっともっと良いところがあるはずだ!

 まあ、いいや今日のところは寝よ!

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