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第566話 おとぎ話『黒き邪神の物語』 その1

【キャラ名の変更について】

 都合により氷の魔王『サタナエル』の名前を変更することとなりました。

 今まで海外の方々に配慮して『サタン』と書かず『サタナエル』としていましたが、本作品については特に問題無さそうなので本来の名前である『サタン』に変更したいと思います。

  (配慮した理由について詳しくは『ミスター・サタンの海外での名前』で検索)


 今回エピソードに『サタナエル』と書かれているにもかかわらず、アルトラが無反応になっていますが、

  堕天前の天使⇒『サタナエル』

  七つの大罪⇒『サタン』

 と、元々サタンであったとして、読んでいただけると幸いです。

 過去エピソードは順次『サタン』表記に変更していきますので、よろしくお願い致しますm(__)m

 この文章は頃合いを見て削除します。

 時折、図書館に足を運んで本を借るのだが、今日は気になる本が目に入った。


「『黒き邪神の物語』?」


 邪神か……ありふれたテーマだがなぜか強く惹かれるものがある。


┌───────────────────────────────────┐


 それは太古の昔の物語

 魔黒界を支配している邪神を倒すため 異世界より七人の聖戦士が派兵される


「では七人の聖戦士よ、頼んだぞ! 必ず邪神を倒してくれ!」


 邪神は聖戦士たちの住む世界・神聖界をも侵食しようとしていたため

 それを食い止めるため 突出した力を持つ聖戦士を送り込もうとしているのだ


「我らにお任せを! 必ず邪神を倒してご覧に入れます!」


 聖戦士の一人・ルシフェルが その決意を口にする


 そして彼らは神聖界の平和をも脅かす邪神を倒すべく 

 魔黒界へと旅立った――


└───────────────────────────────────┘


 異世界から邪神を倒すために乗り込む話か。

 どうやら主人公は『ルシフェル』という名前らしい。

 『ルシフェル』って確か……『ルシファー』が堕天する前の天使の時の名前だったと思うが……

 この物語の主人公は偶然 (?)にも火の国魔王ルシファーの堕天する前と同じ名前なのね。

 物語には他に六人の聖戦士が出て来る。


 近年は、何も知らない主人公が与えられた力で無双する話が多いから新鮮に感じるわ。

 まあ……私も『|何も知らない主人公が与えられた力で無双する《そっち》側』なんだけど……


 そして読み進め……クライマックス。


┌───────────────────────────────────┐


「トドメだ!!」

「ぐわぁぁぁっ!! だ、だが神である私は死なぬぞ!」


 邪神を弱らせトドメを刺そうとするも 殺すことができない


「かくなる上は……私たちの神聖力を使って邪神を封じよう!」


 七人の聖戦士は 邪神を中心に七芒星を形作り 自らの身体を楔として

 封印の魔法を発動する


「おのれ神聖界めぇぇ!! 復活した時を見ておれよ! 必ず復讐してやる!

 この宇宙の全てを破壊し尽くしてやる!!」


 黒き邪神は地獄の奥底へと押し込められ ここに封印は成功した

 しかし邪神を倒しはしたものの 七人の聖戦士は

 その場から忽然と消えてしまった!

 その後 彼らの行方を知る者は誰もいない……


 七人はどこへ行ってしまったのだろうか?

 異世界より召喚されたため 元の世界へと帰ったのか

 それは誰にも分からない


└───────────────────────────────────┘


 疑問の残る最後だな……煮え切らないと言うか、未消化と言うか……

 何のことは無い、ありふれたファンタジーの世界観だ。

 だが……やはり何か強く惹かれる。


「著者は……?」


 本を裏返して著者の名を確認しようとしたところ――


「あ! ここで会うのは珍しいですね。その本、気になったんですか?」


 ――調べものをしに来ていたフリアマギアさんとバッタリ。


「え? ええ、まあ……」

「その本は、この魔界で英雄譚として最も有名な原典の写本を現代語に翻訳したものです」

「『原典』の『写本』? 翻訳されたのは写本なんですか? そういうのって普通原典を翻訳するものなんじゃ……?」

「ああ、その本の原典の出自が少々特殊でして、原典を写本にしてから現代語に翻訳されたんです」


 何かややこしいな……どういう理由でそうなっただろう?


「神聖界より遣わされた七人の聖戦士が魔黒界の邪神を打ち倒すおとぎ話です。忠義の騎士『ルシフェル』という白い翼の生えた聖戦士が主人公のお話ですよ」


 日本で言うところの『桃太郎』のようなポジションの本だろうか?


「ええ、短かったので今完読しました。主人公は天使なんですか?」

「その言及は無いですね。頭上の輪っかの表現も出てきませんし。ただ、そのキャラクターの特徴から容姿が似ているとヘルヘヴン族には特に人気がある本です」

「なるほど、特徴はホワイト・ヘルヘヴンのそのままの容姿ですしね」


 しかし、主人公の名前が『ルシフェル』ってのが気になるんだよなぁ……

 フリアマギアさんは『ルシフェル』と『ルシファー』の関係性を知らないんだろうか?

 地球ではかなり有名な話なんだけど……


「この■■■■■って、■■■■■が■■する■■■■ですよね?」


 何が起こったか分からず、二人共一瞬静止。


「え?」

「え?」


 ……

 …………

 ………………


 何だ今の……? 声が消えた……?

 あまりの違和感に、質問した私自身までもが思わず聞き返してしまった……

 今私は『このルシフェルって、ルシファーが堕天する前の名前ですよね?』と言おうと……いや、言ったのだが……


「アルトラ殿、今……何か言いましたか?」

「い、いえ……」


 フリアマギアさんから少し離れ、もう一度声に出してみる。


「ルシフェル、ルシファー」


 あれ? 普通に発声できてる……

 まさか……誰かに話そうとするとかき消されるのか?

 約定魔法の一つだろうか? もしかして『ルシファー』と『ルシフェル』の関連性を説明しようとすると消されてしまうのかもしれない。


 この本には他に六人の聖戦士が登場する。

 名前は

  寛容の騎士『サタナエル』

  節制の騎士『バアル・ゼブル』

  勤勉の騎士『バアル・ペオル』

  貞節の騎士『アスモエル』

  慈愛の女騎士『ロタン』

  救恤(きゅうじゅつ)の騎士『マモエル』


 ほとんどは知らない名前だが、『バアル・ゼブル』は聞き覚えがある。確かベルゼビュートが堕天する前の前身の名前だ。

 ってことは……他の五人も七つの大罪のいずれかの堕天する前の名前って可能性が高い。

 ルシフェル、ルシファーは発声できなかったから、他が発声できるかどうか試してみよう。


「フリアマギアさん、■■■■■■■って■■■■■■■の■■なのは■■■■■か?」

「え?」


 また消された!

 今私は『バアル・ゼブルってベルゼビュートの前身なのは知ってますか?』と発声したはずだった!

 やはり確定だ! 誰かに話そうとすると声が消される!


「さ、さっきから何か言ってるようですが…………言ってますよね? 何言ってるか聞き取れないんで、もう少しハッキリお願いします」

「…………ああ、はい……ちょっと喉の調子がおかしいようで、大丈夫です」


 これってやっぱり約定(やくじょう)魔法だろうか?

 もし約定(やくじょう)魔法だとしたら、恐ろしく広範囲に影響が及んでいるってことになる。もしかしたら……冥球全体?


 この現象で考え得るのは……名前を知られることによって力を持ち得る……とか?

 ファンタジーではよくある設定だ。本来の名前を知らされることによって、その者に封印されていた力が解放されるとかそういうやつ。

 もしかしたら、七つの大罪たちの本来の名前が本人に知られたら力を取り戻される可能性があって、それをされると困る人物が居るということだろうか?

 この魔界に魔王以上に力を持つ者が居る? そいつにとって都合が悪いから名前が隠蔽されている?


 ………………いや、これだとベルゼビュートである私が『バアル・ゼブル』を知っているからそういうわけではなさそうだ……もしかしたら沢山のヒトに知られると力を持つとか? だから発声させられないようにしている?


 だが、要は二つの名前を関連付けなければ良いだけの話だ。


「フリアマギアさん、ルシフェルってご存じですか?」

「…………今、『黒き邪神の物語』について説明しませんでしたっけ?」


 『何聞いてたんだこのヒト、有名な英雄譚って説明したじゃん!』って顔で見られた……


「そうじゃなくて、この本とは別のルシフェルって知ってますか?」

「いえ、知りませんが……私の知っているのはこの物語の一人だけですね。何か気になったことでも?」

「いえ……」


 『ルシファー』と『ルシフェル』、ここまで名前が似ているのに、あの鋭いフリアマギアさんが全く関連付けて考えないのを考えると、そこに到達できないように認識ごと歪められているのかもしれない。

 私はたまたま『ルシファー=ルシフェル』の有名な説が知られている地球から来たから認識できているのだろう。


 じゃあ、この本を書いたのは誰だ?

 裏を見ると『原典:ルシェール・ピュアドラゴン・アーサルド』、『編纂・現代語翻訳:クジロカノン・エルフ・ブックマン』の文字。


「ルシェール……」


 何だかルシフェルに似たような名前だが……関係あるのだろうか?


「フリアマギアさん、この『ルシェール・ピュアドラゴン・アーサルド』って誰のことか知ってますか?」

「確か……初代の火の魔王ルシファーの元々の名前だったかと。ですので、その本は初代ルシファーが書いたとされています」

「初代って……魔王がこの世界に現れたのは一万年前なんですよね? その頃に紙なんて存在してないはずでは……?」


 地球には、神や天使や悪魔が色んな物や事象を人間に教えたという伝承が残っていたりする。例えば火はプロメーテウスという神が人類に伝えたとされる。

 ところが『紙』については、これらの超存在によって伝えられた記録が記されていない。

 『紙』は近代になって中国で発明されたものだし、それを伝えた悪魔 (魔界での魔人)なんていなかったはず……つまり紙の発明は悪魔より人間の方が早かった可能性が高い。

 紙以前は、木を平らに切った木簡(もっかん)というものを使っていた。それより前になると石やら石板、壁画として刻み付けて残されている。

 故に一万年も前だと魔界にだって紙は無いはずなのだ。


「仰る通り、原典とされているものは木簡(もっかん)木墨(もくぼく)で書かれたもので、現在はバラけて各地の博物館などに展示されているので、そちらへ足を運んでみれば見られると思いますよ。中にはちょこっと欠けてたりする部分もありますが、相当堅い木に書かれているようで大部分は無事に残っていますから。そこに載ってる『ブックマン』という名前がありますよね? その方が各地で発掘して編纂したそうです」

「発掘された?」

「はい、各地で発掘された原典である木簡(もっかん)が写本にされ、それを更に現代語翻訳されたのがこのおとぎ話なんです」


 ああ、つまり――


 『バラバラの木簡』 ⇒編纂⇒ 『写本』 ⇒翻訳⇒ 『現代語版』


 ――ってわけか。


「だから“原典の翻訳”でなく、“写本の翻訳”なんですね」

「そういうことです」


 だから『少々特殊』って言ってたのね。

 元々バラバラの状態で見つかってるから、それを一度まとめて写本にしてるわけか。ややこしいはずだ。


「この『ブックマン』ってヒト、エルフみたいですけど、フリアマギアさんは会ったことがあるんですか?」

「いえいえ! ありませんよ! 私が生まれる随分前にエルフヴィレッジを出て冒険家になったヒトですから。年齢を考えるともう存命でない可能性の方が高いです。何せうちのじい様より年上ですから」

「じい様?」

「アルトラ殿も会ったことがあると思います。エルフヴィレッジのシルヴァンです」 (第461話参照)

「え!? フリアマギアさんって族長さんの孫なんですか!?」

「そうですよ。まあ、じい様と折り合いが悪いんで集落自体に寄り付かないんですけどね。あのじじい、私が集落に居た頃は何か作る度に文句言って来るんですよ! 『また機械なんぞ作りおって……』ってね。なのでもう五十年くらいはほとんど帰省してません」

「そ、そうなんですか」


 まさか出生がエルフのお姫様だったとは……

 フリアマギアさんは生粋の都市(シティー)エルフだと思ってたわ……

 五十年ほとんど帰省しないってのも……人間目線で見ると凄く長い時間だわ。五十年帰らないって言うと下手したら親死んでるし。

【裏話】

 余談ですが、聖書に『アスモエル』、『マモエル』は登場しません。本小説で創作した名前です。

 また、『サタナエル』も聖書には登場しておらず、どこかで創作されたものだそうです。

 あと、『ロタン』は天使ではありませんが、レヴィアタンの前身ってことで、本小説では無理矢理天使になってもらいました。


 次回は9月26日の投稿を予定しています。

  第567話【おとぎ話『黒き邪神の物語』 その2】

 次話は来週の金曜日投稿予定です。投稿時間は二十一時付近までのいずれかの時間になります。

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