表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
574/583

第564話 学校教育始動とフレアハルトからの打診 その1

 年の瀬も迫る十二月のある日の朝、アルトラ邸にて――


「アルトラ様、役所よりウィンダルシア様から用があるということで登庁してほしいとの連絡を受けています」

「今日?」

「はい」

「何時?」

「十三時です」


   ◇


 町はクリスマスムード一色。

 町中の街路樹はクリスマス仕様に飾り付けられている。

 去年とは違い、様々な物が手に入るようになってきたため、去年企画して根付かせようとしたクリスマスの風習が一気に広まった。

 去年は私がサンタの格好してプレゼントを配ったが、今年はどうやら本物のサンタが来てくれるらしい。


 そして、今回はそれらにも増して、去年と違うところがある。

 それはこの町で一番大きい公園。

 巨大なモミの木が立っている。正確にはモォミの木と言うらしいが。


「お~! 上手い具合に派手に飾り付けてくれたわ!」


 フレデリックさんにお願いしてモォミの木の苗を取り寄せ、それを成長促進魔法で大きくしたのが、この公園のモォミの木である。

 クリスマス仕様に飾り付けてくれており、夜にはイルミネーションが光る仕様。日本の冬の景色に達するのもすぐかもね。


 おっと、暢気に眺めてる場合ではない。役所に急がないと。


   ◇


 指定の時間通りに登庁すると、ウィンダルシアが既に受付付近で待っていた。

 私も時間通りに来たはずなのに……流石時間厳守の鬼……


「お待たせ、私に用があるって?」

「はい、以前頼まれていた教師の派遣の件ですが、四人が要請に応じてくれました」

「ホントに!? 一気に四人も!? 凄い!」


 嬉しい誤算だ! せいぜい一人来てくれるかどうかって考えてたから。

 四人なら、各クラスに一人の先生を配置できることになる!

 副担任として頭の良いトロル族を置いて先生の何たるかを学んでもらえば、もし彼らが帰ってしまった場合でも学校運営が可能になる!

 現時点で想定しているクラス分けは、『七歳から九歳』の低学年クラス、『十歳から十二歳』の高学年クラス、『十三歳から十五歳』の中学生クラスの三クラス。

 四人なら一人余るから、そのヒトには校長先生 (代理?)をやってもらおう。そのヒトにもトロル族を付けて校長の仕事も学んでもらって。


「はい。それで学校の運営はいつから開始されるのでしょうか?」

「う~ん……年明けて、四月から運営できればと考えてるんだけど……」


 日本が四月始まりだから、私の感覚で開始するには四月がちょうど良い。


「では準備もあると思いますので、二月にはこちらに来てもらうよう要請しておきます」

「了解。話付けてくれてありがとう。先生方が到着した時にもう一回呼び出してもらえるかしら?」

「分かりました」


 よし! これでこの町の学力レベルもワンランク上げられる。

 …………まあ、町の運営は既に立派にできているわけだから、生活することを主眼で考えるなら学校は無くても良いかもしれない。

 けど、それでも学校で学べる知識は修得しておいて損は無い。


 現在この町の子供たちはほとんどがその日を気ままに生きている状態で、ほぼ遊びでその日を終える。

 学校という機関が出来れば、引き締まりの時間が出来て、生活にメリハリも生まれるというものだ。

 まあ……中には勉強を嫌がる子も出て来るだろうが……それが学びというものだ。


 リディアやネッココも学校に通ってきちんと学んでもらおう。

 遊びまくりの日々もおさらばだ。


   ◇


 また別の日――


 開校のことを聞きつけたフレアハルトからレッドドラゴンの幼竜も入学させたいとの打診があった。


「学校とやらが出来たそうだな」

「ああ、この間の強盗団騒動で待ち伏せの準備をした時に町のヒトを避難させた建物があるでしょ? あれが学校だよ」

「ほう、そうだったのか。それで……その学校とやらに入れたい者が一人おるのだが構わぬか?」


 フレアハルトがこの相談を持ち掛けるってことはレッドドラゴンの子供かしら? 御山を離れて暮らさせるのだろうか? それとも親同伴で移り住んで来るのかしら?

 いや、そもそもレッドドラゴンの家族形態が分からないが、あそこに集団で住んでるってことは巣立ったりするわけではなさそうなんだが……やっぱり親から離して生活させる可能性が高い?


「学校にってことは子供の竜なんだよね? 暴れん坊じゃないでしょうね?」

「そこは心配いらぬ。多分我より礼儀正しい。我の思想に共感したのか、外の世界に興味を持ったようだ」

「フレアハルトより礼儀正しいなら多分大丈夫かな、一応学校に入れて問題無さそうかどうか判断したいから、一度連れて来て」


 まあ対面するとなると、親も連れて来るだろうからその時に判断するか。


 ただ……小学校に通う子供の方が礼儀正しいってのは、それで良いのかフレアハルト……?

 一桁歳と二百二十三歳なのに……


   ◇


 その打診から数日経った別の日――


 今日入学させたい子を連れて来るそうだが……

 フレアハルトの連れてくる子って言うと、親戚の子とかかしら?


 役所でも判断してもらうため、役所の会議室に呼び出す手筈。

 とは言え、この町での学校関係者はまだ私と内検に同行したリーヴァントしかいないため、同席するのは必然的に私とリーヴァントになってしまう。


「で、何であなたたちまで居るの?」


 それと、なぜか役所の受付のマリリアとエリスリーンの二人も会議室に居るのだが……


「ドラゴンの子供って見てみたいじゃないですか!」

「私たち大人のドラゴンしか見たことないですし」


 確かにここに来たことがあるのは大人ばかりだったしな。

 フレアハルトの葬式やった時には子供のような見た目の子は居なかった。 (第496話参照)

 一族総出の葬儀だと思っていたが、子供を連れて来てる者は一人も居なかったのだ。寒さに強くなってもきっとまだ警戒感があるのだろう。

 考えられることは、例えば『寒さに強くなる前は幼竜は死にやすかった』とかかな?

 ただ……私は寒さに強くした時に赤龍峰で見ているが、見た目なんてトロル族の肌の色をペールオレンジにしただけで、子供のドラゴンも大人と大して変わらんと思うけど……


「受付は大丈夫なの?」

「ジャンケンに負けたイザベリーズが、愚痴言いながら座ってますよ」


 マリリアが苦笑いしながらそう答えた。


「受付を押し付けて来たってこと? 大丈夫? お客さんは捌けるの?」

「いつもこの時間は暇してるので」

「とは言え、この時間に訪れるヒトもいますし、一人くらいは残さないといけないのでイザベリーズを」

「良いの? リーヴァント?」

「ええまあ、この時間は受付カウンターから見えるところでお茶したりしてますけど、特に苦情とかあるわけではないので問題無いかと」


 日本なら多分クレーム来るよう光景なんだろうな……でも、これくらいおおらかな方がのどかで良いかもしれない。

 最近は小さいことで突っつき過ぎな気がするし。そんなことで目くじら立てるなよってことが何と多いことか……

 そういえば、リーヴァントの代理やった時も、受付からバッチリ見えてるところでお茶出してくれたっけ。 (第149話参照)


「う~ん……まあ短時間だし良っか」


 “ドラゴンの子供”ってだけでも何だか価値がありそうだし。見てみたいのは分かる。


 程なくして……会議室のドアが開かれた。


 ガチャ


「アルトラ、リーヴァント、集まってもらって悪いな、待たせた。…………で、お主らは何で居るのだ? 受付は良いのか?」


 と、マリリアとエリスリーンに問う。思ってることは私と同じだ。


「私たちもフレハルさんの連れて来るって言う子を見に!」


 ニンマリという笑顔を向ける二人。


「まあ……見てもらうのは多い方が良いかもな。入学させたいのはこの者だ!」


 フレアハルトの後ろにくっついてドアに入って来た女の子。

 初めて見る亜人だらけのためか、フレアハルトの後ろに隠れて中々出てこない。

 レッドドラゴンにしては随分と奥ゆかしい……

 その姿は、幼女にツノとドラゴンの尻尾が生えたような姿。


「ほら、きちんとご挨拶しなさい」


 フレアハルトに背中を押されて、ようやく前に出て来た。

 その後も何度もフレアハルトの顔を見返し、ようやくこちらを向く。


「……は……はじめまちてアルトラしゃま、みなしゃま……ロ、ロミネルというます! よろちくおねがいちます!」


 勢いを付けてお辞儀した。

 その直後、二人の受付嬢から黄色い声が飛ぶ。


「「 か……可愛い~~~~!! 」」


 私も可愛いとは思ったが、二人の黄色い圧に気圧されて出遅れた……

 年齢はリディアより少し下くらいの年かな?


「お~、よくできたなぁ、えらいぞ~」

「やめてぇぇぇ」


 厳しい顔をしていると思っていたフレアハルトが突然豹変!

 ロミネルちゃんの頬に顔を押し付けてスリスリ殊更に褒めそやすフレアハルト。

 新たな一面を垣間見た気がする……


 でも本人嫌がってるじゃないか……

 それにしても誰の子なんだ? 溺愛し過ぎじゃないか?

 コイツは独り身のはずだから、可能性があるのは…………弟のフレイムハルトさんの子とか?


「ハッ! ゴホン……すまんな、まだ生まれてからそう経っておらんから言葉がしっかりしておらぬ。人型にも最近なれるようになったばかりで、まだツノと尻尾は隠すことができんようだ。入学する頃には言葉もしっかえりしてくるとは思うが……」


 なるほど、竜人形態(この見た目)はそういうわけか。でも翼は隠せてるみたいだ。

 ツノは私にも付いてるからまだしも、尻尾は大分目立つな……尻尾に感情が現れているのか固く縮こまっている。かなり緊張しているっぽい。

 『蝶よ花よ』と大事に育てられてるのかもしれない。『蝶』も『花』も火山内部(あそこ)には存在せんけど……

 今回はドラゴンの幼女登場。

 果たしてこの子はどこの子なのか?


 次回は9月12日の投稿を予定しています。

  第565話【学校教育始動とフレアハルトからの打診 その2】

 次話は来週の金曜日投稿予定です。投稿時間は二十一時付近までのいずれかの時間になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ