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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第19章 土の国ヒュプノベルフェ探訪・アルトラの解呪編
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第563話 解呪の効果と狛狐

「楽しい旅行だったッス!」

「有意義な護衛任務であったぞ」

「二人共お疲れ様」


 【亜空間収納ポケット】から二人の買ったお土産を取り出して渡し、二人は帰路へ着いた。


「タナカさんも今回色々と手を回していただいたようで、ありがとうございました」

「いえいえ、有意義な旅でした。では私も失礼致します」


 同じく亜空間に入れてあったお土産を渡すと、土の国の大使館の方へ向かって歩いて行った。


「それじゃあ、私も帰りますね! リディアちゃんにネッココちゃん、今日は楽しかったですよ!」

「おお! またナ!」

『気を付けて帰りなさいよ!』

「じゃあこれ、現地で買ったお土産」

「預かっていただきありがとうございます」


 リナさんはニッコリ笑ってお土産を受け取り、彼女も帰宅。


「じゃあカイベル、二人と先に帰ってもらえる?」

「はい」

「アルトラはフィンツと何か用事があるのカ?」

『何なのかしらね!?』

「まあ、ちょっと秘密のお話をね……」


 ゴルゼン家を助けたこと自体を秘密にしなきゃならんから、二人にここに居られるのもまずい。


「じゃあ先に帰ってるナ!」


 そして話はフィンツさんへ。


「あの後、フィリアちゃんへの呪いの再発動はありませんでしたか?」

「ああ! 綺麗さっぱり消えたようだ! 一日経った後には食欲も出てきてな、俺が持っていた土産も少量だが食えるようになったよ!」


 やはり呪いの根源を消したから、再発動もしなくなったってことか。ゴルゼン家の今後の憂いは無くなったと考えて良さそうだ。


「今回のことは本当に、ほんっと~~~に! 助かった! これからも何かあったら存分に頼ってくれ!」

「ありがとうございます! じゃあ今後も存分に頼らせていただきますね!」


 フィンツさんとも別れ、私も我が家へと帰った。


   ◇


 リディアとネッココが寝静まった後、アルトラの部屋――


「さて、カイベル、私の解除したかった呪い染みたスキルのことだけど……どうなの?」

「はい、正直に申し上げます」


 は? 文頭に『正直に』って付く前置きって……残念な結果のヤツなんじゃね?


「『蘇生耐性Lv10』は綺麗さっぱり消えたようです。しかし……『冥獄(めいごく)(かせ)』については消えていません」

「何で!?」


 むしろそっちを消すのが主目的(メイン)だったのに!


「これは、やはり魔界から出られたら都合が悪い方がいらっしゃるようで、ヒトの造った魔道具程度では消せないようになっているようですね。恐らく『光魔法Lv11』以上が必要なのではないかと」

「ヒトが造った魔道具程度ではって……じゃあLv12が存在してるってことなの? Lv11ですら持ってるヒトがごく少数なのに、Lv12なんて持ってるヒトが、この魔界に存在するの?」

「少々お待ちください」


 また一点を見つめて停止した。多分今検索中なのだろう。


「………………結果が出ました。魔界には存在しないようです」

「そんな……じゃあ地球に墓参りに行くことはできないってことなの……?」

「作成者ご本人なら消せるかと思いますが……」

「じゃあ作成者って誰?」

「禁則事項に抵触します」


 いつものヤツか……作成者って誰なのよ!

 きっと神々の誰かなんだろうけど……


 結局のところ『冥獄(めいごく)(かせ)』を消すことはできなかったものの、『蘇生耐性Lv10』が消えたことにより、万が一心肺停止しても蘇生してもらうことが可能になったようだ。

 元々死ににくい身体ではあったが、それでも今までに二回死に瀕する状況に遭遇している。

 『蘇生してもらえるようになった』という一件だけ考えても、解呪に行った価値は十分にあるというものだろう。


「ところでさ、脱走亡者扱いの私って、心肺停止からどれくらい経ったら『死』と判断されるの?」

「『死』と判断されるのは心肺停止からきっかり二十四時間後です。脱走亡者であった場合、この時点で魂は消滅します。消滅前に運よく死神に拾っていただければ、再度地獄で罪の清算ができます。もっとも……脱走の罪が加算されますので、その分罪が重くなると考えられます。更に脱走している間の善行悪行も考慮されると考えられます」


 私の場合はどうなんだろうな……脱走してるわけではないから。

 それ以前に、地獄に行くような罪も犯してないのだが……


「魂の行方は分かったけど、遺体はどうなるの?」

「ハエなどの虫やバクテリアに分解されるまでその場に残り続けます」


 なるほど、そこは現世と同じか。

 話を聞く限りは心肺停止、即魂消滅ってわけではなさそうだ。

 それを聞いてちょっと安心。蘇生の猶予はあるってわけだね。


 さて、問題は『冥獄(めいごく)(かせ)』か……

 これは一体どこの誰が私に取り付けたんだろうか……? そしてどうやって解除すれば良いのやら……


   ◇


 次の日――


 フレアハルトに同行をお願いし、タマモに貰った狛狐を神社の境内に設置しに行った。


「この辺で良いかな?」


 境内の鳥居の少し前方辺りに狛狐を置くための台座を物質魔法で創り出した。


「その上に置くのか?」

「そうそう。そのまま地面に置いてあると背が低過ぎるし、守護者って感じがしないでしょ?」

「まあな」


 【亜空間収納ポケット】から狛狐を取り出す。


「じゃあフレアハルト、設置をお願い」

「了解した」


 上手い具合に台座に設置。

 …………できたものの……

 本来、狛犬は二体一対で守護獣とするはずが、タマモに貰った狛狐は一つしかないため違和感を禁じ得ない。


「やっぱり一体だけだと収まりが悪いな……」

「これは本来二体あるものなのか?」

「話したことないのによく二体って分かったね」

「一体ではどう考えても違和感しか無い。参道を挟んで二体が出迎えてるような図式なのではないか?」

「そうそう、そんな感じ。本来の神社には狛犬っていうのがあってね、雄雌二体が一対で設置されてるのが普通なのよ。片側に一体しか置いてないなんてのは見たこともないし、違和感しかないわ……」


 二体居ないと護ってる感じがしないし、『ようこそ』って感じもしない。


「もう片方には私が似たようなのを創るか」


 と言う訳で、物質魔法で台座と狛狐をもう一体創り出す。


「これで良し! 見栄えするようになった!」


 設置し終えると、少し離れたところで設置の様子を見ていた神主のシンヌイが訊ねてきた。 (第207話の神主さんと同じヒトです)


「それでアルトラ様、これは何ですか?」

「狛狐って言ってね。神様の使いなんだ」

「ほほう、そのような意味があるのですね。どこから頂いて来たのですか?」

「この町の防衛に関して協力者を得たんだよ。実はこれには仕掛けがあって――」


 タマモから聞いている『町に有事があった際に駆け付けてくれる』ということを話しておいた。


「なるほど、もし有事があったらこれにアルトレリアの危機をお伝えすれば良いのですね?」

「詳細まではそのヒトとの約束で言えないんだけど、そんなところ。もしもの時はお願い」


 片方にしか通信される効果が無いのでは、シンヌイが間違えてしまう可能性もある。

 そこで、タマモの狛狐に備わっているという通信効果を、今私が創り出した狛狐に創成魔法でリンクさせた。これでどちらに触れてもタマモにSOSを送れる。


「………………」

「どうした? 首を傾げて不思議そうな顔をして」

「何か不都合があるのですか?」

「SOSに応じてくれるって言ってたけど、相手に伝わったかどうかこちらが知る術が無いなと思ってね」

「試してみたら良いのではないか? 魔力を流して『テストテストどうぞ?』とでも言ってみれば何か返答があるかもしれぬぞ?」

「じゃあ……」


 狛狐に触れ、魔力を流しながら――


「え~……通信テスト……伝わってますでしょうか? どうぞ」


 ――と呟いてみる……

 すると石像の目が眩しいほどに光った。


「「「 おぉ!? 」」」


 と思ったらすぐに光が消えた。

 何だコレ……?


「この後何もならんのか?」

「こ、これで先方に伝わったのでしょうか?」

「わ、分からない……石像から返事でも聞こえて来れば通信できてるって分かるんだけど……これだと私たち側から見ればただ目が光っただけだわ。ちゃんと向こうに報せることができたのかしら?」


 本人が居ないから分からないが、一応狛狐は魔力を流すことにより目が光るという反応を示すらしい……ホントに何だよコレ……もうちょっと伝わったことが分かり易い返事にしてくれよ……


「ま、まあ本人に会った時にでも確認しておくわ。この方法で間違ってたらもう一度ここへ知らせに来るから」


 問題は、いつ本人に会えるか分からないってところだが……

 土の国で捕まってしまって脱出できてるかどうかも分からんし、分解転移でどこへでも行けるって言うから、探すだけでも骨が折れそうだ……


「分かりました」


 シンヌイは納得して社務所に引っ込んで行った。


「仕事はもう終わりか?」

「うん、報酬は振り込んでおくよ。ありがと」

「ああ、この後トーリョに呼ばれてるからもう行く。ではな」


 フレアハルトはこの後別の仕事があるそうで、すぐに別れる。

 さて、私は私で日課のパトロールだ!


   ◇


 商店街をパトロールしていると見知った顔が茶屋で団子食べてるところに遭遇。


「あ、無事だったのね! でも何でここに居るの?」

「なぜって遊びに来ただけじゃが? この国のメシは美味いから度々こうして食べに来ておるのよ」


 そこに居たのは、今まさに話題にしていた霊獣旅団の頭目タマモ・ゴルゼンだった。

 どうやら捕まった後、無事脱走できたらしい。

 ちょうど良いところに来てくれたわ!


狛狐(ワシからの礼)は神社に設置したようじゃな」

「つい今しがた設置し終わったところだよ。試しに魔力流してみたけど伝わったかしら?」

「『通信テスト』と聞こえて来た。呼び出しに応じようかと思うたが、『テスト』と言っておるしと思い、行くのはやめた」

「伝わったかどうかそれと分かる反応が欲しいんだけど……」

「目が光るようにしてあったと思うが……」


 や、やっぱりあれが返事だったのか……あれじゃタマモにちゃんと伝わったかどうか分からんて……


「な、なるほど、まあ良いわ。じゃあこれでSOSに応じてくれるんでしょ?」

「有事があった時にな。その時は今回発揮できなかったワシの真の能力をお見せしよう。…………ま、何事も無いのが一番なんじゃがな」


 ホントそう……

 火の国から何のちょっかいも無いのが少々不気味だが……このまま何も無ければそれが良い。


 それはそれとして、寺院で捕まった後のことも聞いておくか。


「あの時捕まったのに、すぐに脱走できたのね」

「造作もない。顔写真を撮られたが、捕まる前に顔も変えてあったから今後も捕まえられんじゃろう」

「そのまま捕まったままになるかと心配したよ」

「国家元首が盗賊を心配して良いのか?」

「まあ、私あなたに嫌なこと一切されてないしね。子孫に対するあなたの真摯な態度を信用するよ」


 こうして、タマモの脱走も無事 (?)確認でき、私の解呪目的が縁で始まった、解呪刀からゴルゼン家の呪いを巡る一連の騒動は一応終了した。

 私の『冥獄(めいごく)(かせ)』以外はね……

 今回で第19章が終了です。

 次章はアルトレリアの発展の章になると思います。


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 次回は9月5日の投稿を予定しています。

  第564話

 ちょっとどのエピソードにするか決めかねているので、次回投稿をお待ちください。

 次話は来週の金曜日投稿予定です。投稿時間は二十一時付近までのいずれかの時間になります。

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