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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第19章 土の国ヒュプノベルフェ探訪・アルトラの解呪編
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第560話 ネッココの食べるものはひと際異質……

 色々見てみて、無難なものと、冒険するものをそれぞれ取り揃えて、席へ戻る。


「あ、みんな早いね。カイベルとネッココは?」

「今しがた席を立ちました」


 と、リナさん。

 みんなの取って来たものを見ると性格が出ると言うか何と言うか……


 リディアは魚……ではなく、スイーツばかり。

 イカのくせに魚を食べずに、我が家でも甘いものばかり好んで食べる。


「リディア、今ご飯の時間だよ?」

「たまには良いだロ? こんな時でなきゃ食べられないスイーツ沢山あったゾ?」

「魚好きだったじゃない」

「陸に上がってからもう飽きてたことに気付いタ。今は肉の方がまだマシ。――」


 最近はそういう理由で魚食べなくなってたのか……既に飽きてたのね……

 海では選択肢が無かったけど、陸に上がってみたら魚以外のものを沢山発見してしまったってところか。


「――でも今日は甘い物だけでお腹を満たしたイ。魚も肉も野菜もうちでも食べられるし良いだロ?」

「仕方ないわね。旅行先だし大目に見るか」


 …………まあ、今日くらいは、ね。


 フレアハルトは肉系を中心に山盛り。

 焼肉、ステーキ、ハンバーグはもちろんのこと、ローストビーフ、ローストチキンっぽいもの、ターキーのような鳥の丸焼きっぽいもの、ハム、ソーセージなど、大量の肉料理を取り分けて来ている。


「うわぁ……あんたコレ、油まみれじゃない……」

「たまには良いだロ?」


 何でそんな口調なんだ? リディアのマネみたいなことして……


「たまにじゃないでしょ…………で、野菜は?」

「要らぬ!」


 苦言を呈する二人が居ないから自由だな……


「でも今日は肉だけでお腹を満たしたイ」

「あんたそれ、さっきからリディアのマネ? そんな口調で誤魔化してもダメよ。あなたいつだって肉ばっかりじゃない。それに――」


 『肉だけで』と言いつつ、甘い物もしっかり取って来てるし……


「――肉だけじゃないじゃん……」


 要は『好きな物だけ食べたい』ってわけだ。


「ここの肉料理は豊富だ! 今日の我は何人(なんぴと)にも文句を言わせぬ!」


 あの二人が居ないと聞きそうもないな……

 一度取り分けた物は、返すわけにもいかないしね……


 ナナトスが取り分けて来たものは冒険心が強いと言うか無謀と言うか……見ためで危険そうに見えるものが多い。皿の一部は真っ赤っか、多分激辛系の食べ物。他の部分にはサソリっぽいもの、魚の肝っぽいもの、見るからに毒々しいキノコが見える。あと、何かの菜っ葉ものを和えたもの。

 あんなに辛い物取り分けて……後悔しなきゃ良いが……


「ナナトスそれって……サソリ? そんなものまで置いてあったの?」

「樹の国で食べた時に美味かったもんで……毒はちゃんと取ってあるそうッスよ」

「そっちの魚の肝っぽいのは?」

「レオフグって魚の肝らしいッス。ピリっとした痛みを味わえるとか」


 それ大丈夫なのか? ホテルの食事なんだから死ぬような毒は無いと思うけど……


「そっちのキノコは?」

「ドクナシドクアリタケって言うピリっとする痛みが味わえるキノコだそうッス」


 毒無しなのか毒有りなのかどっちだ?

 弱めの毒ってことか?


「菜っ葉の和え物はなに?」

「ニガガガって葉っぱらしいッス。すっげぇ苦いとか」


 名前聞くだけで苦そうだわ……


「誰から説明聞いたの?」

「え? 料理の前に書いてあったッスけど……」


 私が取った料理に名前なんか無かったけど……

 あ、ちょっと注意するような食べ物だから、注意事項を含めて名札を置いてあったってことかしら?


「あと……その真っ赤なヤツ、多分激辛だけど大丈夫?」

「こういうのを現地で食べるのが醍醐味なんスよ」


 まあ……辛いと自覚してるなら良いか。

 それにしても、辛い物だったり、苦い物だったり、毒だったり、よくもまあこんな冒険心が出て来るもんだ。普通は食べるものくらいストレス無く食べたいものだけど……

 ただ、彼はいつもこの後結構な確率で後悔してるような気はする……


 リナさんは野菜多めで魚介類が多い。水の国出身だから魚介類を好むのかも?


「リナさんは青背の魚とか海藻とか多くて健康的だね。野菜とか果物も多いし」

「肉より魚が多いお国柄でしたからね」

「フレアハルトはリナさんを見習いなさいよ、この野菜の量を! 理想的よ?」

「我はこれで良いのだ! 身体にも問題無いしな!」


 タナカさんは……日本でスタンダードなものが多いな。かつ丼とラーメンと寿司と……

 ビュッフェにこんなのまで置いてあるんだな……と言うか……


「…………何かいつもより量多くないですか……?」


 同郷のため、この人とはたまに一緒に食事したりする。 (第521話で少しだけ触れています)

 普段こんなに食べてる記憶は無いのだが……


「私、実は大食いなんですよ。今日のところは食べ放題ですから、食べておかないと損かなと」

「そ、そうなんですか」


 みんなの取り分けたものを見ているとカイベルとネッココが帰って来た。

 ネッココが手に持っているのは中身が何かは分からないがドリンク二つ。

 カイベルは、私が好きなものばかりを片手のトレイに持っている。後で私が食べることを想定してくれているみたいだ。

 しかし、驚いたのはカイベルがもう片方の脇に抱えて持って来たもの。土の入った袋のようなものを抱えて来たが……


「…………それ土なんじゃないの? 何でそんなの持ってるの?」

『あそこよ! あの暖簾の向こう側に置いてあったわ!』


 ネッココが指さした方向を見ると、別のコーナーが設けられている。

 暖簾で隠されているが、あの向こうにも料理があるらしい。


「何アレ? あの向こうってどうなってるの? カイベル」

「このホテルに訪れるのは亜人だけとは限りませんので、その方たちも食べられるようにし切っているようですね」

「つまりあっちは普通の食材じゃないってこと?」

「はい。主に鳥人や爬虫類系の亜人、木の精霊の方々がお召し上がりになるものですね。食べ慣れない亜人の方々からすると、どうしても食材として見られないものも多いので……」


 なるほど、つまり“私たちが食べない種類”の料理ってわけね。

 想像するに、虫とか土とかの料理が置いてあるわけか……


「で、その土をどうするの? まさかテーブルの上に置かないよね?」


 ホテルのテーブルを土だらけにするのは流石にマズイ。


『流石にそんなところ置かないわよ! 上るのも大変だし!』


 そりゃそうか。いくら植物だからって、土を食べるわけじゃないしな。


『じゃあカイベル! ここに置いて!』

「はい」


 私たちが座っているテーブルの椅子の近くに置いた。


『それで私がこの中に埋まるのよ! この土って魔力潤沢の良い土だからきっと私には心地良いわ! 足から栄養を摂るのよ! 『ヒュプノベルフェ産良質な土の魔素含有魔力土』ってブランドで有名らしいわ!』

「へ、へぇ~……そ、そうなんだ」


 良質だって言うなら、アルトレリアの畑に撒いたら今よりもっと美味しい作物になるかしら?


「じゃあネッココは土の中でご飯食べるわけね?」

『そうなの! ここでご飯も食べるのよ!』


 これって、私のイメージでは寝ながらご飯食べてるようなイメージなのよね……

 ネッココって寝る時以外に土の中に居るの見たことないから。ちょっと行儀の良い行為ではない気がするけど……


 土に足だけ埋まったネッココへカイベルがドリンクを渡す。


『ありがと!』


 まあ、今日ぐらい良っか。


 それにしても、土を持って来てそこに埋まってるのにホールスタッフに止められる様子が無いってことは、このホテルではそういうのも配慮の一つとして容認されてるってわけか。

 しかし、土の場合は止められなかったようだけど、きっと虫をこちらに持ち込もうとすれば止められるだろう。会場内に虫食べてるヒトが一人も居ないのがその証拠。多分、暖簾のあっち側にもテーブル席があって、虫食べるヒトたちはそちらで食事してると予想される。

 鳥人が同行者の中に居なかったのは幸いだった。


 何と言うか……地球より余程色んな生物に対して気を遣わないといけないわけなのね……

 これ、人種どころの話じゃないわ。よくまあトラブル無く回ってると感心する。

 きっと数百年、数千年の積み重ねがあるからトラブルも無いのだろう。


 とすると……アルトレリアはまだ歴史が浅い。これからのことを考えると戦々恐々とするな……

 悪人感知できるカイベルと共に大きいトラブルが起きないように目を光らせておかないといけない。


 まあ今は食事を楽しもう。


「それじゃあ全員席に着いたみたいだし、いただきましょうか」


 ……

 …………

 ………………


 全員が無言で私の方を見る。


「どうしたのみんな? 無言でこっちを見て……」

「いつものように『いただきます』はせんのか?」


 あ、みんなそれを待ってるのか。


「ホテルの雰囲気もあるし、大声でするのは失礼に当たるかもしれない。ってわけで各自小声でお願いします」


 全員が小声で「いただきます」をする。


「みんな気になったものをシェアしてみない?」

「良いッスね! その石みたいな野菜貰うッス!」

「あ、じゃあ私も」

「私もいただきましょう」

「リディアも!」

「じゃあリナさぁん、魚介類貰って良いッスか?」

「どうぞ」

「私は引き換えにその辛そうなヤツ貰おうかな。フレアハルトもどう?」


 石野菜スティックを差し出してみたところ――


「我は別に良い。肉だけ食ってれば満足だ」

「あ、っそ」


 ――まあ取るわけないよね。見た目が石に似てても嫌いな野菜だし。


「石野菜スティック、ボソボソしてあまり美味しくないッスね……」

「凄く硬いですけど……アゴが……疲れます……」

「そうカ? リディアちょうど良い。ポキポキして美味イ!」


 これ食べると種族ごとの生態がモロに出るな、ナナトスは強靭、リナさんはか弱い、タナカさんは……大分食べるのに苦労している。リディアは物ともしない、簡単に食いちぎっている。

 で、私は、と言うと。

 硬いな……もし人間だった時の身体だったとしても歯が砕けたりは無さそうだけど、やっぱりこれを何本も食べるのは遠慮したい。顎が凄く疲れそうだ。

 ひと野菜二本くらいで良いかと六本も持って来ちゃたけど、食べてくれるヒトが居て良かった。


「ゲッ! この料理辛ああぁっ!! 水! 水取りに行って来るッス!」


 だから言ったのに……

 私も交換で貰ったから一口いただく。


「結構おいしいわ。ピリッと辛い程度」


 これは多分私の中のダメージを抑えるスキルが発動していると見た。

 席に居ない間に、キノコと肝と菜っ葉も一口ずついただいた。


「うん、美味しい!」


 私には毒の効果は出ないようで、普通に美味しい。特に肝は美味い。これは毒あっても食べたいと思うかも。


 その後の話題は今日あったことの話――


「それで、アルトラ様とフレハルさんはどうやって刀取り返して来たんスか?」


 ゴルゼン家については関りが無いかのように呪いを消し去ったこと自体を伏せて、タマモを追いかけて捕まえたことだけを膨らませて話した。

 嘘を織り交ぜているが……と言うより七、八割方嘘しか言ってないような気がするが、これはタマモ、ゴルゼン家双方に迷惑が行かないようにする以上仕方ない。特にゴルゼン家については関わりが無い(てい)を貫く以上、家名すら出せないわけだし。

 さっきフレアハルトに釘を刺したため、嘘に対するツッコミは無し。

 ただ……黙って聞いてはいたが、正直に話していないだけに少々眉間にシワを寄せていた……


 その後の話題は、私たちが居ない時間にナナトスらが何をやっていたか、リディアが今日何をやって過ごしていたか、リナさんによる寒い季節がやってきたが今後の服をどうするかという話、タナカさんによる土の国の話、その他雑談などをしつつ料理を頂いて食事の時間は終了。

 この後に明日の予定を話し合うためにタナカさんの部屋に集まることに。


 余談だけど、ネッココが持って来た土はそのまま放置しておいて良いと言うので放置。

 後でホールスタッフさんが片付けてくれるそうだ。一人の樹人や木の精霊が摂取した程度ではまだまだ栄養が残っているため、栄養のある土と混ぜて足してから再利用するそうだ。

 食べ物の嗜好性とか書くとキャラの性格が反映されますね。

 今回リディアの偏食の理由も判明。


 次回は8月15日の投稿を予定しています。

  第561話【観光計画】

 次話は来週の金曜日投稿予定です。投稿時間は二十一時付近までのいずれかの時間になります。

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