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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第18章 発展のアルトラルサンズとその影編
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第521話 強盗団一網打尽作戦

「ことは相談なのですが、ブルーソーンを倒した貴女にご助力願いたい」

「それはもちろん構いませんけど、私たちの町ですし防衛義務はこちらにありますから」

「先述したようにヤツらは我が国で噂話の出処となっている『ゼロ距離ドア』を狙ってくると思います。申し訳ありませんがゼロ距離ドアを囮として使わせていただけないでしょうか?」

「ま、まあ狙われてる以上拒否もできませんし、仕方ないですね……了承します」

「ご協力ありがとうございます。では、この町にそのドアはいくつあるのですか?」

「三(つい)です」

「それはどこに?」

「私の自宅前とリーヴァントの自宅前のドアで一対、町の西の川近くと川上流にある潤いの木管理室のドアで一対、アルトレリア第一壁正門前と南に三十キロ離れた麦畑前のドアで一対です」

「では、三対あるいずれかのドアを守っていただけますか? 残りの二対を狙って来た団員メンバーは我々で対応して捕縛しますので」

「分かりました。あの……強盗団の名前に『巨人』って入ってますが、頭目は巨人なんですか?」

「そうです」

「じゃあ、一目でそれと分かる容姿ってことですか? 巨人なんてこの町に居たらすぐ見つかると思うんですけど……」

「いえ、恐らく通常時は中型亜人と変わらない大きさで生活していると思われます」

「どういうことですか? 巨人って身体の大きさ変えられませんよね? 私が今まで遭ったことのある巨人は、みんな巨大な姿でしたけど……」


 私を(さら)いに来た巨人や砂賊の一員だった巨人は五メートル以上あったし。 (※)

   (※巨人:第300話から第301話、第397話から第399話参照)


「ここからは便宜上頭目のことを『頭目』あるいは『悪巨人(マリスティターン)』という呼び名でお話します。部下から、頭目は『デミタイタン族』であると報告を受けています。この『デミタイタン』とは、『タイタン』という巨人神をルーツとする種族で、元々の種族名称は『タイタン』であったとされていますが、神性が薄れたためなのか、ルーツに信憑性が乏しいからなのかは分かりませんが、いつしか頭に『半分(デミ)』を付けられるようになったのだとか」


 何で今ルーツの話をしたんだ……?


「ルーツに何の関係が?」

「まあ、最後までお聞きください。この巨人神であるタイタンの末裔としての神性なのか、それともそもそものデミタイタンの権能なのかは分かりませんが、他の巨人族とは違い自身の身体の大きさを操作できるのです。もっとも、中型の亜人ほどの大きさが小さくなれる限界で、小人まで小さくはなれませんが」

「そ、そうなんですか」


 つまり、他の巨人たちとは違い、眉唾ながら神の血を引いている『デミタイタン族』は、その権能により自身の身体の大きさを変えられる能力があると、そういうわけか。

 変異系統の拡縮魔法で小さくなれば良いと思うのだが……変異系ってもしかして珍しいのだろうか?


「デミタイタンは本来なら土の国に多い種族なのですが、どうやら悪巨人(マリスティターン)は樹の国で強盗団の頭目に収まってしまったようで……」


 ブルーソーンと言い、今回の悪巨人(マリスティターン)と言い、何で他国のヤツらが別の国を荒らしてるのかしら……

 まあブルーソーンは、私が勝手に水の国出身じゃないかと考えてるだけだが。


「巨人という種族でありながら一目で見つからない理由は分かりましたけど……巨大化されたらそんな大きいのをどうやって捕まえるんですか?」

「何を隠そう、私も『デミタイタン』ですので、もしもの時には私が抑えますのでご安心を」


 いやいやいや、町中で二人も巨大化されたら町壊れちゃうよ……

 町が某巨大化特撮ヒーローとか某巨大怪獣みたいな大惨事になりそうだ……

 全然安心できそうもない。


「ま、町中で巨大化はやめてくださいね!」

「しかし、相手も巨人となると巨大化しないと対抗できませんが……」

「その前に私が何も無いところへ強制移動させます!」

「ああ、デスキラービーの時に使われたという強制転移魔法ですね。アルトラ殿も使えるのですか?」


 の一言にフリアマギアさんが横から口を挟む。


「使えると言うか、彼女のオリジナル魔法ですよ。彼女が各国の空間魔術師に伝授したそうですよ」


 何で知ってるんだ……?

 ジョアンニャさん辺りから聞いたのかな。


「何と貴女のオリジナル魔法でしたか! 流石ブルーソーンを単身で倒すだけありますね」

「それで、対抗手段はあるとして、捕まえた後はどうするんですか?」

「拘束さえできれば、巨大化も抑制する魔道具がありますから」


 ああ、ブルーソーンを捕まえた時のような魔道具があるってことなのね。 (第326話参照)


 拘束の問題は解決したものの、エールデさんが別の問題を口にする。


「しかし、強制転移させるとして、ドアが三対となると悪巨人(マリスティターン)がどこに現れるか分かりませんが、そこはどうするおつもりですか?」


 確かに……頭目が現れる場所に待ち伏せできるのは六分の一の確率か……地獄の門前広場(私の自宅)は言わば私有地に近い扱いだから除外できるとして、それでも五分の一……

 いや、ドアは二つで一対になってるから三分の一って計算になるのかしら? だとしたら大幅に確率が高まる。


「じゃあ、これを渡しておきます」


 シール型の通信魔道具を渡した。


「これは?」

「貼るタイプの通信機です。魔力を流すことで私の持つ親機に通信できます」

「ちょっと見せてもらいますね」


 と、フリアマギアさんが一つ持って行った。


 シール型の通信系魔道具は普通に売っているはず。確かヘパイトスさんが、安物の紋章術符を貼り付けておくとか言って、地中でもラジオが聴けるようにしてくれたし。 (第439話参照)

 特にツッコまれるようなことは何も無いはずだが……


「これ、樹の国第二首都(ユグドフロント)に売ってる市販品より随分性能良いですね。結構高かったんじゃないですか?」

「そ、そうですね」


 ホッ……魔道具に対してのツッコミは無かったか。

 カイベルが作ったもので、金額がどの程度か分からないから適当に答えておく。


「じゃあ、それぞれのドアの防衛場所を再確認します。私は自宅前とその対のドアの二ヶ所を見張りますので除外します。その上で、『町の西の川近くのドア ⇔ 潤いの木管理室前のドア』、『アルトレリア第一壁正門前のドア ⇔ 麦畑前のドア』を樹の国の方々にお願いしたいと思います。各部隊の隊長はこの魔道具を頬に貼り付けて、私が見張るところ以外の四つのいずれかに悪巨人(マリスティターン)が現れたらそのドアの場所を報せてください。私がすぐさま空間転移魔法で向かい町の外に強制転移させます」


「「分かりました」」


 一番重要な決行日を聞いておかないとな。


「作戦決行はいつになると見込まれていますか?」

「まだ強盗団たちが盗みを決行するという情報が入ってませんので未定です。ここ数日の間と予想していますが、いつでも作戦に移れるように準備しておいてください。決行日が分かり次第、通信か使いの者を差し向けて連絡します」

「分かりました」

「本日は我々の作戦に同意いただきありがとうございました」

「いえ、アルトレリア(こちら)としても野放しにはできない案件ですので、こちらこそ感謝します」


 これにて強盗団一網打尽の秘密会議は一旦お開きに。


   ◆


 エールデさんが先に退室したのを確認すると、フリアマギアさんが近寄って来て小声で訊ねられた。


「……アルトラ殿って……もしかして遺跡から出土した古代兵器とかじゃないですよね?」


 は? 何言ってるんだ?


「言ってる意味が分かりませんが……」


 古代兵器って私自身のこと言ってるのか? 何言ってるんだ?


 あまりにも突飛な質問に一瞬誰を指して古代兵器と言っているのか理解できなかった。


「単刀直入に疑問をぶつけます。私は、あなた自体が古代兵器なんじゃないかと疑っています」

「いやいやいや! 何言ってるんですか!? 私は前世人間で、死んだ後に魔界に堕とされただけですし、古代兵器って……」

「それも埋め込まれた偽の記憶ってことはありませんか? 人間として生活してたって記憶を埋め込まれてるとか。失礼ながらあなたの生態はおかしいところばかりなんですよ」


 そう言われると疑惑に思えてしまうが……

 まあ、いくら魔法のある世界でも『創成魔法』やら『神の恩寵(おんちょう)』やら『鋼の肉体』やら、規格外の能力を多く持っていることを考えると、神様 (仮)か何らかの意図で私を魔界行きにしたんだろうから、おかしいところばかりだと疑問に思われるのは分かる。


「でも、大怪我して風の国で治療受けましたし、私が傷だらけだったのをフリアマギアさんも見てますよね? きちんと血だって出ますし、肉も骨もありますよ? ロボットではないです」

「そういえば……そうですね……しかしロボットのような無機物ではなく、生体兵器という可能性も……」


 生体兵器って……生きた生物を素体として作られた兵器ってことか?


「それも無いと思います。ここ最近たまに同郷出身の亡者の方に食事に誘われるんですが、私の記憶と彼の話す地球の記憶はちゃんと符合しているので記憶の埋め込みも無いかと」

「裏取りしても良いですか?」

「え? ええ……相手方が迷惑でないのなら……」

「その方は今どこに?」

「現在は土の国の職員としてここに赴任しているので大使館で働いてると思います」

「お名前は?」

「『タナカリュウイチ』ですけど……」 (第420話参照)

「…………タナカ……え~と……顔はよく思い出せませんが……確かに大使館にそういう名前の方は居ましたね」


 裏取りしなくてももう既に彼のことを知ってるのか……流石の記憶力だ……


「そこまで明確な証人がいるのであれば生体兵器という線も薄いか……」

「それに“古代”兵器なら“現代の記憶”が埋め込まれてるのは矛盾がありませんか?」

「それについては私も考えましたが、例えば古代人には未来を見通す技術があったとか」


 フリアマギアさんがどれくらい古代を想像しているか分からないが、数千年先の未来を予測して、ピンポイントでその時の話題だった出来事の記憶を埋め込むっておかしいでしょ……


「仮に私を生体兵器とするなら、私がピンポイントで今、この時代に目覚めていなければ成り立ちませんよ?」

「そうなんですよね~……目覚めの時期が五十年ズレてればタナカリュウイチ氏と話が合うはずがありませんし……」

「な、納得いただけましたか?」

「う~ん……あまりにもアルトレリア周りだけ奇妙な魔道具が多いので不思議なんですよね……この町もある時を境に急激に発展していますし」


 ギクッ!


「この町が急激に頭角を現してるので、その中心人物のアルトラ殿が、古代の知識を蓄えた自動人形(オート・マトン)人造亜人(バイオノイド)か何かかと予想したんですが……」


 自動人形(オート・マトン)と言うなら、それはカイベルの方が近いな。

 しかし、この期に及んでも、まだフリアマギアさんに怪しいと思わせないカイベルが凄い……会う度に催眠術でもかけてるんだろうか? それとも上手い具合に(かわ)してる?

 私は顔を会わせる度にこんなにも詰問(きつもん)責めにあってるというのに……


「…………どうやら私の早とちりだったようですね」


 『腑に落ちない』という表情ながらも、すぐに身を引いてくれ――


「ところで、アルトラ殿が古代人そのものという線は?」


 ――なかった……


「無いですって……私には現代の地球の記憶がありますから!」

「うぅ……くそぉ……『現代の記憶』、コイツ邪魔だなぁ……」


 今度こそ手札は無いらしい。


「ところで、仮定の話にしても何で私が兵器扱いなんですか? 古代のお手伝い人形とかならまだしも“兵器”扱いって……」

「アルトラ殿の戦闘力を考えると、“お手伝い人形”よりも“兵器”の方が近いかと思いましたので」


 そう言われてしまうと確かに……私自身ですら不明な部分が多いし、言ってみれば転生時に神様 (仮)に創られた身体だから、兵器という表現は近いかもしれないな……


「それにしても、あなたはやっぱり面白いですね! 解けない疑問も含めてあなたに興味が尽きません!」

「は、はぁ……そうですか……」

「じゃあ強盗団の件でエールデさんから連絡があったらお願いしますね!」


 切り替え早いな……

 大変なヒトに見初められてしまったもんだ……これはヘパイトスさんの言うように、早いとここちら側に引き込んで、彼女が疑問に思っていることを白状してしまった方が良いかもしれない……でも樹の国の守護志士でもあるし、タイミングがなぁ……本国に報告されるのも困るし……


 フリアマギアさんはこの後さっさと応接室を出て行き、ゼロ距離ドアの研究に戻ったようだ。

 そんなことしてて『強盗団の対策しなくて良いんだろうか?』と思い――


   ◆


 ――我が家への帰り際に、


「フリアマギアさん、強盗団の対策せずにそんなことしてて良いんですか?」


 と何気(なにげ)なしに話しかけたところ、慌てて口元に人差し指を立てて、


「しーっ!」


 『静かにしろ』というポーズをされ、顔を近づけて聞こえるかどうかくらいの小声で――


「……どこで聞かれてるか分からないので外でその話はしないようにお願いします……!」


 ――と注意されてしまった。


「あ、ああ……すみません……」

「……不自然に見えないように私をアルトラ邸に招くようなフリをして、ゼロ距離ドアをくぐってください」

「?」

「……早く……!」


 言われた通りに我が家に招くような素振りを取り、ゼロ距離ドアをくぐって地獄の門前広場(我が家の庭)へ抜けた。

 そして通り抜けてすぐにフリアマギアさんが、ドアを閉める。


「きゅ、急に家に招くようなフリをしろって、どうしたんですか?」

「強盗団の中には耳が良い者がいるかもしれません。ウサギ獣人のような耳の良い者が団員に居れば小声でも拾われてしまう可能性があります。地獄の門前広場(こちら側)は言うなればアルトラ殿の敷地に近いので、強盗団に見張られている可能性が低いと考えて、こちら側へ移動しました。声を拾われてなければ良いのですが……」


 そんなところまで気が回ってなかった……

 余計な一言を言ってしまったかもしれない……


「更には、私は守護志士ですし顔を知る者も居るかもしれません。ヤツらがいつからアルトレリアに入り込んでるかも分かりませんし、普段と違う行動をすると強盗団に警戒され、強奪作戦を取りやめる可能性があります。一網打尽にするには取りやめられては困りますので」


 なるほど……この普段通りの姿も作戦のうちってわけか。

 研究一辺倒ってわけでもないのね……第一印象で変人かと思ってたが、割と常識人なのかもしれない。


「強盗団への対策はこの研究時間外で行っておりますのでご安心ください」


 とのことだった。

 これが強盗団による『ゼロ距離ドア』強奪作戦決行の三日前の出来事。

 二人もの巨人が町中で戦ったら大惨事ですよね……

 ウルトラマンの戦った下辺りは、一体どうなっているのやら……


 次回は11月18日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第522話【捜査官にまさかの……?】

 次話は来週の月曜日投稿予定です。

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