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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第2章 トロル集落の生活改善編
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第51話 血に飢えた獣のごとき眼光

 さて、作業開始から三時間経ったしそろそろお昼にしたいところだけど……残念ながら彼らの分を持ってきてるわけではない。

 そして、三人からはお昼少し前からまるで獲物を見るかのような目で見られてる気がする……

 下手をしたら手伝いが目的じゃなくて、最初からお弁当(コレ)が目的だったんじゃないかと思えるほどの血に飢えた獣のような鋭い眼光……


 仕方ない……今日も三人に分けるか。

 そう思ってお弁当の袋を開けたところ……


「あれ? 四つ入ってる?」


 そういえば今朝渡された荷物、弁当の包みじゃなくて袋だった。この身体に転生してからは食中毒とか効かないんだけど、人間だった頃の癖で保存状態気にしてすぐさま【亜空間収納ポケット】に入れたから気付かなかった! 最初から弁当は四つあったんだ!

 何て気が利くのハンバームちゃん!


「昼飯か!?」

「あら? これって……」

「四つあるよ!!」

「ハンバームちゃんが気を利かせて四つ入れてくれたみたい」

「それは素晴らしいな! 流石アルトラが見出した料理人だ!」


 昨日この三人を集落へ連れて行ったから、今日も作業に来ると見込んでのことかな。もし来なかったら、私が全部食べることも想定済みかもしれない。

 三人に弁当を配る。


「じゃあ食べるとしましょうか」

「では、いただきます」

「「「いただきます」」」

「ん~、今日も美味しい!」

「毎食食べたいですね」

「なあアルトラ、我が町にハンバームをデリバリーしてくれんか?」

「あの子、私専属ってわけじゃないから無理だよ……普段は避難所でみんなのためにご飯作ってるのよ? 出張なんてさせられないわ」


 そうだ! 普段はみんなのためにご飯を作ってるのだ……彼女だけじゃない。みんな一生懸命働いてる……何とか報酬を出したいところだけど……

 そう考えるとやっぱり通貨制度ってのが一番報酬を出しやすいのかもしれない。

 でもどうやって導入したら良いんだ……


「あ! フレハル野菜残さないでね!」

「我は野菜は好かぬ!」

「じゃあ、次の時はフレハルのは無しね」

「ぐっ……食べれば良いのだろう?」

「フレハル様、このお野菜美味しいですよぉ~、こっちはシャキシャキでほんのり塩が効いてて、こっちは良い焼き加減で」

「お、ホントだ、草も結構美味いな!」


 野菜を草って言うなよ……


 文句を言いながらも野菜を含めて完食した。

 さて、昼食も終わったし、マーキングの続きだ! この三時間で二百本ほど終わったから、あと三時間もやれば八百本のうちの半分が終わりそうだ。

 午前とは違い、手慣れてきたのかサクサク作業が進む。


  ◇


 更に三時間後――


「よし! 六百本終わり!」


 予想以上のハイペースで、八百本のうちもう残り二百本を残すだけとなった。今日だけで三十キロ進んだ。もう集落もすぐそこだ。十分歩いて帰れる距離だ。

 そう思っていた矢先、雫が顔に当たる。


「あれ? 雨降ってきた? 何だか久しぶりの雨だな」


 そこでレイアが疑問を口にした。


「ねえこれってさぁ、また空から大量の水が降って来たら、地面がボロっと崩れて杭が抜けたりとかしないの? そうしたら、今までやってたことが無駄になっちゃうよね?」


 !!?

 ホントだ……あまり雨が降らないからそこに頭が回ってなかった……杭は一メートルほど埋めてある。小雨程度なら大丈夫だと思うけど、豪雨に降られたら抜けてしまう可能性はゼロではない。

 あぶな……レイアが気付いてくれなかったらまた失敗していた。もしそんなことになったら今までの四十キロが水の泡だったわ。

 どうやって固定する? 時間魔法でその周囲の時間ごと奪ってしまえば地面が崩れてもその場に浮いててくれるかもしれない。でもそうほいほい時間魔法を使うのは危ない気がする。


「………………」


 ああ、そんなことしなくても前みたいに水吸収の結界を張っておけば良いんだ。川 (予定)に沿って細長い形で張っておこう。


「ああ、大丈夫、それについては考えてあるから」


 ホントは今言われて気付いたんだけど……


「じゃあ、雨も降って来たし、今日はこれで終わりにしようと思う。みんなお疲れ様、お手伝いありがとう!」

「雨とは何だ?」


 あ、そうか、この連中もトロルたち同様ずっと高温の場所にいるから雨を知らないんだな。何ならこの間私が起こした大洪水で初めて知った可能性だってあり得る。


「空から降ってくるこの水のことを雨と言うのよ」

「へぇ~、そうなんだ~」

「じゃあ、火山まで送るから――」

「さて、では避難所の食堂へ行くとしようではないか!」

「え゛?」

「まさかこの後の(ねぎら)いは無いというのではなかろうな?」


 さては最初からこれも織り込み済みだったな? 昼食だけでなく夕食までご馳走になろうって魂胆か! いやちょっと時間的には早いから、おやつタイムくらいか。

 ある程度の予想はしてたけど……突然押しかけてハンバームちゃん作ってくれる余裕あるかな……


「一応頼んではみるけど、昨日と違って突然のことだから対応してもらえるか分からないよ?」


 時間的には午後三時から四時の間くらい、普通の日ならそれほどヒトが集まる時間帯ではないが……


「それでも行ってみようではないか」

「じゃあ、ちょっと待って、今まで埋めた杭に雨バリア張ってくるから」


 フレアハルトたちの周りに水吸収結界を張って濡れないようにした後、速力上昇の強化魔法をかけ、四キロを全速力で戻りながら、杭を埋めたところへ水吸収の結界を、土が崩れても良いように少し広範囲に張っていく。

 結界を張りながら杭打ちを開始した地点の火山の(ふもと)に着いた。


「これでよし!」


 結界を張り終えたら、ゲートでフレアハルトたちの元へ戻る。

 この間約十五分。この頃になると雨も大分大降りになってきている。

 何か嫌な予感がする……


「お待たせ」

「もうご飯のお腹になってるよぉ!」

「ではゲートを頼む」


 そして集落の避難所の食堂へ。

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