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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第18章 発展のアルトラルサンズとその影編
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第519話 アルトレリアに出来た小学校の内検 その4

 次に訪れたのは図書室。


「ここは……本棚だけがありますね。図書館のような部屋ですか?」

「『図書室』だね。図書館同様に、ここにも本を置く予定だよ。主に勉強に役立ちそうな本を置こうと思ってる」

「図書館から持ってくるのですか?」

「う~ん、今の構想としては図書館から月替わりで本を交換することを考えてる。新しく買うことも想定はしてるけど、買い揃えるのもバカにならない費用がかかるからね」

「なるほど、図書館から月ごとに交換すれば新しい本が入りますしね」


 そういえば通ってた小学校の図書室に、多分五十センチを超えてる超でっかい本が何冊か置いてあった記憶がある……

 あれは一体何の本だったんだろう……? 当時は目に入っても『背景』くらいの認識でしかなかったけど今思えば、何かのネタになったかもしれないし読んでおけば良かったな。

 まあ、流石にあんな大きい本は必要無いから置くつもりはないが。


「さて、次へ行きましょう」


   ◇


 校舎最後の特別教室、多目的室を内検。


「ここは何になるのですか?」

「多目的室だね。特別な用途ってのは無くて、色んなことをやるのに使う部屋。その授業(とき)その授業(とき)で用途は変わる」

「ああ、役所裏の多目的室と同じ用途ですか。しかし何やっても良いと言われると、何に使うか迷いそうですね。机や椅子もありませんし」

「机や椅子を使わないレクリエーションに使うってところかな。テーブルゲームのようなオモチャが置いてあることもあったね」

「テーブルゲーム?」

「複数人で遊べるゲームがあるのよ」


 トランプは以前フレアハルトたちとやったことがあるが……流行らそうか。

 いや、そのうち外国のゲームが行商人から流れてくるかもしれない。

 それに――


「この町も文化的になってきたし、そのうち何らかのゲームが開発されて流行るようになるかもね。さあ、あとは各教室を回って、外の図工室と技術室、体育館へ行きましょうか」


   ◇


 その後、学年ごとを想定して六個作られた教室と予備の教室を見て回り、特に問題無いことを確認。


「校舎の内検は終わりですか?」

「あとは廊下を見ておかないと」


 最後に廊下をチェック。

 非常口、非常階段、防火扉、火災報知器を確認。

 通報システム、防災用品……はまだ無いから後々配備したいところだ。

 これにて校舎の内検は終了。


「さて、次は図工室の方を見に行きましょう」


   ◇


 校舎を出て、体育館付近に作られた図工室を内検に行く。


「図工室とは何をするところですか?」

「日常ではあまり使わないけど、技術的なことを学ぶために使う部屋。例えば木を彫って彫像を作ったり、版画を作ったり、絵の具を使って絵を描いたり、木で小物を作ったりね」

「大工や絵描きに通じるところがある部屋ということですか?」

「まあ当たらずとも遠からずかな。それらの基礎的なことを学べるって感じ。後々木材やら画材やらを運び込んでもらう予定」


 この図工室ってのは、私の中では『木』のイメージが強い。

 教室には木材が結構置いてあって、木くずが多かった記憶がある。

 あと、何か匂いが違うんだよね。『木の匂いがして工作する匂いだな』って感じがする。


「ここは理科室や家庭科室とは違って、壁際に水道があるのですね」

「水道使うのは絵の具とか使った後、授業の最後の方になるからね。理科や家庭科とは違って授業最中に必要ってわけではないから」

「なるほど」


 なお、まだ人数もそれほど多くないため、美術室は図工室と兼用としてもらう。


「この部屋……木造りですが、金属は扱わないのですか?」

「金属は隣の技術室だね。それと金属はもう少し年齢が上がってからかな。金属加工は火が出たり、切断するために危険な道具を使ったりするから小学生では危ないし。この技術室は離れにしておかないと万が一木材に火が移ったりした時に大変だし、図工室は木くずが出てもすぐに外へ処理できるから離れにしておいた方が便利だしね」


 もっとも……大工とか金属加工してるトロルの連中は、たった一年と数ヶ月程度で扱えるようになってしまっているんだよな……【永久的遺伝的(エターナル・ハイ・イ)知性上昇 (大)(ンテリジェンス)】のお蔭かどうか知らんが……

 まあ、彼らは再生力がバカ高いから多少の無理が効く。そのお蔭で上達も早かったのかもしれない。


「低年齢では扱わないのですか? 過保護では?」


 確かにそう見えるが……しかし、やはり子供のうちは安全なところから段階的に危ないものへシフトさせる方が良いだろう。電動ノコギリ使って指飛ばしちゃったなんてことがあったら大ごとだし。

 それに学校に通うのはトロル族だけとは限らないから怪我とかは細心の注意を払っておきたい。


「やりたいことやらせた方が身に着く気がしますが……」

「やりたいことやらせてると、『授業』としてやる意味が無いからね。統制できなくなって収拾付かなくなっても困るし、やりたい子は授業外で自主的にやってもらえば良いのよ」

「……確かに収拾付かなくなるのは困りますね……」

「さあ、隣へ行きましょう」


   ◇


 図工室を出て、隣の技術室へ。


「図工室と隣接しているのに、こちらはコンクリート作りなんですね」

「火を使うからには、教室と同じように木ってわけにはいかないからね」


 まだコンクリート打ちっ放しの備品も無い教室。


「無いとは思うけど、ひび割れとかも一応チェックしておいて」

「はい」


 部屋中見て回り、コンセントと水道も確認。


「工場のような作りですね」

「金属を扱うから、それに近い環境にしてもらったんだよ。さて、じゃあ問題無さそうだから体育館に行きましょう」


   ◇


 更に隣の体育館へ。


「あの上の方にある網は何ですか?」

「あれがバスケットボールのゴールだよ」

「あれが伝え聞きいていバスケットボールのゴールですか! 役所裏の多目的室には無いものですね」 (第418話参照)

「まあ、あっちの建設には私はあまりタッチしてないからね。こっちは私がかなり関わったから要望を聞いてもらって設置してもらたんだ」


 いずれは、国際試合が出来るように正式に競技場とか作った方が良いかもな。


「この床にある蓋の付いた円は?」

「それはバレーボールやらバドミントンやらのネットを立てるための穴だね。そこに柱を立てるの」

「う~ん……どちらもまだ見たことが無いのでピンと来ませんね」

「それらを知るのも後々のお楽しみってところだね」

「あちらにある扉は?」

「体育倉庫。あそこに競技用のボールとか、今言ったネットとか、跳び箱やらマットやら平均台やらスコアボードやらを仕舞うんだよ」

「跳び箱? マット? 平均台? スコアボード?」

「それらも体育の授業で使うものだね。今後リーヴァントも目にすることが……いや、体育の授業でもちょっとの時間使われるだけのものだからリーヴァントは目にすることはないかもね。レイヴァレンくんは学校に通うような年だし、そこから又聞きすることはあるかもしれないけど」

「どれも興味をそそられる名前ですし、私が子供でないことが悔やまれます……アルトラ様がもう少し早く来てくだされば……」

「いや、もしあなたが小学校六年生の年だったら、私はその時まだ三年生だから。どう考えても無理よ」


 ガラガラガラと体育倉庫の重い扉を開けてみるも、そこにはまだ何もあるはずもなく……


「体育倉庫って何も無いとこんなに広かったのか……狭くて汗と(ほこり)臭さが混じったイメージしかなかったけど……」


 一目見回して確認。何も無いからチェックも楽だ。

 すぐさま重い扉を閉じていると、リーヴァントが別のものに気付く。


「そこに階段がありますが、この二階は何に使うのですか?」

「私の在籍してた時は卓球とかやってたね」

「卓球……また初めて聞くスポーツ名ですね……」

「それらもこれから覚えていくことよ。さて、最後は運動場とプールを見に行きましょう」


   ◇


 プールに向かいがてら運動場のチェック。

 まだ白線やトラック線は何も引かれておらず、全くの平地の状態。


「ここにも倉庫がありますね」

「備品仕舞うのに、倉庫は便利だからね。ボールや綱引きの綱、白線引きやら玉入れのカゴやら、トンボやらコンダラ (※)やらを入れておくんだよ」


 新築だからか体育倉庫同様まだまだ(ほこり)っぽくない。


「想像できる備品もありますが、トンボとコンダラって何ですか?」

「どっちも運動場を(なら)すための道具だね。トンボは軽くて、コンダラは重い」


 どっちも何でそんな名前なのかとは思うけど……

 全然 (生物の方の)トンボと似て無いし、コンダラって何だよ。大して重くもないのに、なぜか『重いコンダラ』 (※)って呼ばれてるし。

   (※重いコンダラ:気になった方は検索してみてください (笑))


「あと、二百メートルトラックを作るためにロープも張ってもらわないとね」

「トラックとは?」

「楕円形に作られた走路だよ。小学校のは大体二百メートルで作られてる」


 ロープ張らずに白線で描いたら消えてしまうし、お願いしておかないと。


「これは?」

「鉄棒だね。そこで棒を支点に回ったり、懸垂したり、ぶら下がったりして体力を培うわけよ」


 逆上がりが割と鬼門で、出来ない子はそれなりに居た。ちなみに私は得意な部類だったからすぐ出来たが。


「あそこは土ではないですよね。砂場?」

「あれも体育に使うのよ。走り幅跳びみたいな競技がある」

「ほぉ~~、運動も色んな種類があるのですね」


 あの砂場……たまに猫のフンとか埋まってたりしてたな……ちょっとトラウマがある……

 この町にはまだ猫系の動物が居ないから、そういう被害は今のところ無さそうだが……


 遊具の類いは予算の関係上まだ無い。今後作るかどうかも不透明だ。

 私の子供の頃はブランコとかジャングルジムとか登り棒とかがあるのが常識だったが、今は危険だからとういう理由で軒並み撤去が進んでいるらしい。残念だ……


「さてプールに向かいましょう」


   ◇


「おお! 立派なプールですね!」


 アルトレリアには既に『岩場の水浴び場』という水に関連する施設がある。 (第36話参照)

 そこは現在では通称『プール』と呼ばれているため、リーヴァントも聞き馴染んだ呼び名。

 この学校のプールは、本当なら屋内仕様にしたかったところだが、備品も買い揃えないといけないしそんなお金は無い。


「岩場のプールとは全然違いますね」

「そりゃ長方形に整えられたプールだからね。岩のゴツゴツした水浴び場とは違うでしょうよ」


 私自身、水が全く張られていないプールは初めて見る。

 夏は水で満杯だし、使用前のまだ清掃がされてない時はヘドロ化した土が混じった()ったない水が入ってたし。


「なぜプールを二つ作ったのですか?」

「小さい方は低学年の授業用だね。大きい方のプールは身長が低いと足が付かないから、ある程度の身長に達してないと入るのは危ないからね」

「なるほど」


 いくら再生能力が高くても溺れて呼吸が止まれば死んでしまうから、水に関しては再生能力の高さは関係無い。

 物理・魔法にほぼ無敵の身体を持つ私だって、呼吸できなくなれば死ぬであろうことは体験済みだし。 (第324話参照)


 プールサイドをぐるりと一周回りながらチェック。

 特に排水関係。たまにここに吸い込まれて溺れてしまうってニュースを聞くから、職人さんたちがきちんとやってくれてるだろうけど、私の目からも一応チェックをしておく。


「アルトラ様、あっちにある建物は何ですか?」

「あれは更衣室だね。あそこで水着に着替えるんだよ」

「二つあるのは男女別ということですか?」

「そうだね」

「プールサイドにある屋根のようなものは?」

「ああ、それは見学者のための日除けだね。私が子供の頃は体調悪い人はそこで見学してたんだよ」


 日除けは使うかどうかは分からないが一応作るだけ作ってもらった。


「体調悪いのに暑い場所で見学するのですか?」

「やっぱりそう思うよね~」


 私も『みんなは水の中で気持ち良さそうに泳いでるのに、体調悪いってのに暑い中見学させるって、どういうつもり?』とは思う。

 最近の日本は暑すぎるって理由で、『体調不良の者を炎天下の外で見学させるのはどうなのか?』って議論があるそうで、実際に見学中に熱中症で倒れた子も居たらしい。それ以降は図書室で自習にするなどの対処がされるようになったとか何とか。


「まあ、私もそれについては疑問に思ってたから、一応作ってはもらったけど、あれは使わないかもしれないね」


 余談ではあるが、昔は『腰洗い槽』とかいうのがあったけど、どうやら意味が無いらしいからこの学校でも作らなかった。

 同じく『目洗い蛇口』も。

 当時は面白がって思いっきり強水圧で目を洗ってる男子とか居たけど、後々視力低下を招く危険性が判明したとかで徐々に無くなっていったとか。

 塩素を洗い流すための『シャワー』はきちんと設置。


「うん、問題無さそうだね。じゃあこれで内検は終了しましょうか。お疲れ様」

「お疲れ様でした」


 全部の内検が終わり、それぞれ帰路に着いた。


   ◇


 その夜、アルトラ邸――


 放送室で親友のことを思い出したためカイベルに訊ねてみる。


「カイベル、天野亜依ってどこに居るか分かる?」

「アルトラ様と一緒に亡くなられたご友人ですね。残念ながら分かりません。亡くなられた後のことは私には捕捉できませんので。ただ、亡者として地獄へ歩いて来た記録も無いので、地獄に入獄したり、魔界で亡者になっていたりはしないようですね」


 良かった! 魔界には来てないか。

 ってことは、『亡者じゃない=地獄行きではない』ってことで、天国の方へ行ったってことか。


「じゃあ天国へ行ったってことなのね!」

「そうかもしれませんし、そうでないかもしれません」

「どういうこと?」

「天国と地獄の他にもう一つ幽体で構成される星があります。そこは『中有界』と言います」

「中有界? 初めて聞いたわ」

「天球の衛星の一つで、やはり地球からは一部の人以外は見えません。ここは、『悪行はやっていないが、かと言って、大した善行もやっておらず』という、ごく普通の人生を送った方が行く場所です」

「普通の人生……」

「ここも天国、地獄と同様神域に属するため、ここにいらっしゃる場合も私では捕捉できません。伝承に依ればここでも地獄同様に罪穢れを(そそ)いでから再び地球に転生すると言われています。もっともその方法は地獄に比べれば遥かに優しめと考えられますが」

「そっか……」


 結局のところどこに居るかまでは分からないが、まあ地獄に行って無いならそれだけでも良かった。


「あ、それとアルトラ様が『コンダラ』だと思い込んでいるのはコンダラではありません」

「え!? あれって正式名称じゃないの!?」

「正式名称は『整地ローラー』と言います。コンダラはとあるアニメから勘違いで誕生した俗称ですね」


 そ、そうだったんだ……先輩も後輩も『コンダラ、コンダラ』言ってたからそういう名前なのかと……

 コンダラって、引きずる分にはそこまで重くはないですよね。

 まあ、調べたら九十キロくらいあるそうなので、乗っかられたら大怪我するかもしれませんけど。


◆◇◆【重要なお知らせ】◆◇◆

 本格的に生活が困窮してきてしまったので、執筆に充てる時間を削らなければならなくなってしまいました。

 継続して読んで頂いている方々には申し訳ありませんが、来週の更新を機にしばらくの間週一の更新とさせていただきいたいと思います。

 生活に余裕が戻り次第、また週二に戻そうかと思いますので、よろしくお願いしますm(__)m


 次回は11月4日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第520話【アルトレリアの実状】

 次話は来週の月曜日投稿予定です。

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