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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第18章 発展のアルトラルサンズとその影編
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第513話 発電施設とアルトラ邸への電気設備新設

 アルトレリア潤いの木下流・ダム建設現場――


 発電施設の工事が終わるとのことで、ダム建設現場に来ていた。


「こんにちは、ローレンスさん」

「お、アルトラ殿、来ましたね」

「ダムが完成したと報告をもらいました」

「はい、現在最終点検中です。あと二、三日程度で終わる予定です。この最終点検で問題が無ければ川の角度を元に戻してダムの稼働を開始します」


 現在も技術者による点検が行われている。

 これで遂にアルトレリアの一般家庭でも電気が使えるようになるのか。


「各家庭の電気設備についてはどうなってますか?」

「この町の方々に電気技師としてのノウハウを伝授してあります。一般家庭への敷設ももうそれなりに進んでいるのではないかと」


 私が知らないところで、電気を使うための準備が着々と進められている。

 以前、ローレンスさんに聞いた通り、電線を使わない形で電気の供給が出来る『魔力動力式』の設備が整えられていってるらしい。

 役所など町民が公共で使う施設 → 産業などで使う工場などの施設 → 一般家庭の順番で優先的に敷設が進んでいる。

 もちろんお金がかかることなので、設備投資できる者が優先される。必然的に経営者が先に電気を使うようになるのが早そうだ。


 『魔力動力式』はもうすっかりこの町でもお馴染みになっているが、具体的に説明すると魔法を分解する効果を持つ『リダクティウム鉱石』という魔石を使って、発電施設で作られた電気を純粋魔力へと分解する。

 この『純粋魔力』は、シャボン玉のような透明の虹色を発する魔力物質で、これが我々がこの世界で魔法を使うためのエネルギー元になっている。別名『魔素』とも呼ばれているもの。

 この魔界の大気中にはどこにでも存在するが、各家庭で大量の電気を使うと考えると、アルトレリア近辺に自然に存在している魔素だけでは全く足りない。そこで発電施設で魔素の生産をするわけだ。


 この魔素は放っておくと流れて各地へ散っていくため、次はこの魔素を吸着して留めなければならない。

 そこで、今度は魔力を吸着する効果を持つ『ミスリル銀』という魔石を用いて魔素を吸着し、これを家庭に設えた電力変換装置を通すことで家庭で使われる電気へと変える。

 そのため、魔力動力式発電では電線のようなものは必要としないのだ。


 なお、私の創る魔力動力式魔道具は原理は多分大して変わらないものの、ミスリル銀を使っていないため少し異なる。『魔法的なイメージで』フワッと創ったため自分でもどういう仕組みか分かっていない。どなたかが解明してくれるまで仕組みが解明されることは無いだろう。


「ミスリル銀の粉を少し分けてもらうことはできますか?」

「何に使うんですか?」

「うちにも電気設備を敷こうと思いまして」

「でしたら我々がお宅へ伺いますが?」

「いえ、まだまだアルトレリアの町の方で忙しいでしょうし、我が家のことは我が家でやれますんで」

「電気設備を個人でですか? 専門性が高いですが、設置できる方が居られるのですか?」

「はい、問題無いと思います。私の方でやってみて、それでも無理な場合は再度お願いに伺います」


 やってもらうのに気が引ける理由はもう一つある。

 我が家はもう大分ガタが来ている。そこに工事で入ってもらうのも何だか気が引ける。電気整えてもらったのにすぐに家を取り壊す自体になってしまったら申し訳ない。

 とは言え、家が潰れたらリディアとネッココが危ないし、そろそろ建て替え時かな……


「分かりました。少々お待ちください」


 と言いながらローレンスさんは、ダム近くに建てられた仮宿舎の方へ引っ込んで行った。


 そういえば、持ってきたミスリル銀って、両拳大(りょうこぶしだい)くらいの大きさなんだっけ? 粉にして使うって言ってたし削る必要があるのかな? (第279話参照)


 少しして――


「お待たせしました。魔力の吸着パネルです。この大きさで一般家庭の電気くらいは賄えるはずです」

「わざわざパネルをいただけるんですか!?」

「ええ、持って行ってください」

「ありがとうございます!」


 これを使って、カイベルに電気設備を整えてもらおう。


   ◇


 我が家に戻った。


「と言うわけで、我が家に電気設備を整えてもらえるかしら?」

「今までのように光魔法を浮かべて光源とすれば良いのでは?」

「せっかく電気が町に通ることになったんだから、うちでも文明を享受したいじゃない!」

「なるほど、一般庶民が電気を使っているのに、国家元首が使っていないというのも格好が付きませんしね」

「そ、そうだね……」


 そんなこと考えてもいなかったが……言われてみると確かに……

 周りが進歩していってる中、私だけ質素な暮らしをするのも何か違う気がする。


「それに光魔法だと私が家に居ないと明かりを点けられないけど、電気ならリディアやネッココでも自由に点けられるようになるでしょ?」

「そうですね。ただ、そういうことは工務店の方々にお願いした方がよろしいのではないでしょうか?」

「今は町の電気整備の方で忙しそうだったから、うちで個人的にやるって断って来たんだ」

「なるほど、意図はよく分かりました」

「リディアとネッココが帰って来るまでにやっちゃえる?」

「大がかりな工事になりますので数日はかかると思います」

「え? 工事する必要があるの? 工事って何するの?」


 魔力吸着パネル設置したら電気が流れるんじゃないのか?


「家の中に電線を通す必要がありますので、内壁の外側へ敷設します」

「え? エレアースモの発電技術って電線は必要としないんじゃないの?」

「電線が必要無いのは外からの電線ですね。日本で言うところの電柱に繋がってるあの線のことです。あれは魔力動力式発電では必要としません」

「い、家の中への敷設は必要なのね……」

「電化製品にはプラグがありますので。どうしてもコンセントに挿さなければ動かせません」


 た、確かに……コンセントが必要なんだ。ってことはそれに繋がる電線も、当然必要ってわけか。


「全てミスリル銀による吸着パネルにしてしまえばそれも必要無くなりますが、それには見逃せない欠点があって、吸着パネルが近い間隔に複数あると魔素の取り合いが発生してしまって効率的に魔素の吸着ができないので、発電能力が著しく落ちてしまいます。あとミスリル銀はレア鉱石ですので電化製品の改造費用が莫大になります」

「そ、そうなんだ……」

「発電能力が落ちても構わず、金額に糸目をつけないのであれば、電化製品を魔力動力式に改造しますが……?」

「どれくらいお金がかかるの?」

「物に依りますが……数万イェンから数十万イェンになります」

「それって普通の電化製品と大して変わらなくない?」


 日本でだって、テレビみたいな小さい物は数万円だったし、冷蔵庫みたいなのは十数万円だったし。

 …………いや、待てよ……今のイェンの価値って、確か日本円の半分くらいだったはずだから……単純計算で二倍の価格?


「いえ、『数万イェンから数十万イェン』は上乗せ額です」


 上乗せの額!? 二倍の金額の上に更に上乗せ!? もっと高かった!!

 もし日本で買ったら冷蔵庫だけでも五、六十万くらいするんじゃ……?


()っかっ!! じゃ、じゃあ発電能力が落ちるってのはどれくらい?」

「私の見立てでは電力を多少大きく必要とする電化製品を二台使うだけで、蛍光灯ですと一割から二割ほど出力が低下します。光力で言えば二百ルーメンから四百ルーメンほど暗くなると考えられます」


 何か聞いたことない単位出て来た……


「ル、ルーメンって何?」

「光源の明るさを示す単位ですね。この部屋は十六畳ほどですので照らすのに適切なのが三千から五千ルーメンほど、アルトラ様に分かり易いもので例えるなら……四十ワットの蛍光灯二本分ほどです」


 二百から四百減るって言うと……体感的には結構薄暗くなってしまうわけか。

 しかも電化製品二台でソレってことは、三台も四台も使ったらもっと暗くなるわけだ……


「ただ、魔力動力式は停電しないメリットがあります。電線で繋がっていないのでどれほど沢山の電化製品を使っても消費超過の状態に至りません。もっとも……出力は台数が増えるごとに低下していきますが」

「それだとデメリットの方が大きいよ。ただ使えれば良いわけじゃなくて、“快適に”使いたいわけだし」

「だとすると結局のところ、家の外に一つ、または複数の吸着パネルを設置し、そこから電線で家の中へ電力供給する方が効率的ということになりますね」

「じゃあそのようにお願い」


 しかし……数日も工事にかかるんだな……いくらカイベルでも半日じゃ無理か……

 普通は電気設備整えるのに一ヶ月とか必要って動画で見たことあるし……数日程度なら文句言うような日数ではないか。


「では少々必要なものを買いに行って来ます」


   ◇


 一時間ほどすると、電気配線、コンセントの元?、スイッチの元?、配線とは別の管?、蛍光灯とそれをはめ込むためのパネル、ブレーカーらしきもの、半田、ネジなどをエアクッションに包んでリヤカーのような台車に積んで戻って来た。


「お帰り……電気設備作るのに随分色んな物が必要なのね」


 生前技術職じゃなかったし、半田なんて久しぶりに見たわ。

 と言うか……アルトレリアって、今もうこんなに物が豊富になってるの!? この短期間で驚きの進歩なんだけど……

 外国から物が流れてくるようになったのと、モノ作りのドワーフさんたちの影響かな?

 機械関係を扱うには、どうしても部品が進歩しないといけないから、急速に進歩せざるを得なかったってことなのかも?


「この筒状になった管は何?」

「配線保護管です。配線そのままですと強度が弱いので不意の断線を避けるために外側を保護管で包みます」

「へぇ~、なるほど」

「どうせ電気設備を整えるなら断熱材もあれば良かったのですが、気温関係はアルトラ様が何とかしてしまうと思いますし、問題無いでしょう」


 確かに去年は問題無く過ごせてたな。


「こっちのはブレーカーに見えるけど、ブレーカーなの?」

「はい、キッチン上辺りに設置します」

「あれ? 半田は買って来てるのに、半田ごては無いの?」

「私なら火魔法と金属の棒で代用できますので」

「あ、そう」


 この世界、便利!


「それに、電気が通っていないので半田ごては使えません。我が家には自家発電機の備えもありませんし」

「ああ……そう言えばそうか……」


 今やろうとしてるのが、その“電気を通すための”工事なんだっけ……


「では始めます」


 と言いながら、部屋の内壁の両隅に切り込みを入れ、ベリッと剥がした。


「ちょちょちょ、何してるの!?」


 ああ、壁が完全に剥がされちゃった……


「内壁の外側に敷設しなければならないので、一旦壁を剥がしてしまいます」

「えぇ~……」

「本来なら家を建てる過程で行なうものですが、この家は土魔法で建てられ、室内や外側を樹魔法で補強されただけで、配線については考えられていない簡易的な造りの家ですので、一旦壁を剥がして終わった後に再度壁を形成します」


 何かナチュラルにディスられた気がするが、本当に電気のことなんて考えて建ててないから仕方ない。


「どうせ壁壊すんなら、家ごと新築しちゃった方が良いんじゃない?」

「それは私がやってしまうより工務店の方々にお願いするのが筋なのではないでしょうか? 経済を回してください」

「うぅ……そうですね……」

「本来であれば今からやろうとしている電気設備工事も専門の方にやってもらうのが筋だと思いますが、今は町の家々の設備を整えるのが忙しいとのことですので、今回は私が引き受けます。ですが、私が今回行なうのはあくまで電気設備だけに限ります。アルトラ様が個人で行なうことでしたら家を新しくしようと何をしようと口を出しませんが、新築を希望するならしかるべきところへお願いしましょう」


 説教されてしまった……

 カイベルの言ってることは確かに一理ある。言ってみればカイベルに頼むのって経費をケチってズルしてるってことだもんなぁ……広義の意味で言えば専門職の方々の仕事を奪っているわけだし。

 知識関係でアドバイス求めるのはまだ良いとして、モノ作りに関してはお金が絡むのだからちゃんとしたところへお願いするのが筋ってもんか……


「分かったよ。今後は専門店へお願いするから、今回はお願い」

「はい」

 本項の魔力動力式のような、電線を必要としない電力供給方法ってできないものでしょうか?

 そうすれば地震とか起こっても、断線しなくて済むんですがね……


 次回は10月14日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第514話【アルトラ邸への電気設備新設 その2】

 次話は来週の月曜日投稿予定です。

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