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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第17章 風の国ストムゼブブ『暴食』の大罪騒乱編
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第458話 一方ヴァントウの巣穴は……?

 本項の用語補足。簡単な種族説明。

 ▼ウェアライオン族

   ライオンの獣人。

   砂漠で戦ったライオンの獣人 (第398話参照)とは違い、半獣人のため人型と獣人型を切り替えられる。

   また魔界の雷を使うライオンから進化した種類のため雷を得意とする。


 ▼雷獣

   雷を使う獣の高位存在。

   日本でも雷獣という名前で知られている。


 ▼シトリー族

   魔人の一種で、他者を魅了する力を持つ。ただし本作の魔王アスモデウスの魅了能力より数段劣る。

   その他雷属性の魔法が得意。

 一方、もう一つのジャイアントアント発生ポイントに向かった雷の国(エレアースモ)樹の国(ユグドマンモン)・レッドドラゴン連合軍は、風の国の空間魔術師の一人・アリアエールの空間転移でヴァントウへ到着した。――


「ここがヴァントウですか?」


 と、樹の国総隊長マルクがアリアエールに訊ねる。


「そ、そうですが……私が知っている風景とは違います! 都会ではないものの、農産業で成り立つ(のど)かな田園風景という感じだったのに……」


 ジャイアントアントが近隣に出現したことにより、アリアエールの記憶と大きく違っており、立ち並ぶ家々は破壊されて火の手が上がり、地面は掘り返され、家畜も食い荒らされ、見るも無残な光景に変貌している。


「壊滅的じゃないか!」

「家畜も殺しつくされてるな……」


 町で生活していたほとんどの住民は逃げたようだが、街路には少ないものの住民らしき者の食い殺され、引き裂かれたかのような残骸が……


「酷い殺され方だな……これじゃ誰なのか判別もできない……」

「みんな! まだ近くにアリがいるかもしれん、警戒を怠るなよ!」

「巣穴はどこだ?」

「この惨状では聞き込みするヒトも見つかりそうもないですね」

「この状況だとまだ周辺に逃げている住民がいるのではないでしょうか?」

「私が空から見ましょう」


 と名乗りを上げたのは普段は雷の国女王アスモデウスの側近を務めるラッセル。

 彼は『白天使』と呼ばれる背中に白い羽を持つヘルヘヴン族。上空からの索敵には適していた。


「いえ、ラッセル様が行かずとも我々が……」


 と部下のヘルヘヴンの兵士に止められるものの――


「事は一刻を争う、私が行くのが最も迅速だろう」


 ――部下の意見を押しとどめ、離陸。瞬く間に空へと上昇するラッセル。

 上空に停滞し地上を見回したところ、ところどころに動く黒い点や、それが複数集まった黒い塊。その点一つ一つがジャイアントアントであろうと予想できる。


「アーヴェルム国の兵士たちはまだ到着していないのか?」


 ヴァントウの巣穴が発見されてまだ数時間。アリに対抗するために国から派遣される兵士も到着しておらず、ジャイアントアントが広範囲に散らばってしまっていることが見て取れた……そう思っていたラッセルだったが……


「いや……もう既に来ていたようだな……寡兵で来たのか、先遣隊なのか、全滅したと見るべきか……」


 巣穴より大分離れた場所に赤黒い血だまりがあり、近寄ってみれば血だまりの中に鎧や兜も発見された。引きずられたような血の跡もあり、何人かがアリに連れ去られた可能性を示唆していた。


「この血の先が巣穴か……」


 すぐに連合軍のところへ戻る。


「ラッセル殿、何か分かりましたか?」


 帰って来たラッセルにすかさず質問するのは雷の国総隊長エリザレア。


「少し離れた場所で血だまりを見つけました。鎧や兜の残骸も見つけましたのでアーヴェルム国の先遣隊は既に全滅したと考えられます……第二陣の投入か、到着が遅れているのかと。つまり……第二陣が来るまではこのミッションはここにいる連合軍だけで行なわなければならないということです」


 六日前、三日前にヴィントル国で発生した()()()は数が少なく、すぐに退治されたと聞いていたアーヴェルム国は、今回もその類だと思っていた。

 そのため少ない兵でも派遣には十分だと思い込んだのが間違いだった。今回の誤算は前回二回とは違い、数体の()()()ではなく巣穴が存在していたということ。

 更に悪いことには、アーヴェルム国の兵士たちの熟練度は本国風の国(ストムゼブブ)ほど高くは無かったところだった。この国の兵士の戦闘力は巣穴を相手にできるほどの水準には達していなかった。

 先ほどアスタロトへ伝令が伝わったのは、この先遣隊の生き残った者が逃げ延びて伝えたからだったのだ!


「なるほど、既に全滅を……それで巣穴の位置は分かりましたか?」


 マルクが作戦立案のために詳しく聞き出す。


「ここから二キロほど北東にヤツらが出入りする巣穴がありました。ただ、幸いなことにカゼハナのものよりも涌き出す数が随分少ないようです。誘い出すためだけに臨時に結成された群れという感じですね。やはりアスタロト殿の言うように本命は首都のボレアースなのかもしれません。この連合軍の戦力なら十分殲滅できるかと。それと今連合軍が駐屯しているこの場所の近くにはアリはいないようです。今のうちに作戦立案と共有をしておきましょう」

「よし、ではまずは役割を分けよう。この場を仕切らせてもらいたいがよろしいかエリザレア殿?」

「差し支えなければお願いします」


 軍経験の長い樹の国マルクがこの場を取り仕切る。


「では、散らばったアリどもを追跡して駆除する班と巣穴を攻撃する班に分ける。隊長格は集まってくれ。フリアマギア、キミは参謀として私の小隊に入ってくれ。レッドドラゴンの方々、あなた方の代表者はフレアハルト殿と聞いているが、今この場に居ない中どなたが代表ですか?」

「俺だ」


 と名乗り出たのは、『聖炎耐火(しょうえんたいか)の儀』でアルトラに炎を浴びせかけた五人の中の最後の一人。 (『聖炎耐火(しょうえんたいか)の儀』については第102話から第103話を、彼以外の炎を浴びせかけた四人については第449話参照)


「プロクスと言う。あまりレッドドラゴン以外とは関わってこなかったため失礼な言葉遣いをしてしまうかもしれないが許してもらいたい」

「ええ、些細なことです、お構いなく」


 集められた隊長格は、

  樹の国 竜種ユグドドラゴン族のウォライト

      魔人種バルバトス族のクラウディオ

      竜人種ドラゴニュート族のアランドラ

      土の精霊種ソリッドノーム族のベオバルツ

      【総隊長】木の精霊種トレント族のマルク

  雷の国 亜人種ホワイト・ヘルヘヴン族のラッセル

      獣人種ウェアライオン族のリオライト

      獣種雷獣族のライオネル

      雷の精霊種ヴォルト族のアレキ

      【総隊長】魔人種シトリー族のエリザレア

  客将  竜種レッドドラゴン族のプロクス


「この中で飛行できる種族が多い隊はどれくらいいる?」


 この質問に六人が手を上げる。

 樹の国のウォライト、クラウディオ、雷の国のラッセル、アレキ、エリザレア、そしてレッドドラゴンのプロクスの擁する六部隊だった。


「半数以上か、それは好都合だ。では飛行できる隊に散らばったアリどもを追跡して掃討する役を担ってもらいたい。ただ、レッドドラゴン隊のプロクス殿、あなた方は巣穴を襲撃する班に入ってくれ。アリを殲滅するのにあなた方の炎は最適だ」

「了解した」

「では、アリを空から追跡可能な部隊は散らばったアリどもの方を頼む。他の隊と飛べない種族は巣穴を攻撃だ。まずは巣穴付近にいるアリを倒していき、最終的に巣穴内のアリを殲滅させる」

「いえマルク殿、今回の作戦に普段の定石(セオリー)は必要は無いと思います」


 風の国や樹の国では、周りから徐々に減らしていくのが常識の作戦だが、今回はアリに対して効果的となる炎を使える者がいるため、フリアマギアがその常識を否定する。

 余談だが、もし火の国に発生した場合、火の国には炎使いが多いため、他の国より比較的簡単にジャイアントアントを殲滅できる。


「どういうことだフリアマギア?」

「ここには現在、“飛べて”、“炎を吐けて”、“強力無比な魔力を持つ”、そんな能力を持つレッドドラゴンの方々が八人もいます。私たち地上部隊が巣穴からアリたちの気を引き、彼らが空から巣穴を焼尽させてくれれば、後は巣穴外に残ったアリを駆除して終わりです」

「なるほど、今回は普段とは違う強力な戦力が居るのだったな。ではその作戦でいこう」

「そういうわけでプロクス殿、まずは私たちが地上でアリの気を引きますから、あまり湧いて出てこないうちに空からの攻撃で巣穴を焼き尽くしてください」


「なぜ気を引く必要があるのだ? 空から一方的に攻撃すれば終わる話ではないのか?」

「ジャイアントアントは常に四つん這いの状態というわけではありません。時には敵を攻撃するために石つぶてなどを用います……いや、何トンもの物を持ち上げられるジャイアントアントの腕力から考えれば“石”つぶてなどという生易しいものではなく、“岩”つぶて、“巨岩”つぶてと言えるほどの大きさにすらなり得ます。岩の大きさも投擲(とうてき)速度もかなり早いので、いかに強靭な身体を持つドラゴンと言えど当たれば無視できないダメージとなるでしょう」

「確かに我々でも岩が飛んでくれば相当なダメージを負いかねないな」

「当たり所が悪ければ撃墜されることもあり得ます。ですからまずは地上部隊がアリを引き付け、空に注意が向かないようにします」

「なるほど、了解した」

「ではみんな作戦開始だ。武運を祈る」


「「「 おう! 」」」


 こうしてヴァントウ側でも巣穴殲滅作戦が開始された。

 戦争イベントは登場人物がわずかずつ増えてしまいますね……

 よく分からないヒトが多くなってすみません。

 その代わり、全ての巣穴で特別な敵を用意してますのでご容赦いただけると幸いです。


【修正のお知らせ】

 度々すみません。今回も間違いの訂正です。

 前回の焦土作戦で、レッドドラゴンの数を二十人としていましたが、正確には

 風の国へ引き連れて来た総数が二十三人 (見繕った二十人+フレアハルト、アリサ、レイアを加えた数)。

 ボレアースに五人残してきているので、カゼハナに来た時点では十八人です。

 その後の内訳はカゼハナに十人、ヴァントウへ八人になります。

 現在は修正済みです。


 次回は4月1日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第458話【ヴァントウの巣穴殲滅作戦】

 次話は来週の月曜日投稿予定です。

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