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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第2章 トロル集落の生活改善編
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第40話 生還、兼領主就任パーティー

 ヨントス捜索の日の夜。

 七兄弟のうちの行方不明になった四人が帰って来たということで、生還おめでとうパーティーが開催される運びとなった。

 今更ながら、七人のうち四人って……半分以上いなくなってるやん……

 私が魔界に堕ちてこなければ、四人ともずっと石の状態だったんじゃ……?

 まあ、何はともあれ四人戻って来たんだから良かったねで終わるところか。


 パーティーには多くの村人が参加する。

 なにせメインディッシュは、村民の誰も口にしたことが無い牛肉、カトブレパス肉だ!

 家に帰ってオルシンジテンに確認したところ、今までこの付近に出没したことがない上に獲るのすら危険過ぎて、都会ですらあまり出回らないという珍しいお肉らしい。みんな興味を惹かれ、珍しがってパーティーに参加する。


「カトブレパスの身体の大きさを考えると人間で言うところの三千人前から四千人前くらいはありそうね」


 この集落にいるのは千人程度だからそれはかなりの量と言える。

 流石にこの量は食べられないだろうと判断し、調理するのは一頭だけにしてもらって、残りのもう一頭は私が【亜空間収納ポケット】で保管する。美味しければ後々祝い事があった時などに取り出そう。

 さて、この世界の牛はどんな味がするのかしらね。美味しければ養殖したいところだけど、石化能力が無い種類のカトブレパスっているのかな?

 そんなことを考えながら料理が出来るのを待っていたところ、ヨントスを見つけた。


「一応その後の具合を聞いておくか」


 左腕がボロっと取れたなんて言われたら大ごとだしね。


「こんばんは。ヨントス、腕は痛くない?」

「アルトラ様こんばんは。腕ですか? 特に問題はないと思いますが……石になっている間に私の身体に何かありましたか? 指が少し無くなってるのが気になりますけど」

「ううん、不便が無いなら別に良いかな」


 ホントは『左腕無くなってたから探してくっ付けたのよ』ってのは言った方が良いんだろうか?

 何の不具合も無いなら言わない方が良いのかもしれない。もしこれが繊細な人なら精神的負担になりかねないし。会ったばかりだからどんな性格かも分からない。ロクトスくらい人見知りなら分かり易いのだが。

 腕のねじれ具合とかも考えて、一応向きが揃うようにきちんと付けたはずだったけど、ボロっと取れなくて良かった。ちゃんと血管や神経まで繋がったのね。石化を解除する時にきちんとその辺りは補完してくれたらしい。


「あなただけ川の中で石化していたから、健康的不具合が無いか聞いてみただけ、何も無いなら良いの」


 ヨントスの健康状態を聞き終わったところ、私を呼ぶ声が。


「あ、こんなところにいた、アルトラ様~! リーヴァントさんが呼んでるッスよ!」


 リーヴァントが? 何の用かしら?


   ◇


「リーヴァント、私を探してたって?」

「本日の主役ですからね」

「主役? 今日の主役は帰還した四人でしょ? 生還おめでとうパーティーなんじゃないの?」

「いえ、領主就任も兼ねようと思いまして、まだ就任式典のようなものを行いませんでしたので」


 いや、そんな面倒そうなのはやらなくて良いよ。面倒だし。

 と、言うわけにはいかないんだろうな……私一応領主になっちゃったから。

 会場にはいつの間にやら舞台が(しつら)えられている。人間界出身の私から見ればところどころ不格好なところもあるけど、式典やったことないところだから、それを考慮すれば十分な出来だ。

 きっとスピーチはしなければならないのだろう、就任式典兼ねてるわけだし。

 マイクは……まあこの村にあるわけもないよね。そうすると大分声を張ってしゃべらないといけないのかな……

 と言うか、式典の概念はあるんだなこのヒトたち。もしかしたら今までも外部から誰か訪れた時に歓迎の宴とかを催していたのかもしれない。あんな極貧の村だったのに宴を催すような豊かな心まで持ってられたんだなと少し感心。


「生還パーティーと兼ねてしまうのは申し訳ないですが、カトブレパスという見たこともないご馳走をいただけましたので」

「それは気にしなくて良いよ、私も就任の挨拶するにはちょうど良いかも」


 しかし……就任の挨拶なんて、会社で係長になった時以来だよ。しかもあの時は数人の部下の前だったし。

 対して今度はおよそ五百人だか千人だかの前で挨拶しなきゃならない。

 まあ普段通りやれば良いか。よほど変なことを言わなければ大丈夫。


「では式典開始までもう少しかかりますので、ご自由におくつろぎください」


 そう言われても今からとりあえず我が家に帰ってゴロゴロってわけにはいかないわよね?

 スピーチ内容と今後の計画でも考えておくか。


   ◇


「就任の挨拶の準備が整いましたのでお願いします」


 クリスティンが呼びに来た。


「あら? あなた準備の手伝いしてたの?」

「はい、捜索から帰って来てから」

「ゆっくり休んだら良いのに」

「私はそれほど動きませんでしたので。それよりも挨拶の方を……」

「あ、ごめんごめん、すぐ行く」


 舞台袖から私登場!


「「「おおーーー!」」」

 パチパチパチパチパチパチ


 拍手喝采、気持ちいい!

 舞台上に出ると丸い光が私に降り注ぐ。

 おお!? なにこのスポットライト!? いつの間にこんなシステムを作ったの?

 と思ってそちらを見ると、トロルの誰かが光魔法を当ててくれてるだけだった。ご苦労様です。


「このたび、このトロル集落の領主を拝命しました、アルトラです。

 この場所を住み良くしたい! 快適に暮らしたい!と考え、偶然にも運命に導かれて訪れたこの場所で、成り行きですが、領主に就任する運びとなりました。

 今後の展望としては、この集落を今以上に住み良くするため、まずは潤いの木を火山へ移植し、集落近くに川を通そうと思っています。これにより集落は水没の危機が無くなります。その後は、引いた川の水を利用して作物豊かな土地にしたいと考えています!

 しかし、そのためには、皆さんのご協力が必要不可欠です。至らないところも多いかと思いますが、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

 以上をもちまして就任の挨拶とさせていただきます」


 パチパチパチパチパチパチ


 就任挨拶としては少々短めだけど、くどくどスピーチするのは好かないから、こんなもんで良いでしょ。

 よく見たら、半分くらいは話聞いてない感じがする。牛肉が気になるのかもしれない。


「アルトラ様、領主就任のご挨拶ありがとうございました! それでは就任のご挨拶も終わったということで、皆さまどうぞご自由にお召し上がりください」


 あれ? 乾杯の音頭は?

 と思ったけど、まだ酒が無いから乾杯は無しか。この辺りは日本とは違うと考えないといけない。


 形式は野外での立食パーティー、ビュッフェスタイルだ。

 出されたご馳走は、いつものガルムの肉、以前少し強いと言っていた川の流域にもいた巨大ブタ、あとは川の水辺やその付近の草原に生えていた彩りある山菜、キノコなどだ。毒草や毒キノコについては魔法で解毒済み。

 酒やジュースなどはまだ無いから川辺にあった木から採ってきた果物の果汁。氷魔法でキンキンに冷えている。


 正直パーティーと呼ぶには少々物足りないラインナップではあるが、現時点では耕作のスタート地点にすら立てていない。集落のみんなが立派なパーティーにしよう、ご馳走にしようと創意工夫してくれただけで十分にありがたい。

 ただし、フルーツは絶品だ、潤いの木に成っていた梨に似た味のフルーツ。就任スピーチ前の自由時間にチラっと置いてあるのが見えたからスピーチが終わった直後に取りに行ったけど既に無かった……

 みんなこれのおいしさを知っているためか、パーティー開始直後すぐに無くなっていたらしい。

 くっ! 私も食べたかったのに! 就任スピーチさえ無ければ!


 ちょっと不貞腐(ふてくさ)れてカトブレパス肉を食べる。


「あ、カトブレパス肉って結構いける」


 石化能力があるから、勝手に石みたいに硬い肉を想像してたけど杞憂(きゆう)だったみたいだ。野生であるためか少々硬めだが、それはご愛嬌。魔界(ここ)に来て食べたどの肉より美味しい。

 実際村のみんなにも好評なようで、千人ほどしかいない村なのに、もう身体の半分以上、多分千五百人前くらいが無くなっている。


「さて、私も魔界(ここ)に来てご飯をあまり食べないようにしばらく我慢してたし、今日は少し多めに食べさせてもらおうかな」


   ◇


 少し時間が経ったところ、周囲が絶句しているのに気付いた……

 食べた皿の量を見て私自身もドン引き。

 結局、私は周囲がドン引きするほどの量を貪り食ってしまったらしい。

 目に付いた先からどんどん料理を持って来ていたら、気付いた時には私の食べた皿の数が百枚を超えていた。


「あっ……食べ過ぎた……」

「ま、まあ少し前の極貧の時と違って、今日は食べ物が沢山ありますし、何と言ってもアルトラ様が獲って来たものですから」


 周りには私の大食いをフォローをしてくれる者もいたが……


「うわー、凄い食欲ッスね、アルトラ姐さん!」


 中には嬉々として茶化しにくるヤツもいた……

 自分が『暴食』の王の転生者だということを忘れていた……

 これからはもう少し自分を律するよう努めよう……今日のは明らかに食い過ぎだ……


 何ヶ月もいなくなっていた人物が四人も帰って来たということで、祝賀ムードの中夜は更けていった。

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