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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第15章 火の国ルシファーランド強制招待編
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第387話 火の国ってどんなところ?

 船の食堂で出されたものは、ほとんどが魚料理。

 新鮮なため刺身で出されるものも多いが、きちんと焼き魚、煮魚などにも対応してくれる。

 ただ、豪華客船というわけではないため、あらゆる料理に対応しているというわけではない。出されるものは海の幸オンリー。

 その中で興味を惹かれるものがあった。


「何これ!? 身が青い! こんな魚見たこと無いわ!」

「アオハゼって魚でね、青い色素を溜め込むんだ」

「珍しいわ! じゃあこれ刺身にしてもらえるかしら? あ、それだけだとなんだから普通の魚の刺身もお願い」


 メニューが写真付きというわけではないため、その他のものも適当に選んだら、黄色いご飯に焼き魚が乗ったもの、エビを甘辛く揚げたもの、小魚を天ぷらにしたもの、魚と豆を煮込んだものなどが出て来た。


「では――」


「「いただきます」」


 私とアリサが挨拶を口にすると、サンドニオさんに訊ねられた。


「アルトレリアではそう言って食べ始めるのですか?」

「そうですね」


 『いただきます』と言って食べ始める風習は、地球でもほぼ日本にしか無いらしいから、異世界でもあるはずがなく、どこへ言っても最初はこんな感じの反応になる。

 彼らにもアルトレリアに『いただきます』を定着させた経緯を説明。 (経緯については第77話で少し触れています)


「火の国ってどんなところなんですか?」

「砂の地帯が多い国ですよ」

「砂漠ってことですか?」

「ええ、そうですね。砂漠地帯には雨も降らず乾燥しています。とは言え山から大きな川が流れていますので、その川のほとりは植物が生い茂っており、川に沿って町が作られています」

「砂漠地帯ってことは暑いんですか?」

「暑い? いいえ?」


 なぜかキョトンとした顔で否定され、逆に質問を返された。


「なぜ砂漠が暑いと思ったのですか?」


 砂漠って普通暑いものなんじゃないの?


「砂漠なのに暑くないんですか?」

「アルトラ殿の言いたいことが要領を得ませんが……確かに場所によっては暑いところもあります。しかし溶岩地帯に近いところ以外の砂漠は氷点下を下回りますよ。川の下流や支流など水量が少なくなったところは氷が張ることもあります」


「「氷点下ですか!?」」


 私が驚いたと同時にアリサも驚いている。アリサについては『氷点下』の単語に反応しただけみたいだけど……

 どういうこと? 私は暑いと思っているのに、彼らの認識は氷点下になるって……

 双方の考え方が噛み合っていない。


「アルトラ殿の出身地の砂漠は暑いのですか?」

「私の中ではそれが常識だと思ってたんですが……」

「火の国の砂漠は寒いのが常識です。溶岩地帯に入れば気温が違ってきますが……それ以外の場所は基本的には寒いですよ」

「な、何で砂漠なのに寒いんですか?」

「なぜと言われましても……そういう場所ですので説明がしにくいのですが……わたくしどもにとってはそれが常識ですので……」


 何でそうなのか分からない!

 これは現地に行ってみて理解するしかないのか。


「“火”の国と言うからには、国中で火が燃え盛っていて、わたくしたちには過ごし易い場所なのかと思っていました」

「ハハハ、そんな地獄のようなところにはレドナルドはともかく、わたくしは住めませんよ。アリサ殿は火に強い種族なのですか?」

「はい」

「“火”の国なのに寒いんですか? 矛盾してませんか?」

「火の国は別に暑いから火の国と言われているわけではありません。溶岩地帯が多く火山が多いためそのように呼ばれています。もちろんそれらが多い地域は熱くて近寄ることもできないような場所も存在しています」


 国全体が熱いわけではないのか。

 『火の国熊本』みたいに、通称のようなもんなのかな?


「人々が暮らす地域では気温が調整されいてて、とても暮らしやすい土地となっています。それもこれも歴代ルシファー様が尽力されたお蔭です。ただ今代のルシファー様になってからは……」

「サンドニオ!!」


 突然レドナルドさんが大声で言葉を遮った。


「誰がどこで聞いてるかも分からないんだぞ!!」

「あ! し、失礼しました。最後のは聞かなかったことにしてください」


 どうやら、現ルシファーにかなり不満に思っていることは間違いないらしい。突っ込んで聞きたいところだけど、多分何も話してはくれないだろう。


「ところで、お二人は何の種族なんですか?」

「わたくしは砂漠の半魚人(デザートサハギン)。レドナルドはサラマンディアという火トカゲの亜人です」

「サンドニオさんは火の国の出身なんですよね? 何で半魚人なのに砂漠を住処に選んだんですか?」

「さあ、それは現在のわたくしどもには何とも答えられない質問ですね。祖先がそういう風に適応進化したからと言うより他はありません」


 ああ、これってクジラとかイルカに「何で肺呼吸なのに海を住処に選んだの?」って聞いてることと同じか。

 太古の時代に海を住処としたのだから、現代に生きるクジラやイルカが理由を知るはずもない。


「水は必要無いんですか?」

「多少は必要ですが、それほど多く必要とはしませんね。もしかしたら普通の亜人の方々が摂取する水の量より少ない量で活動できるかもしれません」

「乾燥したら身体から油が出たりとかはないんですか?」

「油……ですか? そのような生体反応はありません。誰から聞いたのですか?」

「アクアリヴィアに住む水棲亜人は日に何度か水に入らないと油が出て生臭くなってくるって話を聞いたもので」 (第383話参照)

「そうなんですか? 半魚人(サハギン)砂漠の半魚人(デザートサハギン)では身体の構造が異なっているのかもしれませんね。最早別の生物と言っても過言ではないのかも。我々の国にも半魚人(サハギン)はいますが、彼らとあまり関りを持っていないので知りませんでした」


 『半魚人(サハギン)』と名前に付いているのに、住んでいる場所でここまで生態が違うものなのか。


「レドナルドさんは飛べるんですか? 背中に羽があるようですけど」

「飛べます。我々は亜竜種に属するので、飛行する能力もあります」


 なるほど、やっぱり上空から地獄の門前広場に降り立ったわけね。


「ドラゴンとは違うんですか?」

「ドラゴン……ではないですね。性質で考えるのならどちらかと言えばトカゲ(リザード)に近いかと。『サラマンディア』と言う種族名の通り、古の時代に火の精霊サラマンダーに加護を受けた種族とされています。そのため火にはある程度強いので溶岩地帯でも生きていけるような身体をしています」


 ドラゴン種ではないから彼はアリサのことを怖がらないのか。下位種のワイバーンはこの三人が居るだけで委縮してたけど。 (第249話参照)


「じゃあ砂漠は寒くてたまらないんじゃないんですか?」

「いえ、元々砂漠に住んでいるので、寒さにもそれなりに強いですよ」


 『サラマンディア』という種族の生態が火に強く、寒い環境にも強いというわけか。

 『火に強かったら(イコール)寒さに弱い』というわけでもないってわけね。


 その話を聞いて何気なくアリサの方を見ると目が合った。そしてアリサ苦笑い。

 無言であったが『何でレッドドラゴンは寒さに極端に弱いのでしょう?』と言いたげな顔をした。


「この船が向かっている港町イルエルフュールってどんなところなんですか?」

「火の国にいくつかある港町の一つです。それなりに活気がある場所ですが、建物は少々古めかしい感じですね。町から少し離れただけですぐに砂漠になるため、砂埃や乾燥でところどころ崩れたりしている建物が多いと思います。街灯などもありますが、たまに砂が入り込んでショートしてたりもします」


 う~ん……聞く限りでは住みたくはないな……


「この港町で砂漠渡りの準備をして、川に沿って進み、まずは首都アグニシュとの中継地点である砂漠の中にある町を目指します」

「さて、我々はまた仕事をせねばならぬので、この辺りで席を外させていただきます。本当にお代はアルトラ殿のお支払で構わないのですか?」

「お構いなく」


 路銀も大して無いのに、ここで割り勘にしたら彼ら過労死しそうだし。


「ではありがとうございました」

「さてアリサ、私たちも船室へ戻りましょうか」

「はい」


 結局この日、フレアハルトとレイアが起きることはなかった。

 『熱い』と『暑い』の使い分けが難しい文章になってますね……

 使い方が間違ってる場所があったら、指摘していただけるとありがたいですm(__)m


 余談ですが、身が青い魚は実在するそうです。

 本文中には『アオハゼ』という名前で出しましたが、実在する魚は『アナハゼ』と言うそうです。

 身が青い魚などいるはずがないだろうと検索してみたので、そんな魚がいるのかとビックリしました。


 次回は7月31日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第388話【海路を往く その2】

 次話は来週の月曜日投稿予定です。

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