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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第14章 アルトラルサンズ本格始動編

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第384話 各国の大使館建設始動 その5(大使館予定地割り振り会議と前乗り組)

「おい、もう一個考えることが減るかもしれないぞ?」


 キャンフィールドが何かを見つけたらしい。


「風の国からも『競合した場合は出来る限り高いところを希望します』と書いてある」


 そんなことも書いてあったんだ……

 私、どこ見てるんだよ……第一希望から第三希望のところしか目に入ってなかったのか? まさに『お前の目は節穴か?』状態だ……


「高いところって……各大使館予定地でそこまで高低差ある? 監督したダイクー本人なら分かるかしら?」

「まあ、一ヶ所だけわずかに高いところがあるが……あれを“高いところ”と言って良いかどうか……他と大して変わらないぞ? せいぜい二メートルかそこら高いくらいだ」

「高いところ希望なら高いところに形成してあげたら良いのでは? アルトラ様なら土地を隆起させることくらい朝飯前なんじゃないですか?」


 というルークからの提案。


「それやったら、ダイクーたちが建設予定地を綺麗に整地してくれた意味が無くなるけど……? 流石に整地した場所を綺麗なままに土地だけ盛り上げることなんて出来ないよ」


 ダイクーを見るとルークを睨んでいた。


「あはは……すみません。ダイクーさんの努力を無駄にする提案でしたね……」

「まあ、少しでも高いならそこに割り振りましょう。先方の希望には適ってると思うし。もし不満なら自分たちで改造してもらうってことで」


 そんな条件で建てたら、何だか高層階の大使館を建てられそうだけど……


「さて、それじゃあとは雷の国と土の国の二ヵ国か。この二ヵ国は特記事項は無かったみたいだけど…………無かったよね?」


 私が碌に確認してないのが判明してしまったから、念のため全員に聞く。


「ありませんね」

「無いな」

「無いですな」

「無いと思います」


「じゃあ、私の個人的な気持ちとしては雷の国を第一候補に当てたいと思う。土の国の出身者はこの場に居ないからアドバイスを聞くこともできないし、詳細を答えられる者も居ないしね」


 ……

 …………

 ………………


 特に異論は無さそう。話を進めても良いかな?


「私としては雷の国が第一候補でほぼ決定だけど、一応ジョンさんにも意見を聞きいておきたいと思います。雷の国の大使が生活する上で、何か気になりそうなことってありますか?」


 せっかく呼んでおいて、何も質問しないのもなんだし。


「そうですねぇ……生活する上で、必要となるものは特には無いですね。水棲亜人の方のように水が無ければ困るというわけでもないですし、自然に囲まれてれば心和むというわけでもないですから。ただ、やはり機械的な面で便利な国なので電気設備があるのが望ましいんですが……」

「それはまだ無いですね……ダムが出来次第って感じですし」

「ですよね、我々がそのために呼ばれたわけですしね」

「そこは個人宅用の魔力変換式の発電機で賄ってもらうしかないですね。じゃあ、雷の国を第一壁の最も近いところに決定とします。土の国は第一壁に二番目に近いところということで。それではそういう風に各国に通達しましょう」

「では私が――」

「いえ、僕がやっておきますよ」


 リーヴァントが通達を引き受けようとしたところ、ルークが名乗り出た。


「そうですか、ではルークくんお願いします」

「それでアルトラ様、通達は、また隊商の方々にお願いすれば良いでしょうか?」

「そうだね。できることなら手紙を届けてくれた隊商に返送をお願いするのが望ましいかも。国で預かった手紙を持って来てくれたってことは、国から信用されている隊商だと思うし」

「手紙受け取ったのはマリリアさんでしたっけ? 手紙を運んでくれた方の顔を覚えてるでしょうか?」

「どうだろう? 一応役所受付を訪れた隊商の、出身国と代表者の名前と隊商の名前くらいは控えておいてもらうように伝えたけど」


 フレデリックさんが訪れた時に、今後アルトレリアを訪れる人が増えることを見越してそういうことは伝えてある。


「名前が分かってるなら探し出せますね。呼びかけてこちらに来てもらうようにしましょう」

「あ、じゃあ、前にドワーフさんに作ってもらったお声がけするのに便利な道具があるからそれ持ってくと良いよ」


 と言いながら、ちょっと席を外し、役所の備品室から『拡声器』を持ってきた。


「何か見たことありますね、どうやって使うんでしたっけ?」

「横に付いたレバーをグルグル回して蓄電して、スイッチを入れれば声を拡散できる。わざわざ大声で隊商の名前を叫びながら探さなくても良いからいくらか喉が楽だと思う。これ使って隊商の名前を呼んだら向こうから名乗り出てくれるかもしれない。じゃあよろしくお願いね」

「はい」


 ということで、今回の会議は終了。無事大使館建設予定地を各国に割り振ることができた。


 この後、ルークが拡声器で各国で預かった手紙を届けてくれた隊商を探し回り、返答の手紙を預けることができた。



   ◇



 そして二週間後――


 各国から大使館の建設作業員を派遣する旨の通達があり、私とリーヴァント、副リーダー五人でお出迎え。


 数日後に、続々と空間魔法でアルトレリア入りする建設作業員。

 その先鋒となったのは水の国からの建設作業員だった。


「アルトラ殿、本日から水の国(アクアリヴィア)大使館建設に従事させていただきます!」

「はい、ではご案内します」


 これにより、各国の大使館建設が始まった。



   ◇



 そして数日後――

 以前トライアさんが「前乗りは可能ですか~?」と聞かれた通り、樹の国の面々は大使館建設が始まってすぐに派遣されて来た。 (第234話参照)


「アルトラ様、本日よりこちらに派遣されました、以前視察の時にお会いしましたが、改めて自己紹介致します。わたくしドリアード五姉妹の四女トレシアと申します。こちらはわたくしの補佐をしてもらいます、五女のトロモアです」

「トロモアです、よろしくお願いします」


 五姉妹の四女と五女を寄越したのか。魔王代理の姉妹を二人も寄越すなんて、存外期待されてる?


「そしてもう一人の補佐リリーアです。彼女もアルトラ様にとっては縁のある者ですので、わたくしの補佐に就いてもらいました」

「アルトラ様、よろしくお願い致します」


 彼女は私の魔力で昇華した高位精霊。 (第327話参照)

 縁のある者というのは多分そういうことだろう。


「こちらこそよろしくお願いします。ところで…………何で魔王代理のトライアさんまで来てるんですか?」


 魔王代理って、現状の国のトップなんじゃないのかしら?


「いえ~、こういう時でも無ければアルトレリアに来る機会も無いものですから~。ああ、太陽の光が強くて心地良い……」

「太陽の光って……樹の国にだって疑似太陽があるじゃないですか?」

「我が国の太陽は木々の遮りが多くて、影になる部分も多いですから~」


 なるほど。

 自国にだって疑似太陽できたんだから、わざわざ浴びに来なくても良いと思ったけど……そういう事情があるのね……


「でもだからって魔王代理がこんなところで油売ってて良いんですか?」

「国のことなら今日一日だけ無理言って、必死に頼み込んで、トリニアに任せて来たんで大丈夫ですよ~」


 必死に頼み込んだって……そこまでしても浴びに来たい疑似太陽なのか。


「本当なら私自身が移り住みたいところですけど、ちょっとだけ日光浴するだけで我慢します~……」


 言い放ってから、寝っ転がってしまった。


「お、お姉様!! はしたないです!!」

「他国ですよ!!」

「大丈夫ですよ~、花に擬態しておきます~。周りの亜人(ひと)たちからは路傍の花に見えるようにしますから~」


 と言ったと思ったら、むくりと起き上がり、一番日当たりの良いところまで移動して一輪の花に変身した。


「私は今日一日お休みを満喫します~。しばらく日光浴したら帰りますからご心配なく~。あ、私はただの付き添いで来てますので、お話はトレシアにお願いします~」


 変身した花はしゃべりながら動いてて、まるで音に反応する花のオモチャのようだ。え~と……名前は何だったか……

 そうだ! 確か『ロックンフラワー』だ! 音に反応してダンスを踊るサングラスをかけた花のオモチャ。私が生まれる前に流行ったものだから実物を見たことは無いがそれにそっくりな動き。


「アルトラ様、すみません! 国の仕事する時にはきちっとしてるんですけど…………それ以外は割とダラけてるので……」

「ま、まあここを気に入っていただけたなら嬉しいです。好きなだけ……と言っても忙しいでしょうから、気が住むまで日光浴して行ってください。ですが……前乗りすると言っても、まだ住まわれる建物はできていませんが……?」

「それでしたら大丈夫です。樹魔法で簡易宿泊施設を作りますから」

「しかしそれだと水道は通ってませんが……」

「わたくしたちはライフライン関連の魔法も使えますから、ご心配には及びません」

「そ、そうですか。了解しました」

「それとご所望していた本を大量に持参しました」

「おお! それはありがとうございます!!」


 この町には本の類が無い。アクアリヴィアに旅行に行った時に買ったものをクリスティンが少し持っている程度で、あとは町で見様見真似で自作された、言わばまだまだ文法もあまり形になっていない同人誌程度のものばかりで、教養になるような本はほぼ皆無。

 そのため、各国に大使派遣に際して色んな本を持参いただくようお願いしておいた。


「………………それで、その大量の本はどこにあるんですか?」


 キョロキョロと近くを見回してみるが、それらしき物は存在せず。


「すみません、樹の精霊以外の別動隊が後々到着しますので、その者たちが持って来てくれるはずです。時間的にもうそろそろ来るのではないかと」


 ああ、この方々は植物転移法で来たから、それが使えない人たちは後から来るってわけか。


「それで本のお代は如何ほどになりますか?」

「無料で寄付いただいたものですので、お金は結構です」

「本当ですか!? ありがとうございます!!」


 その一時間後、樹の国の別動隊は隊商に交じって到着。

 どうやら、トレシアさんら四人は別動隊が到着する頃を見計らって、植物転移法で移動してきたらしい。

 大量の本も無事届いた。

 一旦亜空間収納ポケットに収納し、後日他の国の本も到着した時に図書館をオープンさせようと思う。というわけで整地を任せていたダイクーたちの手が空いたため図書館の建設をお願いした。


 樹の国の別動隊について。

 別動隊と聞いていたから大使館職員かと思ったが、そうでなく建設作業員だった。

 職員は正式な大使派遣日時が迫り次第、こちらに来ると言う。

 つまり、早々に来た大使と補佐は本当に前乗りしただけらしい。

 それもきっと、彼女(トライアさん)の要望だろう。

 正式な大使派遣予定日から一ヶ月半ほど早い前乗りだったが、こうして樹の国側からのアルトレリアの大使として仮就任することとなった。


   ◇


 夕方、日が落ちた頃――

 何気なくトライアさんが花に擬態したところを見ると、トライアさんが変身したらしき花が(うな)()れてしおれているように見える。


「ちょっ!! トライアさん! 大丈夫ですか!?」

「えあっ……アルトラ様……あれ? もう夕方ですか~? 随分寝入ってしまったみたいですね~」


 しおれて見えたから体調でも悪いのかと思い、焦って急いで声をかけたがただ単に寝ているだけだった……ビックリしたぁ……


「こんなに長く寝てしまうなんて、しばらく振りでした~。疑似太陽心地良かったです~」


 そう言うと花の擬態を解いてドリアードの姿に戻り、


「お蔭様で随分と身体を休めることができました~。では私は本国へ帰りますので、妹二人のことを今後ともよろしくお願いしますね」

「は、はい」

「それではまたお会いしましょう」


 そう言って眠気眼(ねむけまなこ)で本国へ帰って行った。余程心地よく眠っていたらしい。お疲れなのかな?


   ◇


 後日、農林部門が管理する畑や田んぼでトレシアさんたち三人を目にする機会が増えた。アルトレリア住民との親交・外交をちゃんとこなしているらしい。どうやら木の精霊の方々は、本当に農業が好きなようだ。

 今日で第14章終了です。

 次のエピソードから15章になります。


 次回は7月24日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第385話【余計な訪問者 その2】

 次話は明日投稿予定です。

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