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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第14章 アルトラルサンズ本格始動編
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第382話 妖精の重要性と寝耳に水の報せ

 この中立地帯、改め、アルトラルサンズは、各国からの流通拠点としての役割を持ったため、イェン通貨の価値が急騰した。

 以前カイベルに聞いた時には紙同然と言われたイェン通貨も、現時点でウォル通貨の半値ほどの価値にまで高まった。

 まだ作って半年ほどしか経ってないお金が、“アルトレリアの町中だけで使う予定”で作ったものだったのに、他国との流通に利用できるようになったのだ!


「カイベル! これって結構凄いことなんじゃないの!?」

「私もこれほど急激に価値が上がるとは思っていませんでした……」


 珍しくカイベルの予想が外れた。

 それほどヒトの噂の流れというのは読みにくいものなのだろう。


「何か……|Tsubuyaitterツブヤイターでフォロワー人数が百人から突然一万人になったかのような感覚……ってのとはちょっと違うか」


 そもそもフォロワーあまり増えたことないから分からんわ……


「それにしてもホントに色んな国の商人が出入りするようになってきたね」


 フレデリックさんがこの町を訪れたことを皮切りに、様々な異種族がこの町に出入りするようになり、生前に読んだ“幻想世界の住人の説明がされた本”に出てくる者たちが多数訪れるようになった。


 ドワーフ、エルフに代表される亜人は元より、ミノタウロスのような牛面の獣人、オークのような豚面の獣人、人型から獣型に変身するウェアウルフ、ウェアタイガーなど、今までは見たこともなかった獣人も出入りするようになってきている。

 樹の国には獣人に分類される亜人が多く住み、樹の国の隊商にも獣人が多い。

 人型の亜人と比べると、獣人は身体能力が高いため隊商のパーティーメンバーに組み込まれていることが多いようだ。

 が、私が最も注目したのは獣人ではない。


「カイベル! 何か空飛ぶ猫みたいなのがいるけど!」

「ああ、あれはケット・シーですね。亜人ではなく妖精の一種です」


 おお……あれが以前エミリーさんから聞いたアニメ『シーとラトン』の題材になった種族か。 (第263話参照)

 ケット・シー連れてる隊商多いな。

 あ、あのケット・シーの顔を……口周りに黒い模様があって、ドロボウ髭に見える。失礼ながら商人と言うより盗っ人みたいね。


「あっちに犬っぽいのがいるけど、あれも妖精?」

「いえ、あちらはコボルトで、犬面獣人の一種です。以前樹の国でピラミッドを案内していただいたアヌビス族のジゼル様と似た種族ですね」 (第358話から第359話参照)

「じゃあ、あっちに人型に近い猫がいるけど、あれは妖精?」

「いえ、あれはネコボルトで、猫面獣人の一種ですね」

「じゃあ、あっちの猫面獣人もネコボルト?」

「いえ、あれはウェアキャットで、猫型の半獣人ですね」


 どこが違うの……?


「あっちの猫はケット・シーで妖精で、こっちの猫はネコボルトで獣人、あれはウェアキャットで半獣人? どこに違いが?」

「妖精と亜人・獣人の明確な違いは、空を飛べるかどうかです。妖精はキラキラと魔力の光をまき散らしながら、空中を飛び回ります。またネコボルトとウェアキャットの違いは、ネコボルトが常時猫面なのに対し、ウェアキャットは普段は人間に似た姿で生活し、時と場合によって獣化(じゅうか)という能力を使って半獣の姿に変身します。今現在、力仕事の最中なので獣化(じゅうか)しているのでしょう。獣化すると身体能力が数倍に上がります。ただ、その半面消費するエネルギーが大きいので常に獣化状態を保つというわけにはいかないようです」

「凄くややこしいわ……見た目じゃ分かりづらい。でも、その理屈だと、私は妖精に分類されそうだけど?」


 私も空を飛ぶ時には光を放つ。


「もう一つの特徴は、妖精は身体が小さいというところです。一メートルを超える者はこの世界では妖精には分類されません」

「へぇ~、なるほど、確かに大きいと妖精って感じはしないわ」


 確かによくよく見ると、ケット・シーは小さい。他にも妖精らしき者を連れてる隊商があるけど、人型のものを含めて全部一メートル以下のようだ。


「何だか各隊商、最低一人は妖精連れてる気がするんだけど、何で妖精をお供にする隊商が多いの?」

「この世界で光魔術師は珍しいという話は覚えてますか?」

「覚えてる。アルトレリアにも両手で数えるくらいしかいないし」

「妖精は光魔法を使える者が多いのです。この世界は各国の町や都市、また樹の国の光を咲かせる花(ライトブルーム)がある場所、土の国の光を出す石(ライトストーン)のある場所、雷の国全域、火の国の一部など光源となるものがある場所以外は真っ暗闇ですので、旅をするには光が重要になります」

「つまり……明かり要員?」

「そうですね。アルトラ様の疑似太陽ほどではないにせよ、魔法単体で周囲を照らせる魔法というのは光属性以外には基本的には存在せず、魔界で光魔法は稀少ですから」


 “魔法単体で”というのは、火魔法なら木に燈して松明として使ったり、雷魔法なら蓄電して蛍光灯として使ったりと、火や雷の場合はそれを使う物や道具が必要だが、光魔法ならそういった道具を必要とせず、光の玉を空に浮かべるだけでしばらくの間光源が確保できるという意味。


「周囲を見やすくするだけでも、獣や魔獣に急襲される可能性を低くできますから、国から国へと行商して渡り歩く隊商には、言わば必須とも言うべきスキルです」

「なるほど、そういう理由で妖精が各隊商に一人くらいはいるってわけね」


 しかし、何やら猫型の妖精が多い気がする。


「理屈は分かったけど、ケット・シーが隊商に多いのはどういうわけ?」

「猫は旅の幸運と安全を願う動物で、更にその妖精ですので、ケット・シーを連れている隊商は多いのだと思われます。それに彼らは商魂たくましいので隊商に入れるには打ってつけなんです。三毛猫の雄のケット・シーなど、強力に幸運を引き寄せるという迷信があるので引く手数多ですよ。奴隷売買が可能な国では物凄い高値で競り落とされるほどです」


 それは人間界でも聞いたことあるわ。船に安全を祈願して三毛猫の雄を乗せておくジンクスがあったって。

 三毛猫の雄は三万分の一でしか生まれないから、幸運の象徴とされているらしい。


「何よりも彼らは普通に会話が成立するので、動物の猫のように一人で勝手にどこかへ行ってしまうということもありません。連れて行くなら猫よりケット・シーでしょう」

「あ、あそう……」


 確かにフラフラどこかへ行かれてしまうのは困るけど……

 でも、会話が成立しない猫は、それはそれで可愛くて魅力的ではあるのだけど……


「ところで、ネコボルトとウェアキャットの見分けが付かないんだけど……」

「手足を見ればおおよそ分かります。ネコボルトは猫のように丸い手で、物を掴むことくらいはできますが、親指の機能が弱くあまり器用ではありません。ウェアキャットは人間に近い手をしていて五本の指全てがきちんと開けるようになっています。足の指も同様に」

「なるほど」


 要はウェアキャットはネコボルトの上位互換って感じか。


 カイベルと共に、訪れた隊商を観察しながら歩いていたところ、商人が何やらキナ臭い話をしているのが耳に入った。


「最近氷の国(アイスサタニア)はより物騒になってきたな」

「内戦が激しくなったらしいしな。しばらくはあの国への行商は控えた方が良いだろう」

「だが、もう少ししたら沈静化するかもしれんぞ? これ見てみろ」

「何だ?」

「見てみたら分かるさ」


「「 ………………これ、本当か!? 」」


「さあな。新聞によればだが」


 という氷の国の話題が、行商人たちから聞こえる。

 氷の国って言うと、七大国会談でフレアハルトと一触即発になった、あの|おっかないサタン(魔王)が治める国か…… (第232話参照)

 何の話題かちょっと気になったので声をかけてみることにする。


「それって新聞ですか?」

「そうだけど、お嬢さんも興味あるのか? もう読み終わったから持って行っても構わないぞ? 三日のだけどな」

「ホントですか? うちの新聞社の参考にもしたいので助かります!」


 日付を見たところ確かに三日前の新聞。とは言え、新聞作りの参考になるかもしれない。後でアルトレリアで新聞を作ってるところへ持って行ってあげよう。

 早速今貰った新聞に目を落とすと――


 << 氷の国(アイスサタニア)首都キオネーラ陥落! >>


 ――の見出し。


「え!? 氷の国(アイスサタニア)の首都が陥落!?」


 更に読み進めると、魔王サタンが反乱軍によって討ち取られ、七つの大罪『憤怒(ラース)』は別の者に継承されたのではないかという噂記事。

 もし現サタンが討ち取られているのなら、近日中に新サタンのお披露目があるのではないかとのこと。


「はっ? えっ? あのサタン(おっかないおっさん)が死んだ!?」


 寝耳に水の情報。

 何気なく貰った新聞で、まさかサタンが死亡したんじゃないかと噂の記事を目にするとは……


「カイベル! これどういうこと!?」

「はい、今代サタンは反乱軍によって討ち取られたようです」

「ってことは……あなたから見たらこの記事は噂ではなく確定事項!?」

「はい、近々新しい氷の魔王のお披露目式があるでしょう。勝利したのが反乱軍ですので、政権もほぼ丸々入れ替わるでしょうね」

「…………魔王の代替わりというものを初めて目にするわ……ちょっと衝撃を受けた……反乱軍の一人が王様になるってことなのかな?」

「そのようですね」


 そういえば、七大国会談の各国提議の時に属国が王位の返還請求していたっけ。あの時起こった反乱によって今代のサタンが討ち倒されたってわけか。 (第229話参照)

 まあ、サタン軍だろうと、反乱軍だろうと、どっちが勝ったところで現時点では私にもアルトレリアにも大した影響は無いだろうから、特別気にしなければならない話でもないか。

 むしろ今代サタンが悪政を敷いていたのなら、次にサタンになる人物次第で今後良くなる可能性もあるってことだ。


   ◇


 散歩という名の第一壁外の商人たちの観察を終え、役所に顔を出したところマリリアから声をかけられた。


「あ、アルトラ様、隊商の方たちからお手紙を預かっていますよ」

「え? 手紙? 私に?」

「アルトラ様にと言うか、この国に対して宛てられたみたいです」


 預けられていた手紙を見ると宛先はアルトラルサンズ宛。

 手紙は五枚。受け取ってみると、どれも王国印が入ってる。


「あ、これこの間の各国視察の返事か」


 と言うことで、大使館予定地を選ぶための会議を開くことになった。

 妖精って、丸い光に包まれて飛んでるイメージが強いですよね。


 明日で当小説を書き綴って丸々二年になります。

 明日の更新からタイトルが変わりますので、よろしくお願いします。

 また、現在書き綴っている第14章もあと1、2回ほどで終わります。次は火の国へ旅に出ます。


 次回は7月22日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第383話【大使館予定地割り振り会議】

 次話は明日投稿予定です。

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