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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏

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第343話 引き付け作戦

 一方、引き付け部隊、分身体のアルトラサイド――


「よし! では今から駆除作戦を開始する! エルフの方々、ゴーレムを起動して蜂の巣へ突撃させてください」

「了解!」


 エルフは土に紋章術を刻み、そこから五メートルほどある土のゴーレムが生まれる。


「しかしゴーレムは蜂たちに一度紋章を破壊されて無効化されています。もし蜂たちにそれを記憶していられる知能があるのなら、それほど長い時間巣を攻撃させ続けるのは難しいと思いますが……」

「構いません。我々引き付け部隊の役目は、なるべく多くの働き蜂を巣からおびき出して、蜘蛛の巣トラップで絡め捕ることですから。ゴーレムを突撃させるだけでも多くの蜂をおびき出せるはずです」

「わかりました。ではゴーレムに命令を刻み込みます。命令は『デスキラービーの巣を攻撃』の一点のみ。とにかく蜂を沢山おびき出してくれ!」


 命令を与えた複数のゴーレムを蜂の巣に突撃させる。

 その移動する時に発生する地響きで、眠っていた蜂たちの目が覚めたのか、巣から多数の働き蜂が出て来た。

 出て来た蜂はゴーレムを攻撃し、あっという間に紋章を消され、ゴーレムは土に還ってしまった。

 しかし、多数の蜂を巣からおびき出すことに成功。


「次は風の国の兵士の方々! よろしくお願いします!」


 すかさず空を飛べる風の国の兵士数人が、多数の蜂を引き連れ、蜘蛛の巣へと誘う。

 多くの蜂が、私たち引き付け部隊が待機している蜘蛛の巣の方向へ一直線に向かって来るのが見える。


 風の国兵士は蜘蛛の巣トラップのある場所がわかっているため、蜘蛛の巣の直前で急転し、全速力で上空へ離脱。

 追いかけて来たデスキラービーの集団は止まることができずに、蜘蛛の巣トラップに突っ込み、絡め捕られた。


「蜘蛛の巣にかかっても、針は発射してくる! 迂闊に近寄るな!」


 かかったデスキラービーは目測で数十匹から百数十匹程度。一つのコロニーに五百匹から七百匹ほどの間と考えられているから、多く見積もれば三分の一か四分の一くらいは捕まえられたかもしれない。


「蜘蛛の巣にかかったヤツらを処分する。水魔法隊用意! 全員で巨大な水球を作れ!」


 なるほど、溺れさせて窒息させるわけか。

 と思ったところ――


「雷魔法隊用意! 同時に隊員全体に雷軽減のバリアを張れ!」


 え!? 雷も!? 窒息させるのかと思ったけど、本命はこっちか! 伝導率を高めて完全に始末するために水球で包んだわけか。

 水だけだと万が一脱出された場合にまた攻撃に復帰されてしまうかもしれないから、きっちりトドメを刺すわけね。


 作られた水球に向けて雷を何発も落とす。水球はしばらく煌々と発光し、直視できないほどの光を発する。

 光が収まった頃には、水の大部分は蒸発し、後には多数のデスキラービーの死骸が残された。


「さあ、次は我々全身鎧(フルプレート)部隊の出番だ! 引き付けて、特攻部隊がやり易いように一匹でも多く始末するんだ!」

「頭を攻撃するな! 虫は頭が無くても動く! 頭から先まで一刀両断するか胴体を斬れ! 羽を狙って飛べなくしても良い! とにかく飛べなくなるように機動力を削げ!」


 ここからは蜘蛛の巣に捕えられなかった蜂たちを相手にする。一匹でも多く倒す持久戦の始まりだ。


「前衛前へ! 前衛は防御に徹し、蜂の攻撃が止んだら前衛と交代に後衛が攻撃に出ろ!」


 兵士を前衛の防御壁と蜂の攻撃が止んだ後の後衛の攻撃組に分け、更にそれを三班に分けて、逆扇形の陣形でジリジリと巣に近づく。まずは前衛壁が毒針の連射に耐える。

 大盾は機動力を考えると装備できないため、防御は全身鎧(フルプレート)と申し訳程度の小盾の装備に限られる。


「前衛! 今は耐えろ、いつか隙ができるはずだ!」


 蜂の波状攻撃により、こちらからは中々攻撃に移ることができない!

 デスキラービーの毒針は、聞いてた通り恐ろしい破壊力だ。

 みるみるうちに防御役になった者の鎧がベコベコ凹んでいく。

 一発一発は金属製のハンマーで鉄を叩いた程度の凹みにしかならないが、それが連発されると、気付いた時には兜や鎧の表面が大きく陥没している。弾丸並みというのも頷ける。一般の亜人が生身で喰らえば貫通は間違いないだろう。


 そして、一瞬だけ毒針の弾幕が止んだ時間(すき)が生まれた!


「今だ! 一班、三班! 総攻撃! 攻撃が終わったら前衛と後衛を交代しろ!」


 攻撃が緩んだ一瞬の隙に、三つある班のうちいずれかの前衛後衛が総攻撃。

 一度(ひとたび)の攻撃が終わったら前衛だった者たちは防御役を後衛と交代して再び攻撃が止むのを待つ。こうすることで一人一人の着ている全身鎧(フルプレート)の摩耗を抑えることができる。そしてまた敵の攻撃が緩んだらいずれかの後衛が攻撃。前衛は下がる。

 これを繰り返して、徐々に徐々に敵の数を減らしていく。


 デスキラービーは魔界に存在している昆虫の中でも突出して大きい虫の一種である。身体が大きいことは攻撃力や殺傷力が高くなるというメリットはあるが、一メートルもの巨体に成長するデスキラービーは、巨大化した反動なのか地球の蜂のように素早くはない。機動力が大きく落ちるという特大のデメリットがある。

 こちらから攻撃さえできれば、その大きさも相まってほぼ攻撃を当てられる。身体の巨大化によるデメリットは思った以上に大きいようだ。

 ただ、これは働き蜂という弱い個体の話。上位の蜂はどれほどの機動力があるか分からない。


「うっ……!! すまん……小手が擦り切れてた。針を喰らった……」

「毒針を喰らった者は下がれ! 歩けるうちに救護部隊のところまで行けば助かる! 幸い今回は血清の用意もできている!」


 戦い続けていると、徐々に鎧も擦り切れ、破壊されていくため怪我人が出始める。

 今回の駆除作戦はロクトスとナナトスのお蔭で、血清が多数用意できている。針を喰らった者はすぐに下がらせた方が良い。悪化する前に解毒できれば、後々復帰も可能かもしれない。


 森の中で火魔法は厳禁ということで、私は切れ味鋭い風魔法の【風切りの刃(ウィンドカッター)】や【種大砲】で応戦する。

 デスキラービーは、【風切りの刃(ウィンドカッター)】で切り裂ける程度の硬さだから防御力自体はそれほど高くないようだ。まあ外殻ごと食べる亜人もいるという話だし、切り裂くことのできる魔法なら問題無く斬れる。


 一時間の攻防を続ける中、手勢も徐々に減ってきて、攻撃の頻度も少なくなってきた。十分な数を引き付けられたと思われる。

 怪我人もそれほど多くは出ていない。引き付け作戦は成功と言えるだろう。

 あとは特攻部隊が巣を陥落させるのを待つのみか。

 蜂の波状攻撃には、前後交代作戦で対応だ!


 次回は4月27日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第344話【特攻作戦開始!】

 次回は明日投稿予定です。

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