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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
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第335話 風の国からの援軍

 一日後――


 樹の国の空間魔術師により、風の国の援軍が到着した。


風の国(ストムゼブブ)・デスキラービー討伐隊、現着いたしました!」

「来ていただき、ありがとうございます」


 応援に来た兵士は全員全身鎧(フルプレート)装備。

 黒い色と白い色を着ている者がいる。


「トリニアさん、全身鎧(フルプレート)の色分けって何か意味があるんですか?」

「黒が引き付け役、白が引き付けた後に手薄になった巣に突撃する役ですね」

「なるほど、大群を引き付けておいて、手薄になった巣を攻撃するのか」


 その時、考えてもみなかった方向から声がかかった。


「あれ? ベルゼビュート様じゃないですか?」


 振り返ると全身鎧を(まと)った兵士。

 高めの声から判断すると多分女性だが……誰だ?


「トリニアさん、この方、誰だか分かります?」

「いえ……兜をしているままでは何とも……そもそもアルトラ様のお知り合いなのでは?」


 ベルゼビュートって言ってたし、それもそうか。

 しかし、全身鎧(フルプレート)に覆われてるから誰か分からん。風の国には二人くらいしか知り合いはいないはずだが……

 それにしても大分細身の兵士だけど重くないのかしら?


「私ですよ」


 そう言いながら兜を脱ぐと……


「ティナリス!?」 (第235話参照)

「臨時会談振りです。トリニアさんもお久しぶりです」

「そっか、あなた風の国の最高戦力だから派遣されて来たのね」

「デスキラービーは放っておくと世界的な危機に陥る可能性がありますからね。ましてやコロニー九個となると、今まで聞いたことないですし」


 私の前々世の記憶を掘り起こしたところ、彼女は前々世の私を母のように慕うルフをいう巨鳥の高位種族で、超強力な風魔法の使い手。

 ある程度厚みのある鉄板ですら、風で切断できるほど強力、だったはず……凄く狭い断片しか記憶から引き出せないから曖昧だが……

 いくらデスキラービーが大きいとは言え蜂の外殻程度なら、煮立った大根を斬ることくらいわけなく斬り裂くことができるだろう。


「それより、何でベルゼビュート様がここにいるんですか?」

「偶然居合わせただけだよ。あなたが代表者の一人? アスタロトさんは?」

「本国で公務ですよ。一応国王代理なのでそうそう本国を離れるわけにはいきませんから。駆除は私たちに一任されました」

「あ、そう」


 まあいくら強くても王様代理が直々に駆除に来るわけもないか。簡単に国を空けるわけには行かないだろうし。


「あなたは~……え~と――」


 考えながら視線を下にズラして鎧の色に注目すると……白い全身鎧(フルプレート)を着ている。


「――巣への突撃役?」

「はい、私の風魔法は切れ味鋭いので、大勢を引き付けてもらった後に、巣ごと真空の竜巻で滅殺してやりますよ! 私の組み込まれる隊は勝ったも同然と思ってもらって構わないです!」

「おぉ……! 頼もしい」


 空飛ぶ種族だから、それ込みで作戦が立てられそうな気がするんだけど……こんな重そうな鎧着てて満足に飛べるのかしら?


「その鎧って飛ぶのに重くないの?」

「鎧ですか? こんなの私にとっては通気性の悪い服着てるのと変わらないですよ。私の正体をご存じですよね?」


 ああ、正体は数十メートルある巨大な鳥だから、人型になってもそれ相応の筋力があるってことなのか。


「そんなことよりもっとお話ししましょう! 久しぶりですから、お話したことは沢山あります!」


 しかし、そんな彼女の考えも、ここにやってきた風の国兵士の次の一言でかき消される。


「ティナリス、樹の国を交えた顔合わせミーティングが始まりますよ」

「ええ~~……うぅ……そ、そういうことですので、ベルゼビュート様、また今度と言うことで……」


 肩を落としながら渋々作戦会議本部へと向かった。

 あの子親離れできてないのかしら? 前々世の私が死んでもう三十年近く経つのに。


「あ、ミーティングは私も参加するので、ちょっと行ってきますね」


 偶然居合わせたとは言え、トリニアさんも樹の国の代表者であるため、出席しないといけないらしい。


   ◇


 やることも無いのでルイスさんと共に、昨日血を抜かれて寝込んだロクトスとナナトスの様子を見に来た。


「アメリさぁ~ん、食べさせてくださいッスよぉ~」

「ナナトスさん、もう動けますよね? 自分で食べてくださいよ!」


 ロクトスとナナトスが貸してもらった部屋の前まで来ると、ナナトスが誰かにウザ絡みしている声が聞こえる。


「二人とも体調はどう?」

「ああ、アルトラ様、もうすっかり回復したッスよ!」

「……沢山食べさせてもらった。もう動いても頭クラクラしない……」


 十八パーセントがどの程度か分からないけど、こんなにすぐに回復するもんなのか?

 私が生前働いてた会社には、ずっと貧血気味の子が居て血色良い顔を見たことがなかったから、コイツらの性質が信じられないんだけど……


「あの……彼らはどれくらい血の量が回復してるんですか?」


 近くに居た看護師風のエルフの女性に訊ねる。この部屋にはこの女性しかいないし、多分この人がさっきナナトスが口にしてたアメリさんだろう。


「もうほとんど万全と言って良いですよ! 昨日の今日で信じられないです!」

「二人とも凄いですね」

「フフン!」


 アメリさんとルイスさんの賞賛の声にナナトスはドヤ顔。ロクトスも控えめだがまんざらでもない。


「つきましてはご相談なんですが、もう一度血を採らせていただくことはできませんか?」


「「「 えっ!? 」」」


 私を含め、ロクトス、ナナトスが驚きの声を上げる。


「ままま、またあの気持ち悪いのを味わわないといけないんスか……?」

「これから始まる駆除作戦で、大量の中和剤が必要と予想されますので……もう一度採らせていただければと……」


 確かに……発生すれば大量の死人が出るような生物が前例のない数にまで膨らんでいるわけである。

 それ相応の対応をしなければ助かることはない。


「一つ疑問に思ったんですが、ロクトスとナナトスから中和剤を作ってるなら、彼らがいなかった以前のデスキラービー発生の時は、どうやって中和剤を作ったんですか?」

「刺されて回復された方の中で、抗体が出来ている方の血を使って作りました。他にもラーテルの獣人や熊の獣人、アラクネ族は蜂毒に強い耐性があるので、その方々にお手伝いいただいたりとか。とは言えロクトスさんやナナトスさんのように完全耐性があるというわけではなかったので、完全に中和出来るまでには少々時間が必要でしたが」

「そ、その体制が出来る以前は?」

「傷の治療のみで、毒の治療は出来ませんでした。運良く毒に打ち勝てた方のみが生存できて、その他は治療の施しようがないという感じでしたね。死者も多かったです」


 だからこその“大量の死人”なのか。


「ってことは、俺っちたちが頑張れば、死人が少なく済むってことッスか?」

「希望的観測ですけど、恐らく少なく済むと思います」


 ……

 …………

 ………………


「う~んう~ん…………ま、まあ良いッスよ! 乗りかかった船ッス!」


 そんな言葉よく知ってるな。ああ、最近は町でも舟使うことがあるのか。海行って漁業してるヒトも居るし。


「……仕方ないな……弟がやると言ってるのに俺が逃げるわけにはいかない……」

「ありがとうございます! 助かります! では早速準備をしますので」

「え!? もうッスか!? 今から!?」

「近々駆除作戦が開始されるとなると、一刻を争いますので」


 アメリさんは献血準備のために部屋を出て行った。

 ロクトスとナナトスの表情は少々沈み気味。


「ところで、俺っちたちも駆除に参加するんスか?」

「いや、あなたたちは参加しなくて良いよ。それにそんなフラフラの状態じゃ、多分刺されたら死ぬでしょうから。私もまだどうなるか分からないけど、多分どこかの部隊に組み込まれるだろうね。見過ごして首都への道中を再開させるなんてのはあり得ないし」

「僕は七大国の協定の関係で参加する必要がありますが、戦力にはならないので後方支援に組み込まれるでしょうね」


 と、ルイスさん。


「まあ、全てはトリニアさんが戻って来てからですね」


 その後、トリニアさんが第五部隊に組み込まれたのを聞き、私とルイスさんも友軍兵扱いで、トリニアさんと同じく第五部隊に組み込まれることになったらしい。

 献血って、どれくらい抜かれるんでしょうね?

 流石に体重の十八パーセントはやり過ぎだと思いますが、中和剤を作るには彼らの血が必要不可欠なので仕方ないですね。


 次回は4月10日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第336話【偶然の出会い二回目】

 次回は来週の月曜日投稿予定です。

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