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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
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第307話 強盗は殺しちゃって良いって……過激なこと言うんだな……

「じゃあ出発しましょうか。それで、森の中をどれくらい歩くんですか?」

「早ければ五日と言ったところでしょうか」


 遠いっ!!


「アルトラ様~、『行きたくない』って表情が顔に出てるッスよ?」

「ま、まあ大森林で、登ったり下りたりを繰り返しますので、時間がかかってしまうのも仕方ないかもしれません……無理を言ってしまいすみません……」


 悲壮感が表情に出てしまったのを見られてか、ドリアード三姉妹にいらぬ気遣いをさせてしまった。


「ただ、寄り道するとのことでしたのでもう少々時間がかかってしまうかもしれませんね~」

「それではルイスさん、大森林入り口の街、第二首都ユグドフロントへの空間転移をお願いします」

「はい」


   ◇


 ルイスさんの空間転移魔法で樹の国の迎賓館付近に来た。


「おお~! 大きい街ね!」


 “樹”の国って言うくらいだから、もっと自然が多いのかと思ったけど、意外に都会だ。コンクリートジャングルとまでは行かないものの、少し高めの建物も多い。

 未来には本当にコンクリートジャングルになっているかも。


「俺っちたちはアルトレリアから出たこともないから、他の街を見るのも初めてッスよ! …………でも、何だか暗いッスね……太陽無いとこんなに違うとは思わなかったッス……」


 確かに暗い……エレアースモは疑似太陽がまだ無かった当時でも電気関係がかなり発達してるから空が暗くてもまだ明るく見えた。しかしここは電気があっても大分まばら……

 樹の国の第二首都とは言え、煌々(こうこう)と照らされているとは言い難い。光量としてはエレアースモの二分の一くらいか。


「……ここは人通りが多い……ちょっと気分悪い……」

「大丈夫? 少し休憩する?」

「……ちょっと歩けば多分大丈夫だと思う……」


 人口比で考えると、きっとアルトレリアの何十倍何百倍も多い。今この付近にいる人数だけでも結構な人数だ。

 ロクトスは性格的に人ごみが苦手だから気分が悪くなってしまったのかもしれない。


「最近では、第一首都のユグドグランより、この第二首都の方が人口が多くなってきています」


 それは本来の首都が過疎化し始めてるってことなのかな……寂しいな……やっぱりどこの世界も人は文明を求めてしまうものなのね……


「大森林への入り口はこの街の奥からになります~。ユグドの大森林は別名『迷いの森』とも『生きている森』とも言われていますが、道案内は妹のトリニアに努めてもらいますので迷うことはないと思います~。ああ、ちなみに現在では木の高位精霊かエルフ族のガイド、もしくは精霊使いの国家資格を持つ者無しでは大森林に入ることができません。ガイド無しで行くとほぼ百パーセント迷ってしまうため、ガイド無しでは入れない決まりになっています~」


 この口振りを聞くに、きっとガイド無しで森に入って、死亡したり遭難したりで救難救助が必要な場面が多かったんだろう。

 まあ、私は空飛べるから上空に行ってしまえば迷っても大丈夫だとは思うけど。


「木々のことが分かる木の精霊のガイドは分かるとして、なぜエルフ族でも迷わなくなるんですか? あと精霊使いって何ですか?」

「エルフは精霊使いですので、木々に宿っている下位精霊の声に耳を傾けて道案内をさせることができるのです。精霊使いの国家資格はエルフが元で作られた資格で、エルフと同様に精霊の声を聞くことができると認められた者のことを言います」

「なるほど」

「森は広大ですので、悪意のある者もいるかもしれません。中には『森賊』と呼ばれる、森の中を根城にしている不届き者たちの拠点もあり、こちらに危害を加えようとすることもあるかもしれません」


 予想してた以上に物騒なところだった……ハイキング感覚でリディアに行くかどうか聞いたけど、連れて来なかったのは正解だったわ。


「あの、トリニアさん、森賊ってなんスか?」

「大森林を通行する亜人(ひと)たちの持ち物を強奪したり、無理矢理金品を奪ったり、果ては殺したりもする悪者のことです」

「え!? それは聞いてないッスよ!?」

「私、危険かもしれないって言ったよね?」

「聞いてないッスよ!!」


 あ、そうかあの時人の話を聞かずに走って行ってしまったから聞こえなかったのか。

 いや、それも話をきちんと聞いて行かなかったナナトスが悪いんじゃないか?


「じゃあここでお留守番しておく? もしくは帰る?」

「……いや! こんな他国の森に入れることなんて滅多に無い……! ……これを逃したら今後一生後悔する……!」


 珍しく語気強めに考えを口にしたロクトス。


「ロク(にー)正気ッスか!? 強盗に殺人ッスよ?」

「……ナナトス、お前は帰っても良いよ……危ないことに付き合う必要は無い……」

「いや、俺っちが誘ったんだから、ちゃんと同行するッスよ!」


 一応森賊が現れた時の対応を聞いておいた方が良いか。


「トリニアさん、森賊が現れたらどう対処すれば良いんですか?」

「悪さする者たちなので殺しちゃって構わないです。死体は森の動物たちが処理してくれますし、木々たちの養分にもなりますから」

「えぇ!?」


 可愛い顔して随分過激なこと言うなぁ……


「こ、殺しはちょっと……」

「え? そうですか? 彼らは物資の強奪、殺人、他国への人身売買もしますので、即刻処刑されても文句言えないと思うのですが……殺さないんなら捕まえて引き渡しってことになりますかね。生け捕りにできるなら、近くの町に引き取りに来てもらうよう要請いたします。しかし引き渡しても捕まえた者たちの結末は大して変わりませんよ? 生きるために強盗までで留まっているならまだしも殺しを楽しむような輩は生かしておいても良いことはありませんから」


 確かに一理ある……地球で生活していてすら、犯罪者の報道を見て「コイツは生きてちゃいけないヤツだ」って思う人間がたまにいるし……


「それでも、きちんとした行政機関が罰を与えることに意味があると思うんです」

「はぁ……地球的な考えはそうなんですか? じゃあ余裕がある場合はそのようにしておきます。『殺しちゃって良い』なんて言いましたが処罰する機関はきちんと存在してますし。ただし生け捕るのは殺すよりずっと難しいですが、よろしいですか?」

「はい。無効化する術もありますのでご心配無く。あなたたち自分の身は自分で守れる?」

「まあアルトレリアでトーマスさんの訓練受けてるッスからね。多少身を守る術は心得てるッス」

「……俺は山とか崖とか断崖とか、危険な場所にも生態調査に行ってる……それなりに体力はある……」

「先に言っておくけど、あなたたちは私の主義に付き合うことはないからね。あなたたちの身の安全が第一」


 ここら辺の話は個人個人の倫理観の話だから、無理に付き合わせることはできない。特に倫理観の違う土地では。

 “殺さないこと”に(こだわ)った所為で、自分が殺されていては本末転倒も良いところだしね。

 かと言って「ピンチになったら殺せ」って言うのも何か違うし、もう自己判断に任せるしかない。


「まあ……俺っちも手加減できるような余裕があれば出来るだけ殺さないように努力するッスよ。別に亜人(ひと)殺して楽しいわけでもないッスし」

「……同じく……」

「ルイスさんは?」

「申し訳ありません……私は文官ですので武術の心得はちょっと……」


 それもそうよね……言ってみればレヴィ (と上司のサリーさん)にこの役目を押し付けられたようなもんだし。


「じゃあ私は主にルイスさんの護衛をすることになるだろうから、あなたたちは自分の身はなるべく自分で守って。まあ死なない限りは私が治療できると思うから。でも自分の身の安全を第一に考えて行動して」

「了解ッス」

「……了解……」


「では、私とトルテアは一足先に樹の国首都(ユグドグラン)に帰りますから、トリニア、大森林の道案内をよろしくお願いしますね~」

「はい、お任せくださいお姉様」


 トライアさんとトルテアさんは近くに生えてる木を媒介にして、花が散るように一瞬でこの場から消えた。


「では森に入る前に、ロクトスさんとナナトスさんの装備を整えましょうか。用品店に案内した後、私は大森林に入るための手続きをしてきますので、少し席をはずさせていただきますね」

「手続きって何やるんですか?」

「森に入るための許可を申請します。森に入る人数とそれぞれの名前、住所、どこへ行くのかとか、目的を果たしたらそのまま帰ってくるのか、またはそのまま大森林内の別のところに行くのかとか、何日までに帰って来ない場合の救助隊の要請は必要かどうかとか、ガイドは誰が付くのかとか、そんな感じのことを書類として提出します。わたくしたちはエルフの村(エルフヴィレッジ)を経由した後、そのまま首都へ向かう予定です。首都へ着いたら事務局の方へ無事着いた旨を連絡して一連の手続きは終了ですね」

「へぇ~」


 山に入る時に書く書類みたいなもんかな? 山登ったことないからよく知らんけど。


首都(ユグドグラン)へは、余程のことが無い限り五日から十日ほどで到着するので、二週間しても連絡が無かった場合に捜索してもらえるよう一応申請しておくつもりです」


 あ、そうかもしものために捜索もお願いしておかないといけなのか。この身体に転生してから一般的に危ないと思われる場面でもピンチになったことはそれほど無かったから感覚が麻痺してた。


「ああ、それと入国申請はこちらでやっておいてよろしいですか?」

「本人が行かなくて良いんですか?」

「本来なら審査が必要ですが、こちらからお呼びしたので簡易的な申請で問題無いはずです。よろしければ森へ入る許可を取るついでにやっておきますが」


 面倒そうだしお任せして良いか。


「よろしくお願いします」

「では先に森歩き用の専門店にご案内します」


   ◇


 ということで、樹の国の森歩き専門店で装備を整えた。


「品揃えの多さに目移りしたッス」

「アルトレリア出る時も言ってたけど、その虫かご必要なの?」

「綺麗な虫とか見つけたら捕まえたいじゃないッスか!」

「そっちの箱は?」

「……一応仕事休むからその報告でハントラさんに樹の国行くって言ったら――」


『え? 樹の国の大森林!? 何その楽しそうなところ!? 私も行って良いかな? アルトラ様に聞いてみてくれない?』

『ハントラさんは生態調査部門の責任者なのでダメですよ。休むなら事前に休みを申請してください』

『そんなぁ~』


「――っていう、ハントラさんとマリリアさんのやり取りがあった……それで何か珍しくて美味しそうな果実とか、食用の植物があったら取って来てくれって……」


 なるほど。樹の国からの急な要請だったから行くに行けなかったってわけか。


「っつーわけでアルトラ様、これらが必要になる時まで収納お願いしますッス」

「……はいはい」


 荷物持ちは私を当てにしてるわけね……

 でも、アルトレリアにいない虫とか植物とか持って帰って良いのかしら……?

 生態系とか崩れたりとかは……

 …………まあ、元々生物なんかいなかった土地だし、多分今現在だったら問題無いか。


「……あと……他の店も見て回りたい……」

「今回は依頼で来てるから、またの機会にしましょうか……」


 まあ……何も無かったところから発展したとは言え、アルトレリアは七大国の首都に比べたら、未だ“ど”が付くほどの田舎だ。街に来て目移りする気持ちは分からんでもない。


「“またの機会”はいつ来るんスか……?」

現在(いま)よりも比較的簡単に来れるような環境にできるように努力するから」

「絶対ッスよ!」


 出来るかどうか分からない約束をしてしまった……


「話は変わるッスけど、この服装、ポケットがいっぱいあって便利ッスね。帰ったらみんなに自慢してやるッス」

「……靴もしっかりしてる……こんな靴底が厚いのは見たことない……」

「そういえば食料とか水はどうするッスか? 一週間くらいかかる予定なんスよね?」

「ロクトスが持って来たのと、私が持ってるのがあるから一週間くらいなら大丈夫でしょ。水は私もルイスさんも水魔法が使えるから問題無いと思う。それでも食料が尽きたら……その時に考えましょう。まあ森に動物とかいるだろうし、食べられる果実もあるでしょう。それらを狩って食べれば大丈夫でしょ。ルイスさんは森歩き用品買わなくて大丈夫ですか?」

「僕は自前で用意してきたので」


 店での買い物が終わった後に、大森林に入るための手続きを終えたトリニアさんが帰って来た。


「必要なものの購入は済みましたか?」

「はい」

「では準備も整ったようですし、大森林へ行きましょう」

 山に入る際に提出する書類って、どんなことを書くんですかね?

 どれくらいの時間に戻って来るとか、そういうことも書くんでしょうか?


 次回は1月16日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第308話【第一首都に向けて出発。トロル族の強靭な生態】

 次回は来週の月曜日投稿です。

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