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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
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第301話 余計な訪問者(後編)

 ……

 …………

 ………………


 あれ? 眠くならないな。名前に“パーフェクト”って付いてるのに。


「で?」

「ん? おかしいな? 【完全睡眠魔法パーフェクト・スリープ】!」


 ……

 …………

 ………………


「それで?」

「効かない!? バ、バカな!? 完全睡眠の魔法だぞ!?」


 ふぅ~……不意を突かれて焦った~。

 魔法自体が完全睡眠でも睡眠魔法のLvが11でなければ、やっぱり私には効果が無いのね。


「し、仕方ない、おい! ギガース! 四肢を砕いてでも連れて行くぞ! 最悪首だけでもしゃべれさえすれば良いと言われている。死んでしまってもアンデッドにすればしゃべれる。手足や下半身くらいなら無くなっても構わん! やつを捕えろ!」

「おう!」


 巨人に私を捕まえるよう命令する。

 小さい方の命令で巨人の方が襲い掛かって来た。


「首だけとか、マジで言ってんの!?」


 ルシファー先導の誘拐こわっ!!

 こいつらは、私が死んだら消滅することまでは知らないんだな……今のこの現状がアンデッドの状態なのに……

 家は壊されても良いけどリディアもケルベロスもまだ寝てるからここで戦うのはまずい!


「カイベル!!」

「はい」

「リディアを連れて町へ避難して!」


 私が言い終わるのと同じくして巨人の拳が飛んできたため、家の中へ飛び退いて避ける。


 ゴゴオォォン!!


 私が飛び退く前に立っていた玄関付近のドアと壁と(ひさし)が瓦礫の山と化す。


「ああ……玄関が……ふざけんなよこのヤロー!」


 しかし怒りの感情より、まずは避難!


「あと、ケルベロスを叩き起こして、一時的にどこかへ逃がして! 狙われてるのは私だけど、もしかしたら被害が行くかもしれない!」


 逃がしても騒動が収まったら戻ってくるでしょ。


「了解しました」


 カイベルは窓からリディアを抱えて外へ。そのまま犬小屋に入って行った。

 私も窓から出て、襲撃者と対峙する。

 すると犬小屋からカイベルの奇声が聞こえて来た。


「わんわん、わぉん! わんわんお!」


 何この声? カイベル小屋の中で何やってるの!?


「アォン、ワォン、ワウ」

 「ワォン」

  「ウォン」


 まさか……ケルベロスと会話してる?

 その数秒後に、ケルベロスが勢いよく犬小屋を飛び出して下山して行った。

 カイベルは私に対して無表情でグッドポーズをした後、リディアを抱えて町へ避難。こういうこともあろうかとゼロ距離ドアをロック出来る機能を搭載している。私が許可を出さなければこのドアはもう開くことはできない。

 カイベルがケルベロスと会話できるのは初めて知ったけど、これでひとまず大丈夫。


 巨人の拳が私に迫るも、空中に身を翻して回避。


 ゴゴォオン!


「ああ……」


 今度は私の部屋半壊……今は土魔法と樹魔法で作れるから良いけど、人間時代に同じように家壊されてたら泣いてるな……

 まあ、ボロボロだったし、リディアがうちに居候するようになってから何度も“建て替え”の四文字が頭に浮かんだから別に良いか。

 あ、でも私が初めて作ったフィギュアと、第二フィギュアは大丈夫かしら!?


 まだ空中にある私の身体、筋力強化の魔法をかけ、そのまま巨人の顔面を蹴りつけた。

 それを喰らって巨人はわずかながらよろける。

 こんな小さい身体でも筋力強化の効果は中々大したものだから、甘く見ない方が良いよ。

 とは言え、フレアハルトくらいでかいから強化魔法込みでもあまりダメージは喰らってないみたいだ。

 もうちょっと強めの筋力強化の魔法をかけておこう。普段は『筋力強化 (中)』だから『強』でいくか。


 巨人は二発目の動作をしているが……スローすぎてあくびがでるぜ。

 と思ったら、別の方向から声。


「【大火球(フレイムスフィア)】!」


 小さい方の襲撃者が結構大きめの火球を放ってきた。大きさにして一.五メートルくらい。私の身長よりでかい。


「援護射撃のつもりか?」


 でもこの火球、物凄く遅い……こっちもスローすぎてあくびがでるわ!

 そのまま当たってもダメージは無いだろうけど……どうせなら――


 向かって来た【大火球(フレイムスフィア)】を火の魔力で同調させ、掴んで空中で勢いを付けるように縦に一回転。そっくりそのまま飛んできた速度以上の速度で投げ返した。


「え? うわぁぁぁぁ!!」


 ドオォォォン!!


 これで小さい方は終わり。

 着地と同時にもう一度ジャンプして、巨人の腹に十発叩き込んだ。


「……おぱあぁおぉおっ!」


 奇声を発しながら腹を抱えてうずくまる巨人。

 更に二度目の着地後、最後にもう一度ジャンプして、そのまま後頭部にかかと落とし⇒空中で三回転して勢いを付けた後、再び後頭部にかかと落とししてKO。

 自重で顔が少し地面にめり込んでしまったが、まあ巨人だしこの程度の攻撃なら生きてるでしょう。


「【影縛り(シャドウ・バインド)】」


 彼らの影から闇のツタを出現させて縛り上げる。


「さて、伸びたこの二人はどうしようか?」


 全身火傷した者と頭部に強打を受けた者とで、両者ともかなりダメージがあるだろうから、一応回復しておいてやるか。まあ家壊されてるから優しい回復はしてやらないけど。


「【全体的回復 (大)(ハイヒール・オール)】」


 火の国の方角は、たしかあっちの方だから……風魔法で送り返してやるか。


「【ジェット気流(ストリーム)】。この風に乗せて、火の国へ送り返してあげよう」


 強い気流の流れを作り出し、更に二人を空気の膜に包んでこの気流に乗せた。

 空気の膜は終着点で地面に激突しないようにという一応の配慮だ。


「じゃあね~」


 伸びた二人を風魔法で火の国に送り返した。

 二人が見えなくなるまで見送る。


 ……

 …………

 ………………


「全く迷惑な客だ!! 迷惑かけようとするんなら来るんじゃない!!」


 壊された家は、土魔法と樹魔法でとりあえずの修復。もうそろそろ建て替えかな……落ち着いたらフィンツさんかダイクーに建て替えをお願いしよう。

 ゼロ距離ドアのロックを解除しカイベル、リディアを迎えに行った。

 ケルベロスも少ししたら帰って来た。


「さっき来たやつらは誰?」

「小さい方は魔人種の夢魔(インキュバス)族と魔人種のパイモン族の混血ですね」


 ああ、半分夢魔だったから【完全睡眠魔法パーフェクト・スリープ】の魔法を使えたわけか。

 …………ってことは、眠らせて(さら)う気マンマンで使いに寄越したってことか!?


「インキュバスって夢の中で淫らなことするやつよね?」

「はい」


 ……眠りに耐性あって良かった~……まあ、ルシファーが連れて来いって言った以上、どうこうされることはなかったと思うけど……


「大きい方は巨人種のギガース族です。暑い土地に適応したヒートギガースですね。いずれもルシファーの手の者です」


 「ギガース!」って種族名呼んでて、名前で呼ぶことすらなかったことを考えると、あの巨人はあまり高い地位にはいないってわけね。それこそ奴隷とかそういう身分なんだろう。


 まさか私を無理矢理誘拐しようとするとはね……

 仮に火の国を訪れてほしかったとしても、例えば『あなたが太陽を作るのを目撃した証拠写真があります。言い逃れは出来ませんので我が国にも太陽を作ってください』程度の脅しなら、まあ多少脅されていても創りに行ってあげたところだけど、今回私を誘拐しようとした (しかも首から上さえあれば良いって……)ことで、ルシファーに対する心象は最悪なものとなった。

 もう彼に対して何かしてあげようとは思わない。今後火の国訪問を打診されたとしても、現在のルシファーが存命の間は絶対に行くことはないだろう。

 しかし今後火の国の動向には、より一層注意しなければらなくなったかもしれない……


「ところで、さっき犬小屋内で何言ってたの?」

「ケルベロス様に、『敵襲です、急ぎ避難してください』とお伝えしました」

「あなた、犬とも会話できるのね……」

「私のオルシンジテン内には、あらゆるデータが入ってますので」


 作成者の私ですら知らないことが、次々出てくるわ……


 今回は睡眠魔法が運良く効かなかったため事なきを得た。

 しかし、この誘拐未遂を切っ掛けに複数の国を巻き込んだ大きな騒動になるが、それはまた少し経った後のお話……

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