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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第13章 樹の国ユグドマンモン探検偏
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第300話 余計な訪問者(前編)

 ある日の朝――


 コンコンコン


 リディアを誘いに来た子たちかな?

 いや、あの子たちならノックと同時に声をかけてくるから、別の訪問者か。珍しいな。


 ガチャ


「はい、どちら様?」


 見たことない男が二人。黒いローブを纏った小さい亜人と、同じく黒いローブのかなり大きい亜人。


「……きょ……巨人……?」


 巨人の剥製は、エレアースモの博物館に展示してあったけど、動いている実物はを見るのは初めだ。

 威圧感が凄い。その巨大さに少しだけ後ずさりしていた。

 目測だけど、恐らく五メートル以上はありそうだ。かなり屈み気味の体勢で私を見下ろしていた。


 小さい方は、小さいと言っても私よりは大きい。あと、かなり美少年だ。

 が、何となく……警戒感を感じるような美少年だわ。


 どちらも、ここを訪問するにしては風貌が怪しすぎる。


 『ゼロ距離ドア』を創ってからはあまり意識してなかったが、この地獄の門前広場は五十キロほどのなだらかな坂を長距離登った山の上あり、更に地獄の門から延長される壁に囲まれているため、ゼロ距離ドアを使わず、通常の方法を採るならアルトレリアから入って山道を歩いてくる他は無い。

 ただし、山を登ってくるコースは、出発地点がアルトレリアになるため、町中にこんなローブを着た怪しい人物がいればすぐに分かる。


 それ以外の方法を採るなら、この地獄の門前広場に来るためには三つの手段がある。

 一つ目は、正規の方法でアルトレリアの町の入り口から入ってくる方法。

 これはよそ者が入って来た時に、すぐに町の役所員が対応してくれて、私への用事なら取り次いでくれる。私が役所へ赴くため、客人はわざわざアルトラ邸(ここ)へは来ない。

 仮に、ここに来る必要がある場合はゼロ距離ドアを使うことができるため、わざわざ山道を歩いてくる必要は無い。


 二つ目は、空間転移魔法で直接この地獄の門前広場に出現する方法。

 水の国女王(レヴィ)雷の国女王(アスモ)のように空間魔術師がこの場所を訪れたことがある場合に限り可能となる方法で、この場所に直接出現できるのでアルトレリアを通ることはない。

 ただ……最近はこの地が国に昇格したため、相手方にここに直接出現されると後でリーヴァントに「役所通すように言っておいてください」と怒られる。

 それ故に、現在は友好国の人物が直接ここに現れるのは可能性としてほぼあり得ない。


 そして最後に三つ目。これは空を飛べる亜人や魔人が直接空から降り立つか、山道途中の険しい崖から登ってここへ侵入する方法。

 これは私基準では、日本で言うところの所謂(いわゆる)不法侵入に近いと思っている。山道の途中から侵入するため町を通らず、アルトレリアの住民に見られること無く来られるが崖崩れや落盤などの危険も多いので、やましい気持ちが無ければ普通はやらない。実際今までこの (誰にも気付かれることない)方法を使ってここへ来た人物を私は知らない。


 彼らはどう見ても怪しい風貌なのに、町からの報告が無いということは、二つ目か三つ目の方法でここに来たということ。

 そして二つ目について、空間魔法の揺らぎは普通の亜人でも近くに居れば感じられるので、二つ目の方法も消え、三つ目の方法で来た可能性が高いということになる。

 つまり、私と接触するために何か後ろ暗いことがあるということだ。


 小さい方がしゃべり出した。


「お喜びください! 我が主の命により、貴殿を我が国に迎えることが決定致しました!」


 は? なに? 唐突に何なの?


「あ、え~と、どなた様ですか?」

「我々は火の国ルシファーランドからの使者です。貴殿をお迎えに上がりました。貴殿の創った太陽というものを知り、我が王が大層気に入りましたので貴殿を我が国に迎えたいとのことです!」


 まさかあのピンボケ写真で、私だと特定したのか? (第264話参照)

 いや、顔なんか分からないくらい光で見えなくなってたしあり得ない。

 もしかしたら、確証が無くても誘導尋問のごとく問いただすくらいのことをしようと思ってるのかも?

 とりあえず何しに来たのか話を聞いてみるか。


「太陽を作った……? それを創ったのがなぜ私だと思ったのですか?」

「これは貴女ではないのですか?」


 予想通り写真を差し出してきた。

 以前カイベルに見せられた例の疑似太陽を作っている瞬間のピンボケ写真。 (第264話参照)

 顔は太陽による順光で全く見えていない。この状態で被写体が私だと判断することがまずおかしい。


「どこが私なんですか? 光が当たって顔すら写ってないじゃないですか」

「では、こちらもどうぞ」


 二枚目に見せて来たのは、私が街中で盗撮されたらしき写真。


「この服装と、写真の服装が酷似しているため、あなたであろうと判断致しました」


 こんなところまで撮られてたのか……

 カイベル、これについては何も言ってなかったな……一枚目の写真を見せられた時に私が取るに足らないと判断したからこの写真は見せなかったのか?

 あの時にきちんと聞いておいて、その人物と会ってもみ消してもらうべきだったか……

 この服はエルフィーレ製の一点もの。エレアースモには売っていないから言い逃れは難しいか……


「……これは……確かに私の服装ですね。それで太陽関連で火の国に招待というわけですか?」

「はい、住む家は準備できております」


 ん? 何言ってんだ?


「“住む家”って、私の住む家のことですか?」

「その通りでございます」

火の国(ルシファーランド)に?」

「その通りでございます」


 え!? 嫌だよ! 移住するつもりなんか毛頭無いよ! 唐突過ぎて何言ってるか分からん……私、現在ここに住んでるのに……


「いえ、私はここから引っ越す予定は無いので、謹んでお断りしますとお伝えください」

「必ずお連れするようにとのことですので」


 何か手前勝手な人たちだな……


「我が王国に来ていただければ、望むものは全て提供すると仰られております、住む家はルシファー様に次ぐ宮殿のようなお住まいに、メイドは五十人は用意致しましょう。食べ物は食べ放題でございます!」


 大袈裟な動きで、その素晴らしさをこんこんと語る。


 う~ん、それら並べ立てられても現状は魅力感じないのよね……

 家は今の家でそれなりに楽しくやれてるし、メイドもカイベルがいるから別に困らないし、彼女以上に優秀なメイドは多分存在しない。食べ物は味の完全再現さえ考えなければいざとなったら創成魔法で作って自給自足できるし。

 町の人々との関係性も出来ているから、今更どこかへ行こうなんて思わない。


 魔界来てすぐの時に誘ってくれれば、誘いに乗ったかもしれないけど。もうここの領主やってるから放ったらかして別の国に乗り換えるなんて無責任なことはできないし。

 何よりも……悪評のある現ルシファーのところへ行きたくない……


「大変魅力的な申し出ですが、わたくしも現在とある町の領主を務めておりますので、お断りさせていただきたく思います」


 と丁寧にオブラートに包んで、「行かないよ」と伝える。


「断られたら無理にでも連れて来るようにとのご命令ですので、眠ってもらいますね。【完全睡眠魔法パーフェクト・スリープ


 な!? 睡眠魔法!?

 眠らせて無理矢理連れて行く気っ!?

 第13章の始まりは少々物騒なところから始まりましたね。


 投稿300話達成です!

 追いかけていただいてる方々、本当にありがとうございます!(^^)


 次回は12月19日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第301話【余計な訪問者(後編)】

 次話は来週の月曜日投稿予定です。

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