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第293話 中立地帯開放の取り決め その3(遺跡から出土した魔道具?)

「今度はわたくしから質問よろしいですか~? これはこの場で言うべきかどうか迷いましたが、中々お会いする機会も無いので聞いておきたいと思います~。アルトレリアで奇妙な魔道具を目撃したのですが、あれは何ですか?」


 ギクッ

 トライアさんから聞かれたくない質問が来た。


「き、奇妙な魔道具とは?」


 な、何を聞かれるのかしら……?

 魔道具の話って言われると、突っ込まれる可能性のある物にはいくつか心当たりがある。一番聞かれたくないのは『ゼロ距離ドア』。その話は聞かないで~……!


 と、心の中で祈るも――


「岩に埋まっているドアを開けたと思ったら、そのドアはアルトラ殿のお住まいに通じていました~」


 ああ……私の祈り虚しくドンピシャの話題……

 遂にレヴィとアスモ以外にバレる時が来てしまったか……?

 あれ? そういえば何でトライアさんがそれを知ってるんだろ? 案内したことなかったはずだけど……


「あれは私が見たところ空間魔法が付与された魔道具だと思うのですが、違いますか~?」

「なに!? 空間魔法の魔道具!? そんなもの存在するのか!?」

「私も初めて聞きましたね……」


 交流を持つ以上あれがバレるのは時間の問題だし、ここで言ってしまった方が良いか。


「はい、あれは例えばAというドアとA’(エーダッシュ)というドアを空間魔法で繋げた魔道具です」


 レヴィはもうほとんど知っているようなものなので、魔王代理たちだけがザワザワしだす。


「しかし、そんなに驚くような物なんですか?」

「もちろんです! 今まで空間魔法が付与されたという魔道具は見つかっていません。空間魔法は主次元と異空間を繋げる特殊な魔法ゆえに、物質に定着せず、作り出すのが相当に困難なためと思われます」


 魔道具の開発事情をアスタロトが説明してくれた。


 やっぱりそうなのか……

 じゃあ、私はとんでもないものを後先考えずに作ってしまったってわけね……

 これによって我が町が危険に曝されなければ良いのだけど……


「我々も作り出そうと研究をしていた時代がありましたが、どうしても物体に空間魔法が定着せず、異空間に吸い込まれてしまい、現在では研究する機関も少なくなっています」


 以前私もこれを試したことがあった。最初は樹魔法で作ったドアに空間魔法を付与しようとしたが同じく異空間に吸い込まれて消えてしまった。

 やはり現時点では空間魔法を物質に付与するには、創成魔法による繋ぎが必要らしい。 (第25話参照)

 ただ……もし空間魔法を定着させられるような物質が発見されればこの限りでは無くなるかもしれないが。


「どのように入手されたのですか?」


 あ、『私が作った』ってとこまでは考えが及んでないのか。じゃあ――


「あれは実は私たちの暮らす町から少し離れた遺跡から見つかったものでして、詳しいことまではわかりません」

「そんな高度な魔道具を有する文明があったということですか?」

「流石、中立地帯が数千年、数万年も禁断の地とされていたほどのことはありますね!」


 あれ? すんなり信じるの? これ、もしかして騙し通せる?

 もしゼロ距離ドアの四号や五号を作ったら、また遺跡から出土したってことにしておけば良いし。実際手ごろな遺跡があそこにはあったし。

 この方法なら私が危険と考えている空間魔法系の魔道具はそれほど広がらない。何せ、彼らの中ではこれを作れる者はこの世の存在しない太古の人物なのだから。

 まあ……発見した場所は、遺跡と言うよりはただの住居跡だったけど…… (第191話参照)


「そんな遺跡があるのなら是非調査してみたいところですなぁ。我々の国は土を掘ることには長けていますからな」


 と、土の国魔王代(マルファスさん)理の言葉。


「ああああの、一応我が国の領土なので調査はご遠慮願います!」


 慌てて釘を刺す。

 ヤバイヤバイ……建物は少ししかないし、調査されても何も出て来ない可能性の方が高い。そうすると、私への疑惑が一気に高まる危険性がある。

 一応釘を刺しはしたが、勝手に調査されることも想定して、後で秘密裏にダンジョン風に改造して危険性の無い手ごろな魔道具を作って埋めて“文明があった”っぽく偽装しておいた方が良いかも。


「それは残念……しかし、それは少々横暴ではないですかな?」


 『中立地帯にある遺跡から出土したものは全部アルトレリアの物』、確かに少々横暴な考えかもしれないが、そもそも禁忌の土地として数千年、数万年捨て置かれた場所である。その場所から突然高度な魔道具が見つかったから、それを分けてくれというのはそれこそ都合が良すぎる。


「それについてですが、マルファス殿に問わせていただきます。自国の高度な文明、機密を易々と他国に教えたりはしませんよね? 突然高度な魔道具が見つかったからと言って、それを無償で分けろというのは少々違う気がします」

「…………確かに……一理ありますな」

「一応、前回の会談にて中立地帯が国であると認定されたわけですから、そこから出土したものは私たちの国のものとして管理・運用させていただきます」


「しかし、今まで中立地帯は七大国全体で管理していたものですから……」

「では、なぜもっと早く中立地帯に住んでいる者たちの生活を改善させてやれなかったのでしょうか? 七大国全体で管理していたと言うならもっと早く改善してくれればトロル村の人々はもっと早く貧困から脱することが出来たはずです。中立地帯を利用したかったのに中立地帯が国として(てい)を成す前に手助けしてくれず、高度な魔道具が出土したからと後から口を出すのでは、それこそ都合の良い話でしかありません」

「ぬぅっ……」


「……ちょっとちょっとベルゼ……」


 レヴィに小声で呼ばれた。


「……そんな喧嘩売るような形になっちゃって良いの? 今回は言ってみればあなたのために集まってくれた方々なのよ?」

「……確かにちょっと言い方キツ過ぎたかも……」


 ここに来てくれた五大国は私の考えに賛同してくれた国ばかりだ、遺恨を残して帰るようなことにはしたくない。


「マルファス殿、少々頭に血が上ってキツイ言葉が過ぎました……私が彼らトロル族を発見した時には食うにも困り、ガリガリに痩せた状態でしたので、そのことを思い出してもう少し早くなんとか出来なかったのかと少々感情が(たか)ぶってしまいました。申し訳ありません……魔道具についてですが、もしも出土した魔道具がお譲りできるような状態になった場合には、皆様にもお知らせしようと思いますので、現在のところはご容赦ください」

「……いや、こちらも言い方が悪かった……すまぬ……我々としても中立地帯を通行できるとなれば交易の幅が広がる。遺恨を残すような結果にはしたくないと思っている…… (あなたは、我が王にとって…………人…………だそうですので……)」

「え?」

「おっと、口が滑ってしまいました。“現状のところは”こちらの話ですのでお構いなく」


 最後全部聞き取れなかったが、「あなた」がどうとかこうとか。

 私と土の国の王様に何か関係があるの?

 面識だって、前回の七大国会談の一度しかないのに。私に何の関りが?

 少々疑問の残る言葉を残されたが、土の国も遺恨を残したくないと私と同じ考えらしい。争いにはならなさそうで安心した。


「さて、他に話し合うことはございますでしょうか、アルトラ様?」

「特にありません。皆様のご支援には感謝致します」

「皆様、何か話し合うことはございますでしょうか?」


 ……

 …………

 ………………


 ん?

 トライアさんが何か言いたげだけど……

 上げようとしていた手を引っ込めた。さっきゼロ距離ドアについても言うべきかどうか迷ったって言ってたし、まさかまた私に関する話かしら?


「では、意見は無いようですので、これにて臨時会談を締めたいと思いますがよろしいですか?」


 ……

 …………

 ………………


 トライアさんは特に何も言わず。


「無いようなので、これにて会談を締めたいと思います。では、今後の予定をお話します。アルトレリアへの駐在員の派遣は前会談で決めた通り八月初旬頃となります。五大国の方々は派遣員の選出をお願いします。派遣日時については七月初旬頃にお伝えいたします。また五大国及びその属国、また七大国と関わりの無い独立小国には、中立地帯との自由交流を今この場をもって認めることと致します。中立地帯は今より国家に類する権限を有することとします」


 ここから先は五大国の亜人や行商人がアルトレリアを訪れる可能性があるってわけね。


「あと、各国共に大使館建設のための作業員の派遣をお願いします。アルトラ様も五大国に対して大使館建設のための作業員の派遣をお願いします」


 あ、そうなのか。大使を他国へ送るのだから、彼らが公務したり住んだりする建物も必要なのか。


「あ、あの……こちらからの派遣で、各国で現在ある建物を間借りすることはできませんか?」

「可能です。属国・小国はそういった形態を取っている国も多数ですので」

「ではそれでお願いします。あ、最後に集まっていただいた各国の皆様に挨拶をよろしいですか?」

「はい、どうぞ」

「皆様、今回会談はわざわざ我が中立地帯の取り決めのためにご足労いただきありがとうございました。今後国家間で関り合いが増えるかと思いますが、良きお付き合いをさせていただけると幸いに思います」

「よろしいですか?」

「はい、最後に時間をいただきありがとうございます」

「ではこれにて臨時会談を締めくくりたいと思います、皆様お疲れ様でした」


 大きな(いさか)いもなく、無事臨時会談は終了した。

 空間魔法の魔道具について嘘を吐く形になってしまったが、本当のことを言うか、それとも嘘を吐き通すか、それは今後の行く末次第か。

 何はともあれ、中立地帯代表としては上々の結果を残せた会談だった。

 空間魔法系の魔道具、嘘を吐いてしまいましたね。

 これについては、嘘を吐くか自分が作ったものと正直に言うかを最後まで迷いました。最終的には嘘を吐くことを選択しましたが……

 さて、今後のことは考えてないのでどうなっていくんでしょうね……


 次回は11月28日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第294話【臨時会談を終えて……】

 次話は来週の月曜日投稿予定です。

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