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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第2章 トロル集落の生活改善編
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第23話 潤いの木の扱い

 さて、このまま置いておくと、また村を水没させかねないこの潤いの木は今後どうするべきか。


 水吸収の結界を置いておけば、余分になった水を吸収してくれるから良いとも思ったが、もし私が死んだ場合にアレがどうなるかわからない。

 私が死んだ後でもそのまま残って活動してくれれば良いが、もしかしたら消滅してしまって、また集落が水没するということにもなりかねない。

 それに……あの結界は作成者の私以外には設置場所から動かすことができない。木の生育状況次第では邪魔になることだってあり得る。

 では、どうすれば良いか。


 ……

 …………

 ………………


 潤いの木の湧水量に耐えうる川を整備する以外無いと思う。

 ここから海に当たるもの、もしくは、異世界だからもしかしたら底無しの穴とかがあるかもしれない。

 ここの他に川があるなら、そこへ合流させれば良いのだけど……まずは周辺調査が必要だ。

 いずれにしても水が処理出来るところまで川を作らなければならない。


 しかし、その間この木をどういう扱いにするか。

 私なら時間魔法が使えるから苗に戻すことはできる。一度苗に戻そうか? でもそうすると村人の生活水が無くなってしまう。一度水のある生活を経験して、すぐに水無しの生活になると精神的なダメージは計り知れない。

 村に川が引かれるまで一体どれほどの時間がかかるかもわからないのに、その間また水汲みの生活に戻すというのも酷な話だ。

 一度期待させておいて、ぬか喜びも甚だしい。


 とりあえず木の周りを水吸収の結界で囲んでおこうと思ったが、実はこの結界、生物が触れると結構危ないと考えられる。

 その根拠となるのが先日の洪水事件の時の話。

 水バリアを張った時に水を吸収したのは良いが、その後に土がパラパラ降ってきたのを経験している。 (第14話参照)

 このことから泥から水だけを奪って土だけになって降って来たということ。

 これを生物に当てはめて考えると、水分だけを奪って脱水症状に陥らせる危険性があるということ。


 通過するために一瞬触れるだけならさほど問題は無いと思うが、防御魔法とは言え、水を吸収するように作ってあるためか長時間触れると水分を急激に奪われると思われる。

 生物は水以外の物質でも構成されているから、一瞬で全てを奪われるということはないと思うけど……

 水が吸収されている様子を見るに、触れ続ければ一分もあれば脱水症状に陥る可能性が高い。ちゃんと実験したことが無いからもっと早いかもしれない。

 結界に囲まれた水を汲もうとすると、触れるのはどうしても一瞬で済むとは思えない。身体の水分が奪われ過ぎれば、最悪死に至る可能性だってある。


 余談だけど、人物指定して防御魔法をかけた場合は、その人物ごと防御結界もくっ付いて回るため、防御手段として使う場合は問題無いように出来ているらしい。


「とは言え生活水は必要だし……」


 頭を抱えているとリーヴァントが横から的確なアドバイスをくれた。


「この結界というものは、一部分だけ開けることは出来るのでしょうか? この部分の下側だけ結界を置くのを止めるとか」


 要するにアルファベットの『C』の字のように一か所だけ水の通り道を開けておくということらしい。

 確かにそれなら(あふ)れずに済むかもしれない。


「なるほど、じゃあとりあえずそういう形に結界を形成し直そうと思う。結界は透明に近いけど角度次第で目に見えるはずだから、村人、特に子供には近寄らないように言っておいてもらえる? 特に『触れ続けたら死んじゃうかもしれない』ってところまでちゃんと伝えておいて。水は結界が欠けている場所から各々汲んでもらうようにしてもらって」

「わかりました、村全体にそう伝えます」


 これで生活水に困ることはないだろう。一応結界が途切れるところへ石の板でも置いて、『ここからこの範囲には結界が無い』という目印を作っておこう。

 あとは、これを恒久的に大丈夫になるようにしなければならない。

 水没したことを省みると、今後集落の中央に潤いの木を置いておく選択は無し。

 この集落から離れた場所に移植して、川を作って集落に通すのが安全策かな。

 出来れば今後氾濫した時に対処できる時間を稼ぐ目的でも、かなり離れたところが良い。


「だとすると火山の火口とかかな……?」


 あそこならここから五十キロくらいは離れている。

 しかも、七つの内何個かは完全に冷えてカルデラになってるから、ダムのような機能の替わりが務まる可能性はある。

 しかし、休眠状態になってはいるが、つい先日まで活火山だっただけにいつ噴火するかわからない。

 潤いの木を植えておけば、常に水を出し続けてくれるから、ずっと冷えていてくれる可能性も無いわけではないれど……


「流石に火口は無しかな……万が一の可能性もあるし。オルシンジテンに予測させるか」


 万能書物なら何か糸口が掴めるかもしれない。


「リーヴァント」

「はい」

「潤いの木の対処も一応一通り終わったと見て良いと思うから、私は一旦家に帰るね。今頭の中がごちゃごちゃしてて、一人の方が考えがまとまるかもしれないし」

「わかりました、ではまた何かあった時にご連絡いたします」


 私が帰ろうとしたところ、私を呼びに来た塩作り三兄弟の内のニートスとサントスがぐったりして帰って来た。


「ハァハァ……ああ……水没は何とか解決されたようですね……ハァ…ハァ…」

「あ、お帰りなさい。報告ありがとう、あなたたちにも迷惑をかけちゃったね」

「……ハァ……いえ、呼びに行って良かったです……ハァ……我々には対処……できなかったので……」

「しかし……はぁ……家が遠すぎます……はぁ……はぁ……呼びに行くまでにどれほどの時間がかかったのかわかりませんが……はぁ……すぐに呼びに行くには……はぁ……厳しいかと……何とかなりませんか?……」


 私はここに飛んで来る最中に推算で彼らが五時間くらいかけて我が家を訪れたと予想した。

 確かにかなり急いで走っても五時間かかるのでは、緊急の用がある場合に困る。

 私自身も、急いで飛んで来ても三十分かかった。

 『人が今にも死にそう』なんて時に呼びに行こうにも、私がその報告を聞いて集落に着いた五時間半後にはもう事切れてしまっているかも……まあ、呼びに来てもらったところで私は医者でもないから人死(ひとし)にに対応できるかどうかはわからないけど……


「思い切ってこの集落に引っ越すというのはどうでしょうか?」


 リーヴァントが口を挟む。

 何だか目がキラキラしている。期待感が顔に出てるな……

 でも――


「ごめんなさい、一応あの場所に愛着があるし、あそこに定住する飼い犬(ケルベロス)にも愛着が生まれてしまったので、現時点で引っ越すという選択肢は無い……かな」

「左様ですか……」


 シュンとしてしまった。


「だけど、距離に関してはちょっと思い付いたことがあるから何とかしてみるよ」


 さて、優先順位が変わってしまった。

 川を整備することを第一位にしていたが、まずは集落と我が家との距離を何とかすることの方が優先順位が上になった。


「ああ、そうだ帰る前に」


 集落の中央ほどに移動。

 土魔法と樹魔法で即席ではあるが、ある程度広めの家を三棟建てる。


「ごめんなさい、簡易になってしまいますが、新しい家を建てるまでの避難所として使ってください。では、私は一旦帰ります」


 今日は本当に疲れたから、早めにお風呂入って寝よう。

 集落と我が家の距離問題は明日にしよう。

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