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第236.5話 説明回1 誓約による強制履行について

「ねえ、カイベル、『誓約による強制履行』ってなに?」

「太古の時代、この世界の頂にて、七つの大罪の魔王全員で交わされた誓約のことです。当時は魔界中で争いが起こっており、そんな時代にあってせめてこの場所でだけでも争いをやめようと、当時のルシファーの働きかけにより誓約されました」


 へぇ~、良いことするやん、当時のルシファー。

 今のルシファーとは大違いだわ。


「具体的にはどんな内容なの?」

「この地で魔王が他の魔王や亜人や魔人、獣人、精霊などのヒト種族に危害を加えようとした場合に限り、魔王の命が取り上げられるという誓約です」

「え!? 命取られるの!?」

「はい」

「だからカイムさんは、しきりに『命を落としますよ』って警告してたわけね」

「はい。誓約の内容は『世界の頂の領域内で魔王がヒト種族に危害を加えないこと』の一点のみです。魔王にのみ適用される誓約で、一方的に攻撃を始めた場合は始めた者が、二者間で両者が攻撃を始めた場合は両者の命が取り上げられ、七つの大罪は別の者に継承されます。また魔王の部下同士が争いになり、その際に部下同士の争いの中に魔王の思惑が含まれている場合も命が取り上げられます」


 なるほど、この場所では魔王は力を振るうことができないってわけか。


「その後に魔王代理やお付きの者についての誓約をプラスされています。プラスされた誓約内容は『魔王代理が魔王のことを想って争いを起こした場合、その場に出席していない魔王の命が取り上げられる』という内容です」

「トラブルメーカーはお咎め無いのに、魔王だけが死ぬの? それって魔王代理が、意図的にトラブルを起こして魔王を謀殺するってことが可能なんじゃないの?」

「いえ、そこも条件付けがされており、『そのトラブルに魔王代理の魔王への思慕(しぼ)の情が(こも)っていない場合、また、魔王の思惑が含まれていない場合』、誓約が履行されることはありません。謀殺しようとする者に魔王への思慕(しぼ)の情が(こも)っているはずがありませんので、意図的にトラブルを起こすことによる謀殺は不可能です」

「そんなの……思慕(しぼ)の情が(こも)ってるなんて、どうやって判断するの?」

「それは私の与り知らぬところです。誓約させる魔法ですので、仮に名付けるなら『誓約魔法さん』が判断を下すのでしょう」

「あ、ああ……なるほど。魔法自体が判断してくれるってわけね」


 争いの中心となった魔王代理が魔王を大事に想っている場合は魔王に罰が行くけど、何も想っていなかったり、憎く思ってたりする場合は魔王に対するお咎めは無しってことなのね。

 まあ、そりゃそうか。魔王代理個人の争いで魔王に罰が行ってたら、罰受けた魔王はとばっちりを受けたってことになるものね。


「そのため、魔王代理やお付きの者も世界の頂(このばしょ)では行動を律しなければならないということですね。自らの行動によっては主人を殺してしまうことになりかねませんので」


 それだと……魔王・魔王代理が大分不利な誓約な気がする……


「魔王・魔王代理がそれ以下の階級の者から攻撃を受けた場合どうなるの? 例えば今回みたいに属国の独立宣言に際して攻撃を受けるとか。いくら魔王と言えど攻撃を受ければ怪我をするでしょ? 魔王から攻撃できないんじゃ、防戦一方になっちゃうんじゃない?」

「それは魔王代理について誓約をプラスされた時に同時に組み込まれました。『魔王・魔王代理以外から魔王・魔王代理が攻撃を受けた場合に限り、反撃を許される。この反撃に限り死も(いと)わない』という誓約です。これにより反撃に限っては攻撃することが可能となりました。つまり一度でも明確な攻撃を受けた場合、魔王が襲撃者を殺してしまっても、魔王は罰を負わないということですね」


 なるほど、そこもちゃんと考えられてるんだ。

 それを聞いてフレアハルトが横で青くなっていた。


「ということは……我があの時先手を打って攻撃していたら、サタンの反撃で殺されていた可能性が高いということか……? しかもサタンには一切お咎め無いと……?」

「そうなりますね」


 それを聞いてフレアハルトが放心状態に……よほど無理をして気を張っていたのだな……

 先走ってフレアハルトが攻撃しなくて良かった~~……!


「その行動を制限させるようなものって、そういう魔法ってこと?」

「はい、『約定(やくじょう)魔法』という系統に分類されるものです」

「『約定(やくじょう)魔法』ってどんなものがあるの?」

「一つ目は双方同意の上に交わされる『契約魔法』。精霊などとの召喚契約などはここに分類されます。――」


 あ~、これは私には分かり易いな。ゲームと同じで契約して使役したりできるヤツか。契約するのに力を示したりするとか、そういうのが必要なのかな?


「――二つ目はとある事柄を条件に発動される『誓約魔法』。これは誓約している者がその誓約に反したことをした場合に発動されます。さきほどサタンが命を取られると言われていたのはこの誓約魔法に属します。――」


 これが今説明してくれた誓約魔法さんか。


「――――そして最後に『隷属魔法』。これは相手を屈服させた場合のみ結ぶことができる魔法で、完全な上下関係が成立する魔法です」


 これは……多分奴隷にする魔法ってところか。


「これら『約定(やくじょう)魔法』には大きな特徴があり、『契約魔法』、『隷属魔法』は二人でのみ、『誓約魔法』は複数の人数でのみ成立します。要するに“約束させる”魔法ということですね」

「私には使えないってこと?」


 以前見せてもらったステータスの中に『約定魔法』なんて項目は無かったと思ったけど……


「いえ、これは二人以上がいる場合にのみ発動可能な魔法なので、会得とか修得とか、そういった類いの物ではありません。魔力を持つ者なら誰でも使用可能です。ただし、強制力が強すぎるため、口約束程度で使われることはまずありません」


 なるほど、修得とか会得とかの外側にある魔法ってわけね。


「だとすると屈服させて隷属魔法で無理矢理働かせるってことも可能なんじゃないの?」

「もちろん可能です。ただし、隷属させている間、隷属させた側は魔力が奪われ続けるため、大勢を無理矢理隷属させるということは非効率なので魔王ですらほとんどやりません。奴隷はもう奴隷として成立してしまっているので、多くの場合隷属させずとも命令に従うからです」

「魔力を奪われ続ける? それは維持し続けるのが大変そうね」

「誓約魔法・契約魔法は双方同意のため魔力消費はほぼゼロに近いですが、隷属魔法は隷属させる人数が増えれば増えるほど、その負担が大きくなっていき、容易に維持するのは不可能になります」

「解除は可能なの?」

「可能と言えば可能ですが……『約定(やくじょう)魔法』に属するものは関わった全ての者の解除への同意が必要なため、一対一で約定(やくじょう)される契約魔法や隷属魔法はともかく、世界の頂で誓約された魔法についてはほぼ不可能と言えるのではないでしょうか」


 確かに七人全員が解除に同意しないといけないわけだものね……地球のどこかの機関を見てるようだわ……


「なお、契約魔法と隷属魔法は契約者のどちらかが死亡した時点で無効化されます。誓約魔法も関係者全員が死亡すると解除されますが、七つの大罪に限っては宿主が死ぬと次へと継承されるため、世界の頂で成された誓約が解除されることは未来永劫訪れないでしょう」


 なるほど、宿主本人ではなく、身体に宿っている七つの大罪の方に誓約が架されているから、この魔界から大罪が消えない限りは誓約が解除されることは無いってわけね。


「それと一応注意しておきますが、これらは比較的容易に相手を操ることができてしまうため、一般には秘匿とされており、存在を知るのはごくごく一部の上位層のみに限られます。他で話さぬようお願いします」

「わ、わかったわ」

「また、強制はできませんが、あまり使われませんように」

「そんなの使わないよ!」

 サタンはこの誓約魔法の効果により、命を失うのを恐れたわけですね。


 次回は7月12日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第237話【帰還、結果報告】

 次話は明日投稿予定です。

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