第221話 カイベルのハイパースペック2
「次はカイベルさん、服を脱いで身長計に乗ってください」
下着姿になり、身長計に乗って姿勢良く立つカイベル。
「エルフィーレ様、リナ様」
「はい?」
「どうかしましたか?」
「私は自身のサイズを全部把握しています。時間短縮になると思いますので、事前にお伝えします。現在のサイズは――
身長百六十二.二センチ、バストトップ八十三センチ、アンダー六十八センチ、ウエスト六十一.三センチ、ヒップ八十五.四センチ、太もも周り四十八.三センチ、二の腕周り二十四.三センチ、肩幅三十八.三センチ、身幅四十六センチ、股下七十一センチ、ふくらはぎ周り三十三.七センチ、足首十九.五センチ、足のサイズ二十三.七センチ、頭周り¥●&%#センチです」
ん? 今最後何て言った?
「これに加えて、測り方の加減による誤差が、プラスマイナス〇.一から〇.二センチです」
「ほ、本当ですか!? そんな正確に!? い、一応測らせていただきますね! …………身長百六十二.二センチ!? …………バスト八十三センチ、ウエスト六十一.三センチ、ヒップ八十五.四センチ……!?」
「こ、こんな寸分違わず正確に把握してるものなんですか!? どうしても生活している以上、日々微細な差異が出るものなのに……た、確かに小数点以下まで完全に一致してます……」
「カイベルさんの仰る通りなら、これ以降は測らなくても良さそうですね」
「そ、そんなことあります!? 信じられない……」
「すみません、書き留めますので、もう一度お願いします」
カイベルすっげぇ……
エルフィーレとリナさんが驚愕している。特に服飾の勝手を知っているリナさんはエルフィーレより驚きの度合いが強い。
でも、顔周りだけ聞き取れなかったけど何て言ったんだろう? エルフィーレとリナさんは聞き取れてるみたいだけど……
「まだ服を作り始めて浅いですけど……こんなに正確に把握してる方っているんですね……」
「いえいえいえ!! 私、子供の頃から度々叔母のブティックに出入りしてますけど、こんなに正確に把握してる人見たことないですよ!? あの……失礼を承知でお聞きしますけど……カイベルさんって生物ですよね?」
「もちろんです。アルトラ様に雇われたただのメイドですので」
『嘘である』と私は心の中でナレーションした。
…………ところで、あれは私の十七歳くらいの時のサイズと同じくらいなのかしら? カイベルを採寸されるのってちょっと複雑だわ……
「カイベル、サイズを伝える時、最後何か変なこと言ってなかった? 顔周り何センチだって? 聞き取れなかったんだけど……」
「はい、エルフィーレ様とリナ様にだけ聞き取れるように発声しました」
「なにそれ!? そんなこと出来るの!? 何のために!?」
「身長と頭のサイズから読者に矛盾を指摘されるであろうことを考慮してボカしました」
「? 読者って誰?」
何か……また訳わからんこと言い始めたな……
「この物語を読んでいる方がいるかもしれませんので」
「いや、ホントに何言ってるかわからないんだけど……」
読んでる? 読んでるって何を?
物凄いメタ発言(※)しだしたわ……
(※メタ発言:物語の登場人物が知りえない知識や裏事情を、作中で発言すること)
「万が一漫画化やアニメ化などされ、キャラデザされることがありましたら、『身長と頭のサイズの辻褄が合わない!』と叩かれて困るかもしれませんので」
「漫画化!? アニメ化!? なにを!?」
ホントに何言ってんの!?
何を漫画化するの!?
たまにわけわからんこと言い出すけど、今回はホントに何言ってるかわからないわ……
以前『ボストロル』の称号の件で冗談を言ってたし、これも冗談と考えて気にしない方が良いのかしら? (第43話参照)
そういえば、前に夢でも似たようなこと言ってたような……あれは夢だったから特段気にしてなかったけど…… (番外編1参照)
どこかにカメラでもあってカイベルを撮ってるのかしら? カイベルのドキュメンタリー漫画? 『アルトラさんちのメイド人形』的な?
隠しカメラでもあるのかと、縫製所内の物の隙間などをちょこっと探してみるも、そんな物がこの町に存在するはずもなく……
頭に?マークの付いたまま、最後に私の採寸の番が回って来た。
◇
「最後にアルトラ様、サイズを測りますのでこちらへ」
呼ばれて歩き出し、フッと横を見ると、フレアハルトが腕を組んだ状態でつまんなそうに佇んでいる。
………………
…………フレアハルトが佇んでいる?
……何でまだ室内にいるの?
「あ、あなた何でまだ中に居るの!?」
「お、おう……何だ? 居てはまずかったのか?」
「女子が採寸してるんだから、男子は外に出るのが当たり前でしょ!?」
「そ、そうなのか? 我の住んでいる場所ではそういった文化が無いからわからなかった。では失礼する」
さっきのと言い、今のと言いドラゴンって、恥に関して鈍感なのかしら?
まさかアリサやレイアもそうなのか?
まあ冬でもない限り、自分の鱗で服を作ってるから、実質全裸で出歩いてるようなもんだしな……最近は服を着過ぎて丸い体型になってるけど……
「全く……心労かけないでほしいわ……」
闇のドレスを消して、下着姿になる。
「では、身長測りますね……百三十九.二センチ」
「ちっちゃっ!」
「え? まあ今後に期待ですかね」
思わず声に出してしまった……そしてそれをフォローしてくれるエルフィーレ……何だろうこの虚無感……
薄々気付いてはいたけど、生前と比べて二十三センチも縮んだ……身長縮むってちょっとショックだわ……今後ちゃんと成長するのかしら?
「バストトップ六十五センチ、アンダー五十七センチ」
ちっさい……こっちもある程度予想してたけど、貧乳どころか無乳も同然ね……
前世はあの乳だったはずなのに……
と思いつつカイベルを横目で見る。カイベルもそんなに大きいわけではないが、最低限あれくらいは欲しい。
もうちょっと成長した姿で転生させてくれれば良かったのに……
と、頭の中で愚痴を言っている間に、滞りなく採寸は終了。
書き留められた採寸記録を見てみる。
こういう時に目が留まるのは、やっぱり身長と胸の大きさなのよね……明らかに小さくなってるのがわかるけど……
ところで、私って体重どれくらいなのかしら?
この身体でよくまあ、あの巨大なドラゴン形態のフレアハルトに勝利できたなと思う。
尻尾で横に一薙ぎされただけで彼方に吹っ飛んでいきそうなくらい小さい身体である。まさかこの小さな身体で、体重一トンとかあるわけじゃないよね? 家の床壊しながら歩くなんて現象は起こってないから多分そんなに重いはずはないとは思うけど……
あそこに体重計がある……が、恐くて乗る気にはなれない……
「エルフィーレさんって、誰かに習って服を作り始めたんですか?」
「いえ、全部自分で考えて作ってますけど……」
「えっ! この服完全に独学で作ったんですか!?」
「そうですね、この町には教えてくれる方もいらっしゃらないので……」
「今度私の叔母のところへ研修に来てはどうですか? もっともっと進化できると思いますよ!」
採寸終わってあれこれ考えてたら、エルフィーレとリナさんが話し込み始めた。
何やら服の話をしてるっぽい。蚊帳の外になりそうな話題だし、早々に退散するか。
「エルフィーレ、終わりかしら?」
「あ、はい! お疲れ様でした!」
「じゃあ、服が出来るのを楽しみにしてるね」
「お任せください!」
カイベルが訳わからんことを言い始めました。
はい、もちろん筆者には何のことかわかってます。
頭周りのサイズを明確にしないための苦肉の策ですが、身長とかを明確にすると、「その体型でその身長は無いやろ」ってことがあるかもしれないので、頭周りのみぼかしました。
(私が何を言いたいかは、「波平 身長」で画像検索してみると何を言いたいのかわかると思います。なお、波平さんをディスっているわけではないので悪しからず)
あと、前回(第220話)のフレアハルトの服装に関して少々矛盾があったため、修正しました。
大きく話が反れているわけではないので、そのまま読み進めていただいて問題無いと思います。
あと……昨日、ブックマーク外されなくて良かったです(笑) ありがとうございます(笑)
最後に……昨日、投稿日時の予告を間違えてました、すみませんm(__)m
不定期投稿実施初日に間違えるって……
次回は6月24日の20時から21時頃の投稿を予定しています。
第222話【異性に無頓着過ぎるフレアハルトに色々聞いてみた】




