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第178話 リナさんがアルトレリアに加わった!

「や! おひさ~!」


 レヴィが来た。


「今日はどうしたの? 今日も外交?」


 何か頼まれるのかな……?


「うん、今日はちょっとお願いがあって来たの」


 やっぱり頼み事か。

 レヴィの影から出て来たのは――


「アルトラ様~! お久しぶりです!」

「お~! リナさんお久しぶり! 突然来るからビックリしちゃった」


 以前、アクアリヴィアにて、私の案内役を務めてくれた女性騎士リナ・ウォルタ・ブラウン。イーヴァントたちの旅行案内も担ってくれた。

 旧・トロル村だった時にこの町に連れて来たトーマス・ウォルタ・ブラウンの妹だ。 (第67話、第137話参照)


「それで二人は今日何しにここへ?」

「実はね、この子をしばらく預かってもらえないかな?」

「何でまた? 騎士団の仕事は良いの?」

「はい……実は……騎士団には長期のお休みをいただきました。本当は辞めようかとも思いましたが、引き留めてくれる人もいたので……」

「え!? 何かあったの!?」


 何か深刻なことが起こったのかな……?


「はい、リッチさんはいますか?」

「ああ……リッチならもう出てったよ。レヴィには伝わってると思うけど」


 レヴィを見ると頷く。


「どういうことですか?」

「ここの住民との折り合いが悪くてね。元々見下してた田舎の住人と暮らさないといけないってところから、村民との衝突が多くて、この元・トロル村へ移り住んでひと月もしないうちに村を出て行った」

「アクアリヴィアには戻ってないようですけど……」

「そうなの? でも私にはその後、どこへ行ったのか見当もつかないな。私、リッチに殺されそうになったんだけど、それを不問にするから村の人たちと仲良くするように言ったんだけど、私の言うことだから聞く耳持たなかったね」

「殺されそうになった!? よくぞご無事で!」

「うん、まあそっちより出てったショックの方が大きかったけど……」


 そういえば出て行く時、恨み言を残して出て行ったっけな……『必ず後悔させてやる!』って言われた……

 何で拷問された私が恨まれなければならないのだろう……?

 どちらかと言えば、私はあなたが処刑されそうになったところを、後見人として助けた恩人の立場だと思うんだけど……

 立派な逆恨みだ!


「そうですか……では兄は?」

「潤いの木の管理をお願いしてるよ。行ってみる?」

「いえ、後で行ってみます。その前にお話ししたいことがありますので」

「それで、何があったの?」

「リッチさんには妹がいるのですが、私の同僚なのです。私たちは家ぐるみで元々あまり仲が良いとは言えない関係でしたが、兄たちが追放されてから、更に性格が荒れるようになって、ことさら私を敵視するようになりました。私はアルトラ様に頂いたアクアマリンの腕輪のお蔭で騎士団でも多少活躍するようになってきて、それが気に入らなかったのか更に関係が悪くなりました。私の一族は元々穏健派で、彼女の家は強硬派だったので、出来る限り関わりにならないようにと気を使っていたのですが、心労が重なって何も手に着かない状態になってしまいまして……」


 現世で言うところの鬱病みたいなものかな?


「それって、私が原因を作っちゃったってこと!?」

「いえ、腕輪はきっかけにしか過ぎないので、お気になさらずに。決定的だったのは……」


 そう言って、何かが入った袋を取り出し、中を開いて見せた。


「これは……私が贈ったアクアマリンの腕輪?」


 バラバラに壊されてる。ハンマーか斧か、何か強い力で無理矢理壊したみたいに見える。


「一度貸すように言われ、お貸したところ彼女ではこの腕輪の恩恵が受けられないと知ると、壊されてしまいまして……その時点で心が折れ……」


 騎士団を辞める決意をしたってことか。


「壊される前、一度は奪われた後に紛失無効の能力で取り返したのですが、次に取り戻そうとしたら腕ごと壊すと言われてしまい……二度目は恐怖で取り返すことができませんでした……」


 酷い妹だな! あの兄にして、この妹ありってところか……


「せっかくいただいた物なので、壊されても袋に入れて肌身離さず持ってましたが……こんなことになってしまい申し訳ありません」

「いや、大丈夫よ。修理保証は一生涯だから」

「それで、私の家と女王様とは昔から繋がりがありまして、気に掛けていただき、相談をしたところ、ここへ連れて来ていただきました。そういうわけですので、少しの間ここで心の休息をさせていただければと思うのですが……」

「もちろんOKだよ! でもレヴィは良いの? リナさんの家はお金持ちだし、その……国力的な意味で国を離れられると困ると思うんだけど……」

「私ももちろんOKよ! そのために連れて来たわけだしね。何よりもこんな状態では仕事もままならないし、少しの間リフレッシュして帰って来てもらえれば問題無いわ」

「それなら良いんだけど……」

「それに私にはトーマスの上にもう一人兄がいるので、国力の面で言うなら大丈夫だと思います。近衛兵団に所属していますので」


 ルーファスさんの部下ってことかな?


「そっか、じゃあ気が済むまで居たら良いよ」

「ありがとうございます! お言葉に甘えさせていただきます」

「アクアマリンの腕輪、直しておくからこちらへ渡してもらえる?」

「はい、お願いします……」


 ホントはこの場で瞬時に直せるけど、それだと重みも何も無いし、「こんなに簡単に直せるのか」って思われるのも軽いものになってしまうような気がするから、一度引き取った後に直して、後日返そう。


「それで……そちらの方々は確か……」

「私の専属メイドの三人です」

「「「お久しぶりです、アルトラ様」」」


 この間はあまりお話しなかったけど、ウォルタ邸でメイドをやってた五人の内の……確か『ドリー』、『サラ』、『リズ』。

 この三人は見たことあるわね。


「他の二人、ルイーズさんとナタリーさんは?」

「私の家の管理をお願いしました。ある程度自由に使って構わないと」


 だから連れて来たのは三人なのね。


「この三人は見たことあるから良いとして……そっちのガテン系の集団は?」

「おう! ウォルタ家のお嬢さんに家造り頼まれてくっ付いてきたんだよ!」


 家造り!?

 リナさんを見る。


「もしかして……最初からこっちで生活する予定だった……?」

「はい!」


 満面の笑みだ。

 まあ、土地は沢山あるし別に良いか。

 ドワーフ複数引き連れて……凄く良い家建てる予定なのね。

 え? この土地に住み着くつもりなのかな? もし国から招集かかったらどうするんだろ?


「レヴィは問題無いの?」

「別に良いんじゃないかな、私の招集には応じてくれるんでしょ?」

「はい! もちろんです!」

「じゃあ問題無いわ」


 そんなフランクな感じで良いんだ……仮にも貴族令嬢を外国に預けるのに。

 招集かかったら、ここに建てた家は別荘的な扱いになるのかしら?


「ところで今回、ヘパイトスさんは?」

「来たがってましたけど、一線を退いているとは言え、ドワーフ商会の統括責任者で、国の重要機関の一つなので、そう何度も国外へ出せないと、女王様が……」

「それはそうでしょう、私もアドバイス程度の協力だと思ってたら三ヶ月も帰ってこないもんだから……」

「ですよね……むしろよく三ヶ月も貸してくれたと、レヴィにも感謝してるよ」


 これが人間界なら十年くらい拘束することになるから激怒ものね。

 アクアリヴィアの女性騎士・リナさん再登場です。


 次回は3月18日の20時から21時頃の投稿を予定しています。

  第179話【アルトレリアが置かれている曖昧な状況】

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― 新着の感想 ―
[良い点] 街の案内人、リナさん、再登場!! 個人的には好きな人だったので、 再登場はうれしいです。 ウキウキで読み始めたところ、 なんだか現代の闇の様な状態に・・・。 異世界でも嫌がらせをする輩って…
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