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第173話 式典・祭典準備に奔走した!

 そして、その会議中、式典はどのように行うかという話題になり――


「そういえば川完成式典の時には、テープカットで祝福しましたけど、村が出来た時はどうやって祝福するんですか?」


 えっ!? 知らんよそんなの!?

 私も村が一から出来るの初めて見るし!

 ……一から出来たってわけでもないか、原住民(トロルたち)はいたわけだし。


「え、えっと、私もそれは知らないな……私も生まれた時にはもう町の中に住んでたから」

「そ、それもそうですよね……私も生まれた時からこの村に住んでますし……」


 この場にカイベルが居れば密かに聞いてみるところだけど、多分答えなんて無いだろうな。

 たった一人で村作って、場を祝福する人なんていないだろうし。もしいるとすればそれは村ではなく、ただのポツンとしている一軒家だ。


「じゃあ、地鎮祭でもしてみる?」






 ――と言う不用意な一言から、地鎮祭をやることが決定してしまった……

 私の一言は、それ自体の開催に繋がりかねないから、注意して発言しないといけないかも……

 その後、カイベルに相談。地鎮祭に必要なものを聞く。

 そこで出て来たのが、『お米』、『奉献酒(ほうけんしゅ)』、『塩』、『(さかき)』、『おおぬさ』。


奉献酒(ほうけんしゅ)って、どんなのが良いの?」

「大吟醸酒や清酒が良いのではないかと」

「おおぬさってなに?」

「大麻のことです」

「えっ!? 大麻!? それを使うのは日本人の倫理観としてはちょっと……」

「冗談です。大麻と書いて『おおぬさ』と読みます。神主の方がお払いの時に振る、紙垂(しで) (ギザギザに折られた紙)で出来た祓具(はらえのぐ)です」


 ああ、あの棒に紙が沢山付いたワシャワシャ言うやつか。あれ『おおぬさ』って言うのね。

 子供の頃、あのワシャワシャする音が好きで、見よう見まねで作って振ってみたことがある。一振りする度に、紙が四方へ揺れ動くから楽しくて夢中になって振ってたっけ。


「『ぬさ』は『(あさ)』の古名で、『大麻(おおぬさ)』は現在は紙で作られていますが、元々麻布で作られていたため『麻』の字が使われ、『ぬさ』と読まれているとか」

「『大』の字の意味は?」

「『(ぬさ)』を褒めるために付け足した、ただの修飾文字です」


 へぇ~、神様に対して使うものだから、麻に誇張の意味の『大』を付けて『大麻(おおぬさ)』って名前にしたのかな?

 お米、奉献酒(ほうけんしゅ)は、アクアリヴィアで購入で良いかな。

 塩はうちの村にもあったからそれで良いだろう。

 (さかき)もアクアリヴィアで花屋とか見れば売ってるかもしれない。無ければそれに近い代用品で。

 大麻(おおぬさ)は、紙を折って作れば良いかな?


「これだけで良いの?」

「他にはお供え物ですね」

「それって……もしかして鯛とか含まれてる?」

「はい、日本で考える一般的な地鎮祭では、鯛や昆布などの海の幸の縁起物、野菜や果物などの山の幸が用意されますね」

「海の幸はアクアリヴィアで買えば良いか。鯛に似た魚もあるでしょ、海洋国家だし」

「そうですが、この村の祝福をしていただくので、必ずしも海の幸を使わずとも、この村で取れた農作物でも良いのではないでしょうか?」

「それもそうね! じゃあ、お供え物はこの村で取れた物を使おう。じゃあ食べ物は私が用意するから、私が分からない方は用意してもらえるかしら?」

「わかりました、お任せください」



   ◇



 地鎮祭を行うなら、土地神様を祭る神社が必要じゃないかと思い、村の中央の山を私が少し切り開き、神社を建てるための境内とそこへ続く石階段を、即席で作った。

 神社境内へと続く階段は、土魔法の石属性で岩肌を圧縮して石階段として形成。境内まで作った。

 ホントのところは村の人たちにやってほしかったところだけど、川の時とは違って、生活に直結しないからやってもらうのも気が引ける。


「アルトラ様、また何かやり始めたんですか? って、何ですかコレ!?」


 さっきまでは無かった山の上の境内へと続く石階段を見て驚かれた。


「会議で地鎮祭ってのをやることが決定してね、神社を作ろうかと」


 山の突然の変貌に、この近所に住んでいる人たちがゾロゾロと集まってくる。


「こ、これ大丈夫なんですか!? 山崩れとか」

「きちんと固めたから影響は無いと思う」

「でも……アルトラ様、失敗も多いですし……」


 そう言われて急に心配になった。


「も、もう一度確認してくるわ!」


 山崩れに影響しないかどうか、全体的に見て回ったところ、問題無さそうだ。

 一応避難用の階段として、別方向にも石階段を作った。



   ◇



 次に建築組のダイクーの工務店を訪れ、鳥居と神社の建設をお願いした。


「一週間で!? いや無理だろ!」


 ですよねー……


「じゃあとりあえず簡易的な社だけで良いから作ってもらえないかしら? 社は小箱くらいの大きさで良い。それと鳥居を」

「鳥居が何だかわからないんだが……見たことがないから、大きさすらわからん……」

「こういう形の――」


 と言いながら、鳥居を描いた紙を差し出す。


「一般的には大体十メートルくらいの高さで、亜人(ひと)が下をくぐれる……え~と……門? みたいなものかな。最大級になるともっと大きい三十メートルなんて巨大なのもあるみたいだけど」

「何で出来てるんだ?」

「木とか石とか。でも木だと腐ったり、虫に食われたりするから、出来ることなら石が望ましいかな」

「石ってことは削り出さないといけないんじゃないか?」

「ううん、石って言っても鉄筋コンクリート製よ」

「それだと一週間じゃ厳しいな……今回は木で作って、次回立て替える時に石にするかどうか考えよう」

「OK、じゃあ今回は木でお願い」

「それでどこに作るんだ?」


 さきほど作った石階段のところまで案内すると――

 トロル(ひと)が……さっきより大勢集まってる……


「朝起きたら山に突然階段が出来てる……」

「すげぇ~!! この先どうなってるんだ!?」

「これは……! 新しい散歩コースにしようかな。良い運動になりそうだ」


 もちろん工務店から連れて来たダイクーも驚愕。


「な、どうなってるんだ!? 昨日こんなの無かったぞ!?」

「さっき私が作ったの」

「相変わらず大がかりなことをやるな、あんたは」

「鳥居は階段から少し離れたあの辺りにお願い」

「わかった。社は?」

「じゃあ階段の上へ上りましょうか」


 階段を上りながら、作ってもらいたい社や神社について説明する。

 境内に着くと、既に何人かのトロル(ひと)たちがチラホラ居る……

 まあ、こんなの突然出来れば興味本位で上りたくなるよね。


「へぇ~、これが境内か~! この上から村が一望できるな。それで社はどこへ作るんだ?」

「じゃああの一番奥に、社は地鎮祭までで良いから、その後に神社を同じ場所に作ってもらえる?」

「わかった」

「あと、これは後でも良いんだけど、階段を上り切ったところに、もう一つ鳥居をお願い」

「鳥居は二つ?」

「そう」

「わかった、まかせておけ」


 そういうわけで、今しがた作った境内に神社、もとい、神社予定の社と鳥居を立ててもらうことになった。


「もう一つ仕事増やしちゃって悪いんだけど、この石段の整形をお願いできるかしら? あと安全性を考えて階段の中心辺りに手すりを付けてもらえると嬉しい」


 魔法で階段の形までは作れるものの、きっちりさせるには人の手による整形が必要。まあ、階段くらいならもうちょっと明確にイメージすれば綺麗になったかもしれないけど、それでもイメージするにも限度はある。


「全く人使いが荒いなアルトラ様は」

「手間かけさせてごめんね~。神社は出来ることなら年末までに完成させてもらえるとありがたいかな」

「この階段は石だし土魔法で整形できそうだな。よし! フレハルに頼もう!」


 階段はフレアハルトの仕事になったようだ……

 元・王子……(てい)よく使われてる気がするけど、よく文句も言わずにやってくれるもんだわ。



   ◇



「それで我に白羽の矢が立ったわけか」

「お願いできるかしら?」

「まあ、石の階段を整えるくらい問題無いだろう。素晴らしく綺麗に仕上げてやろうではないか! ただ……報酬が欲しい!」

「なに?」

「最近になって、以前よりより寒くなってきた! もっと暖かくなるものを頼む! アリサとレイアの分も!」


 まだ十月上旬だというのに、もうセーターでは寒くなってきたのか……

 切実な悩みね……


「わかった、三人分用意するよ」


 よし、これで祈願の対象となる神社 (社)は何とかなりそうだ。

 …………いや、待てよ? 神社出来ても誰を信仰するんだ? この土地の神様って何て名前?

 急いでリーヴァントのところへ。



   ◇



「信仰している神様ですか?」

「そう、この辺りで信仰されてる神様って誰?」

「熱心に信仰してた神様はいないですね、何せ信仰するほど頭が良くはありませんでしたし」

「え? だってあの時『天使様』とか『神様』とか言ってたじゃない……」

      (第20話参照)

「超常の存在ということくらいは認識していたので、そういう発言になったのだと思います。フワッと曖昧に考えたことはあっても、明確に『神』という存在を考えたことがなかったというのが正しいのではないかと。ですので、我々には信仰している明確な神様というものは存在しません」


 祀る神様がいないのでは困ってしまうな……


「アルトラ様でもお祀りしますか?」


 冗談なのか本気なのかわからないが、笑いながら話している。


「いや、私まだ生きて……あ、死んでるか。でも生きてる人のように生活してるから祀られるのはちょっとね……じゃあ、トロルたちの住まう土地の守り神で、仮に『トロル神』とでもしておこうか」

「トロル神ですか……?」

「この土地の守り神様だから『トロル神』」


 う~ん、何だか納得行かないって表情(かお)をしているわね。


「私はアルトラ様でも良いのですが……」


 本気の方だった!


「いや! トロル神にしましょう! トロル神に決定!」


 日本人的な八百万の神々という考え方からすれば、この土地にはこの土地の守り神がいるだろうし。きっとトロル神で問題無いだろう!


「じゃあ、神社が出来るってことも、回覧板のニュースで触れておいて!」

「わかりました。それで地鎮祭はどのように行うのですか!」

「今各地を回って準備中~!」


 こうして、着々と地鎮祭へ向けて、準備が進められて行った。

 地鎮祭を行う旨を五日前に回覧板にて周知。

 この一週間の間に社ができ、ご神体 (鏡)を用意し、前日に魂入れを行った。

 そして、あっという間に一週間が過ぎ――

 不用意な発言から地鎮祭 (のようなもの)を行う運びになってしまいました。


 次回は3月5日の17時から18時頃の投稿を予定しています。

  第174話【地鎮祭 (のようなもの)が執り行われた!】

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― 新着の感想 ―
[良い点] 式典から地鎮祭へと、なぜか昇華しましたね。 アルトラ様の言葉で乗っかるというのも、 もはやアルトレリアの住民の性質なのでしょうか。 というか、アルトラ様大好きなので、 なんでもいうことを聞…
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