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第163話 カイベルに羊毛刈りを任せて……

「カイベル、毛刈りお願いできる?」

「了解しました」

 以前デンキヒツジの毛を刈って来たのはカイベルだから、お願いした方が早い。


「私は手伝った方が良い?」

「いえ、アルトラ様は不器用ですのでその辺りで時間を潰していてください。大体二時間ほどで戻ってきます」

 流れるようにディスられた……まあ、あのフィギュアの出来を見られてたらな……むしろ私が居た方が邪魔になるかもしれないし、大人しく待っていよう。


「あと、一匹狩って、肉を食べやすいように切って持って来てもらえる?」

「了解しました、では行ってきます」


 周囲には誰もいないし、アニメでも見て時間を潰すか。こんな平原に誰か来るとも思えないけど、アニメの無いこの世界で見られたら厄介だから、一応後ろから見られないように壁を背にして座る。


 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・


 二時間後――


「羊三十頭分の羊毛を刈ってきました。それと一頭を仕留めて解体してきました」

「ご苦労様、ありがとう」


 『魔滅の刃 無限電車編』を見終わった辺りに帰って来た。

 刈り取ってきた羊毛を受け取る。


「うわぁ、三十頭分って大量ね。あとどれくらいいるの?」

「私が刈っていた周辺には六百八十二頭いました。他の範囲にも存在するならその数倍いるのではないでしょうか? 検索して正確な数字を調べますか?」

「…………いや、そこまでして正確な頭数を知りたいわけじゃないから別に良いよ。じゃあ三十頭くらいなら刈り取っても大丈夫そうね。アスモの許可も得てるから、今後補充する必要があった時に刈らせてもらおうか。日を置きながら刈れば、最後の羊を刈る頃には、最初に刈った羊は生えそろってるでしょ」






 以前羊毛を刈って来た時から疑問に思ってたことがある。

 どうやって狂暴とされている羊相手に、殺さずに刈るのか? 後でその方法を聞いてみたところ――


「デンキヒツジの密集してる地帯までジャンプして降り立ち、広範囲睡眠魔法で眠らせた後、一匹三、四分ほどで刈り取ってます。デンキヒツジは外敵に対して攻撃的ですが、私を中心に羊がバッタバタ倒れるのを見て、魔法範囲外にいる眠っていない羊たちは恐がって離れて行きます。その間に眠った羊の毛を刈っています」


 なるほど、眠らせてたのね。

 突然大量に倒れたら、そりゃあ恐ろしいよね……羊たちから見れば、突然死してるように見えるかもしれないし。

 と言うか……一匹三、四分って尋常じゃない速さなんだけど……






 刈り取った羊毛を手に、再びエルフィーレの縫製所を訪れた。


「沢山刈り取って来たんですね」

「でも、これでもセーター三つ分なんでしょ?」

「確かにそうですね……だとしたら少ないと言えるのでしょうか……?」

「見た目はモコモコして大量にあるように見えるんだけどね……」


 これは労力と生産される物を天秤にかけたら、到底見合わないな。

 人間界のものと比べても刈り取るための危険度が段違いだから、誰も刈ろうとしないはずだわ。私が個人で刈り尽くしてしまっても許されるレベルかもしれない。


「じゃあ、これで二人分お願いできる? もう一人分のはどう使ってもらっても構わない」

「わかりました、お任せください!」

「あと、それだけじゃ悪いから、羊の肉を捌いてきたからみんなで食べて」

「わぁー、ありがとうございます! ガルム以外のお肉は久しぶりですよ!」


 この村は本当に肉が足りない。何とかしてどこかしらから肉 (となる生物)を取り寄せられないかしら?







 その数日後――


 エルフィーレに頼んでおいたセーターが出来たというので取りに行った。


「ありがとう~! 三人も喜ぶと思うよ!」

 温かい……と言うか私には暑いわ! 今初秋よ!? 気温もまだ二十八度から三十度くらいを推移してる状態よ!? レッドドラゴンの身体どうなってるの!?


「でも……作ってる最中から思ってたんですけど、アリサさんたちはホントにこれ着るんですか? この村でこんなの着てたら暑くていられないですけど……」

「本人たちは、会えば『寒い』って言ってるからね……寒いって言ってるからには着るんでしょう」


 けれど……果たしてこれでレッドドラゴン三人は温かく過ごすことができるのかしら?

 今の気温は大丈夫だとしても今後は? 徐々に気温が下がって来てるのを考えると、今後冬が到来しないとも限らない。

 そうなった場合、もしかしたら彼らは家から……いや布団から一歩も出られなくなってしまうんじゃないかしら?

 …………まあ、必要に駆られたら対応しよう。普段は頼まれなければ対応しないところだけど、寒さに震えるのを見るのは流石に可哀想だ。


 とりあえず現在の気温ならこのセーターでも何とか満足してもらえそうだ。

 この先、もし冬の気候が到来するようなことがあれば、その時に考えよう。

 ただ……これだと下半身がカバーできないから、このセーターを触媒にして、全身が温かくなるような魔法を施しておこう。


 三人にセーターをプレゼントした。

 三人ともいたく気に入って、毎日着ているらしい。







 しかし、その後日、マメな性格のアリサが凡ミス。

 セーターを水洗いしてしまって、縮んで着られなくなってしまったらしい。レッドドラゴンは自らの身体で服を形作っているため、本来は洗濯の必要が無く水を極力使わないのだけど、セーターは自分の身体以外の衣服ということで、汚れてきたから洗ってしまったのだとか。

 私が『水洗い厳禁』だということを伝え忘れてしまったのが原因。

 普段ミスなどしないアリサから謝り倒されたが、そもそもの原因がこちらにあるため、こちらも何度も謝り倒し、双方が何度も頭を下げる奇妙な光景に……

 経緯をエルフィーレに伝え、急遽余った羊毛でもう一度制作を依頼して、新しく作ってもらった。


 余談だけど、この村で生活するようになって、水浴び (お湯浴び)する機会は増えたらしい。それと言うのもここは砂(ぼこり)で汚れることが多いため。

 大分道も整備されてきてはいるものの、まだまだ砂埃は多い。

 では、レッドドラゴンの町ではどうしていたかと言うと、汚れを炎で焼尽してよしとしていたのだとか。

 曰く「炎で汚れを落とすより、お湯で流した方がさっぱりして良い」とのことで、最近は水浴び (お湯浴び)が習慣化しているらしい。

 フレアハルトたちに防寒具が装備されました!


 次回は1月29日の17時から18時頃の投稿を予定しています。

  第164話【橋作りについて】

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― 新着の感想 ―
[良い点] フレアハルトさんよかったですね、セーターをいただいて。 今の時期、現実世界でもかなり寒いですが、 セーターは暖かいからいいですよね。 しかし洗ってしまうとは盲点でしたね。 まぁ、汚れたら洗…
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