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第14話 活火山冷却成功?

 雨が降り始めてから更に三日が経った。

 豪雨は七日七晩続いている。

 私の生活範囲となっている地獄の門前広場と、トロル集落のあるエリアは【防御魔法:水吸収】の結界のお蔭で水没は免れている。この結界の外は大洪水だ。

 もしかしたらかなりの数死者が出ているかもしれない。

 死者の国で死者が出てるってのもおかしな話だけど……

 仮にトロルたちを妖精や精霊であり、妖精や精霊が生者であると考え、アンデッドや亡者を死者と考えるなら、死者と生者が一緒にいるのも、それほど矛盾していない気がする。

 私は亡者 (死者)のはずだが、生者である (と思われる)トロルたちにはきちんと認識されていた。

 つまり、人間界で妖精や精霊は見ることができないが、この死の国で生者という扱いであるなら、この洪水で死んでる可能性があるということ。


「私、とんでもないことしちゃったかもしれない……」


 MP:十五万の水魔法は伊達じゃなかったらしい。早くMP分降り尽くしてくれることを祈る、マジで!


 余談だけど、亡者 (死者)は地獄内に限っては、死んでも風が吹けば元の状態で蘇るという話。どんなに小さく細切れにされても蘇る。死んで終わりなんて慈悲深いものではなく、死んでも蘇らされて、また地獄の痛苦を味わなければならないとか。

 これは人間界のとある書物の情報。

 一応オルシンジテンに確認取ったところ、「神域のことなので分かりません」と返された。地獄内部のことまでは分からないらしい。


 ケルベロスに食われた亡者はオルシンジテンによると魂ごと消滅してしまうらしい。この『消滅』が何を意味するかも聞いてみたが、死後のそのまた後の話なので分からないとのこと。

 そうなると、脱走を試みて魂ごと消滅する方が楽なのか、痛苦を永劫(えいごう)に味わってでも地獄で罪を償うのが楽なのか、どちらが良いのかわからなくなってくる。

 しかし、『消滅』の苦痛がどの程度のものかはわからない。とは言え地獄に堕とされた罪に加え、脱走の罪が加わるのだから地獄に比べて易いものとは思えない。もしかしたら未来永劫絶えることのない更なる苦痛が襲う状態が消滅した状態なのかもしれない。

 消滅したことがないからわからないが、そういう万が一がある“かもしれない”ってことを考えると、絶対に死なないようにしないといけない。


   ◇


 更に二日が経過。

 豪雨は未だ止まず、今日で九日目。

 結界の外は。地獄の門前広場の周囲にある壁と同等まで水が上がり切ってしまっており、中から見ると最早水族館状態だ……水の下にあるこの場所は、さながら竜宮城。

 早めに防御魔法で結界を張っておいたのが功を奏した。


 ただ……ある時期から土埃(つちぼこり)が上から降ってくるようになった。

 どうやら水吸収の結界で、水だけは吸い取られているが、泥水の中の泥=土の部分だけが通過して降って来てるらしい。

 仕方ないので水吸収結界の内側に土吸収の結界を施した。これで土も降ってくることはないだろう。


 ケルベロスは上空に溜まった水を恐がって犬小屋から出てこない。

 絶賛サボタージュ中。

 ただ、こう何日も豪雨が続くと食料とか大丈夫だろうか?


   ◇


 豪雨降り始めから十日。

 ようやく雨が止んだらしい。

 “らしい”というのは、まだこのエリアが水の底状態で確認が出来ないから。

 上を見ると結界の上部だけ濁った水が、少しだけ透明になってきているため、雨が止んだと判断した。実際降ってないかどうかは、外が見えないからわからないと言わざるを得ない。

 私の予想通り雨が止んでいるなら、ここは火山地帯で水はけがすこぶる良いから、明後日にはもうほぼ引いていることだろう。


   ◇


 雨が止んでから二日が経った。

 豪雨が降り始めから十二日。水がほぼ引いた。

 結界を【防御魔法:水吸収】で作ったのは怪我の功名だったらしい。水吸収で作ったお蔭で、結界が降った雨を徐々に吸収していってくれた。これをもし、水無効で作っていたら、降った雨を結界が弾いてしまい、最早どうすることも出来なかったかもしれない。まあ、水はけは良いから時間か経てば何とかなったかもしれないけど……それでも数倍から数十倍の日数が必要だったかもしれない。

 かもしれなかもしれない……


「さて、肝心の火山地帯はどうなったかな?」


 防御魔法を解除し、火山上空を飛んでみる。


「海の中でも火が消えない海底火山って現象もあるし、鎮火してない可能性もあるかもしれない」


 七つの火山地帯を見回ってみる。

 火山周辺に流れ出したマグマは、もうすっかり冷えて固まっていた。


「火口はどうだろ?」


 火口もほとんどの火山が沈静化。火口内で溶岩が燃えているのは七つ中一つだけになった。


「十分な成果ね」


 これだけ火山が沈静化すれば、外気温も大分下がってるでしょ。

 体感的には少し肌寒いくらいだけど、私の身体の気温感知はアテにならない。

 私の身体特性である『熱感知』で感知出来る温度が二十度が下限だから、仮に氷点下になっていても私にはわからないのだ。


「そこで、先日作った温度計の出番よ!」


 温度計で現在の気温を確認してみる。

 マグマが冷える前は木が自然発火する温度だったから、推定四百五十度を超えていたはず。

 さて、何度まで下がったかな?


「気温五度……」


 ん?


 見間違いかと思って目を擦り、もう一度しっかりと凝視する。


「………………ご……ど……?

 …………五度!?

 え!? どういうこと!?」


 マグマが冷える前は推定四百五十度以上で、今は五度?

 極端に下がり過ぎじゃない?


「ケルベロス大丈夫か!?」


 あれ? いつもの位置にいない?

 ああ……今日も門番はサボりか……


 犬小屋を見る。

 中で包まって震えている。

 床暖房完備なのに……

 この寒さ、何がいけなかったんだろう?


「もしかして太陽の熱が無いから?」


 上空に輝いている疑似太陽は、時間魔法と光魔法 (+空間魔法)だけを組み合わせて作ってあり、火属性を混ぜていないため熱を発していない。

 火属性が無いことによって、光輝いてはいても熱が発生せず、気温が上がらない状態なのかもしれない。


「一応まだ一つ冷え切ってない活火山が残ってるから、地熱で零度より上は維持できてるみたいだけど……あれが無かったら、もしかしたら氷点下を大きく下回ていたかも」


 急いで疑似太陽に火属性を足して、熱を発するように作り変える。

 温度計を見ながら、ちょうど良い温度に調整する。二十から三十六度の間で推移するように調整。

 これでももしかしたらこの地の生物にとっては寒いかもしれない。

 もう少し上限を上げたいところだけど、これを逸脱するような温度になると育たない作物は多い。


 寒がってたケルベロスは……というと。少し温かくなったからか、いつもの位置に出てきた。まだ寒そうだ。

 後で何か温かく包めるものを巻いてやろう。

 今回で第1章は終了となります。

 次章からはいよいよ異種族コミュニケーション開始です。


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