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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第6章 アルトラの村役所長代理編
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第146話 美味しいものを運ぶ虫がやってきた!

「変な虫が居いついてしまったようで困っています」

「変な虫?」

「その虫に顔を刺されてしまいました。最初はただの虫と思い、自分で駆除しようとしたんですが、集団で襲って来られまして……」

「どんな虫ですか?」


 刺すってことは毒持ってるやつか、すぐに対処した方が良いかも。


「黄色と黒のシマシマで――」


 あ~、それどう考えても蜂よね……

 顔刺されたって言うけど……刺されたところはそれほどでもないように見える。と言うか、虫を追い払った時に出来たのか、多数の傷はあるものの刺されたところはほとんど腫れてないように見える。彼の体質だろうか?

 黄色と黒のシマシマということは有用なアイツかも。


「――とにかく来てください! 見てもらうのが一番早いと思います!!」


 と言うわけでその場所へ移動。

 その場所と言うのが……村の中にある街路樹の一つ。

 何か沢山ヒトが集まって……あっ! 何か火が見える!!


「ちょ、ちょっと、ちょっと、何やってんの!?」

「あ、アルトラ様。いえ、何やら刺す虫のようなので、早めに対処しようと焼いてしまおうかと思いまして」

「そんなことしたら街路樹が炎上しちゃうでしょっ!?」

「ではどうしたら……?」

「とりあえず私に任せて!」


 街路樹を見上げる。

 あ~、アレか~、確かに黄色と黒のシマシマ模様。お尻に針がある。

 あの胸のふわふわ加減……見た目からすると思った通りミツバチっぽいな。でも日本のより少し大きいような……魔界サイズかな?

 最近は、この辺りも勝手に草木や花が生えてくるようになったから、こういう虫も居付くようになってきたか~。


 トロルがどれくらい毒に強いかはわからないけど、依頼者の顔が腫れてないところを見ると、それほどの毒は無さそうだ。

 蜂球(ほうきゅう)が出来ているから、この様子からすると多分今引っ越しの真っ最中みたいだ。


「ちょっと準備してくるので手を出さないようにして、挙動を監視しててください」

「すぐ駆除しないんですか?」

「うん、この虫、実は美味しいものを作ってくれる種類だから、この村で飼いたいと思う」

「え!? こんなの飼えるんですか!?」

「そのための準備をしてくるから、もしここからどこかへ逃げてしまったら教えて!」


 上手く行けばこの村で蜂蜜が獲れるようになるかも?


   ◇


 我が家へ帰って来た。


「カイベル! ちょっと来てもらえる?」


 そして村のはずれへカイベルを連れて来た。


「この辺で良いか」

「こんなところへ連れて来てどうしたのですか?」

「今ミツバチらしき虫を見つけたから、巣箱を作りたい! 作り方を教えて! と言うか……急ぐから作ってもらえる?」

「創成魔法で作った方が早いのではないですか?」

「巣箱って複雑だから、ちゃんとしたイメージが湧かない。私にとっては機械にも近いと言っても過言ではないから再現が難しいと思う」

「日本のミツバチと同じですか?」

「ちょっと大きいみたいだけど」

「了解しました」


   ◇


 あっという間に巣箱を作ってしまった……

 ホントに有能……


 巣箱が出来たので、カイベルを伴って蜂が居た街路樹へ戻る。


「あ、戻って来た!」

「様子は変わってない?」

「ずっと動いてません」

「じゃあ、みんな監視をありがとう。今からこれの対処をします。ちょっと怒らせるかもしれない。危険だと思うので、みんなは離れてください」


 私の言葉を聞いた後、近くに居た全員が街路樹から離れる。

 全員が離れたのを確認してから、木に群がっている蜂球(ほうきゅう)を手で掻き分ける。


「カイベルさん、あれ何やってるんですか?」

「あの中にいる女王を探しているのですよ」

「女王?」

「女王を捕まえることにより、周りに居る蜂も付いてくるので、今はその女王を探しているのです」

「刺されませんか?」

「刺されると思いますよ。しかしアルトラ様の身体には針が通らないので問題無いかと」


 う~ん……これだけいるとどれが女王か分からないな……

 そもそも見たことも無いからどんな見た目なのか分からない……

 他の働き蜂と見た目が違うって話は聞いたことがある。どんな姿か分からないけど、とりあえず見た目が違うやつを探すか。


 女王を探している間、攻撃的になった蜂が攻撃してくるが、私の身体には全く刺さらない。

 集団で刺しに来てるから、頻繁にカンカンカンカン音が鳴る。相変わらず人体から鳴ってるとは思えない音だけど……

 それにしても……鳥にたかられたり、蜂にたかられたり、よくいろんなものにたかられるなぁ……


「カイベルさん、アルトラ様が虫の集団に頭を突っ込んだまま、全く動いてないように見えるんですが、あれ本当に大丈夫なんですか?」

「問題ありません」


 あ、見つけた! 多分コレだ! 他のよりちょっと大きくて色が違う。

 その女王と(おぼ)しき蜂を掴むと、そのまま街路樹を飛び降りた。


「あ、動き出した!」

「「「 おお~~!! 」」」


 女王が移動したため、蜂の集団も私に(まと)わりつく。


「うわ~!」

「もっと離れろ!」


「あ、あ、あれ大丈夫なんですか!? 明らかに異常事態ですけど!? アルトラ様の身体の形に沿って虫がたかってますよ!?」

「問題ありません」


 このまま村の中歩くのも危険ね、多くの蜂は私に(まと)わりついてるけど、はぐれた蜂が誰かを刺すかもしれないし。【ゲート】を使うか。


 【ゲート】でさっきの巣箱の位置へ空間転移。


「あ、アルトラ様いなくなりましたけど、何匹か残りましたよ?」

「問題ありません、女王が近くにいないので、すぐにいなくなりますから」


   ◇


 さて、女王を捕まえて巣箱のところへ来た。

 この中に入れて、と。

 私に(まと)わりついていた蜂も巣箱へ移った。

 これでここに住み付いてくれれば良いんだけど。


 ミツバチはあまり刺さないって話だけど、それでも危険を感じれば刺すらしいから、村の人たちには近付かないように言っておかないとね。

 私にはなぜか外交関係のお客さんがよく来るから、誰かに養蜂をお願いしたいところだけど、流石に危険だからしばらくは私とカイベルでやるか。分身体使えば、本体(わたし)が別のことやってても面倒見られるでしょ。

 現状、村内にハチミツの有用性も知られてないから、多分誰もやりたがらないだろうし。

 ハチミツ(コレ)が出来て、味わってもらって、改めてやってみたいってヒトが現れたら任せよう。


   ◇


 依頼者へ対処が終わった旨を報告する。


「虫と一緒にどこかへ行ってしまいましたけど、どこへ行ってたんですか?」

「村はずれにあの虫のお家を作ったから、そこに住んでもらうようにした」

「ホントに飼うんですか? 危なくないですか?」

「そのための村はずれよ。あの虫は刺しはするけど大人しい種類だから、近付いたり刺激しなければ襲って来ない。でも怒れば刺すことには変わりないから、周りには近付かないように言っておいて。こちらからも回覧板で注意喚起するから」

「わ、分かりました。ご対応ありがとうございました」


 何とか蜂騒動も一件落着か。

 こういう依頼を逐一こなして、リーヴァントも役所のみんなも大変だな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさかの虫、出現。 つい最近(?)まで、熱々のところだと思えないくらいですね。 まぁ、アルトラ様が冷やしたので過ごしやすくなって、 生息範囲が広がったのでしょうが。 そして、何の躊躇いもな…
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