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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第5章 雷の国エレアースモの異常事態編
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第135話 羊型の座布団

 よし、これで現状この国でやるべきことは全て済ませた。

 あとは……疑似太陽のことだけど、これは多分後日ってことになるだろう……この騒動でそんな場合じゃないだろうし。

 とりあえず、アスモに治療を終えた報告をして、時間的にも夜の時間帯だし、今日もホテルに泊まらせてもらって明日帰ろう。


   ◇


「アスモ、治療を終えて来た。病院の場所教えてくれてありがとう」


 胴体切断されたヒトなんか放って帰ったら寝覚めが悪くなるところだ。


「……お疲れ様……こちらこそありがとう……ベルゼがいなかったら、この国がどうなってたかわからない……」


 偶然にも、雷耐性持ちで、超防御力持ちの私がここを訪れていて良かったってところかな。自画自賛入ってるけど……


「……ごめん、今回は太陽を創ってもらう余裕は無さそう……この件が落ち着いたら、再度ベルゼの家を訪問させてもらう……」

「そうよね……これだけ大規模な騒動があったら、ね……」

「……せっかく来てもらってごめんね……アレ持って来てもらえる……?」


 側近のヒトに何か頼んだ。


「はい」


 アレ? 一体何を持ってくるんだろう?


 持って来たのは大きめの箱。ファンタジーでよく目にする宝箱だ! どう見ても宝箱を持って来た!

 それを抱え、私の方を向けて蓋を開く。


「……これ前金、二千万エレノルある……」

「にせんまん!!?」

「……少ない……?」

「いや、まだ何もやってないのに……」

「……そう、だから前金。頭金とも言うかも……でも頭金は一千万で、もう一千万は巨大サンダラバード討伐に貢献してくれたお礼……頭金の残りは疑似太陽を創ってもらった後にお渡しする……それに、全然何もやってないことはない……ベルゼがいなければ、この街が滅んでたか、サンダラバードを全滅させなければ収まらなかったかもしれない……」

「そこまで言われるとちょっと気恥ずかしいね……」

「……でも事実……それぐらい、あの鳥は危ない生物だった……」


 二千万……何もやってないのに二千万……ホントに持って行って良いのかしら?


「あの……ホントに貰って良いの?」


 こんな大金、前世でも持ったことがない!


「……もちろん、これは対価だから……じゃ、まだまだ後処理に追われそうだから、今日はこれで……」

「あの! 私、明日帰ろうと思ってるの!」

「……そう……寂しくなる……でも、会えて良かった。姿が変わってもベルゼはベルゼだった……じゃあ、落ち着いたらまた訪問させてもらう……」

「うん! それじゃ、またね」


 さっぱりした別れだったが、前々世からの友情を感じた。


 なお、二千万エレノルは即座に【亜空間収納ポケット】に入れた。私しか取り出せないから、正直言って銀行に預けるより安全だと思う。


   ◇


 ホテルへ帰還。


「あ、やっと帰って来タ!」

「お帰りなさいませ、アルトラ様」

「今日一泊して、明日帰るよ」

「エ……? 観光ハ?」

「行けると思う?」

「…………そうだナ……街中穴だらけだしナ……」

「そうだカイベル、確認しておきたいことがあるんだけど、回復魔法って痛みがあるの?」


 今日の回復魔法指導でずっと半信半疑だったからこの件は絶対に聞いておかなければならない!


「はい。この世界の回復魔法は、突然不思議な力で回復させるものではなく、自己再生能力を急激に高めて再生を促すものなのです」

「それで?」

「強い回復魔法で急激な自己再生を促すと、細胞が急速に分裂することによる痛みが発生します。イメージとしては…………思春期の成長痛を超激痛にしたもの、という感じでしょうか」


 せ、成長痛って結構痛かったのに、あれを超激痛に?


「欠損部位の長さの分の痛みを感じるため、大怪我であれば大怪我であるほど、それを急激に回復させた時にその怪我の大きさに比例した痛みを伴うのです」

「そ、そんなに強い痛みに耐えて回復してもらわないといけないのね……」


 そりゃ泣き叫びもするわ……

 二回も切断と同等の痛みに耐えるくらいなら、隻腕でも良いかって思うヒトもいるかもしれないな……

 今まで私が【回復魔法(ヒール)】を使う状況だった時は、大した怪我ではなかったため、回復時の痛みが発生していることに気付いていなかったのかもしれない。

 今後はよほどの極限状態でない限り、無闇に【回復魔法 (極大)(ハイスト・ヒール)】みたいな急激な回復を促す魔法は使わないようにしよう。


「なるほど……よく分かったわ。解説ありがとう」


 さて、確認することも終わった。


「街中は穴だらけだったけど、幸いここはちゃんと泊まれるみたいだから、ゆっくり休ませてもらおう。お風呂行こっか」


 今日もエミリーさんを誘おうと思ったけど、今日はもうすでに部屋を引き払って、空間魔法災害の後処理に駆り出されているようだ。

 緊急事態ゆえに私の案内役は解除ってことかな。


   ◇


 ところが、お風呂に着いてみると……


「えっ? お風呂使えないの?」

「はい……昨日の空間魔法災害で湯舟を壊されてしまったらしくて、穴が開いてしまいまして……お湯が貯められなくなってしまいました……修復までに数日を要するそうで……」


 まあ、あの魔法災害直後じゃ仕方ないか……お風呂は今日一日くらい我慢するか……


 帰りに土産物コーナーで、村へのお土産を見繕う。

 今回はアクアリヴィアの時とは違って、お金がある! 貰い立てホヤホヤだけど、私の手には二千万エレノルが!!

 魔界へ来てやっと『自分の』所持金で買い物ができるようになった。


 リディアが、今度は何だかフワフワしたのを持って来た。

 羊 (?)の座布団かしら?


「これ買ってク。アニメ見る時に尻に敷いたらちょうど良さそウ」


 今回の判断基準は、「おいしそう」ではないらしい。

 ちなみに、前回「おいしそう」という判断基準で買ったサメの抱き枕は、寝床で涎だらけになっている。


 私は適当に村の各所へ配るお菓子を購入。

 『雷おこし』……まさに雷の国に相応しい名前よね。

 こっちにはチョコでコーティングされた雷おこし。これって……あの黒いヤツソックリだ、どう見てもあの美味しいやつ。これ買ってくか。


「三万六千エレノルです」


 ちょっと買い過ぎたかしら? 座布団が三千、各所へのお土産が一つ千ちょっとだとして三十個。まあ良っか。妥当妥当。


「カイベルは何か買うものある?」

「いえ、私は特にありません」

「遠慮?」

「いえ、欲しいものが分からないと言いますか……」


 そうか、元々本として作ったから物欲が無いのかな?


「じゃあ、髪飾りとかどう?」


 髪飾りを見繕ってみた。


「よろしいのですか?」

「いらなければ無理にとは言わないけど……」

「いえ、いただきます」


 髪飾りを購入し、カイベルの左側頭部へ付けた。


「ありがとうございます」


 いつも無表情のカイベルが、心なしか嬉しそうに見えた。


   ◇


 部屋に戻るとリディアにアニメを催促されたから見せるハメに。


「今日は何にするの?」

「じゃあ、昨日見れなかった『ゼンリョクジャー』と『アナモンアドベンチャー』にすル」


 全部日本で日曜日にやってるやつね……何で日曜縛りなのかしら?

 ちなみに、『アナモン』のアナは『アナログ』の略。略さないで書くと『アナログモンスター』。

 「それはもうただのモンスターなのでは?」というツッコミはしてはいけない。


 早速、さっき買った羊の座布団をお尻の下に敷いて見始めた。


   ◇


 部屋に戻った後、何で私だけサンダラバードに攻撃を受けたのか、カイベルに問いただしてみたところ、恐らくその理由の答えであろうことを教えてくれた。


「三日前レヴィアタン様が言っていた『周囲を軽度に魅了する』能力があることが関係しているのではないでしょうか?」


 あ、サンダラバードが『軽度に魅了されて』アスモを好きになっているから、アスモを攻撃せず、一緒に付いてきた私の方を攻撃しに来てたってことなのね……

 つまり雷雲突入前にアスモが言った「大迷惑かけちゃうと思うけど」の意味は、『多分自分のところへは来ず、全部ベルゼの方に行くと思う。迷惑かけちゃうけどごめんね』って意味だったわけか……

 …………納得はできたけど、何だか腑に落ちない! まあ……当初の予定通りちゃんと弾除けの役割はこなせたってことかな?


 あと、私が空間の裂け目で切断されなかった理由、あれは私の空間魔法耐性によるものらしい。

 以前ゼロ距離ドアを作るための実験をしていた時に、手を入れた状態で空間の裂け目が閉じると、手が切断されてしまうんじゃと薄ら恐くなって、そうならないための実験をしたことがある。

 この身体は空間耐性がLv10。あの時に『Lv10の私は空間魔法で切断されるかどうか』疑問に思っていたけど、あれの答えを図らずも知る結果となった。 (第24話から第25話参照)

 突然変異種とは言え、Lvが11に至ってなくて幸いだった……もし11なら腕が無くなってたところだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] カイベルの表情が少し変わったのがきゅんとしました。 人型に入って、人格(?)を得ると感情もでるのですかね? もっとカイベルを甘やかして欲しいですね。 [一言] 雷の国編が終了ですね。 でも…
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