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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第5章 雷の国エレアースモの異常事態編
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第126話 雷の国のテレビ事情とリディアのアニメ事情

 食後――


 こういう外出先って、自分で何か持ち込まないと何もすることがない。

 だが、意外なことに、雷の国(ここ)にはテレビが存在する。この世界に来て初めてテレビを見た。

 ブラウン管型でテレビの幅が分厚い。しかも白黒……こんなの前世と今生を含めても生まれて初めて見たよ……。

 アクアリヴィアのホテルにすら備え付けられてなかったことを考えると、多分この国が七大国で一番技術が進んでいると思われる。他の五ヵ国行ったことないから知らんけど……


 でも、放送してるのは……MHKみたいな教育番組と、観光案内ってところか。単調で面白味に欠ける。モノクロ放送のことを考えてもテレビ放送の黎明期ってところかな。

 テレビがアクアリヴィアにすら無かったのは、この国の立地的な意味で、他の国にはこの技術が流出していないというところか。誰も雷が落ちまくるようなところに好き好んで来たいヒトはいないだろう。この首都の様子を見る前は私もそう思っていた。

 着いてみれば物凄く技術が発展している国だった。

 恐らく、『テレビ技術』の方面の開発が遅れただけではないかと思う。だから、これから広がって行く前段階なのかもしれない。


「なぁ~、アルトラ~、暇だゾ、アニメ見たイ」

「テレビならそこにあるじゃない、白黒のやつ」

「白黒で面白くなイ! アニメ見たイ! アニメを見せてくレ!」


 ホントに贅沢な子になってしまったなぁ……


「もうちょっと後で」

「何デ?」

「多分あと少しで来ると思うから、もうちょっと待ってて。アニメ見てるところを目撃されたら、後々騒ぎになりかねない」

「何のこと言ってるんダ?」


 トントントン


「ごめんください、お布団を敷きに来ました~」


 様子が日本の旅館に似てるから訪問があるかと思ってた、布団を敷いてくれるサービス。

 三人分の布団を敷いてもらった。まるで日本にいるかのようだ。ありがたい。


「ごゆるりとお過ごしください」

「ありがとうございます」


 よし、ここからはチェックアウト付近の時間になるまではもう誰も来ないはずだ。【千里眼(リモート・アイ)】でアニメ見ても大丈夫だろう。


「もう良いよ、何を見るの?」

「『トロピカレッド!ポリピュア』が良イ! そのあと『御面(おめん)ライダーリバース』! 『機動戦隊ゼンリョクジャー』も観ようかナ!」


 全部日曜朝の番組……

 このくらいの年齢だと、これらのアニメはかなりの子が見ている。

 人間も高位存在も、子供が好むアニメは変わらないってことか。


「見るのは一時間だけね、その後歯磨いて寝ること!」

「エ~~!!」

「エ~~って言っても一時間」

「……わかっタ……じゃあ『ゼンリョクジャー』は明日にする……」


 【千里眼(リモート・アイ)】の効果時間を一時間にして空中に設置。一時間後に自動消滅する。


「見終わったら歯磨いてから寝るのよ?」

「ハ~イ」


 私は暇だから土魔法を使ってフィギュア作りをやり始めてみた。

 初めて造形物に手を出すから、手始めに顔から肩だけの胸像を作ってみようと思う。

 目の前にカイベルがいるからあれを顔の造形の参考にしよう。


   ◇


 とある異世界転生アニメで、めっちゃ精巧なフィギュア作ってたから、転生者はみんなそんなもんかと思ったけど……そんなわけもなかった……

 ただ単に彼らが器用なだけでした……

 人の顔を粘土で精巧に作った後、左頬をひっぱたいたかなような物体が出来た……断じて私が想定していた顔ではない……


「左右不均一で歪だ……」


 顎の位置が右にかなり傾いてる……目の大きさも全然違う……美少女とは程遠い……

 これはアレだ……ネット上で邪神と崇め奉られたフィギュアに匹敵するどころか、それすら凌駕している……

 もはやただの産業廃棄物と言っても過言ではないかもしれない……


 あれ? おかしいな……


 と思いながらカイベルを見る。


 カイベル(アレ)作ったの確か私よね?

 何でカイベル(コレ)が出来たの? イメージ出来ても、手先が不器用なのかしら?


 ………………いっそこの不細工なフィギュアは家に飾っておこうか、これからの戒めとして。

 (2D)立体物(3D)では全然別物でした。

 ちょっと絵を描けたとて、造形物に対しては何の意味も無い。

 くそっ! 今後徐々に上手くなってやる!


 カイベルはなぜか部屋の掃除をしている。

 理由を聞いてみたら――


「綺麗に使われた方がホテルの方々も嬉しいかと思いまして」


 ごもっとも。でも客が掃除までやる必要は無いと思うけど……


「やることが無いなら本でも買ってこようか? 近くに本売ってるところあったし」

「必要ありません。この世界の全ての本は頭の中にありますので」


 そういえばそういうイメージを込めてに作ったんだったな……

 それにカイベルは元々書物だしな……本が本を読むってのも変な話か。


   ◇


 翌日、トロル村では朝と呼ばれる時間帯。

 日課の散歩。と言いたいところだけど、土地勘が無いから散策に当たるのかな。

 ホテルの外へ出てきた。


 何気なく上空を見ると、ギョッとした。


「あの雷雲……明らかに昨日より大きくなってる……?」


 確かアスモは昨日、雷雲集積装置を切るって言ってたはず。

 ということは今、雷雲集積装置は機能停止しているんじゃないの?

 何で昨日より大きくなってるの!?

 これはすぐに王城に行った方が良い気がする。


 案内役のエミリーさんも同じホテルに泊まってたはず。

 事前に聞いていた部屋番号を訪ね、エミリーさんを起こす。


 トントントン

「エミリーさん!」


 ガチャ

「アルトラ様、お早いですね」


 もう七時だけど……騎士はもっと早い出勤かと思ったけど、違うのかしら?


「空が異常だからすぐに王城へ行きたい! 付いて来てもらえる?」

「異常!? わかりましたすぐに支度します!」


 私は自分の宿泊してる部屋へ戻り、リディアとカイベルに伝える。


「カイベル、空が何か異常だからすぐに王城へ行ってくる、リディアをお願いね。リディア、ちょっと行ってくるね」

「何かあったのカ?」

「あの雲のことで相談受けててね、ちょっと気になることがあるから行ってくる。」


 十分後にエミリーさんとホテルの入り口で合流。


「アルトラ様の言われた通り、あの雲の大きさは異常ですね、あんな巨大な雷雲は見たことがありません……」


 ここから王城までは一時間弱か……走っても三十分くらいはかかりそうだ。

 確か首都内から首都内への空間転移は可能だったはず。

 【ゲート】を開き、王城へ――


 ――繋げたつもりが、別のところへ出てしまった。


「あれ? ここどこ!?」

「ここは……王城から大分離れたところですね。ショッピングモールに当たります」


 活動時間帯ではないのか、それほどヒトはいない。

 何でそんなところに?

 まさか、首都内から首都内の転移も不可能になってしまった?

 念のためもう一度【ゲート】で転移。


 今度は電気街?

 ここもまた閑散としている。


「ここはさきほどのショッピングモールよりも更に離れてしまいました」


 更にもう一度。


 次は歓楽街?

 路上で寝てる人がいる……

 酔っぱらって寝てるのかな? どこの世界でも歓楽街は変わらないものなのね……


「更に離れてしまいましたね……」


 【ゲート】は使えなさそうだ。

 首都内から首都内の転移も出来なくなってしまったみたいだ。

 ………………いや、そもそも私は雷の国(ここ)へ来てから、一度も【ゲート】を使った移動をしていない。ということは、一昨日アスモが国を出た直後に、もう既に転移が不可能になっていた可能性もある。

 ただ、狙ったところに行けないだけで、繰り返せば王城近くへ着けるかもしれない。

 幸いにも転移歪曲地内から歪曲地内の使用なら、歪曲地の外側へ弾き出されるというような事態にはならないらしい。

 その後六回繰り返し、比較的王城に近いところへ転移できた。


 この頃、『転移魔法に多少の不具合がある』程度にしか認識しておらず、この時点では実害も無かったため、カイベルに相談するということが頭になかった。あの時に相談していればと、後々後悔することになる。

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