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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第5章 雷の国エレアースモの異常事態編
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第116話 土の国の特殊な情勢と、リディア因縁の遭遇

 途中からカイベルが話に加わった。


「ちなみに、現在の七大国の通貨事情このようになっております。最初に訪れたのが水の国(アクアリヴィア)ですので、ウォルを基準に考えましょう」


 と言って通過のレートが書かれた紙を見せられた。


┌───────────────┐

  水の国通貨 ウォル:1

  雷の国通貨 エレノル:0.98

  風の国通貨 エアリル:1.01

  火の国通貨 フラム:1.20

  氷の国通貨 アイシル:1.17

  土の国通貨 ストルン:1.35

  樹の国通貨 ツリン:1.05

└───────────────┘


「ベルゼビュート、この方は? 以前(まえ)に来た時にはいなかったと思うけど」


 あ! しまった……カイベルの嘘出身の国(アクアリヴィア)のヒトが来ることを想定してなかった!

 カイベルがアクアリヴィア出身だなんて伝えたら、レヴィアタンに怪しまれるかも……


 でも、他に伝えたヒトたちと回答を別にすると必ず矛盾が生じてしまうから、別の国の設定にするってわけにはいかないし……そもそも私はまだアクアリヴィア以外に行ったことがない! ここは怪しまれてでもアクアリヴィア出身で通すしかない!!


「あ、あなたの国で雇ったメイドさん……」

「へぇ~、黒髪の人型の生物でこの肌の色って言ったら、地球のアジア圏出身の亡者くらいだと思うけど――」


 ギクッ!


「あなたも亡者なの?」

「いえ……」

「じゃあ、生きてる人なの? 珍しい!! 私、黒髪の生きてる人見たのはあなたで二人目よ?」


 ギクギクッ!!


「さ、最近異世界転移に巻き込まれてきた日本人なの……」


 今思ったけど、生前の私に容姿が似てるから『日本人』って設定にしてたけど、『カイベル』って名前はどう考えても日本人の名前としては似つかわしくない。

 まあ、魔界に『似つかわしいとか似つかわしくないとか』わかるヒトはほぼいないだろうしそのままでも問題無いとは思うけど……今から変えるとかえって怪しいし。


「私も把握してなかった人なのね。ベルゼビュートの方が先に見つけたって感じかしら?」

「そ、そうそう、多分そういうこと!」


 フゥ……何とか誤魔化せた……?

 この話題を続けると危険だから、さっさと話をすり替えてしまおう!


「ところで、通過の話に戻すけど、フラム、アイシル、ストルンの価値が低い気がするけど。特にストルンが凄く低い……」

「そこは今休眠期間に入っちゃったから、今はかなり下落しちゃったね」

「『休眠期間』ってなに?」

「以前にも言ったように土の国には国の情勢が動かない期間が存在するの。活動期間と休眠期間があって、活動期間は生物が起きて働いている期間。対して休眠期間は生物が眠っている期間」

「それが土の国の王・ヴェルフェゴールの特徴ってこと?」

「そう、彼の大罪スキル『真価の眠りスリープオールマイティ』によりそのような期間が存在するの。休眠期間には彼を中心に半径五十キロくらいの範囲にいる生物が全て眠っちゃうのよ」

「なにその不便なスキル……それで、休眠期間はどれくらいなの?」

「……現在は三ヶ月くらいと言われてる……」


 三ヶ月も寝続けるのか……恐ろしいほどの寝坊助さんね。


「『現在』ってのは?」

「『現在の魔王』って意味かな? 『怠惰(スロウス)』の大罪を継承したヒトによって、休眠期間が変わるらしいから」

「へぇ~、なるほど。で、対する活動期間は?」

「一週間くらいって聞いてるけど」

「一週間!? 三か月寝て、一週間だけ起きてるの!?」

「そうみたいね」


 な……なんて不便な能力なの……燃費が悪すぎる……


「でも、活動期間付近になると一転して暴騰するのよね。予測だけど0.60とか0.70くらいまで跳ね上がるんじゃないかしら」

「たった一週間なのに!?」

「そのたった一週間、土の国の国民は物凄い勢いで働くようになるから。一週間で三ヶ月以上の働きになるって噂よ。大罪スキルの恩恵効果で、力、速度、精密さ、その他の身体能力が格段に上昇するとか」


 それって働きすぎで過労死せんの?


「あの国の貨幣価値は、昔から暴落と暴騰の乱高下の繰り返しよ。期間についても王様が代替わりする度に、休眠期間と活動期間の割合が変わるし、王様の体調によっても変わるから、他の国への投資に比べたら一種ギャンブルみたいなものよね。まあ王様が在位のうちは予測もしやすいけど、確実に一週間起きてるってわけじゃないしね。気付いた時には暴落してる可能性も……」

「何で代替わりすると期間の割合が変わるの?」

「私たちの持つ大罪スキルは、宿主と大罪との間に相性みたいなものがあるから、宿主次第で何かしら変わることがあるのよ。ヴェルフェゴールの場合は、前代の王様の時は一ヶ月から二ヶ月の間くらいの休眠期間だったんだけど、今の王様に代替わりしてからは大体三ヶ月に伸びたわ。ある時代の王様は一年以上の休眠期間、一ヶ月の活動期間って時もあったって話だし。もっと昔の大罪スキル最盛期なら休眠十年とかあったかもしれないね」

「じゅっ!?」

「まあ休眠十年については、文献とか残ってるわけじゃないから予想でしかないけど」


 十年寝てるって……起きた時には浦島太郎状態なんじゃないかしら?


「あと以前にも言ったように代が進むごとに大罪も浄化されていってるから能力が薄くなってきてるってのもあるしね。今の王様はちょっとだけ大罪との相性が良くて前代の王様より少しだけ休眠期間が延びちゃったってところかしらね」


 改めて聞いても一年国が動かなくて成り立ってるのが凄い……


「それでも『真価の眠りスリープオールマイティ』の効果範囲外、現地のヒトには外周地域って呼ばれてるんだけど、そこに技術者が沢山いるから、国がちゃんと成り立ってるって感じかな」


 そういえば以前にドワーフも多くが土の国出身って言ってたな。


「休眠期間って、魔界全土が認識してることよね? その間に泥棒が横行したりしないの?」

「しないよ、だって効果範囲に入った瞬間に強制的に眠っちゃうからね。例えば女性夢魔(サキュバス)男性夢魔(インキュバス)みたいな睡眠耐性がある生物であっても絶対に無効化できないし。無効化できるのは七つの大罪の私たちだけ」


 凄い能力だ。私は要らないけど……


「過去には眠ってる間に滅ぼして資源を奪おうって考えた魔王もいたらしいよ。あの国は油田とか鉱石、宝石なんかが多いから。でも、休眠状態の彼らは時間が停止してるらしくて、何をやってもヒトも地面も建物も、傷一つ負わなかったって逸話がある」


 とあるゲームに自分の身体を鉄に変えて敵の攻撃を無効化できるけど、その代わりこちらも何もできないって呪文がある。それにソックリな気がする。

 まあ、今のところ土の国に行く用事も無いし、今回は雷の国(エレアースモ)の話だけ聞けば良いか。


「火の国と氷の国がちょっと低めな気がするけど……これも理由があるの?」


 これに対しカイベルが説明してくれた。


「火の国と氷の国は大分下落傾向です。土の国を抜いて低い通貨価値になる予想ですね」

「何で?」

「国の情勢が良くありません」


 レヴィアタンがそれに続く。


「他の二ヵ国が低いのは、ちょっときな臭い噂があるからね……投資対象として警戒されてるってところがあるのかも」


 きな臭いか……以前リナさんからも聞いたことがあるな、火の国(ルシファーランド)はきな臭いって。戦争とかは勘弁願いたいな……


「疑似太陽作るにあたって、こっちからもお願いして良いですか?」

「……うん、なに?……」

「電気技師と発電所の建築家を貸してもらえませんか? 村に電気を引きたいと思ってるんですけど、最近発電機も作ってもらえたから、今度は大きい発電所を作って、村中に電気を賄えたらって思いまして」

「……わかった、そう手配しておく……」

「じゃあ、その分のこちらへの報酬を減らしていただいて……」

「……それは良い、こっちも五千万程度じゃ少ないと思ってた。電気整備はおまけしておく……」

「ホントですか!? ホントに!?」

「……それで私の国中が明るくなるなら安いと思う……あと、私のことは昔みたいに『アスモ』って呼んで……それから敬語も無しで……」

「じゃあ、私のことも『レヴィ』で! 私たちはあなたのこと『ベルゼ』って呼ぶから」

「わ、わかったわ」

「……それで、いつ来れる……?」

「太陽作りに行くだけならすぐにでも」


 話はまとまった。じゃあすぐにでも出発の準備をしよう。

 そう思った時――


「アルトラ~、お客さんカ~?」


 ――うちの寝坊助さんが起きてきた。


「ああーー!! お前ェーー!! 何しに来タッ!!」


 突然リディアがレヴィアタン……レヴィを指さして叫んだ。


「え? 私? 私この子に何かしたかしら?」


 ああ……そうかアレか……そういえば、この子(リディア)を海に追い返してたのはレヴィだってリナさんが言ってたな……


「また私を追い出しに来たのカ!! 帰レッ!! あっ、でもそっちのヒトはここにいても良いゾ! かわいイ! 何ならここに住まないカ?」


 リディアもちょっと魅了されてる……


「え? 何で私こんなに恨まれてるの?」


 レヴィが何が何だかわからないという感じで、私の顔を見る。


「この子、あなたが度々海に追い返してたクラーケンなの」

「えっ!? この子が!? クラーケンってイカだったはずだけど?」

「変身能力があると判明したから、この村にいる間は人の姿で生活させてるの」

「こんなにヒトに慣れる生物だったのね……いつも砂浜や港に出現し次第、海に追い返してたから知らなかったわ」

「捕まえてみたらしゃべったからもしかしたらと思ってコミュニケーションしてみたら、亜人と変わらないと分かったから私が引き取ったのよ」

「カ・エ・レッ! カ・エ・レッ!!」

「まあまあリディアもちょっと落ち着いて」

「あの時はごめんね~、こんなに良い子だと思ってなかったから、じゃあお近づきの印にこれをあげるから水に流して、ね?」

「お菓子カ!?」


 それ、アスモが私へ持って来た手土産のはずだけど……


「お前良いやつだったんだナ! アルトラ! 食べて良いカ!?」


 魅了は食欲にシフトしたか……花より団子タイプだな。


「じゃあ一日二個までで」

「やっターー!!」


 奥へ引っ込んでいった。

 相変わらずのチョロさだな……まああれで収まるなら良いか……


「ところで、『アルトラ』ってなに?」


 あ、そういえばまだレヴィには伝えてなかったっけ。


「今私『アルトラ』って名乗ってるの」

「へぇ~、そうだったの。じゃあアルトラって呼んだ方が良い?」

「好きに呼んで」

「じゃあ今まで通りにするね」

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