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第114話 月の定例集会で避難訓練を実施した!(消火訓練、煙発生避難偏)

 今回で第4章終了です。

 今回はリディアとアルトラの周りのトラブルに焦点が置かれました。

 次章は二つ目の外国へ赴きます。


 フォロー、応援、コメント、★などいただけると飛び上がって喜びます。

 また、各エピソードの専門的な内容に詳しい方は「ここは違うんじゃないか?」などの情報的な指摘、誤字脱字などを見つけた方、コメントいただけると大変ありがたいです(^^)

「今度はこの火を消してもらいます、今回のお手本は私じゃなくて、フレハルさんにやってもらいましょう」

「我か!?」

「アルトラ様~、フレハルさんは水魔法使えないので、火は消せないんじゃないですか?」

「火は水でだけ消えるわけではありません、土をかけたり、氷をぶつけたり、この程度の小火(ぼや)なら風を集めて叩きつけたり、火の中心部分で炸裂させてもかき消せます。闇なら火を取り込んでしまえば良い。魔法を使えれば火を消す方法は様々あります。ただ風を使うのは小火(ぼや)の時だけで、あまり大きい火になってしまうと、逆に燃え盛ってしまうので注意してください。ではフレハルさん、どうぞ!」


「これを消すのか? 我は火を着けるのは得意だが、消したことはないぞ? この程度なら魔力として食べてしまえば……グフッ」


 久しぶりの腹パン。


「……フレハル、正体……!」

「ぐっ、そういえばそうだった、すまぬ……」

「いいから、土ぶっかけて消してください」

「本当に土で消えるのか?」


 そう言うとその辺りで土を掴んで、火に向かってぶっかけた。

 こっちを見て――


「消えぬぞ?」


 ………………魔法でやりなさいよ!


「確かに土で消せるとは言ったけど、手で掴む程度だとそもそも量が少なすぎるのよ!」

「そうか、では、【サンドショット】!」


 そう叫んだフレアハルトの手の平から、大量の砂が放出された。


「と、このように砂でも、その火を消すのに見合う量の砂をかければ消すことができます。では、ちょっと火を拡大して、四人で消してもらいます」


 樹魔法でうず高く木の枝を積み、そこへ火を放つ。

 キャンプファイヤー程度の大きさがある炎。


「こ、この大きさの炎を消すんですか?」

「消せなくても後処理は私がするから大丈夫です」


 トロルの中から四人ピックアップして、四方に立たせる。


「では消してください」


 その声を合図に――


「【ウォータースプラッシュ】!」

「【サンドショット】!」

「【アイスショット】!」

「【エアロスラスト】!」


 ゴォォオォォォォ!!


「うわっ!!」

「大きくなった!?」

「何で!?」


「この大きさの炎だと、風の魔法単体では逆効果になります。また、全員が各々別の属性だったため、力が分散してしまって火を消せるところまで威力がを出せなかったのでしょう。全員が同じ属性同士なら消すことができたかもしれません。風属性も水属性と組み合わせてやれば効果的に炎を消すことができます」

「なるほど……」

「それで、まだ火が消えてませんが……」


 さて、じゃあ誰を指名しようかな……


「リディアさん」

「私カ!? と言うか『さん』付けなんて初めてだゾ?」

「これ消しちゃってください」

「わかっタ! 【アクアプリズン】」


 大気中の水分を火の回りに集結させ、水球状態にして取り囲むことで消火した。


「リディアさん、ありがとうございました」

「アルトラ~……『さん』付けだとなんか変だゾ? 聞き慣れないからキモチ悪い~」

「………………コホン、火を消す時には同じ属性同士で消すのが効果的なので、ある程度周りの人の得意属性を把握しておいてもらえると、火事などがあった時に対処し易くなると思います。また風と水など、組み合わせ次第で消しやすくなる効果があるものもあります」


   ◇


「最後に、火事などで煙が発生した時にする訓練をします。やってあるのとやってないのでは多分、生存率がかなり違ってきます」


 土魔法で筒状の建物を作り、その中を水魔法を使って霧で満たす。

 入口と出口は霧が漏れ出てこないように布を垂らして塞いだ。


「この建物内を、口を手で覆った状態でできるだけ身を屈めて歩いて出口まで行ってください。布などで口を押えるのも効果的です。無い場合は上着などでも代用できます」

「アルトラ様~、ただ中を歩くだけなんですか?」

「歩いてみればわかりますよ。この訓練はここにいる全員に入ってもらいます」


 建物内は石による衝立(ついたて)や、障害物、小石なんかを配置して動きにくくしてある。


「さあ、最初の方どうぞ」

「じゃあ、俺っちが行かせてもらうッス」


 得体が知れないところに入るのに、この子はいつも勇気があるな。


 入口の布をめくると――


「うわ……何も見えないッスね……暑っ! 湿気が凄いッス……」


 濃霧の見えにくさは、すでに身を持って体験済みだ。 (第12話参照)

 霧が濃すぎると、ほとんど見えない。濃さ次第では自分の指すら見えなくなる。今回は少し抑えめで、わずかながら見えるようにしてある。


「あ、つまずかないように気を付けてください」

「行ってくるッス………………………………痛っ!」


「…………い、痛いって何があるんですか?」

「危険なものはありませんよ。ただちょっと歩きにくくしてあるだけです。じゃあ、みんな行ってらっしゃい、私は逆側にいますから」


   ◇


 五分ほどが経った。


「おかえり」


 最初に出てきたのは、率先して入って行ったナナトスではなかった。


「あれ? 最初はナナトスかと思ったけど?」

「多分中で迷ってますよ。一部通路が詰まってたりしてます」


 そんなに複雑にしたつもりはなかったけど……


「あれ? アルトラ様いないじゃないッスか」


 入口方向からナナトスの声が聞こえた。


「ナナトス、こっちこっち」

「出口にいるって言ってたのに、何でまだ入口にいるんスか?」

「あなたが入口に戻ったのよ!」

「ええ~~……!!」

「終わりにする?」

「いえ、中を抜けてそっちへ行くッス!」


 結局ナナトスが出口に来るまでに七分かかった。

 煙訓練の後は質問を受け付ける。


「アルトラ様~、視界が煙で見えないなら風魔法で吹き飛ばしてしまったら良いんじゃないですか?」


 そういう質問が来ると思ってたわ!


「やりたくなるのはわかります。実際私も霧が発生した時に吹き飛ばしました。しかし、大規模火災現場でそれをやると、確実に死にます」


「「「えっ!!?」」」


 参加者がザワめく。


「火災現場で風を使うと、火を引き込んでより大きい炎になります。さっきの火を消す訓練で大きくなったのを見たと思います」


「「「あ~~」」」


 そして多くが納得する。


「なので、吹き飛ばして良いものかどうか見極めて使ってください。自身の前方くらいの煙を避けるくらいなら大丈夫かもしれませんが、見えないからと言って、煙全体を吹き飛ばすのはお勧めしません」


「口を手や布で覆うのはなぜですか?」

「火災現場で発生する煙は、二酸化炭素が濃いので、多く吸い込んでしまうと意識を失います。それに加えて毒を含んだ一酸化炭素が発生するので下手をしたら死にます」


 まあ……これは人間の場合だから、トロルやレッドドラゴンがどの程度二酸化炭素や一酸化炭素に耐性があるのかわからないけど……

 もしかしたら彼らには全く効かない可能性だってある。特にレッドドラゴンは火口内に住んでるから毒ガスの類も無効化できてるかもしれない。

 けど、それでも用心しておくに越したことはない。


「アルトラ様何言ってるんだ?」

「二酸化炭素? 一酸化炭素?」

「毒って聞こえたけど……」

「とにかく煙を吸うなってことだな!」


 あ、最近文字や数字は覚えてきたけど、化学分野はまだ早かったか。


「コホン、とにかく、煙、特に真っ黒い煙はなるべく吸わないように気を付けてください」

「屈むのはなぜですか?」

「煙は上へ上へと移動するので、今言った煙を吸わないためにも、火事が発生した時にはなるべく身を低くして出口を目指してください」


 風魔法を使えるヒトなら、顔の周りに気流を発生させてしまえば煙が寄って来なくなるかもしれないし、屈む必要も無いかもしれない。

 まあ、実証してないから、ここではまだ言えないけど……


「他に質問はありませんか? 無ければ以上で避難訓練を終わろうと思います」


   ◇


 この後、もしもの時のため、村の災害対策部隊を結成。

 有事に備えて、戦闘訓練の他、消防訓練を積ませるようにした。およそ五十キロ離れてるとは言え、火山地帯には違いないから災害対策ができる部隊はあった方が良いだろう。

 水の国出身で、騎士団でも消火訓練の経験があるということで、指導役をトーマスにお願いした。

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