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建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~  作者: ヒロノF
第4章 アルトラの受難編

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第109話 気落ちするアルトラとカレンダー作成

 リッチ離反の翌朝――


「おはようございます、アルトラ様」

「ああ、うん、おはようカイベル」


 昨日のリッチ離反の影響が出てるのか、身体が重いな……

 今日は一日家にいるか。


   ◇


 朝食時――


「アルトラ~、大丈夫カ?」

「う~ん……」

「ご飯食べたラ、今日も遊び行ってくるからナ?」

「う~ん……」

「今日も夕方帰るナ」

「う~ん……」

「カイベル~、アルトラなんか変だゾ?」

「アルトラ様は少々ご傷心の様子なので、今日一日そっとしておきましょう」

「アクアリヴィアの水族館で買って来たお土産、一日二つまでって言ってたけド、今日全部食べて良いカ? まだ二十個くらいあるけド」

「それはダメ……」

「何でそこだけ聞いてるんダ!」

「う~ん……」

「これは今日はダメだナ……」


   ◇


「じゃあ、行ってくるからナ!」

「う~ん……」

「カイベル、アルトラおかしいから頼むゾ!」

「お任せください」


   ◇


「あれ? リディアは?」

「今しがたお友達のところへ出かけられましたよ」

「そうなのか、気付かなかった」

「本日はどうされますか?」

「うん、一日ゴロゴロする、何か疲れたから……」


 思えば、生前から現在も含めて、明確な悪意を向けられて私から人が離れていくって経験をしたことがないから、精神的なダメージが思った以上に大きい。

 普通に生活してたら、他人から恨まれることなんかまず無いし……

 この身体になってから疲れも大して感じたことはないから、この脱力感も久しぶりだ……


   ◇


 でもいざゴロゴロしてみると、昨日のことを考えてしまって全く気が休まらない。

 もっと何か出来ることがあったんじゃないかと色々思案してしまう。

 やっぱり何かするか。


 そうだ! こんな時だからお盆の時に構想していたカレンダーを作ろう!

 無理矢理にでも奮い立たさなければ気も紛れない!


 今年は二〇二一年、今日は……送り盆の日から十八日経ってるから……九月三日かな?

 もう九月に入ってたか。

 今年もあと四ヶ月か。

 川のコンクリ作りも順調に進んでいる、ここに冬があるのかどうかわからないけど、地球で言うところの冬前には完成にこぎつけそうね。


 カレンダー作りも、マスと数字だけならそれほど時間はかからない。

 同じ数字の形にするために、型紙でも作って、中を塗りつぶす方式にするか。


   ◇


 よし、数字の型紙が完成した!

 没頭してしまった。

 でもまだ二時か。

 ここから型紙を使って、カレンダーの台紙に数字を置いていく。

 パソコン使えれば、位置揃えるのも楽なんだけどな……


 ペンとは別に買って来た絵の具の黒と赤と青を取り出す。

 日本のカレンダーと同じく、日曜日は赤、月曜日から金曜日は黒、土曜日は青で塗っていく。

 どうせ日本とは違う異世界なのだから別の色にしたらどうかとも思うが、黒赤青が私には分かり易くて良い。

 よし、とりあえず九月分のカレンダーだけ出来た。部屋の壁に貼り付けておこう。

 この調子であと十一枚作るか。


   ◇


 手作りにしては、まあそれなりの出来だろう。

 文字の色が黒赤青の原色だからちょっと色味が強い。今年はこれでよしとして来年は文字色も改良したものを作ろう。

 背景が白一色だと味気ないな……

 季節ごとの特色をワンポイントで絵にするか。元グラフィッカーの腕の見せ所だ!


 一月は鏡餅。二月は節分と赤鬼の面。三月はひな人形。

 四月は桜。五月は五月人形。六月は雨とカタツムリとアジサイ。

 七月は七夕と天の川。八月は海と浮き輪と砂浜。九月は月と月見団子。

 十月はハロウィン。十一月は紅葉。十二月はクリスマス。


 地球ではどれもこれもありきたりのものだけど、まあこんなもんでしょう。

 よしカレンダー完成! 部屋に貼り付けておくか。


「………………」


 ここだけのものにするのも何かもったいないな。

 印刷して村中に配ろう。

 ここで遂に先日オルシンジテンに付け加えた印刷能力を発揮する時だ!

 その前に――


「カイベル、スキャニングってできる?」

「できません」


 ですよね……じゃあまたスキャニング機能の付与からかな……この間、印刷機能と一緒にスキャン機能も付与しておけば良かったかも。

 あ、これ(カレンダー)は、今私が完成させた。

 ということはオルシンジテンで検索できる?


「『オルシンジテン』起動、私が今作ったこのカレンダーを検索できる?」

「はい、表示します」


 以前は本の中からホログラムが表示されたが、今はカイベルが手前に差し出した両手の平からホログラムが出ている。

 ホログラムには私が今手に持っているカレンダーが表示されている。

 今完成したばかりだから、もちろんどこにも流通しているわけがない。本来なら検索に引っ掛かることなどあり得ない。

 オルシンジテン、誰かが何かを作った瞬間に検索に出るようになるのか……自分で作っておきながら驚愕の機能ね……


「じゃあ、それをとりあえず十枚印刷お願い」


 これは私が手描きしたものだから、印刷しても問題無いだろう。


   ◇


 トントントン


 誰か来た。


 ガチャ


「アルトラ様、ご機嫌はいかがですか?」

「トーマス、あなたがここを訪問するって珍しいね、突然どうしたの?」

「いえ、リディアにアルトラ様の様子がおかしいと聞いたので、お見舞いに来たのですが……もしかして、昨日のことが尾を引いてるのかなと」

「うん……実はそうだったんだけど、気分転換したからもう大丈夫!」

「そうですか! なるべくお気になさらずに、あなたは何も悪いことはしてませんので。むしろあなたのお蔭で我々は死罪にならず、生きてこうして生活していられるわけですから!」


 悪いこと……カエルにしたのはちょっと気の毒だったかなと、今更ながら思ったり……でも何度も反省しないならカエルにするって警告してたしな、あれは正当な判断よね……?


「そう言ってもらえるとありがたいわ」


   ◇


 トントントン


 また誰か来た。


 ガチャ


「アルトラ様、ごきげんよう」

「こんにちは! また遊びに来たよ! おや? 今日は先客がいるね~」

「何だ、どこも様子がおかしくはないではないか!」


 今度はフレアハルトたちだ。


「赤龍峰の後処理が終わって、お主の様子がおかしいというから駆けつけたのだが……特に問題は無さそうだな」


 この男が心配して来てくれるとはね。


「アルトラ様が気落ちしてるところなど見たことがありませんでしたので、元気になられたようで安心いたしました」


   ◇


 トントントン


 また誰か来た。


 ガチャ


「おう! 邪魔するぞ!」

「アルトラ様大丈夫かい? 様子を見に来たんだけど、アクアリヴィアで良い医者知ってるし、紹介しましょうか?」

「体調悪いと聞きましたが大丈夫ですか? アルトラ様が体調を崩すなんて珍しいですね」


 ドワーフ親娘と弟子とコンクリ組のトロルたち。


「カイベルさん、ご機嫌いかがッスか? 今日もお美しいッスね! あれ? アルトラ様の様子がおかしいって言うから、どんな顔してるか見に来たのに、いつもと同じッスね! どんな顔で沈んでるか見てみたかったのに!」


 ナナトスはこんな時でも茶化しに来たのか。


「でも、いつも通りに戻ったみたいで安心したッス」


 憎まれ口を叩いていても、心配して来てくれたのはわかる。


「アルトラ様大丈夫ですか?」

「リディアちゃんから聞いたよ~、大丈夫? アルトラ様~」


 子供達まで!?


「リディアさんに聞きましたよ! ご機嫌いかがですか、アルトラ様?」


 リーヴァントまで!?


「うわ、なになになに? 何でこんなに沢山?」


 最終的に村の結構な人数が我が家に集まった。


「普段体調が悪いなんてことがないから、みんな心配して訪れたんですよ」


「リディア、いろんな人に声かけタ! アルトラ元気になったカ?」

「お帰りリディア。お蔭様で元気になったよ」


 私の体調不良の話だけで、これだけの人数が集まってくれたわけか……

 リッチ離反で対応に問題があったのかと不安になってたけど、これだけ心配して集まってくれたってことを考えると、今まで私がやってきたことはそれほど間違ってはいなかったのかもしれない。


「みんな……ありがとう……」


 リッチの件は少々ショックが大きかったけど、今後もこの村のために尽くそう。

 そう思えた出来事だった。


   ◇


 後日、今日作ったカレンダーを、村中に配って回った。


「カレンダー? どう使うんですかこれ?」

「壁にかけておくことで、今日の日にちが分かるようになる」

「なるほど~」


 こんな感じのやり取りを各所で行った。

 役所の掲示板に『希望者には差し上げます』と張り出したところ、多くの人が欲しがったため、しばらく『ご自由にお取りください』と書かれた紙の下にカレンダーが置かれるスペースが設けられ、カレンダーが無くなると――


「噂のカレンダーってもう無いんですか?」


 ――などと、欲しがる者がいたため、予定に無かった増刷。

 その結果、ほぼ各家庭に一つずつ備え付けられるようになった。

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