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第103話 聖炎耐火の儀

 儀式場に場所を移動。

 今私が立っている場所から下を見ると、闘技場のような円形の舞台がある。

 儀式場の見た目はちょうどコロシアムのような感じ。今私が立っているところは観客席のような場所といったところか。


 中央は真っ黒に焦げている。(すす)も儀式の度に落とされているのだろうが、落とし切れなくて黒くこびりついている部分がある。特に中央部分は濃い。

 きっと代々の成人の儀式を執り行った跡だろう。

 水洗いは……水自体が無いからされてないようだけど……どうやって掃除してるのかしら?

 炎熱消毒されるから、掃除の必要は無いのかな?


「さあアルトラ、貴様はあの舞台の中央に立て」

「防御魔法とかは使って良いの?」

「何でも構わぬ、とにかく耐えればよい。とは言え五人は前代未聞だ、貴様が耐えられるとは思えんがな。途中離脱はもちろん認める。その場合は失敗したこととみなす。フレアハルトの幽閉を解きたくば、最後まで耐えよ」


 観客席に当たる場所から下の闘技場のようなところへ降り、(すす)けた場所の中央に立つ。

 祭司が五人、私を取り囲み、直後にレッドドラゴンの姿に変身した。

 おかしい、明らかに魔力が異質なヤツが一人混じっている。あれって王族なんじゃ……?

 王族は祭司にはなり得ないって言ってたのに。

 そう考えていると、フレアハルトの大声が聞こえた。


「父上!! なぜフレイムハルトが祭司に就いているのですか!? いつもと条件が違うではありませんか!?」

「レッドドラゴン族として、たかが亜人に負けるわけにはいかぬ。貴様が負けたとぬかすから一人王族を入れたまでだ」


 フレイムハルトって、多分フレアハルトの弟よね?

 今回特別に王族を混ぜたってことか。厄介ね……もう無傷でってわけにはいかなくなった。

 あの一体のドラゴン……フレイムハルトにだけは注意しないといけない。

 フレアハルトと戦った時の炎と同じと考えるなら、王族の炎は弱いものでもかなりのダメージがある。


「準備はよいか?」

「少し待ってください」


 自身に火無効、火吸収、魔法防御のバリアをかける。

 更にスキル【分身体】を使い、自身の身体全体を覆うようにコーティング。少しの間ならダメージを肩代わりしてくれるはずだ。ほぼ一瞬で消えるとはいえ、何もしないよりはずっと良い。

 両手を凍らせ、自身を氷で包む。更に前方に厚めの氷のバリアを張る。


 両横と両後ろにいるこの四体の炎は気にしなくて良い。多分彼らの炎で私はダメージを受けない。

 問題は『フレイムハルト』と言われたこの正面の一体。

 オルシンジテンの話によると、レッドドラゴンの王族、『レッドドラゴン・ロード』は全員が火属性Lv11を生まれた時から持ってるらしい。

 フレアハルトの時はその上位の【インフェルノ・ブレス】を、私の魔法で相殺した。しかし、今回課せられていることは『耐えること』なので、以前のように相殺してダメージを分散させることはできない。

 フレアハルトの時は上位ブレスでも一瞬浴びただけだったから少しの火傷で済んだが、今回はそれの下位の【フレアブレス】とは言え、最長二分耐えるのは中々骨が折れそうだ。

 使ってくるのは【フレアブレス】と限定されているから、その上位の【インフェルノ・ブレス】を使われないと分かっているだけまだマシだが……


「準備出来ました」

「アルトラ!! …………無理はするな、ダメだと思ったら途中で離脱して構わぬ! 我のことは考えるな!」

「ありがとう、でも任せておいて!」

「では始めよ!」


 その声で、五体のレッドドラゴンが一斉に私に向かって【フレアブレス】を吐きかける。


 ゴオオォォォ


「くっ……熱い……」


 初っ端からこの正面のヤツの炎は熱い!

 氷のバリアは一瞬で無くなったが、それでも氷のバリアを持続的に生成し続ける。

 まだ分身体がいるはずなのに熱い!


   ◇


 まだ三十秒弱、もうとっくに分身体は消えてしまった。

 指先がチリチリと熱い。

 氷バリアを繰り返し出し続けているが、出した瞬間に消えている。それでも無いよりはマシと思い連続で出し続ける。


   ◇


 まだ終わらないの!?


「うあああぁぁぁああ!!!」


 吸収と無効化バリアが機能しているはずなのに指が燃える!! 

 久しぶりの物凄い痛み。いや、こんな痛み人間の時だって経験したことない!! 今すぐ逃げ出したい!!

 きっと痛みで涙も出てるけど、炎で一瞬で蒸発する!

 それでも何とか連続で氷バリアを張りつつ耐える。

 左と両後ろの三体はもう終わった。終わってほしいのはこの正面のヤツなのに!!


「アル……ラ!! ……ういい!! 今すぐ……離脱……ろ!!」


 何か聞こえた気がするけど、今はそんな場合じゃない!!


   ◇


 炎が止まった……

 やっと終わりか……

 両手を見ると、手の平の上半分と指が八本炭化している。腕を少し動かしただけで両手の指二、三本が第一関節からボロと崩れた……親指も第一関節の上部辺りが真っ黒に焼け焦げている。指自体は十本とも全く動かず、感覚は既に無い。

 これ、ちゃんと治るかしら……


「あの者、耐え抜いたぞ!!」

「ほ、ほぼ無傷だと!?」


 無傷? 冗談じゃない、両手の指がほぼ無くなったよ……未だかつてないダメージだ……

 この世界は回復魔法がある分、このイベントが人間時代じゃなくて良かったと心底思う。人間時代にこのイベントがあったら、指を全部失っていたところだ……


「ア、アルトラ!! 大丈夫か!?」

「「アルトラ様!!」」


 フレアハルトとアリサ、レイアが駆け寄ってきてくれた。


「……ちょっと大丈夫じゃないかも……」


 手の平は痛みは無いけど、凄く熱い。既に神経が死んでしまって痛みすら感じないレベルに達しているのだろう。

 すぐさま肘から先を氷魔法で包み、その中で水魔法と光魔法で癒しの水球を作る。そのまま水の球体を作りたかったところだけど、ここの温度を考えると、多分出した瞬間に蒸発してしまうから氷で包んだ。

 これは回復するのにちょっと時間がかかりそうだ……


「父上!! これでご納得されましたか!?」

「む、無傷だと……? アルトラ、貴様我らの神聖な儀式を(けが)したな? レッドドラゴン五人の炎だぞ!? 亜人風情が一体何をやったらその程度の怪我で済むのだ!?」


 は?


「そやつらを捕えろ!! フレアハルトも含めて四人全員だ! 何か不正があったに違いない! フレアハルト! 貴様にも話を聞かねばならぬようだな!!」


 は? 不正?


「父上!! それでは約束が違いますぞ!!」

「不正があったのだ! こんなこと認められるわけがない!! そうだ! 我らの炎に耐え得る亜人などいるはずがないのだ!」

「我らは何も不正などしておりませぬ!」


 どこに不正が? 指が無くなったのに不正……?


「こちとら痛いのも熱いのも我慢して、やらなくても良い儀式にわざわざ付き合ってやったのに……不正……だと?」


 ブチッ!


「ふざけんなあああぁあぁぁ!!!!」


 と叫んだところまでは覚えているのだけど、ここから先、少しの間記憶が無い。

 気付いた時には――


 周囲は瓦礫の山。儀式場は穴だらけ。

 私を取り囲むように観客席に当たるところで儀式を見張っていた多数のレッドドラゴンはその多くが凍り付いている。


「あれ? 何でこんなことに? あ、両手治ってる! 何で!? あの炭化した指が何でこんな一瞬で!?」


 全く理解が及ばないことが起きている!

 私の意識が抜け落ちてしまった間に何かあったらしい。

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