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第102話 フレアハルトの幽閉を解いてもらうため『聖炎耐火の儀』を行うことになった!

 宮殿へと連れて来られ、広めの空間へ通される。

 多分玉座の間とか、謁見の間に当たるところだろう。

 レッドドラゴン族と思われるヒトたちが両側に整列している。

 人の姿をしているが、その威圧するような魔力で普通の人型の亜人ではないと分かる。

 目の前に座っているこの人物が、レッドドラゴン族の族長、フレアハルトの父親ってことかな?


 族長に対してアリサが口を開く。


「お連れしました」

「うむ、ご苦労」


 快く思われていないとは言え、挨拶はした方が良いだろう。何とか印象を変えたい。

 (ひざまず)いて言葉を発する。


「お初にお目にかかります。わたくし、ここより数十キロ離れた村で領主を任されているアルトラと申します。この度はご招待いただき光栄に存じます」

「…………貴様が我が息子を(そそのか)した亜人か?」


 いきなりのジャブ!?

 (そそのか)したって……勝手に私に戦い挑んできて、負けて、勝手にいつの間にやら村に馴染んでいただけだが……どちらかと言ったらストーキングされてるの私の方よ?


「コホン、(そそのか)したと言われると語弊がありますが、フレアハルトは自ら望んで私の村と関わっています」


 相手の目を見ながら説明する。

 しかし、族長の目は敵意剥き出し。


 怖えぇ……凄い眼光でこっちを見てるわ……


 直後に別のレッドドラゴンが入って来た。


「フレアハルト様をお連れしました」

「アルトラ! わざわざこんなところまで来させてしまってすまぬ! レッドドラゴンの中の問題だから巻き込みたくはなかったのだが……」


 まあ、トロル村を人質にされている以上、私は無関係という話には出来ないだろう。


「フレアハルトが来たので、もう一度聞こう、フレアハルトを(そそのか)したのは貴様であろう?」

「ですから私は――」


 再び否定しようとした私の言葉を(さえぎ)って、フレアハルトが話し出す。


「父上、それは違います。我は……いや私は、ここにいるアルトラに勝負を挑んで負けたのです。それに一方的に付き(まと)っているのは私の方です!」


 付き(まと)ってる自覚はあったんだな……

 私が強く拒否しなかったから付いて回ってたってところか。


「そこが信じられぬ! 我らレッドドラゴンが、それも王族であり一族最強の貴様が亜人に負けただと!? 我らに勝てる亜人など今まで見たこともない! それを簡単に信じられると思うのか!?」

「信じられぬかもしれませぬが、事実に相違ありません」

「貴様が頑なに負けたとぬかすのなら、今それを証明してもらおう。そこでこちらから一つ提案だ。これをそこのアルトラとやらが達成できたのなら、もう貴様の振舞いには一切口を出さぬ。王位も継承する必要はない。そして我らレッドドラゴン族はそこのアルトラの軍門に降ろう」


 ぐ……軍門って……私、軍を持ってるつもりないけど……


 アリサが小声で話しかけてくる。


「我々レッドドラゴンは、武力至上主義ですので、本来なら『負け』(イコール)『滅亡』、または『隷属』なのです。アルトラ様がそういったことに興味が無かったため、わたくしどもも今の関係に落ち着いているだけで、本来ならわたくしどもはアルトラ様に対して何かを言える立場ではございません。フレアハルト様のアルトラ様への普段の振舞いは、我々レッドドラゴンの基準からすれば死罪に処されてもおかしくはありません」


 ああ、だからあの時フレアハルトは王族である自分の命を差し出してまで、一族を守ろうとしたのか。

 『絶滅は免れない』と言っていたのも、そういう土台があってのことなのね。


「その提案とは……まさか……」


 フレアハルトのその言葉に、族長は黙って頷く。


「我ら以外の生物にあんなことをしたら、骨も残りませぬ!! 考えをお改めください!!」

「お前は黙っているが良い!! フレアハルト! 貴様は我らの一族で最強!! その貴様が負けたと言うならこれをして証明してもらうより他は無い!!」


 フレアハルトがあそこまで焦る『あんなこと』って一体……?


「アルトラよ、貴様には『聖炎耐火(しょうえんたいか)の儀』を執り行ってもらう」


 『聖炎耐火(しょうえんたいか)の儀』? 何だそれは? 耐火ってところから嫌な予感しかしないが……


「我ら一族の成人の儀式のようなものだ。その仕組みは単純だ。儀式を受ける者が儀式場の中央に立ち、その周囲からドラゴン形態の祭司が二人以上で【フレアブレス】を吐きつけるというものだ。これを祭司のブレスが続く限り耐え続けてもらう、その時間はおよそ一分から長くて二分といったところだ」


 要はドラゴンの炎に耐えろってことか。


「通常一般のレッドドラゴンの成人の儀の祭司は二人、王族の成人の儀は三人。王位継承権を得るには四人以上に耐えねばならぬ。フレアハルトは今の王族で唯一四人に耐え抜いた。故に今の王の候補はフレアハルトしかあり得ないのだ!」


 武力至上主義だから、頭が良いとか統制力があるとかは二の次なのか。フレアハルトがいくらアホの子演じてても、この絶対的なルールがあるから王候補から外れることはなかったってことなのね。


「フレアハルトが負けたと言う以上、貴様にはフレアハルト以上の五人で行ってもらう」

「父上!! それはあんまりにございます!! アルトラは我らのように炎に強い種族というわけではありません!!」

「我にとってみれば、亜人が死のうがどうなろうが構わぬ。貴様がそこの亜人に負けたというのだ、なればそれ相応の能力で証明してもらわねば、こちらは到底納得できぬ!!」

「くっ………………少し……アルトラと話をさせてください」

「よかろう、儀式を止めさせるなら今の内だぞ? その場合、貴様には王位を継いでもらい、今後亜人との交流は一切絶ってもらうがな」


   ◇


「アルトラ……こんなことになってしまいすまぬ」

「ホントよねぇ、まさか招かれてこんな事態になるとは思わなかったよ」

「あの儀式は、お主には危険過ぎる。我の時は耐え抜けても、ひと月ほどはまともに動くことができなった……その時よりも多い五人となると尚更……」


 炎に強いレッドドラゴンが!?

 それは本当にヤバイ儀式なのかもしれない。


「我のことはもうよい、村へ帰ってくれ。目の前で死ぬのを見たくはない」

「でも、そうしたらもう今後一切亜人と関わりを持つことができなくなるんじゃないの?」

「…………貴様の命には代えられぬ。それも仕方のないことだ」


 亜人の命なんて軽く見てたあのフレアハルトが……随分と他人を思いやれる考えを持つようになったのね……


「………………フレアハルトって種族最強なのよね?」

「みな、そう認識しているが……」

「儀式で王族って祭司になり得るの?」

「いや、王族と一般のレッドドラゴンではレベルが違うため祭司は行わないはずだ。王族が祭司を担うと儀式を受ける者を殺してしまう可能性があるくらいレベルが違う……そもそも『聖炎耐火(しょうえんたいか)の儀』というのは成人と認められるための試練と呼べるもので殺すことが目的ではないからな。しかし、それがどうかしたか?」

「じゃあ、大丈夫だ。任せておいて!」


 王族相手でないなら、無傷で耐えることも出来ると思う。


「やるつもりなのか!? お主が黒焦げになるところなど見たくないぞ!?」

「大丈夫だから」


   ◇


「決めました、儀式をお受け致します」

「よいのだな? 辞めるのなら今のうちだぞ?」

「結構! きっちり落とし前を付けて、フレアハルトを自由にさせていただきます!」

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