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「見つけた」
三年前の戦争の傷がまだ残るハヴァフレア王国の小さな港町バオ。ほんの少しだけ存在している砂浜を歩く一人の背の高いはしばみ色の髪をした女の姿を見つけた男は思わず走り出した。
だが、次の瞬間男の足はぴたりと止まった。
こちらを見ていなかったはずの女の目が男を捉えている。くるな、と言っている。戦場で目を合わせた記憶は殆どないが、それでも同じ場所で長く戦った者同士通じるものが確かにあった。
足を止めた男を見て納得したように女は歩き出す。両手は小さな子どもにつながれ、彼女のスカートのすそを引っ張る子どもや周りで何かを必死に話す子どもがいることに男はようやく気が付いた。
長く兵士として、その前は傭兵として戦いに身をやつしてきた体は傷だらけで、顔つきも厳めしい男は子どもたちだけでなく顔を合わせる人たちに恐怖を与えることは自身でもわかっていた。
(・・・なぜ、そんなことをしている!!)
走り出して問い詰めたい気持ちになりながらも、戦争の痛みを超えて元気にはしゃいでる子どもたちの姿を見て、男はただ彼女を見送るしかできなかった。
(見つかったか)
三年ぶりに見た男のことは忘れてなどはいなかった。だけど一番会いたくない人に、一番会いたくない時間に会ってしまったことで一瞬心がざわついたが、男は自分の目配せの意味をよく理解したようで近づいてくることは無かった。
恐らく夜にまた同じ場所に来る必要があるだろう。それが終わればこの町を出なくてはいけない。この温かな場所を壊したくないのなら。
繋がれた温かで柔らかい手を優しく握って、予想より早く来た別れの時を思う。
「ルディーー!早く行こうよーーー!!」
「わかっている。あまり走るなよ」
男のような口調でそう返したルディは前方を走る男の子たちのあとを小さな子たちの手をつないでゆっくり歩いていく。
潮風でべたつく肌も、潮の香りも、夕日に煌めくオレンジ色の海も、ようやくはしゃいで元気な声を聞かせてくれるようになった子どもたちとも、もうお別れだ。
一度だけ男を振り返り、ルディは孤児院へと歩いて行った。
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