カウントアップ②
カウントアップ後編です。
10月6日
文化祭が始まった。俺は驚かす役で暗闇の教室に隠れていた。もう1人のスタッフが来ず、待っていたらなんと、水野さんがやって来た。どうやらもう1人は部活の用事で来れなくなったらしい。少しうれしかった。それと同時になぜだか緊張した。買い物ではちゃんと会話が続いたのに、今は二人とも無口だ。もちろんお化け屋敷の中なので声がお客さんに聞こえたらいけないが、さすがに気まずい。そういえばと俺は準備の時のことを思い出し、水野さんに話した。俺が山下と話していた時のことだ。その質問は少し機嫌を損ねさせたらしい。頭の数字も35だったのが、33になった。思わずゾロ目!と口に出してしまった。水野さんには笑われた。そこから緊張が解けたのか、ちゃんと会話できるようになった。もちろんお化け役も全うした。
交代の2人がやってきて、俺たちは2時間の休憩になった。俺は、文化祭を一緒に回らないかと提案した。水野さんは笑顔で了承してくれ、一緒に文化祭を楽しんだ。終わるころには水野さんの頭の上の数字が50にまで上がっていた。楽しいなら上がるのかな。
10月7日
片付けと後夜祭が開催された。後夜祭では花火が上がる。それを一緒に見た男女は結ばれるという学校の伝説があった。俺はそんなの信じず、部活の仲間と集まってみていたすると向こうから女子の団体がやって来た。その中に水野さんも居た。その中の女子が、俺らのグループの男子を花火に誘った。どちらも照れながら歩いて行った。するとこちらの男子が女子を誘った。女子は驚きながらも頬を赤くしながら了承すると、二人で歩いて行った。俺は水野さんをチラッと見た。水野さんも俺を見たらしく、目が合ってしまった。この流れに乗ろうかと思っていた時、水野さんの方から花火を誘われた。俺は驚きと緊張でうまく返事が出来なかったが、花火がよく見えるほうに水野さんと進んだ。花火を見ている時間は今までで一番緊張した。でも水野さんの顔を見ると水野さんも緊張している様子で、なんだかかわいく見えた。会話の中で、呼び捨てでいいよと言われたので、これからはさん付けはやめようと思う。水野の頭の数字が65になっていた。
11月18日
文化祭以降、水野と距離が縮まった気がする。日常でも前より会話するし、メールも毎日してるし、たまに昼も一緒に食べている。この前はバスケの練習試合を見に来てくれた。おれも水野のことがちゃんと気になっているのかもしれない。頭の数字が75になっていた。
12月25日
クリスマスに水野と駅前のデパートで買い物をしてきた。買い物というよりも、すこしデートだったのかもしれない。クリスマスカラー一色の駅前やデパートを二人で周った。俺は帰り際、水野にクリスマスプレゼントをあげた。デパートの中で見つめていたネックレスだ。水野は驚きながら、お礼を言った。すると水野もカバンの中から何かを取り出した。紙袋を開けてみると、手袋が入っていた。どうやら手作りらしい、めちゃめちゃ嬉しかった。水野も嬉しそうだった。水野の頭の数字が90にまで来ていた。100になったらどうなるのかと思いながら、初詣に行く約束をし別れた。
1月1日
近くの神社に初詣に来た。家族で行ったため、水野とは後で集合することになった。混み合っている神社の中に、水野を見つけた。晴れ着姿だった。思わずかわいいと声が出てしまった。俺は水野に近づく。水野は俺を見つけると、笑顔で手を振ってくれた。そして俺の第一声はかわいいだった。似合ってると言いたかったのに、心の声が漏れてしまった。水野が照れる。おみくじや甘酒を飲んだりして初詣を終えそろそろ解散しようかと思ったその時、水野に呼び止められた。そして、いつもより小さい声で、「今年からは友達ではなく、恋人の関係でありたい」と言ってきた。俺は固まった。10秒以上固まっていたかもしれない。ふと、水野の頭の上の数字を見ると、100になっていた。これは好感度だったのかと確信した。もちろん俺も水野が好きだったため、お願いしますと頭を下げた。二人で照れ合いながら、手を繋いで帰った。その帰り道、水野が「よく私の頭を見てるよね、あれってもしかして数字でも見えてた?」と言ってきた。なんでわかったのかと返すと、水野が「君の頭の上にもあったからね。100になったから告白したの」と告げた。俺の頭の上にも数字があったらしい。そしてちゃんと両思いだった。
両想いでよかったです。こんな青春いいな。
きんたつ。