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きんたつ。短編集  作者: きんたつ。
5/11

カウントアップ①

頭の上に数字が表れている女子。そしてその数字は俺にしか見えない。上がったり下がったりしている。その数字はいったい何なのか。日記に起こしていこうと思う。


4月3日 晴れ

 今日は高校の入学式だった。中学と同じ地域の高校のため知り合いも多く緊張などはなかったが、一つおかしなことが起きた。隣の席のまだ名前も知らない女子の頭の上に数字が出ているのだ。「0」と表示されている。他の人にはその数字は頭の上にない。その女の子だけ現れていた。その子は頭の数字に気づいていないようだ。初日からおかしな奴に思われたくないので言わないことにした。明日には消えてるだろう。


4月4日 晴れ

 隣の女子の数字は消えてなかった。全体の自己紹介で知ったが、名前は水野詩織というらしい。隣の席なので改めて自己紹介もした。話していくうちに共通の趣味や好きなアーティストが同じなど、思った以上に盛り上がった。すると、水野さんの頭の上の数字が「5」になった。なぜかは分からなかったが、様子を見ることにした。


4月30日 くもり

 この1か月ずっと頭の数字のことを考えていた。隣の席ということもあるし、チラチラと水野さんの頭を見てしまう。昨日は水野さんに気づかれ、「頭に何かついてる?」と聞かれてしまった。少し気を付けなければ。


5月12日 晴れ

 高校での部活が始まった。俺は中学でもやっていたバスケ部に入った。10分休憩の時、風に当たろうと体育館の外に出ると、金管楽器の音が聞こえてきた。2つの音色が聞こえ、1つは素人でもわかるくらい高温の音がうまく出ていなかった。音色が止み、足音がこちらに近づいてきた。その正体は水野さんだった。水野さんは俺を見つけると少し足早になり、話しかけてきた。話によると、中学までは違う楽器をやっていたが、人数が多いためトランペットになったらしい。お互い頑張ってねと労いの言葉をかけ部活に戻っていった。

 

6月10日 曇りのち雨

 朝の天気予報では夜の予想だった雨が下校の時に振ってきた。親に言われ、傘を持ってきたのは正解だった。だが、昇降口で水野さんが傘を忘れたらしく立ち尽くしていたため貸してあげることにした。結局濡れて家に帰った。


6月11日 晴れ

 昨日の雨が嘘のように晴天だった。教室に入ると水野さんに「ありがとう」と昨日貸した傘を出してきた。その頭の数字はまた増えて「10」になっていた。なんで増えるんだろう。


7月8日 くもり

 入学してから3ヶ月たった。新しい友達もでき、クラスもみんな話すようになってきた。だが俺には、未だに水野さんの頭の上に数字が見える。しかも二人ともよくしゃべるようになり、毎朝教室に来ると数字が少し増えているという現象が続き、頭上の数字は「30」になった。増えても何も起きないのが不思議だ。


7月月15日 晴れ

 9月の文化祭の出し物がお化け屋敷に決まった。衣装や模型を作る班に分かれ準備1ヶ月前から準備が始まった。俺は衣装班と本番に驚かす係になった。衣装班には水野さんもいた。話し合いにより、夏休み中に買い出しに行くことになった。あまり人が多くてもと言うことになり、じゃんけんで2名を選抜した。俺と水野さんになった。そこで初めて水野さんと連絡先を交換した。数字が「35」になった。


8月9日 晴れ

 連絡先を交換して以来ちょくちょく水野さんとやり取りするようになった。部活の話だったり、夏休みの過ごし方だったり。俺は少し水野さんを意識し始めていると感じた。来週の買い出し、少し緊張してきた。


8月17日 くもり

 今日は衣装の買い出しで駅前の商店街にやってきた。この駅は最近新しいカフェが出来たりしており、非常に盛っている。緊張のため集合時間の15分前に改札口で待っていると、水野さんがすぐにやって来た。水野さんはちょっと照れる感じであいさつを返してきた。制服以外の姿を見たのは初めてだったので、俺も少し照れてしまった。その後は商店街を歩き、お化け屋敷に使えそうな布や服、小物を探し、水野さんが行ってみたかったというカフェへ入り休憩をして夕方頃別れた。別れるときには頭の上の数字が45になっていた。普通に水野さんとの買い物を楽しんだが、うまく対応できていたかと思うと不安になり夜に一人反省会を行った。


9月10日 くもり

 夏休みが明け2学期が始まった。水野の頭の数字は「40」になっていた。始まって早々クラスで席替えが行われた。水野さんと隣じゃなくなるかもしれない。俺は気合を込めてくじを引いた。一番後ろの席になった。水野さんは、同じ列だが一番前の席に行ってしまった。話すことも見ることもできない。2学期は運が悪いと思っていたら、俺の隣の子が黒板が見ずらいので一番前に行ってもいいかと先生に相談した。その結果、水野さんと席を交代することになった。奇跡が起きた。水野さんは机を移動し俺の隣に来ると「また隣だね」とささやいてきた。あれは卑怯だと思った。


9月26日 小雨

 来週の文化祭の準備のため放課後は部活も無しでみんな準備に大忙しだ。俺は驚かす練習や衣装の手伝いをした。みんなで協力しあって楽しく準備をしている。分からないことがあったため同じクラスでバスケ部のマネージャーもしている山下のところに行った。山下は丁寧に人当たりがよく教えてくれ、ついでにバスケ部の話や何の関係のないたわいもない話までしてしまった。楽しく笑いながら会話しているなか、ふと水野さんと目が合った。なんかいつもの顔じゃなかった。そして頭の上の数字が「35」に下がった。初めて下がることを知った。未だに何の数字か理解できていないが、上がっていった方がいいんじゃないかと思っている。そして頭の数字と平行に俺の気持ちもなにか下がった気がする。来週は文化祭だ。



短編と言いながら分けてすみません。次回もお楽しみにしていてください。

きんたつ。

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