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きんたつ。短編集  作者: きんたつ。
4/11

美しいからだ

ぜひ最後まで読んでいただけると幸いです。

「美しいからだ」


 彼女はそう呟いた。目の前には女性が一人横たわっており、首には何かで絞められたような跡がついている。その手足を触っている彼女の顔は、普通に生活していれば見ることはない狂気と興奮に満ちた笑みをしていた。


 宮内。彼女はそう呼ばれていた。名前なんてほとんど呼ばれず、何十年間も宮内で生きてきた。29歳独身、OL。顔つきは世間からするとブサイクに属し、幼いころから太りやすく体重は3桁に乗ろうとしていた。そんな見た目からなのか、中学の時からいじめにあっていた。水をかけられたり、シャーペンをわざと落とされ壊されたり。その主犯格は中学校、高校と同級生の佐藤という女性だった。


 佐藤は世間からすると美人に属し、スタイルもよく街に出ればスカウトで声をかけられたり雑誌の街角ファッションコーナーに出たりと誰もが認める美女だった。そんな彼女だが、性格はあまりよろしくなく自分より下だと思った女子には当たりが強かった。特に宮内には一番下だと思っていたのか、人一倍強く接していた。宮内は6年間そのいじめに耐え、佐藤とは違う大学に行った。だがその経験のせいか引っ込み思案になり、サークルにも入らずに友達も5人ほどしかできず、適当に募集していた会社に就職した。給料はそこそこだが、人間関係がうまくいかず会社でも居場所がどんどん無くなっていった。


 そんな宮内の趣味はカフェ巡りだった。新しいカフェを見つけてはホッっと一息いれて自分の中での非日常に浸っていた。今日も休日なので知らない駅で降り、周辺を散策した。飲み屋街もあればその奥におしゃれなバーやスタジオがある。地下へ続く階段もある。どんなお店だろう。そんな通りを進んでいくと、新しそうなカフェが見えた。今日はここにしよう。店に入り店員に案内され、気になったメニューを注文し、最近読み始めた小説を読んでいると、頼んだ飲み物が運ばれてきた。ありがとうございますといつものように店員の顔を見て挨拶をすると、急に恐怖の感情が迫ってきた。その店員は佐藤だったのだ。いつも顔を合わせていたから確実に覚えている。反射的に下を向き静かにしたが、横から声が聞こえてきた。


「まさか宮内さん?」


 佐藤も覚えていたのだ。まさか話しかけられるとは思っていなかったので、声が掠れながらもあいさつをした。


「うっうん、久しぶりだね」


「えー、高校の時から全然変わってないじゃん!」


「そうかな」


「あっ、今度高校の同窓会があるんだけど宮内さんも良かったら来ない?」


「えっ、あぁ考えとくね」


「オッケー、よろしく!そうだ、連絡先交換しとこ!はいこれ私の」


 そういうと、彼女はQRコードを出してきた。


「それじゃあまた連絡してね」


 交換した後仕事に戻っていった彼女を宮内は顔色一つ変えず見送っていた。そうしてその場を過去一番の速さで出ていった。


 カフェからの帰り道、頭の中でそれはもういろんなこと思いながら歩いていた。変わってない?それはどういう意味?遠回しにブサイクってことか?それと学生時代あんなに私をいじめておいて同窓会?過去のことは何も思ってないの?もう考えるたびに佐藤への怒りが込み上げてくる。気持ちが出すぎてああ!と声を上げ天を仰いだら電柱に見たことない広告が貼ってあった。


「美しい体に仕立てます?」


 不思議だ、普通の広告はダイエットや整形などを言ってくるのに、仕立てるとはどうゆうことなのか。少し気になってきた。その時、佐藤が同窓会があると言っていたのを思い出した。


「それまでに美しくなれば...」


 おもむろにバックから携帯を取り出し広告に書かれていた番号に電話をかけ、予約をした。


 クリニックにつくと丁寧に迎えられ、いきなり問診が始まった。


「それで、今日はどんな悩みで?」


「今度同窓会があるんですけど、それまでに私奇麗になりたいんです!ここは美しい体に仕立ててくれるんですよね?」


「あー、広告を見て来られたんですね」


「そうです、電柱に貼ってあった広告を見て来ました」


 先生は私に少し圧倒されながら話を続けた。


「確かに美しく仕立てることはできます」


「本当ですか!」


「ですが!仕立てるということは素材が必要なんです」


「素材?」


 よく言っている意味が分からなかった。美しくなるための素材?ゲームみたいな話だ。宮内は先生に聞いた。


「よくわからないのですが」


「いいですか、うちは仕立てる専門なんです。よく聞くでしょう、ドレスを仕立てるとか」


「はい、洋服とかですよね」


「そう、それを人体でやるんです」


「!!??」


「素材と人体を繋ぎ合わせるんです。ちなみにこちらでも素材を用意することが出来ますが、お値段が少々高くなってしまいます」


「どのくらいですか?」


「ざっと、これくらいですかね」


 先生が5本の指を見せてきた。


「500万」


「なにをおっしゃいます、5000万ですよ」


「5000万!?」


 そんな大金払えるわけない。そこまでするならやらなくていい。美しくならなくていい。


「でも、お客様で素材を用意していただければ10万円で施術できます」


「え!?」


「どうです、お安いでしょう?」


 だいぶ安い、5000万と10万の差なんて算数を習いたての小学生でもわかる。この時にはやろうという気持ちが8割だった。


「あの...素材というのはいったい何なんでしょう?」


 宮内は忘れかけていた質問をした。


「まわりに、モデル体型の人や憧れの体系の方などはいますか?」


 悔しくも頭の中に佐藤が思い出された。


「その人を連れてきてください」


「ここにですか?」


「はい」


 先生はニコッと笑い言ってきた。丁度、佐藤と連絡先を交換したばかりだ。


「ただし、一つ条件があります...」


 ------------------------------------


 佐藤は宮内の家に呼び出された。あいつから話したいことってなんだよ。相変わらず見た目はブサイクだし、ぼそぼそ喋ってたし。同窓会もべつに来てほしくて誘ったわけでもない。そんなことを考えてるうちに、送られてきた住所のアパートに着いた。少し古そうなインターホンを鳴らす。すると中からティーシャツに短パン姿の宮内が出てきた。


「あっ、どうぞ」


「お邪魔しまーす」


 そう言って靴を脱ぐと、必要最低限のものしか置かれていない部屋に案内された。


「ごっごめんね、急に呼んで」


「ううん、全然大丈夫!カフェの時だけじゃ全然話せなかったからね

 で、話って何?」


「べっ別に大したことではないんだけど、佐藤さんてやっぱりキレイだなって」


「そんな話?まあ嬉しいけど、宮内も学生時代から全然変わってないね!」


「そういうところはずっと嫌いだけどね」


「は?」


 なんだこの女は。急に喧嘩売ってきやがった。やっぱり過去のことを根に持っていて今日は私に謝ってほしいとかなのか?それもすべてお前がブサイクで抵抗してこなかったのが悪いんじゃないか。


「なに、喧嘩売ってる?それとも私に謝ってほしいの?」


「いや、そうじゃないんだけど...とりあえずコーヒー淹れるね」


 そういうと宮内はキッチンに向かっていった。いったい何なんだ。イラついて早く帰りたくなってきた。後ろではカチャカチャと音が聞こえる。ふと、その音が聞こえなくなった瞬間、佐藤は苦しも悶えた。


「ずっとあなたを憎んでいたの、私には持っていないものを全部持っていて、しかもその美しさで私をいじめて!でも羨ましくもあったの、そんな美貌や美しい手足があったらどれだけ生きやすいか!でもこれで私のものっ」


 宮内はそういいながら佐藤の首をロープで絞め続けた。佐藤は声を出すこともできず、足をバタつかせ苦しむだけだった。5分が過ぎたころ、足も動かなくなり佐藤は起き上がらなかった。。宮内は、狂気と興奮の混じった笑顔でその手足に触れながら呟いた。


「美しい体」



少しホラーな部分がありました。そんな施術怖くて受けたくないです。

                                きんたつ。

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