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きんたつ。短編集  作者: きんたつ。
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ラップバトルの結末

ラップバトルです。ラップと言えるかわかりませんが。

 花の金曜日、飲み屋街は気を抜くと他の人に肩がぶつかってしまうほど繁盛していた。そういえばちょっと行った交差点で車に轢かれた人物が消えるという事件があったらしい。不思議な事件だ。そんなことを思いながら人の波をかき分け裏道に入ってすぐ、地下に続く階段がある。その中は名のある居酒屋より盛り上がっていた。客は手を挙げ、持っているドリンクを少しこぼしながら声を上げている。すると突然、司会者らしき人物が叫んだ。


「ただ今の勝負!MCサイクロンの勝利!」


 会場がまた盛り上がる、どうやらラップバトルの会場のようだ。しかもMCサイクロンという男、結構人気らしい。


「俺に勝てるやつはもういないみてーだな!」


 サイクロンが観客をあおる。また会場が盛り上がる。見渡すと一人の少年と目が合った。サイクロンの単独ライブになろうかと思われたその時、その一人の少年がステージに登った。眼鏡をかけチェック柄の服を着ている一見地味な少年はスタッフからマイクを預かると、ラッパーのような勢いを持たず、か細い声で話した。


「僕もいいですか?」


 最高潮に盛り上がっていた会場が静かになった。と思った瞬間、観客の笑い声に包まれた。


「お前にできるのかー?」

「やってみろー!」

「サイクロン、手加減してやれよ!」


 いろんな歓声がとびかうなか、MCサイクロンはあきれながら、それでも楽しそうに人差し指を相手に向け曲げた。

 司会者がその行動を見て登ってきた男性に尋ねる。


「きみ、名前は?」


「えーっと、MCチェックで」


 名前を聞いた司会者が試合開始のコールをする。


「急に現れた謎の青年!MCチェック!一体どんなライムを見せてくれるのか!現チャンピオンのMCサイクロンの先攻だ!DJ KUU かませ!」


 少し奥にいる人がレコードを回し、音楽が鳴り始める。それを皮切りに、MCサイクロンがラップを始めた。


「俺はMCサイクロン 右手にマイクロフォン お前を傷つけるアイアンクロー

 苦労はしたが楽はしない このフロウに乗せた格の違い

 音は耳だけじゃなく全身で 平均点はそう東大点

 もう開演中のこの祭典 採点するのはそう観客です」


 会場がまた盛り上がる。次はMCチェックの番だ。さきほどの、か細い声しか聴いていないため少し不安になるがどうだろうか。MCチェックが口を開いた。


「採点済みだぜお前のラップ 0点で追試が確定で

 俺のラップは急行勝利行き お前のラップをうまさで通り抜き

 凍り付きトラウマ植え付ける ほらうまいと言わせて杖つかす

 うつつぬかす、これからお前はお利口に俺の虜になる」


 会場が最高な盛り上がりを見せる。あんなか細い声の少年が、いざラップをすると饒舌になり最高のライムをかましているのだ。MCサイクロンはその言葉を真顔で受けながら続けた。


「ケツがつかねぇだけでありがてぇわ アリは殺さずともお前を落とす

 蝶のように舞い蚊のように 突き刺す観客は俺に向きます

 人気も常にミッ〇ー・マウス そのままじゃ勝てねぇよ GO TO HOUSE

 実力不足を認めれば もっと楽になれるよ EAZY DANCE」


 さあ、MCチェックはどう返すのか。先ほどもよかったため期待しかない。すると会場がざわつくようなアンサーが放たれた。


「そうやって父を殺したんだろ 蜂のように胸を刺したんだろよ

 お前のやったことは全部わかってる 2か月前のあの事件のことだ

 誇らしげにラップ楽しむんじゃねぇ ここらへんでそろそろ怒られんじゃね

 社会的にももちろんこの俺からも ちゃんと罪を償ってもらうぜ」


 急に意味が分からないことを言い出した。殺した?刺した?2か月?観客全員が状況を理解しないでいた。MCサイクロンは少し焦ったように言葉を返す。


「は?お前何言ってんの 殺した?刺した?身に覚えがない

 常に進化して日々衰えない 俺はラップで人を倒すだけ

 殺人なんてそれはカオスだぜ ラップ一筋のLIFEだぜ

 証拠も何も揃ってない ただの一人芝居で踊ってない?」


 もちろんMCサイクロンは反論した。急にそんなこと言われて反論のアンサーができるのはさすがと言ったところだろうか。だが少しマイクを握っているところが光って見える。手汗でも搔いているのだろうか。

 そのアンサーを聞いたところでMCチェックは一つため息をつきリズムに関係なく普通にしゃべり始めた。


「証拠は全部上がってるんですよ。警察が捜査してくれて指紋や足跡が一致しました。2か月前、僕の父を殺したのはあなたですよね、MCサイクロン!いや、木下風馬さん!なんで殺したんですか!帰ったら血まみれの父が横たわっていて、家族が殺された気持ちあなたにはわかるんですか!」


 MCチェックの心の叫びが会場全体に響き渡った。観客は静まり返っている。するとそこに刑事のような人物が2人、MCサイクロンに歩み寄った。


「木下風馬、殺人の容疑で逮捕する」


 MCサイクロン...いや、木下風馬は警察に連行された。後で聞いた話だと、木下風馬はラッパーの先輩であったMCチェックの父に大麻をやっていることがばれ、それを世間に広められると思ったのか殺してしまったらしい。まあ、MCチェックに殺した犯人やライブ会場、警察が調べた証拠、ステージに登るタイミングなど教えたのは、探偵のこの俺なんだけどね。


韻を踏むの考えるのは楽しかったです。リズムよく読んでいただければ。

また次回お会いしましょう。               きんたつ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 意外性があって、面白かったです。 [気になる点] セリフにした方が面白く読めるタイプの作家さんなので、地の文は省いて言葉にした方が読むのが楽しいかもしれないです。 [一言] ラップのライム…
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